宿泊・旅行業界ニュース

オリジナル商品開発を加速する地域連携:朝食の感動を「持ち帰れるギフト」に変える古窯の挑戦

日本の宿古窯と人気養蜂家が再タッグ!当館朝食名物「巣蜜」で話題の養蜂家が贈る、五感で楽しむ古窯オリジナルギフト「山形フルーツはちみつセット」好評販売中!
CoCoRo編集部

本記事のポイント

  • 朝食などの「体験」を起点に、リスクを抑えながらヒット商品を生み出すプロセス
  • 地域の生産者と深く連携することで生まれる「ストーリー」という付加価値
  • 旅の記憶を自宅へ持ち帰ってもらい、再来訪やファン化(LTV向上)につなげる視点

ニュースの概要

山形県上山市に位置する老舗旅館「日本の宿古窯」から、地元の養蜂家とタッグを組んだ新商品「山形フルーツはちみつセット」の販売が開始されました。

この商品は、同館の朝食ビュッフェで提供され好評を博している「巣蜜(コムハニー)」をきっかけに開発されたものです。提携先の「百花園養蜂」と共に、山形県内で採蜜された純国産の完熟蜜を厳選。「りんご」「さくらんぼ」「すいか」という山形らしい果物の花から採れた蜂蜜をセットにし、地域の杉材を使った木箱に収めることで、味覚だけでなく香りや触覚でも山形の自然を感じられる仕様となっています。

「安心・安全な地元の恵みを届けたい」という宿の想いと、生産者の情熱が結実した、地域連携型のオリジナル商品開発事例です。

宿泊体験を「モノ」に変える、オリジナル商品開発の重要性

物販は「旅の延長戦」をデザインする装置になる

今回のニュースから読み取れる宿泊事業者にとっての重要な視点は、「館内での優れた体験(コト)を、持ち帰れる商品(モノ)に変換する」というアプローチです。

宿泊業界において、売店や物販コーナーは単なる「お土産売り場」にとどまらず、顧客エンゲージメントを高める重要なタッチポイントになり得ます。特に、滞在中にゲストが実際に味わい、感動した味覚をオリジナル商品として提供することは、購入のハードルを下げると同時に、帰宅後も宿のことを思い出してもらう(マインドシェアを維持する)ための有効な戦略と言えるでしょう。

体験の記憶は薄れるが、商品は手元に残る

なぜ今、こうしたオリジナル商品の開発が重要なのでしょうか。その背景には、宿泊体験の「一過性」という課題があります。

どれほど素晴らしいおもてなしや食事を提供しても、チェックアウトして日常に戻れば、その記憶は徐々に薄れてしまいます。しかし、滞在中に感動した「味」や「香り」を自宅で再現できる商品があれば、それを使うたびに「あの宿は良かった」「また行きたい」というポジティブな感情が想起されます。

また、昨今はOTA(オンライントラベルエージェント)上での価格競争や画一的な比較にさらされがちですが、「地域独自の生産者との強固なパートナーシップ」「そこでしか買えない商品」は、他施設にはない独自の競争優位性(Moat)となります。地域の魅力を編集し、発信するキュレーターとしての役割を果たすことが、選ばれる宿になるための鍵ではないでしょうか。

具体例:古窯に学ぶ「必然性」のある商品づくり

日本の宿古窯の事例には、成功確率を高めるためのいくつかのヒントが隠されています。

  1. テストマーケティングとしての「朝食提供」
    いきなり新商品を開発するのではなく、まずは朝食ビュッフェで「巣蜜」を提供し、ゲストの反応を確かめています。「こんなに美味しい蜂蜜は初めて」という生の声(ニーズ)を確認した上で商品化に進んでいるため、在庫リスクを抑えつつ、説得力のある販売が可能になります。
  2. 地域資源(テロワール)の徹底的な活用
    「りんご」「さくらんぼ」に加え、「すいか」という珍しい蜜を採用している点は非常にユニークです。山形という土地柄(テロワール)を反映しており、「ここでしか買えない」という希少性を高めています。また、中身だけでなくパッケージに地元の杉材を使用し、「蓋を開けた瞬間の香り」まで設計している点は、五感重視の現代的なマーケティング視点と言えます。
  3. 生産者の「顔」が見える信頼性
    提携する養蜂家のこだわり(夜明け前の採蜜、非加熱の完熟蜜など)をストーリーとして伝えています。「誰が、どんな想いで作ったか」という背景情報は、商品の付加価値を大きく引き上げ、価格競争に巻き込まれないブランド力を構築します。

活用の視点:自社の「強み」を棚卸しする

この事例を踏まえ、自社の現場でも以下のような視点で振り返ってみると、新たな商品開発の種が見つかるかもしれません。

  • 朝食やウェルカムドリンクで「これ美味しいね」「どこで買えるの?」とよく聞かれるメニューはないか?
  • 取引のある地元の生産者の中に、まだ広く知られていないが情熱的なこだわりを持つ人物はいないか?
  • 客室やロビーで提供している「体験(香り、リネン、お茶など)」の中に、自宅へ持ち帰れる形に変換できるものはないか?

必ずしも大規模な開発をする必要はありません。既存のメニューや取引先との関係性を少し深掘りし、「宿のオリジナルラベル」としてリブランディングするだけでも、ゲストにとっては特別な「旅の記憶」となり得ます。

まとめ

  • 「美味しかった」を逃さない導線設計:朝食や夕食での感動体験を、そのまま購入行動へつなげるストーリー設計が効果的です。
  • 地域×生産者のストーリー化:単なる食品販売ではなく、地域の自然や生産者の情熱を伝える「メディア」として商品を位置づけましょう。
  • 五感への訴求:味覚だけでなく、パッケージの素材感や香りなど、開封時の体験までデザインすることで、ギフト需要や自分へのご褒美需要を取り込めます。

地域の魅力を最もよく知る宿泊施設だからこそ作れる「商品」があります。それは結果として、従業員が自信を持っておすすめできる商材となり、現場のサービス品質向上にもつながる好循環を生むのではないでしょうか。

出典:PR TIMES『日本の宿古窯と人気養蜂家が再タッグ!当館朝食名物「巣蜜」で話題の養蜂家が贈る、五感で楽しむ古窯オリジナルギフト「山形フルーツはちみつセット」好評販売中!』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000191.000069154.html

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