アパホテルネットワークとして全国最大の1,024ホテル140,097室(建築・設計中、海外、アパ直参画ホテルを含む)を展開する総合都市開発のアパグループ(東京都港区赤坂3-2-3 CEO:元谷 一志)は、兵庫県神戸市内に県内最大級となる大型ホテル開発計画を発表しました。
今回の大型ホテル開発計画は、神戸・三宮〜新神戸エリアの宿泊供給と需要バランスを大きく動かしうるニュースです。神戸周辺でホテル・旅館を運営する事業者だけでなく、兵庫県内でインバウンドや都市観光の取り込みを考える方にとって、今から押さえておきたいトピックといえそうです。
本記事では、リリース内容の要点を整理したうえで、神戸エリアの宿泊市場にどのような変化が起こりうるか、自社は何を準備しておくとよいかを編集部の視点で解説します。
本記事のポイント
- アパグループの発表した兵庫県神戸市内に県内最大級となる大型ホテル開発計画では、三宮〜新神戸エリアに地上19階建・755室の大型ホテル「アパホテル&リゾート〈新神戸 三宮駅北〉」を2029年春頃に開業予定としています。
- 神戸市内のアパホテルは既存2ホテルと合わせて計3ホテル・1,133室体制となり、ビジネス・観光需要の取り込みと同時に、周辺ホテルとの競争環境にも変化が生じる可能性があります。
- アパグループが掲げる「選択と集中」戦略やフランチャイズ活用の動きは、地方・中規模ホテルの運営モデルやパートナーシップのあり方を考えるヒントにもなりそうです。
アパグループの発表した兵庫県神戸市内に県内最大級となる大型ホテル開発計画の概要
アパグループは、アパホテルネットワークとして全国最大となる1,024ホテル・140,097室(建築・設計中、海外、アパ直参画ホテルを含む)を展開しているとしています。
今回の発表では、兵庫県神戸市中央区、JR神戸線「三ノ宮駅」徒歩6分、阪急神戸線「神戸三宮駅」徒歩6分、地下鉄西神・山手線「三宮駅」徒歩4分というエリアに、大型の宿泊開発を行うとしています。新幹線停車駅「新神戸駅」からも徒歩11分、神戸空港へも乗り換えなしでアクセス可能な立地であり、「北野異人館街」「生田神社」「神戸元町」などの観光スポットにも近いことから、ビジネスと観光の双方の需要を見込んだ取得だと説明しています。
ホテル名称は「アパホテル&リゾート〈新神戸 三宮駅北〉」とし、サウナ付き大浴場・露天風呂、プール、レストラン、コンビニエンスストアなど、多様な館内施設を備えたアーバンリゾート型の施設を予定しています。規模は地上19階建、延床面積約16,040㎡、客室数755室で、2029年春頃の開業を目標としています。
神戸市内では現在、アパホテル〈神戸三宮〉(202室)とアパホテル〈神戸三宮駅前〉(176室)が運営されており、新ホテル開業後は3ホテル合計1,133室の体制になる計画です。
また、同リリースではグループの「選択と集中」戦略に基づき、現在直営のアパホテル〈姫路駅北〉(兵庫県姫路市・168室)とアパホテル〈魚津駅前〉(富山県魚津市・145室)について、2026年3月2日から株式会社ティーケーピーがフランチャイズホテルとしての運営を行うことも併せて公表しています。これにより、今回の開発・契約ベースでは直営ホテルが442室増、フランチャイズホテルが313室増となり、全国直営ホテルは246ホテル・69,521室になるとしています。
大型ホテル開発計画に見る宿泊業にとってのポイント
755室の大型リゾート型ホテルが三宮〜新神戸に与えるインパクト
今回発表された大型ホテル開発計画は、単なる「客室数の増加」だけでなく、「三宮〜新神戸エリアにおける滞在スタイルの変化」をもたらす可能性があります。
- 755室規模のアーバンリゾート型ホテルは、ツアー・団体・MICE・インバウンドの受け皿として、かなり大きなキャパシティを持つことになります。
- サウナ付き大浴場や露天風呂、プールなどを備えることで、「観光+滞在そのものを楽しむ」タイプの旅行者を取り込める構成といえそうです。
既に神戸ではハーバーランドやポートアイランド側に大型ホテルが集積していますが、今回の計画により、三宮〜新神戸側にも「滞在滞在型の拠点」が一層明確になります。これにより、周辺の中小ホテル・旅館にも、以下のような影響が考えられます。
- 大型ホテルの集客による人流増加に伴い、周辺宿泊施設や飲食店への「スピルオーバー需要」が期待できる
- 一方で、価格競争・設備競争が強まり、標準的なビジネスホテルは差別化ポイントが弱いと埋もれやすくなる可能性
県内他エリアの宿泊業にも及ぶ「選択と集中」の波
今回のリリースでは、アパホテル〈姫路駅北〉や〈魚津駅前〉のフランチャイズ化も発表されています。
