変なホテルがギネス世界記録に認定されたコラボルーム戦略は、宿泊業全体にとって「コンセプトルームの使い方」を考える良い材料になりそうです。
本記事では、恐竜ワンダールームや雪塩ルームの概要を押さえながら、ホテル・旅館が自館の強みを活かして変なホテルのような体験価値をつくるための考え方を整理します。
本記事のポイント
- 変なホテルがギネス世界記録に認定された背景と、コラボルーム・コンセプトルームによる差別化の狙いを整理
- 恐竜ワンダールームと雪塩ルームの特徴から、ファミリー・インバウンド・地域連携の観点で宿泊業が活かせるヒントを解説
- 自館でも実践しやすい小さな変なホテル式コラボルーム企画の始め方や、従業員エンゲージメント向上につなげるポイントを提案
ニュースの概要
変なホテルは、「Most brand-themed room sponsorships in a hotel chain(ホテルチェーンにおけるブランドコンセプトルーム・スポンサーの最多数)」として、『コラボルーム世界最多のホテル』というギネス世界記録に認定されたと発表しています。2025年9月19日時点で44種類のコラボルームがあり、今回の新規販売により50種類へと更新されたとしています。
そのうえで、H.I.S.ホテルホールディングス株式会社が運営する「変なホテル大阪 なんば」は、屋内型エデュテインメント施設「せかいの恐竜・ワンダーランド」と連携した「恐竜ワンダールーム」を2025年12月19日から販売するとしています。客室内を恐竜の装飾やパネルで演出し、恐竜をテーマにした謎解きゲームを室内で楽しめるほか、宿泊者には恐竜グッズをプレゼントする構成とし、料金は朝食付き1室1泊17,540円~、素泊まり16,000円~(いずれも税・サービス料込み)と発表しています。
同じグループが運営する「ウォーターマークホテル沖縄 宮古島」では、宮古島の特産ブランドである「宮古島の雪塩」とのコラボレーションにより、「雪塩ルーム」を同じく12月19日から販売するとしています。客室はブルーと白を基調に「宮古島の雪塩」の世界観で統一され、商品パッケージをモチーフにした壁面やベッドカバーデザイン、雪塩の作り方を紹介するタペストリーを設置するなど、滞在そのものをブランド体験にする構成としています。宿泊者には雪塩スイーツ、雪塩パウダー、雪塩ソフトクリームの割引券、オリジナルクリアバッグなどを提供し、朝食付き24,800円~、素泊まり21,500円~としています。
この2つの新ルームにより、変なホテルブランドにおけるコラボルームは50種類、HISホテルホールディングス全体のコンセプトルームは75種類に達したと説明しており、コラボルームを同社のホテル運営の重要な柱として位置づけていることがうかがえます。
宿泊業にとってのポイント
変なホテルに見るコラボルームのブランド効果
変なホテルは、ロボットチェックインなど話題性のある仕掛けに加え、今回のようなコラボルームを「ブランドの核」として積み重ねてきたと見ることができそうです。ギネス世界記録という分かりやすい称号は、メディア露出やSNSでの話題作りにつながり、結果的に宿泊予約サイト上での差別化にも寄与しやすくなります。
他のホテル・旅館にとっても、「数」そのものを追う必要はないものの、変なホテルのようにコンセプトルームを継続的に打ち出す姿勢は、ブランドストーリーの一貫性という意味で参考になりそうです。
ファミリー・インバウンド需要を捉える恐竜ワンダールーム

恐竜というテーマは、国内外問わず子どもに人気が高く、ファミリー層の集客に直結しやすいモチーフです。客室で完結する恐竜謎解きゲームを用意している点は、天候に左右されずに楽しめる「室内アクティビティ」としても機能すると考えられます。
特にインバウンドファミリーは、「子どもが喜ぶ体験がある宿」を重視する傾向が強く、食事やアクティビティの写真・動画で事前にイメージできることが予約の後押しになりやすいといえます。変なホテルが恐竜ワンダールームを通じて、滞在そのものをエンターテインメント化している点は、他施設でも応用しやすい方向性でしょう。
宿泊体験とおもてなしを結びつけるコンセプトルーム
