宿泊・旅行業界ニュース

山中漆器の職人技に学ぶ「おもてなしの器」:宿泊施設における地域資源の活用と差別化

【加賀温泉郷】山中漆器の“今”を知る。職人たちの技術と感性が響き合う合同展示会
CoCoRo編集部

本記事のポイント

  • 地域の伝統工芸品を導入することで、宿泊施設の食事体験や空間の質をどう高められるか
  • 職人の技術や背景にあるストーリーを知ることが、接客スタッフの「語る力」にどう影響するか
  • 既存の器を見直し、地域ならではの「おもてなし」を再構築するための着眼点

ニュースの概要

石川県加賀市の山中漆器産業技術センターにて、山中漆器の製造を担う職人たちが集う合同展示会「職人の技とおもてなしの器」が開催されることが発表されました。日程は2025年11月30日(日)から12月1日(月)の2日間です。

この展示会では、木地、塗り、加飾(蒔絵など)といった各工程の職人が一堂に会し、伝統技術を駆使した作品から現代のライフスタイルに合わせた新作までが披露されます。単なる工芸品の展示にとどまらず、日々の暮らしや「おもてなし」の場に漆器をどのように取り入れるかという提案も行われるため、宿泊事業者にとっても地域の工芸文化に深く触れる機会となりそうです。

地域の「本物」を取り入れることは、施設価値を高める投資になる

今回の展示会ニュースを踏まえて、宿泊業・おもてなしの観点からまずお伝えしたい結論は、「地域の伝統工芸品(本物の器)を施設に取り入れることは、単なる備品調達ではなく、ブランド価値を高める重要な投資である」ということです。

食事の美味しさは味覚だけでなく、視覚や触覚を含めた五感全体で決まると言われています。特に、その土地で作られた器でその土地の食材を提供することは、宿泊客にとって最も贅沢な体験の一つです。既製品の業務用の器では代替できない「地域の物語」を宿の強みとして組み込むことは、顧客満足度を高める有効な手段となるのではないでしょうか。

なぜ今、宿泊施設に「地域工芸」との連携が求められるのか

1. 「コト消費」から「意味消費」への深化

インバウンドや国内の旅行者は、単に豪華な食事や綺麗な部屋だけでなく、「その土地ならではの文化体験」や「背景にあるストーリー」を求める傾向が強まっています。山中漆器のような歴史ある工芸品は、それ自体が地域の文化を体現するコンテンツです。器一つをとっても、「なぜこの器なのか」を語れる宿は、ゲストの記憶に深く刻まれる可能性があります。

2. 他施設との差別化と高付加価値化

多くの宿泊施設がサービスの差別化に悩む中、地域の職人と直接つながり、オリジナルやこだわりの器を使用することは、容易には模倣できない強みになります。特に、量産品ではない手仕事の器は、一つひとつ表情が異なり、宿の「顔」としての役割を果たしてくれるかもしれません。

3. 接客スタッフのエンゲージメント向上

実は、良い器を使うことは従業員にとってもメリットがあります。「地元の職人さんが魂を込めて作った器」を扱うことは、配膳するスタッフの所作や意識に良い緊張感をもたらします。また、お客様に「これは地元の山中漆器で、こういう技法が使われているんですよ」と説明できるようになることは、接客の自信や仕事への誇りにつながるのではないでしょうか。

山中漆器の「職人の技」が示唆するもの

今回の展示会では、以下の3つの部門で職人の技が披露されるとのことです。

  • 木地新作展: 薄挽きや加飾挽きなど、木目の美しさを極限まで引き出す技術。
  • 山中漆器塗展: 伝統的な花塗りから独自のデザイン性を追求した新作まで。
  • 山中漆器蒔絵展: 高蒔絵や研ぎ出しなど、繊細かつ豪華な加飾技術。

宿泊施設の現場マネージャーや企画担当者にとって興味深いのは、これらが「伝統的な器」だけでなく、「現代の生活に合うデザイン」や「日々の暮らしに取り入れる提案」としても展示される点です。

例えば、インバウンド客向けに和の伝統を感じさせる蒔絵の器を特別なコース料理で用いたり、あるいはモダンな客室に合わせてシンプルで現代的な木地挽物のカップをウェルカムドリンクに使用したりと、多様なシーンでの活用が想像できます。

職人が新たな表現に挑戦している“今”の姿を見ることは、宿泊施設側が「伝統工芸は扱いが難しそう」という固定観念を払拭し、柔軟な発想でサービスに取り入れるきっかけになるかもしれません。

地域の物語を「おもてなし」に組み込むための視点

もし、自施設の「おもてなし」をさらに深めたいと考えているなら、このような地域の展示会は絶好のリサーチの場です。最後に、現場で活かすための視点をいくつか整理します。

  • 「語れる」ネタを仕入れる:展示会に足を運び、職人から直接話を聞いてみてください。「この曲線の削り出しが一番難しい」「この色は何度も塗り重ねて出す」といったエピソードは、そのまま夕食時の接客トークとして活用できます。
  • スモールスタートでの導入:最初から全ての食器を入れ替える必要はありません。まずはスイートルームのお茶菓子用の皿や、バーカウンターのコースターなど、小さな接点から地元の工芸品を取り入れてみるのも一つの手です。
  • 売店との連動:食事で使用した器を気に入ったお客様が、館内の売店で購入できるように導線を設計することも可能です。これは旅の思い出を持ち帰っていただくことであり、顧客体験の余韻を長く残すことにもつながります。

地域にある素晴らしい技術や文化は、宿泊施設という「ショーケース」を通して、より多くの人に伝わります。自社が地域のショールームとしての役割を果たすことが、結果として地域全体の活性化と自社のファン作りにつながる、という視点も押さえておくと良さそうです。

まとめ

  • 地域の伝統工芸品(山中漆器など)を導入することは、宿泊体験の質を高め、他社との差別化につながります。
  • 器の背景にあるストーリーをスタッフが理解し語ることで、接客の深みと従業員エンゲージメントが向上する可能性があります。
  • まずは展示会などで職人の技に触れ、小さな接点から「地域の物語」をお客様に提供することを検討してみてはいかがでしょうか。

出典:PR TIMES『【加賀温泉郷】山中漆器の“今”を知る。職人たちの技術と感性が響き合う合同展示会』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000076294.html

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