本記事のポイント
- 近隣店舗との提携による「朝食提供」がもたらすオペレーション軽減と地域体験の価値
- 「海」という立地特性を最大限に活かしたコンセプト設計と設備投資の工夫
- 点ではなく面で捉える「広域観光のゲートウェイ」としての施設づくり
ニュースの概要
2025年11月、株式会社ガイアは仙台港エリアに新たな宿泊施設「シーサイドガイアリゾートホテル(SEA SIDE GAIA RESORT HOTEL)」を、同年12月1日にプレオープンすることを発表しました。
同ホテルは、「海・街・山」をつなぐ広域連携の拠点としての役割を掲げ、「海の玄関口リゾート」をコンセプトとしています。仙台うみの杜水族館や三井アウトレットパーク仙台港などが集積する利便性の高いエリアに位置し、ビジネスから観光、サーフィンなどのレジャーまで幅広い需要を見込んでいます。
特徴的な取り組みとして、全客室に海をイメージしたアートを施しているほか、朝食は近隣のサーフショップと連携してカレーを提供するスタイルを採用しています。また、客室内に酸素カプセルを備えたスペシャルルームを用意するなど、多様な滞在ニーズに応える工夫が凝らされています。
地域資源を活かした「連携」と「体験」の設計
自前主義からの脱却が独自性を生む
今回の開業事例から読み取れる重要な視点は、「宿泊施設単体ですべてを完結させない」というアプローチです。特に料飲部門において、自前のレストランではなく近隣の人気店と連携する形は、オペレーションの効率化と「その土地ならではの体験」の提供を両立させる有効な手段の一つと言えるでしょう。
人手不足と顧客ニーズの変化に対応する
宿泊業界では慢性的な人手不足が課題となっており、特に早朝の調理・サービススタッフの確保は多くの施設にとって重荷となりがちです。一方で、旅行者は画一的なホテルの朝食よりも、地元のカフェや食堂での「ローカルな体験」を求めているケースも少なくありません。
地域にある既存の魅力的なコンテンツ(今回の場合はサーフショップのカレー)をホテルのサービスの一部として組み込むことは、業務負荷を下げつつ、顧客満足度を高める賢い戦略ではないでしょうか。
ターゲットを明確にしたコンセプトと設備
本ホテルの事例では、立地特性である「海」を軸にした一貫性のあるコンセプト設計も参考になります。
- ターゲットへの訴求: 「サーファーが集うビーチエリア」という立地を活かし、内装に海のアートを採用したり、疲労回復ニーズに応える「酸素カプセル」を客室に導入したりと、ターゲット層(サーファーやビジネスマン)に刺さる設備投資を行っています。
- 地域との共生: 朝食を「surfers island」という地元のサーフショップで提供することで、宿泊客を地域へ送り出す動線を作っています。これは、ホテルが単なる「寝る場所」にとどまらず、地域を楽しむためのハブ(拠点)として機能している好例です。
- 広域連携の視点: 「海・街・山」をつなぐゲートウェイというビジョンは、施設単体の売上だけでなく、エリア全体の回遊性を高める意図が感じられます。
自社の現場でどう活かせるか
自施設の周辺を見渡したとき、連携できそうな飲食店やアクティビティ施設はないでしょうか。すべてを自社で提供しようとせず、「地域の魅力をキュレーションして提案する」というスタンスに切り替えることで、新たなプランやサービスのヒントが見つかるかもしれません。
また、ターゲット顧客が滞在中に「何を求めているか」(例:サーフィン後のリラックス、ビジネスの合間の癒やしなど)を深掘りし、それに特化した設備や備品(酸素カプセルやアートなど)を導入することで、選ばれる理由を明確にできる可能性があります。
「無理に内製化せず、地域の力を借りる」「ターゲットに合わせた一点突破の設備を用意する」といった視点は、リソースの限られた宿泊施設にとって差別化の鍵となるでしょう。
まとめ
- 地域連携の活用: 朝食などを近隣店舗と連携することで、業務効率化とローカル体験の提供を両立できる可能性があります。
- コンセプトの具体化: 立地やターゲット特性に合わせた設備(アートや健康器具など)は、施設の個性を際立たせます。
- ゲートウェイ機能: 宿泊施設を「地域の入り口」と位置づけ、周辺エリアへの送客を意識することが、結果として自施設の価値向上につながります。
出典:PR TIMES『シーサイドガイアリゾートホテル オープン!!』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000150804.html)


