宿泊・旅行業界ニュース

小樽旅亭 蔵群がリブランド。ウェルネス強化と個の体験価値を高める戦略

小樽旅亭 蔵群
CoCoRo編集部

本記事のポイント

  • 既存の名建築を活かしつつ、「ウェルネス」と「個の体験」へ大胆にシフトするリブランド事例
  • 大浴場を貸切スパ(酵素風呂・サウナ)へ転換し、高付加価値化を図る設備投資の戦略
  • 地域の歴史的背景を「コンセプト」として再定義し、滞在のストーリー性を高める手法

ニュースの概要

株式会社温故知新は、同社が運営を行う北海道・小樽市の温泉宿「小樽旅亭 蔵群」を、2026年2月24日に「小樽リトリート 蔵群 by 温故知新」としてリブランドオープンすることを発表しました。これは同社が展開する「リトリート」ブランドの5軒目となります。

今回のリブランドにあたり、既存の大浴場を廃止し、酵素風呂やサウナを備えた貸切のウェルネス空間へと改装することが大きな特徴です。設計は開業時と同じく建築家・中山眞琴氏が担当し、小樽の石蔵文化や「醸す(かもす)」という思想を取り入れた新コンセプトのもと、ハード・ソフト両面での進化を図る計画です。なお、営業を継続しながら段階的に改装が進められます。

宿泊業にとってのポイント

このニュースにおける最大の注目点は、「既存資産(建築・文化)の継承」と「現代的ニーズ(ウェルネス・プライベート感)への適応」を高いレベルで両立させようとしている点ではないでしょうか。

特に、温泉旅館の象徴ともいえる「大浴場」をあえてクローズし、貸切の酵素風呂やサウナといった「プライベート・ウェルネス」へ転換する判断は、宿泊施設の高付加価値化を検討するうえで非常に示唆に富んでいます。単なる老朽化対応の改修ではなく、ターゲット顧客が求める体験価値(リトリート、デトックス、独占感)に合わせて、施設の機能を抜本的に書き換える戦略的な投資と言えるでしょう。

背景と理由の整理

なぜ今、このような大胆なリブランドが必要とされるのでしょうか。背景には、ラグジュアリー層やインバウンド旅行者のニーズの変化があると考えられます。

かつては「大きな湯船での開放感」が重視されましたが、近年は「自分たちだけの空間で整う」「他者を気にせずリラックスする」といったプライベート性への需要が高まっています。また、旅の目的が単なる観光から、心身の回復や健康増進を目的とするウェルネスツーリズムへとシフトしている流れも見逃せません。

「小樽旅亭 蔵群」はもともと個室露天風呂を備えた高級旅館ですが、共有部を「貸切スパ」化することで、施設全体のテーマをより明確に「リトリート(日常からの再生)」へと振り切ることが可能になります。これにより、競合施設との差別化を図り、単価向上や長期滞在の促進につなげる狙いがあるのかもしれません。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説

発表された具体的な取り組みから、宿泊業経営や企画のヒントとなる要素を掘り下げます。

  • 建築家の再起用によるブランドの一貫性 開業時の設計者である中山眞琴氏が今回の改装も担当します。これにより、施設のアイデンティティである「蔵」の意匠や「閑(しずか)」な空間性を損なうことなく、現代的な機能を付加することができます。オーナーや運営が変わっても、その施設の「魂」とも言える建築思想を守ることは、ファンの維持において重要と言えるでしょう。
  • 「大浴場」から「貸切ウェルネス」への転換 既存の2つの大浴場を、それぞれ異なる機能を持つ貸切風呂へ改装します。
    • 貸切風呂1: 酵素風呂・スパ(温故知新運営施設として初導入)
    • 貸切風呂2: サウナ・水風呂・露天風呂 これにより、客室風呂とは異なる特別な体験価値を提供し、滞在中の時間の使い道(タイムパフォーマンス)を豊かにしています。
  • 地域性を物語化するコンセプト設計 小樽の歴史的背景(石蔵、北前船)と、時間をかけて価値を深める「醸す(かもす)」という思想を新コンセプトに掲げています。単に「新しい設備が入った」だけでなく、「なぜその体験が必要なのか」というストーリーを地域文化と紐づけることで、説得力のあるブランディングを行っている点が特徴です。

自社への活かし方のヒント

「小樽旅亭 蔵群」の事例は、大規模な投資が難しい中小規模の施設にとっても、視点を変えるヒントになるかもしれません。

  • 「共有部」の在り方を見直す 稼働率の低い宴会場や、維持費のかかる大浴場がある場合、それらを思い切って「貸切スペース」や「特定の体験エリア(サウナ、瞑想ルームなど)」に転換することで、新たな収益源や集客フックにできないでしょうか。
  • 「リブランド」を「再定義」の機会にする 施設名やロゴを変えるだけでなく、「自館が提供する究極の価値は何か」を突き詰めることが重要です。今回は「リトリート」という軸を定め、そこから逆算して必要な設備(酵素風呂など)を決定しています。
  • 地域文化を「動詞」で取り入れる 単に地元の特産品を置くだけでなく、今回の「醸す」のように、地域の営みをコンセプトやサービス(時間の過ごし方)に昇華させることで、より深い体験価値を生み出せるかもしれません。

設備投資は大きな決断ですが、顧客のニーズが「所有・共有」から「個の体験」へ移っている今、既存の空間をどう再編集するかという視点が、次の一歩につながるのではないでしょうか。

まとめ

  • 「小樽旅亭 蔵群」は2026年2月にリブランドし、ウェルネス機能を大幅に強化します。
  • 大浴場の貸切スパ化は、プライベート性と体験価値を重視する現代のニーズへの回答と言えます。
  • ハードの改修だけでなく、地域の歴史と接続したコンセプト作りが、ブランドの深みを作ると考えられます。

企業情報

  • 会社名:株式会社温故知新
  • 代表者:代表取締役 松山 知樹
  • 本社所在地:東京都新宿区新宿5-15-14 INBOUND LEAGUE 502号室
  • 設立:2011年2月1日
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:ホテル・旅館の運営及びプロデュース
  • 公式サイトhttps://by-onko-chishin.com/
  • 施設公式サイトhttps://otaru.by-onko-chishin.com/

本リリースに関するお問い合わせ

詳細な問い合わせ先は、プレスリリース内に記載の各リンクをご参照ください。

出典:PR TIMES『小樽旅亭 蔵群、「小樽リトリート 蔵群 by 温故知新」として2026年2月24日にリブランドオープンへ』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000188.000118716.html

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