神戸ベイシェラトンホテル のグランドリニューアルは、単なる改装ではなく「眺望」「温泉・サウナ」「ファミリー・長期滞在」という複数の強みを束ねて、高付加価値な滞在を設計した事例といえます。神戸市内でリゾートホテルとして愛されてきた同ホテルが、ビューバス付きクラブフロア客室やIHミニキッチン付きプレミアルーム、源泉かけ流し露天風呂付プライベートサウナ、靴を脱いで過ごせるファミリーフロアを新たに整備したことで、付加価値と単価の両立を図っていると発表しています。
本記事では、神戸ベイシェラトンホテル の事例を、ホテル・旅館の経営者や企画担当者が「自館でどう活かせるか」という視点で読み解いていきます。
本記事のポイント
- 神戸ベイシェラトンホテル のグランドリニューアルは、「眺望×温泉×サウナ×ファミリー×長期滞在」を組み合わせた高付加価値化の好事例として参考になりそうです。
- 観光庁が掲げる宿泊業の「顧客価値向上」「生産性改善」「収益力向上」という高付加価値化の方向性と、神戸ベイシェラトンホテル の取り組みは親和性が高いと考えられます。
- 自館で同じ規模の投資をせずとも、「数室の特別室」「小さなウェルネス空間」「子連れを意識した設備」など、神戸ベイシェラトンホテル のエッセンスを取り入れる選択肢がありそうです。
ニュースの概要
神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ(運営:株式会社ホテルニューアワジ神戸)は、2025年冬に向け館内のグランドリニューアルを実施したと発表しています。テーマは「ANEW -KOBE BAY SHERATON ~ローカルな魅力で世界をもてなす」。神戸のパノラマビューと自家源泉の温泉を軸に、新たな滞在価値の創出を図ったとしています。
具体的には、上層階クラブフロアに88㎡の新客室「クラブコーナービューバスツイン(展望風呂付)」を開設。客室内のビューバスからは神戸港・神戸市街・六甲山の稜線を一望でき、地元・灘五郷の日本酒を用いた風呂も楽しめると説明しています。
さらに、49㎡のジュニアスイートタイプ「プレミアルーム(IHミニキッチン付)」を新設。ウォークインクローゼットやIHミニキッチン、大型冷蔵庫や電子レンジを備え、長期滞在にも対応する多機能ルームになっているとしています。
温浴施設では、ホテル敷地内から湧き出る自家源泉・神戸六甲温泉「濱泉」内に、源泉かけ流し露天風呂付のプライベートサウナ「永和凪 Towa-Nagi」を新設。ロウリュ対応のバレルサウナや水風呂、外気浴スペースを備え、宿泊客限定・予約制でウェルビーイングな時間を提供する構成としています。
加えて、小さな子ども連れでも靴を脱いで安心して過ごせる「ファミリーフロア」を整備。バンクベッドのあるコネクティング対応客室、エレベーターホールの電子レンジ設置、ベビー用品のレンタル、キッズウェルカムスイーツなど、ファミリー向けの受け入れ環境を強化したとしています。
神戸ベイシェラトンホテルに学ぶ宿泊業にとってのポイント
神戸ベイシェラトンホテル のグランドリニューアルには、宿泊業の高付加価値化に取り組むうえで押さえておきたいポイントがいくつか見えてきます。
1. 「一番の強み」を客室体験に落とし込む
神戸ベイシェラトンホテル は、「神戸港と市街地、六甲山を一望できる眺望」「自家源泉の温泉」という既存の強みを、クラブコーナービューバスツインや露天風呂付プライベートサウナとして再構成しています。
単に眺めが良い・温泉がある、という状態から、「ビューバスで夜景と日本酒風呂を楽しむ」「完全プライベート空間で源泉かけ流しの湯とサウナを味わう」といった“物語のある商品”に変えている点が重要ではないでしょうか。
2. 高付加価値と長期滞在需要の両立
プレミアルームでは、49㎡の広さに加え、IHミニキッチンや大型冷蔵庫、電子レンジを備えることで、観光だけでなく長期出張やワーケーション、連泊のファミリーといったニーズにも対応しやすくしています。



観光庁の「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」でも、顧客価値の向上と生産性向上を両立させる視点が示されていますが、高単価なジュニアスイートを「長期滞在もできる多機能ルーム」として位置づけることは、その方向性に沿った取り組みと見ることもできそうです。
3. ファミリー特化フロアでターゲットを明確化
ファミリーフロアでは、「靴を脱いで過ごせる」「バンクベッド」「コネクティング対応」「電子レンジ」「ベビー用品レンタル」「キッズウェルカムスイーツ」といった要素を組み合わせ、明確に“小さな子ども連れ”をターゲットにしています。