コンセプトルームは、単に「テーマの装飾を施した客室」ではなく、宿泊体験全体をデザインする器として活用すると効果が高まりやすくなります。
恐竜グッズや雪塩スイーツの提供は、「旅の思い出を持ち帰ってもらう」というおもてなしの延長線上に位置づけることができます。こうした仕掛けは、宿泊料金に対する納得感を高めるとともに、口コミやSNS投稿を自然に促すきっかけにもなり得ます。
変なホテルの取り組みを参考にすると、自館でも「チェックインからチェックアウトまで、コンセプトがぶれない体験」を設計していく視点を持っておくと良さそうです。
背景と理由の整理
なぜ変なホテルはコラボルームを増やし続けるのか
変なホテルが50種類ものコラボルームを展開している背景には、「客室そのものでは差別化が難しくなっている」という宿泊業全体の構造があります。客室の広さや設備だけでなく、「誰と、どのような時間を過ごせるか」という体験価値を明確に打ち出す必要が高まっていると考えられます。
また、コラボルームは新しい企画を打ち出すたびにニュース性やSNS投稿が生まれやすく、広告費を大きくかけずに話題作りができる手段でもあります。変なホテルは、そのメリットを理解したうえで、継続的なシリーズ展開を戦略的に行っていると見ることもできそうです。
インバウンド回復と体験型コンテンツのトレンド
訪日客が増える中で、「体験型コンテンツ」への関心は世界的な観光トレンドになっているといわれています。特に、自然や文化、食といった地域資源を活用した没入型の体験は、「モノ消費」から「コト消費」へと移る流れの中で、価値が高まりつつあります。
変なホテルの恐竜ワンダールームや、宮古島の雪塩ルームは、宿泊というコアサービスに「学び」「遊び」「ご当地ブランド体験」といった付加価値を重ねている点が特徴です。こうした設計は、今後のインバウンド需要の取り込みにもつながる可能性があります。
地域企業との協業がもたらす宿泊業のメリット
雪塩ルームでは、宮古島の雪塩ブランドとコラボレーションし、商品パッケージを客室デザインに取り入れたり、製造工程を紹介するタペストリーを掲出したりすることで、地域企業とホテルが一体となったプロモーションになっています。
こうした取り組みは、宿泊施設側にとっては「地域ブランドの信頼感」を借りられるメリットがあり、地域企業にとっては自社商品の体験価値を高める場として機能します。他のホテル・旅館でも、地元の食品メーカーや観光施設と連携した「小さなコラボルーム」から始めることで、双方のファン作りと販路拡大につなげやすくなりそうです。


具体的な取り組み・ニュース内容の解説
恐竜ワンダールームのコンセプトと滞在イメージ
変なホテル大阪 なんばの恐竜ワンダールームでは、客室全体を恐竜の世界観で統一し、恐竜のパネルや謎解きゲームを配置することで、「泊まるだけで完結するテーマパーク」のような体験を目指していると読み取れます。
例えば、チェックイン後に客室で恐竜パネルを探しながら謎解きに挑戦し、クリアすると恐竜グッズがより特別な「ご褒美」に感じられる、といった流れが想像しやすい構成です。館内に大がかりなアトラクションを作らなくても、客室内の工夫でここまで世界観を演出できる点は、多くの宿泊施設にとって現実的なヒントになるでしょう。
雪塩ルームが訴求するご当地ブランド体験
ウォーターマークホテル沖縄 宮古島の雪塩ルームは、ブルーと白の配色や商品パッケージを模したデザインにより、「宮古島の海と雪塩のイメージ」を視覚的に体験できる構成になっていると説明されています。
さらに、雪塩スイーツやパウダー、雪塩ソフトクリームの割引券などをセットにすることで、「泊まる→味わう→持ち帰る」という一連のブランド体験が完成します。ホテル内レストランで提供される雪塩パンナコッタも含め、館内で完結するテイスティング導線を用意している点は、客単価向上と顧客満足度向上を両立させる仕掛けといえそうです。
変なホテルグループ全体での75種類のコンセプト展開
変なホテルブランドで50種類、グループ全体で75種類というコンセプトルームのラインナップは、宿泊施設にとって管理面のハードルも高い数字です。
この規模になると、単に「部屋を増やす」のではなく、
- どのターゲットに向けたルームか
