本記事のポイント
- 平日の稼働率向上に寄与する「法人合宿・ワーケーション需要」の取り込み方
- 大規模な設備投資をせず、既存のリビングや周辺環境を活かして「ワークプレイス」化する視点
- 「2泊以上」の特典設計による連泊促進と、地域全体への経済効果波及の工夫
ニュースの概要
静岡県熱海市にある温泉付き一棟貸切ヴィラ「湯望荘」にて、企業や学生団体を対象とした「ワーケーション&合宿プラン」の提供が始まりました。
同施設は海まで徒歩1分という立地と、最大12名まで宿泊可能な4LDKの広さを活かし、スタートアップ企業の経営合宿やオフサイトミーティング、大学ゼミの合宿などに対応します。プロジェクターや大型テーブルといった会議に必要な設備に加え、温泉やBBQ可能なウッドデッキなど、リフレッシュできる環境も備えているのが特徴です。
また、2泊以上のグループ利用かつ事前申告者を対象に、ホワイトボードの無料貸し出しや近隣温浴施設の割引、周辺アクティビティの紹介といった「ワーケーション特典」も用意され、チームビルディングや創造性の向上を支援する体制が整えられています。
施設が「企業合宿」の拠点になる可能性
平日の安定稼働と客層拡大のカギは「チームビルディング需要」にあり
今回のニュースから読み取れるのは、宿泊施設が単なる「観光の拠点」から「組織の課題解決の場」へと役割を広げているという潮流です。特に一棟貸しや広めの客室を持つ施設にとって、企業合宿やオフサイトミーティングの受け入れは、平日の稼働率を底上げし、観光需要とは異なる新たな顧客層を開拓する有効な手段と言えるでしょう。
リアルなコミュニケーションへの回帰と「非日常」の価値
リモートワークが定着した一方で、対面でのコミュニケーションや、膝を突き合わせて議論する機会の重要性が再評価されています。オフィスを離れ、海や山などの自然に囲まれた非日常的な環境で過ごすことは、チームの結束力を高め、新しいアイデアを生み出すきっかけになりやすいと考えられます。
宿泊施設にとっては、必ずしも専用の会議室を新設する必要はありません。既存のリビングルームやダイニングスペースも、Wi-Fiやプロジェクター、ホワイトボードといった備品を整えるだけで、魅力的な「ワークプレイス」に生まれ変わる可能性があります。
湯望荘に見る「ハード×ソフト」の組み合わせ
湯望荘の取り組みで特筆すべき点は、ハード(施設)とソフト(特典・体験)を巧みに組み合わせていることです。
- ハード面の工夫:
- 「4LDK・最大12名」というキャパシティを活かし、個室でのプライバシーと、大型テーブルのあるリビングでの交流を両立させています。
- 屋外シャワーやウッドデッキなど、リフレッシュ(オンとオフの切り替え)を促す設備をアピールポイントにしています。
- ソフト面の工夫:
- 連泊への誘導: 「2泊以上」を特典の条件とすることで、単価アップと滞在時間の長期化を狙っています。合宿は議論が深夜に及ぶことも多いため、連泊との相性が良いと言えます。
- 地域連携: 近隣の日帰り温浴施設の割引やアクティビティ紹介を行うことで、施設内だけで完結させず、地域の魅力をコンテンツとして活用しています。これは顧客満足度を高めるだけでなく、地域との関係構築にも寄与するでしょう。
自社の現場でどう活かせるか
湯望荘の事例は、必ずしも一棟貸しの施設に限った話ではありません。例えば、旅館の宴会場を日中は会議スペースとして開放したり、客室の一部をワーケーション仕様に模様替えしたりすることも考えられます。
重要なのは、「会議ができます」という機能の提示だけでなく、「ここで過ごすことでチームにどのような変化が生まれるか(創造性が高まる、本音で話せる等)」というベネフィットを伝えることではないでしょうか。また、ホワイトボードの貸し出しのような小さなサービスから始めてみるのも、法人需要を探る第一歩として有効かもしれません。
まとめ
- 法人・合宿需要への対応は、観光需要の波動を埋め、平日稼働を安定させる一手になり得ます。
- 高額な設備投資をしなくても、備品の充実や既存スペースの見せ方次第で「ワークプレイス」としての価値を訴求できます。
- 「連泊特典」や「地域のアクティビティ紹介」を組み合わせることで、滞在の質を高め、単なる場所貸し以上の付加価値を提供できるでしょう。
本事例を参考に、自施設の持つリソースが「企業のチームビルディング」にどう貢献できるか、一度視点を変えて検討してみると、新しいプランのヒントが見つかるかもしれません。
出典:PR TIMES『熱海の海×温泉×貸切でチームが変わる!温泉付き貸切ヴィラ「湯望荘」がワーケーション&合宿プランを提供開始』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000173664.html)