大手チェーンが「都市部の大型開発に資本を投下しつつ、地方・中規模物件はフランチャイズやパートナーシップで運営する」という構図は、今後さらに広がる可能性があります。
兵庫県内の他エリア(姫路・淡路・城崎など)で宿泊業を営む事業者にとっても、
- 「自前運営を続けるのか」
- 「どこかのチェーンと組むのか」
- 「独自ブランドとして高付加価値化を目指すのか」
といった経営選択を考えるタイミングが近づいていると見ることもできそうです。
観光庁が公表している「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」や「生産性向上のためのハンドブック」でも、単なる客室数の拡大ではなく、付加価値と収益性を高める経営の重要性が示されています。
アパグループの発表した兵庫県神戸市内に県内最大級となる大型ホテル開発計画、その背景と理由の整理
神戸・三宮エリアのポテンシャル
神戸は、山と海に挟まれたコンパクトな都市でありながら、
- 北野異人館街や旧居留地などの歴史的街並み
- 港町としての夜景・クルーズ・グルメ
- 六甲山系の自然
- 神戸空港からのアクセスの良さ
といった多様なコンテンツを持つ観光都市です。
三宮〜新神戸エリアは、その中でも「鉄道・空港アクセスの結節点」であり、ビジネス需要と観光需要の両方を取り込めるエリアです。神戸市としても三宮周辺の再整備を進めており、駅前の再開発や歩行者空間の拡充などにより、回遊性の高いまちづくりが進められています。
このような状況を踏まえると、アパグループが兵庫県神戸市内で大型のホテル開発計画を打ち出したことは、エリアのポテンシャルを見据えた長期投資と捉えることができそうです。
インバウンド回復と大手チェーンの投資姿勢
入国制限の緩和以降、訪日外国人旅行者数と消費額はいずれもコロナ前水準を上回るペースで回復しており、政府も観光立国の推進を掲げています。
特に都市部や人気観光地では、
- 観光ピーク期の客室不足
- 人手不足に伴う稼働制限
- 宿泊単価の高騰
など、供給側の制約が顕在化している地域も少なくありません。
アパグループは、こうした需要環境に合わせて、全国各地でタワーホテルや大規模ホテルの開発を継続してきました。今回のアパグループ 兵庫県神戸市内 県内最大級のホテル開発計画も、その流れの中で「関西・神戸の受け皿強化」と「ネットワーク全体の客室数拡大」を同時に図る位置づけと見られます。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説
1. 「アパホテル&リゾート〈新神戸 三宮駅北〉」の計画概要
リリースから分かる主な仕様は次の通りです。
- ホテル名(仮称):アパホテル&リゾート〈新神戸 三宮駅北〉
- 規模:地上19階建
- 延床面積:約16,040㎡
- 客室数:755室
- 施設:サウナ完備の大浴場、露天風呂、プール、レストラン、コンビニエンスストア ほか
- 開業予定:2029年春頃
アパグループの「アパホテル&リゾート」ブランドは、都市部でありながらリゾート要素を取り入れた複合型ホテルとして展開されており、今回も同様のコンセプトが想定されます。
2. 神戸市内3ホテル一体でのポジショニング
既存の2ホテル(〈神戸三宮〉・〈神戸三宮駅前〉)は、いずれもビジネス需要を中心とした駅近型のアーバンホテルです。新ホテルが加わることで、
- 三宮駅周辺:コンパクトなビジネス滞在向け(既存ホテル)
- 三宮〜新神戸北側:長期滞在・レジャー・団体も含むアーバンリゾート(新ホテル)
という役割分担が明確になっていく可能性があります。
これは、神戸エリア全体の宿泊需要を「短期ビジネス」「週末レジャー」「インバウンド・団体」「MICE」といったセグメントに分け、最適なプロダクトで取りに行く動きと読むこともできそうです。
3. 「選択と集中」とフランチャイズ活用の意味合い
同じリリースで、アパホテル〈姫路駅北〉と〈魚津駅前〉が、2026年3月から株式会社ティーケーピーによるフランチャイズ運営に切り替わることが発表されています。
ここから見えてくるのは、
- 大型・戦略拠点:グループ直営として積極投資・ブランドコントロールを重視
- 中堅都市・地方拠点:フランチャイズで地域パートナーとともに運営し、ネットワーク維持と投資効率の両立を図る
という二層構造です。
兵庫県内で見れば、「神戸は直営の大型フラッグシップ」「姫路はパートナーとともに運営」という棲み分けが生まれることになり、他チェーンや独立系ホテルにとっても、今後の戦略検討時の参考事例になるかもしれません。
自社への活かし方のヒント(アパグループ 兵庫県神戸市内 県内最大級のホテル開発計画をどう読むか)
1. 自施設の「立ち位置」を改めて言語化する