このようにフロア単位でターゲットを定めると、販売戦略だけでなく、清掃動線や備品管理、スタッフ教育も効率化しやすくなり、従業員エンゲージメントの向上にもつながりやすいと考えられます。
4. ウェルビーイング文脈でのサウナ活用
「永和凪 Towa-Nagi」は、フィンランドのサウナ文化に触れながら、“家族や友人と語り合い、心身をリセットする空間”として説明されています。
単なる「サウナ設備」ではなく、滞在者のウェルビーイング体験として意味づけることで、価格に見合う価値説明がしやすくなり、スタッフ側も提供するサービスの意義を共有しやすくなるのではないでしょうか。
神戸ベイシェラトンホテル グランドリニューアルの背景と理由の整理
神戸ベイシェラトンホテル のようなフルサービスホテルが、なぜ今「グランドリニューアル」に踏み切るのか。その背景には、宿泊業を取り巻く構造変化があります。
高付加価値化とターゲットの明確化
観光庁は「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」で、宿泊業が「持続可能な稼げる産業」となるためには、顧客価値の向上・生産性の改善・収益力向上の3つの柱で経営を見直す必要があると示しています。
神戸ベイシェラトンホテル のリニューアルは、
- ビューバス付きクラブフロア客室=プレミアム価格を設定しやすい「特別室」
- プレミアルーム=長期滞在・多目的利用を取り込む「多機能ルーム」
- ファミリーフロア=子連れ・三世代旅行に特化した「安心・安全なフロア」
- プライベートサウナ=ウェルビーイング志向の高い層向け「体験コンテンツ」
というように、ターゲットの異なる商品群を明確化しつつ、全体として「神戸のローカルな魅力で世界をもてなす」というブランドストーリーに結びつけているように見えます。
価格転嫁と生産性向上を両立させる必要性
人件費・エネルギー費が上昇する中、宿泊業が従来通りの価格帯・サービス内容だけで経営を維持するのは難しくなっています。高付加価値な客室や体験を用意し、納得感のある価格で販売することは、単価アップと生産性向上の両方につながる可能性があります。
神戸ベイシェラトンホテル の事例は、館内全体を一度に刷新するのではなく、「特定フロア・特定客室・特定温浴設備」を重点的にアップグレードすることで、投資効率を意識した改装になっている点も注目できそうです。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説(神戸ベイシェラトンホテル)
ここからは、神戸ベイシェラトンホテル のグランドリニューアル内容を、もう少し実務的な観点で整理していきます。
クラブコーナービューバスツイン:眺望と温泉を一体化した「特別室」

- 上層階クラブフロア、88㎡の広さ
- ビューバスから神戸港・市街地・六甲山の稜線まで一望
- 灘五郷の日本酒風呂を楽しめる演出
- ウォークインクローゼット完備で長期滞在にも対応
といった要素を組み合わせることで、「ここでしか味わえない夜景と入浴体験」を強調した設計になっています。
宿泊プランでは1名あたり4万円台からとされており(2名1室利用時)、一般客室とは異なる価格帯での販売を想定した商品といえそうです。



プレミアルーム:IHミニキッチン付きで長期滞在ニーズを取り込む
プレミアルーム(49㎡)は、以下のような設備で“暮らすように泊まる”滞在を意識した設計になっています。
- IH対応ミニキッチン
- 一部客室に大型冷蔵庫
- 電子レンジ
- ウォークインクローゼット
- 開閉しやすい引き戸で空間を広く使える工夫
このような設備は、インバウンドの長期滞在客や中長期のビジネス滞在、乳幼児連れファミリーなど、食事や荷物の管理を自分のペースで行いたいゲストにとって大きなメリットになります。
露天風呂付プライベートサウナ「永和凪」:ウェルビーイング体験の核
神戸六甲温泉「濱泉」内に新設された「永和凪 Towa-Nagi」は、
- 自家源泉かけ流しの露天風呂
- ロウリュ対応バレルサウナ
- 水風呂
- 外気浴スペース
を備えた完全プライベート空間で、宿泊客限定・予約制です。
オープン記念料金として70分9,900円、90分13,200円(いずれも税込)とし、通常料金からのディスカウントも提示することで、スタート期のトライアル利用を促している点も実務的な工夫といえます。
ファミリーフロア:設備とオペレーションで「子連れ安心」を設計
ファミリーフロアでは、ハード・ソフトの両面から子連れ滞在の不安を減らす仕掛けが盛り込まれています。
- 室内は「靴を脱いで寛ぐ」仕様
- バンクベッドのある客室をコネクティング対応に
- フロア共用部に電子レンジを設置
- 赤ちゃん用シャンプー、子ども用便座などのレンタル備品
- キッズウェルカムスイーツの提供
