本記事のポイント
- ワシントンD.C.で開催された「日米観光レセプション」により、日米間の観光協力と双方向交流の機運が高まっています。
- 2026年は米国でのメガイベントが相次ぐため、インバウンド・アウトバウンド双方の活発化が期待されます。
- 米国市場のニーズである「本物の文化体験」や「地方の魅力」への対応が、宿泊施設の高付加価値化の鍵となります。
ニュースの概要
2025年11月19日、米国ワシントンD.C.の在米国日本大使公邸において、観光庁長官や米国政府関係者など約320名が出席する「日米観光レセプション」が開催されました。このイベントは、2026年に米国で開催される建国250周年記念やFIFAワールドカップなどのメガイベントを見据え、日米間の観光協力をより一層強化することを目的としています。
レセプションでは、日本側から伝統文化の継承者が登壇し、特別プログラムとして日本の奥深い文化魅力をプレゼンテーションしました。また、会場には日本政府観光局(JNTO)や20の自治体等がブースを出展し、各地域の多様な観光資源をアピール。米国側からも観光局が参加し、双方向の交流拡大に向けた決意が共有されました。日米双方向の観光拡大は戦略的な優先事項として位置づけられています。
宿泊業にとってのポイント
今回の「日米観光レセプション」開催は、宿泊業界にとって米国市場の重要性が改めて強調される機会となりました。特に注目すべきは、米国からの旅行者が求める「体験の質」と、地方部への関心の高まりです。
米国市場は、滞在期間が比較的長く、消費額も高い傾向にあります。彼らは単なる観光地巡りだけでなく、その土地固有の歴史や文化に深く触れる体験(コト消費)を重視します。今回のレセプションで「伝統文化のサポート」や「香道」といった、歴史的背景を持つコンテンツが紹介されたことは、今後の誘客における重要なヒントとなるでしょう。宿泊施設においては、客室や食事の提供にとどまらず、地域文化への橋渡し役としての機能が求められているといえます。
背景と理由の整理
なぜ今、日米観光レセプションのような取り組みが重要視されているのでしょうか。背景には、インバウンド市場における「量から質への転換」と「地方誘客」という大きな課題があります。
多くの観光地でオーバーツーリズムが懸念される中、特定エリアへの集中を避け、地方の魅力を発信して分散を図ることは急務です。同時に、知的探求心が旺盛な欧米豪市場、とりわけ米国市場の取り込みは、観光産業全体の高付加価値化に直結します。2026年は米国が世界的な注目を集める年であり、人の移動が活発化するため、このタイミングで日本への関心を繋ぎ止めておくことは、中長期的な集客戦略として極めて合理的です。
また、人手不足が続く宿泊業界において、高単価な市場をターゲットにすることは、従業員の待遇改善やエンゲージメント向上に資する原資確保の観点からも重要ではないでしょうか。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説
レセプションで行われた具体的なプログラムからは、米国市場へのアプローチ手法が見えてきます。
まず、近衞忠大氏や一枝軒宗苾宗匠によるプレゼンテーションに見られるように、「ストーリー性のある本物の文化体験」が前面に押し出されました。これは、宿泊施設においても「ただ泊まる場所」ではなく、「日本文化を学ぶ場所」としての価値提供が有効であることを示唆しています。
さらに、20もの自治体や観光関連企業がブースを出展し、地域ごとの特色をアピールしました。これは、ゴールデンルート以外の地域にも大きなチャンスがあることを意味します。米国側の観光局も参加していることから、単方通行の誘客ではなく、相互理解に基づいた交流が重視されている点が特徴です。このような「双方向性」を意識し、米国のお客様を迎える際には、相手国の文化やイベント(2026年のW杯など)に触れる会話を取り入れることも、おもてなしの一環として効果的かもしれません。
まとめ
- 日米観光レセプションを契機に、2026年に向けた米国市場との双方向交流が加速しています。
- 米国客のニーズである「本物の文化体験」や「地方の魅力」への対応が、宿泊施設の競争力を高めます。
- 従業員の文化理解や語学力を活かす機会を創出することで、組織全体のエンゲージメント向上も期待できます。
本リリースに関するお問い合わせ
- 担当部署: 観光庁 国際観光課 欧米豪市場推進室
- 担当者: 櫻本、木村
- 電話番号: 03-5253-8111(代表)、03-5253-8923(直通)
出典:観光庁『在米国日本国大使館主催「日米観光レセプション」に観光庁長官が出席しました~日米観光協力の更なる強化に向けて~』(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news03_00019.html)