- 販売期間と価格帯の設計
- 清掃・備品補充など運営面の標準化
- 予約サイトや自社サイト上での見せ方
といった点を整理しないと、現場負担だけが増えてしまうリスクがあります。変なホテルのような大規模展開とまではいかなくても、「まずは1〜2タイプから試し、運営ノウハウを蓄積していく」という段階的なアプローチが現実的ではないでしょうか。
自社への活かし方のヒント
自館でもできる小さなコラボルーム企画の始め方
変なホテルのように大規模なコラボルーム展開をいきなり真似る必要はありません。まずは、次のようなステップで「小さく試す」ことが考えられます。
- 自館の強みと、呼び込みたい客層(ファミリー、女子旅、ワーケーションなど)を明確にする
- 地元企業や観光施設、体験事業者の中から、世界観がマッチする相手を1〜2社選ぶ
- 壁面ポスターやベッドスロー、小物類など「低コストで差し替え可能な装飾」から始める
- プラン名や写真で「何が体験できるか」を明確に見せる
- 宿泊後アンケートや口コミを通じて、次の企画改善につなげる
このように、変なホテルの成功事例を「スケールダウンして自社仕様にしたもの」として捉えると、無理のないスタートを切りやすくなります。
従業員エンゲージメントを高める参加型企画づくり
コラボルームやコンセプトルームは、従業員が「自分たちの企画」と感じられれば感じられるほど、接客トークやSNS発信にも熱量が乗りやすくなります。
例えば、
- ルームコンセプト決めのワークショップをスタッフ参加型で行う
- 客室内の案内文や謎解きのストーリーを、若手スタッフに任せてみる
- 清掃・メンテナンスのしやすさを現場目線でチェックし、改善案を出してもらう
といった取り組みは、変なホテルのような話題性だけでなく、「働きがい」を高める効果も期待できます。従業員エンゲージメントを高めることで、結果としてサービス品質の安定や離職率の抑制にもつながっていく可能性があります。
変なホテルの事例を自社のKPIに落とし込む視点
変なホテルのようなコラボルーム施策を自館で取り入れる場合、あらかじめ「何を改善したいのか」というKPIを決めておくと振り返りがしやすくなります。例えば、次のような指標が考えられます。
- 対象期間の客室稼働率・平均客室単価(ADR)・客室あたり売上(RevPAR)
- コラボルームプランの販売数と、通常プランとの単価差
- クチコミサイトやSNSでの言及数・写真投稿の数
- 従業員アンケートでの「企画への関与度」「仕事の楽しさ」の変化
変なホテルの具体的な数字は公表されていませんが、自館なりのKPIを見える化しておくことで、「続けるべき施策」と「見直すべき施策」を切り分けやすくなります。
まとめ
- 変なホテルはギネス認定を受けるほどコラボルーム・コンセプトルームを戦略的に展開しており、体験価値によるブランドづくりの一例と考えられます。
- 恐竜ワンダールームや雪塩ルームのように、ターゲットや地域資源を明確に絞り込んだコンセプトは、インバウンドやファミリー層の集客にもつながる可能性があります。
- 自館では、変なホテルのような大規模展開をそのまま真似るのではなく、まず1〜2室の小さなコラボルームを企画してテストし、うまくいけば徐々に広げていくという選択肢もあります。
- 企画づくりや運営改善を通じて従業員エンゲージメントを高めておくと安心ですし、結果としてサービス品質や口コミ評価の向上にもつながりやすくなります。
企業情報
- 会社名:株式会社エイチ・アイ・エス
- 本社所在地:東京都港区虎ノ門四丁目1-1
- 電話番号:050-1746-4177
- 代表者名:矢田 素史
- 資本金:1億円
- 設立:1980年12月
- 業種:サービス業
- 公式サイト:https://www.his.co.jp/
参考資料
本文中で観光庁などの公的資料を直接参照していないため、省略します。
出典:PR TIMES『変なホテル「コラボルーム世界最多」ギネス世界記録™認定 50種類目のコラボルーム「恐竜ワンダールーム」発売』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001290.000005110.html