こうした「ちょっとした不便」の解消は、スタッフへの個別依頼やクレームを減らし、現場の負荷軽減にもつながる可能性があります。
/ga
自社への活かし方のヒントと神戸ベイシェラトンホテル事例
神戸ベイシェラトンホテル のような大規模投資は難しい施設も多いはずです。ただ、考え方や設計のエッセンスは、中小規模のホテル・旅館でも取り入れやすい部分があるように思われます。
自館の「強み×物語」を一つ決める
神戸ベイシェラトンホテル は、眺望と温泉を軸に「ANEW」という新しい物語を掲げています。自館でも、
- 眺望
- 温泉
- 食事
- 歴史的建築
- 地元の文化体験
などの中から、「一番伝えたい強み」を1つ決め、その強みが最も伝わる客室タイプやプランづくりから始めてみると、投資の優先順位がつけやすくなりそうです。
まずは「数室の特別室」から始める
全館リニューアルは難しくても、
- 眺望の良い2〜3室だけバスルームを刷新する
- 既存の和室1室を“半露天風呂付き客室”に改装する
- 1フロアだけ「靴を脱いで過ごすファミリーフロア」にする
といった小さなステップでも、神戸ベイシェラトンホテル のようにターゲットを明確にした商品づくりは可能です。
小さなウェルビーイング体験を仕込む
「永和凪」のような本格的なプライベートサウナが難しくても、例えば次のような工夫は現実的かもしれません。
- 貸切風呂の予約枠を見直し、「静かに過ごす大人向け」の時間帯を設ける
- 客室内にストレッチマットや簡易マッサージグッズを用意する
- 地元ハーブティーや入浴剤を使った「おやすみ前リチュアル」を提案する
こうした小さなウェルビーイング提案は、従業員からアイデアを募ることでエンゲージメント向上のきっかけにもなりそうです。
ファミリー・長期滞在向けの「必須3点」を決める
神戸ベイシェラトンホテル のプレミアルームやファミリーフロアは、多くの設備を盛り込んでいますが、自館で真似をする際には、
- ファミリー向けなら:「電子レンジ」「おむつ用ゴミ箱」「洗面台の踏み台」など
- 長期滞在向けなら:「大きめ冷蔵庫」「物干しスペース」「ワークデスク」など
優先度の高い3点程度から整備すると、投資負担を抑えつつ、ターゲットにとって“選ぶ理由”をつくりやすくなります。
まとめ
- 神戸ベイシェラトンホテル のグランドリニューアルは、眺望や自家源泉、サウナ、ファミリーフロア、長期滞在対応客室を組み合わせ、高付加価値な滞在体験を設計した事例といえます。
- 観光庁の高付加価値化ガイドラインが示す「顧客価値向上・生産性改善・収益力向上」の3つの柱と、神戸ベイシェラトンホテル の取り組みには共通点が多く、自館の投資方針を考える上で参考になりそうです。(mlit.go.jp)
- 自館では、神戸ベイシェラトンホテル のような大規模改装が難しい場合でも、数室の特別室化や小さなウェルビーイング設備、ファミリー向け必須設備の整備など、スモールスタートで真似できる要素が多くあります。
- 神戸ベイシェラトンホテル の事例をきっかけに、「自館の一番の強みは何か」「どのターゲットに絞って高付加価値な滞在を提供するか」を見直しておくと安心です。
企業情報
- 会社名:株式会社ホテルニューアワジ神戸
- 施設名:神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ
- 本社所在地:兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-13 神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ 地下1階/地上21階
- 電話番号:078-857-7000
- 代表者名:木下 学
- 資本金:1,000万円
- 設立:1992年6月
- 業種:飲食店・宿泊業
- 公式サイト:神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ公式サイト
本リリースに関するお問い合わせ
- 施設名:神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ
- 部署名:宿泊予約係
- 電話番号:078-857-7010(10:00〜19:00)
- 公式サイトお問い合わせページ:お問い合わせ(神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ)
参考資料
出典:PR TIMES『神戸ベイシェラトンホテル 「グランドリニューアル」』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000118224.html


