本記事のポイント
- 閑散期対策として「ベストレート保証」と「ポイント高還元」を組み合わせた強力な直販誘導施策
- 鉄道・商業施設を含むグループ共通ポイント(WESTER)を活用し、LTV(顧客生涯価値)向上を図る
- OTA手数料削減と顧客データの自社蓄積を目指す、ロイヤリティプログラム運用の好事例
ニュースの概要
株式会社ジェイアール西日本ホテル開発は、展開する「JR西日本ホテルズ」全13ホテルにおいて、2026年1月1日から2月28日までの期間限定で、グループ会員向けの宿泊キャンペーンを実施することを発表しました。
このキャンペーンでは、JR西日本グループの会員サービス「WESTER」の会員を対象に、専用プランでのベストレート(最安値)保証を提供します。さらに期間中は、公式ホームページ経由のすべての宿泊予約に対し、通常の5倍となるWESTERポイントを付与するほか、JRホテルメンバーズ会員の優待利用時にもポイント付与を実施します。
同社は、1月・2月という旅行需要が落ち着く時期に、価格メリットとポイント還元という二重のインセンティブを用意することで、公式チャネルへの予約誘導と会員基盤の活性化を図る狙いがあると考えられます。
自社チャネルへの回帰を促す「価格」と「還元」の設計
OTA依存からの脱却には「明確な公式予約メリット」が不可欠
宿泊業界において、OTA(オンライン旅行代理店)経由の予約は集客の要である一方、送客手数料の負担や顧客データのブラックボックス化といった課題も抱えています。
今回の事例から読み取れるのは、自社サイト(直販)での予約比率を高めるためには、「公式が最もお得である」というメッセージを、価格と付加価値の両面で強力に打ち出す必要があるという点です。
顧客は「比較」して予約する
多くの旅行者は、OTAで宿泊施設を検索した後、公式サイトを確認し、価格や特典を比較検討します。この際、公式サイトの価格がOTAより高い、あるいは同等であれば、使い慣れたOTAで予約を完了してしまうのが一般的です。
「ベストレート保証」は、この離脱を防ぐための基本かつ強力な防衛線です。加えて、今回の事例のように「ポイント5倍」というわかりやすいインセンティブを付与することで、実質的な割引率を高め、価格感度の高い層を自社会員へと囲い込む動機付けを行っています。特に1月・2月という閑散期においては、こうした能動的な需要喚起策が稼働率の下支えとして機能するでしょう。
具体例と編集部の示唆:経済圏を活用したLTVの向上
JR西日本ホテルズの強みは、鉄道利用や駅ビルでのショッピングなど、移動と生活全般をカバーする「WESTERポイント」という経済圏を持っている点です。ホテル単体のポイントではなく、日常的に利用できる共通ポイントをフックにすることで、会員登録のハードルを下げ、継続的な利用(LTV向上)につなげています。
大手グループのような大規模なポイント経済圏を持たない独立系ホテルや小規模旅館であっても、この考え方は応用可能です。
- 地域内連携: 近隣の飲食店や土産物店と提携し、地域共通のクーポンや特典を用意する。
- 即時還元の導入: 次回使えるポイントだけでなく、館内利用券やアップグレードなど、その滞在中にメリットを感じられる「即時特典」を公式サイト予約限定で提供する。
- 会員限定プランの可視化: 既存顧客リスト(メルマガやLINE公式アカウント)に対し、OTAには出していない「シークレットプラン」を案内し、特別感を演出する。
顧客にとって「わざわざ公式サイトで予約する手間」を上回るメリットが何なのか、再定義するきっかけになる事例ではないでしょうか。
直販比率を高めることは、利益率の改善だけでなく、顧客との直接的な接点を増やし、エンゲージメントを深めるために重要です。「価格保証」と「独自特典」を組み合わせ、顧客に選ばれる必然性を作ることが、持続可能な集客戦略の第一歩となります。
まとめ
- 1月・2月の閑散期対策として、価格メリットと特典を組み合わせた「公式予約優遇」は有効な手段です。
- 自社単独で魅力的な特典を用意するのが難しい場合、地域連携や即時利用可能なインセンティブを検討してみましょう。
- OTAは新規獲得の場、公式サイトはリピーター育成の場と捉え直し、それぞれのチャネルごとの役割と目標値を明確にしておくことが推奨されます。
出典
出典:PR TIMES『【JR西日本ホテルズ】良い宿で良い旅を おトクな宿泊で賢く優雅に。公式ホームページからの宿泊予約でベストレート保証・WESTERポイント5倍』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001081.000095932.html)