まずは、自社が神戸〜阪神間・もしくは兵庫県内のどのポジションを狙うのか、改めて整理してみることが大切です。
- 三宮〜新神戸エリアに近い施設なら、大型チェーンの予約導線を「補完」する役割か、「一点特化で差別化」する役割か
- 市内中心部から離れた旅館・リゾートなら、「神戸観光+郊外ステイ」の組み合わせ提案で、滞在日数を伸ばす戦略が取れないか
といった形で、「アパグループ 兵庫県神戸市内 県内最大級のホテル開発計画が進んだ後の市場構造」を前提に、自社のポジショニングを描いてみると良さそうです。
2. 客室数ではなく「付加価値」で勝てるポイントを探す
755室の大型ホテルに客室数で対抗することは現実的ではありません。一方で、
- ローカルな食材・文化体験
- 小規模だからこそできるパーソナルなおもてなし
- 歴史的建築や温泉など、立地固有の価値
といった点は、むしろ中小規模の宿の方が強みを出しやすい分野です。
観光庁のハンドブックでも、宿泊業の生産性向上には「単価アップにつながる顧客価値の再設計」が重要とされています。
大型チェーンが施設力で集客する一方で、自館は「ここでしか体験できない価値」で選ばれる状態を目指す、という視点を持っておくと安心です。
3. 人手不足とオペレーションを今から見直す
大型開業が相次ぐエリアでは、スタッフの採用競争も激しくなりがちです。兵庫県内の宿泊業でも、インバウンド回復に伴う人手不足が課題になっているとの調査も出ています。
- 業務の棚卸しと標準化
- フロント・清掃・レストランなどのシフト設計見直し
- 外注・テクノロジー(セルフチェックイン、在庫管理システム等)の活用
といった「今ある人員で最大限のパフォーマンスを出す工夫」は、どの施設でも事前に着手できるポイントです。
アパグループのような大手も、「選択と集中」やフランチャイズ活用を通じて、人的リソースと投資を配分していると考えられます。自社でも、人材戦略と設備投資をセットで考えるきっかけにしてみると良さそうです。
4. 連携・コラボレーションの余地を探る
大型ホテルは、エリア全体の集客装置にもなり得ます。
- 新ホテルと時間帯をずらした送客(朝食後の体験コンテンツ、夜の飲食・バー利用など)
- 周辺施設と連携した街歩きマップや宿泊者限定特典の企画
- コンベンションやイベント開催時の「サテライト会場」「追加宿泊先」としての受け入れ
など、競合でありながら「エリアを一緒に盛り上げるパートナー」として連携の余地も探っておくと、長期的にはプラスになりやすいと考えられます。
まとめ
- アパグループ 兵庫県神戸市内 県内最大級のホテル開発計画により、三宮〜新神戸エリアには755室のアーバンリゾート型ホテルが2029年春頃に誕生する予定であり、神戸市内の宿泊供給と需要構造に大きな変化が生じる可能性があります。
- 同時に発表された姫路・魚津のフランチャイズ化からは、大手チェーンによる「選択と集中」戦略がより鮮明になっており、地方・中規模宿泊施設も、自前運営かパートナーシップか、高付加価値化かといった選択肢を意識する段階に入っていると考えられます。
- 各施設としては、客室数の競争ではなく、自館の立ち位置の言語化と付加価値の磨き込み、人手不足を見据えたオペレーション改善、そしてエリア内での連携可能性を整理しておくと安心です。
- 今回のニュースを「脅威」とだけ見るのではなく、「エリアの認知度向上と需要拡大のチャンス」と捉え、自社の強みを再確認するきっかけにするという選択肢もあります。
企業情報
- 会社名:アパホテル株式会社
- 所在地:東京都港区赤坂3-2-3 アパグループ〈赤坂見附本社ビル〉
- 代表者名:元谷 芙美子
- 設立:1980年11月
- 資本金:9,000万円
- 事業内容:ホテル事業を中心とした総合都市開発事業(宿泊・飲食・不動産等)
- 公式サイト:
本リリースに関するお問い合わせ
- 会社名:アパグループ 東京本社 社長室
- 住所:東京都港区赤坂3-2-6
- 電話番号:03-5570-2131
- メールアドレス:kouhou@apa.co.jp
- 公式サイト:アパグループ公式サイト お問い合わせページ
参考資料
- 観光庁『生産性向上のためのハンドブック』
- 観光庁『宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン』
- 観光庁『宿泊事業者の経営改善に役立つツール』
- 観光庁『宿泊施設における外国人材の受入れ状況に関する実態調査事業』
出典:PR TIMES『アパグループ 兵庫県神戸市内に県内最大級のホテル開発計画を発表』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000800.000018265.html


