宿泊・旅行業界ニュース

宿泊旅行統計調査(2025年(令和7年)9月・第2次速報、2025年(令和7年)10月・第1次速報)

CoCoRo編集部

宿泊旅行統計調査の結果は、ホテル・旅館の中長期戦略を考えるうえで欠かせない基礎データです。この記事では、2025年9月・10月分の宿泊旅行統計調査のポイントを整理し、宿泊業の経営者や現場マネージャーがどのように販売・人員・投資の判断に結び付けていけるかを解説します。

本記事のポイント

  • 宿泊旅行統計調査の最新結果から、日本人宿泊需要の落ち着きと外国人需要の伸びという二極化傾向を把握できます。
  • 客室稼働率の推移を踏まえ、料金設定・販売チャネル・人員配置の見直しに活かす具体的な視点を整理します。
  • 宿泊旅行統計調査を自社の月次データと突き合わせることで、エリア平均との差分や強み・弱みを可視化する方法のヒントを紹介します。

ニュースの概要

観光庁は、「宿泊旅行統計調査(2025年9月・第2次速報、2025年10月・第1次速報)」を公表しました。2025年9月の延べ宿泊者数(全体)は5,310万人泊で前年同月比-3.6%と減少し、10月は6,025万人泊で前年同月比+1.1%と、わずかながら増加に転じています。

内訳を見ると、日本人延べ宿泊者数は9月が4,053万人泊(前年同月比-5.0%)、10月が4,302万人泊(前年同月比-1.5%)と、2か月続けて前年割れになっています。一方、外国人延べ宿泊者数は9月が1,257万人泊(前年同月比+1.3%)、10月が1,723万人泊(前年同月比+8.5%)と、引き続き堅調な増加が続いています。

客室稼働率は、2025年9月が全体で63.2%、10月が67.4%でした。ピーク時のフル稼働ではないものの、全国平均としては一定の水準を保っていると言えるでしょう。季節要因に加え、地域・施設タイプ別にばらつきがあることも想定されます。

宿泊旅行統計調査から見た宿泊業にとってのポイント

まず押さえておきたいのは、宿泊旅行統計調査の数字から見える「日本人需要の横ばい〜微減」と「外国人需要の拡大」という構図です。全体の延べ宿泊者数は10月に前年をやや上回ったものの、その押し上げ要因は主に外国人旅行者だと考えられます。

この構図は、多くのホテル・旅館にとって次のような示唆を与えてくれます。

  • 日本人向けプランや料金は、過去の延長線上だけで組むと客数減少の影響を受けやすい
  • 外国人比率が高まるエリアでは、販売チャネル・言語対応・客室タイプのミスマッチが起きやすい
  • 客室稼働率が平均63〜67%台ということは、「まだ埋められる余地」と「無理なくサービス品質を保てるライン」の両方を見極める必要がある

宿泊旅行統計調査の全国値は、あくまで「日本市場全体の気温」のようなものです。自施設の延べ宿泊者数や客室稼働率と比べてみることで、同じ環境下で自社が「平均よりも伸びているのか」「取りこぼしているのか」が見えてくるはずです。

例えば、自施設の10月日本人宿泊者数が前年同月比-5%だとすると、全国平均の-1.5%より下振れしています。つまり、マーケティングやリピーター施策など、自社要因で改善余地がある可能性が高いと考えられます。逆に、外国人宿泊者数の伸びが全国+8.5%より高ければ、その強みをさらに伸ばせないか検討しておくと良さそうです。

宿泊旅行統計調査の背景と理由の整理

なぜ宿泊旅行統計調査では、日本人と外国人で動きが分かれているのでしょうか。単一の理由に絞ることはできませんが、いくつかの要因が重なっていると考えられます。

  1. 国内旅行需要の「一巡」
    コロナ禍後の反動需要や、全国旅行支援などの政策的な後押しによって、ここ数年は日本人の宿泊需要が一時的に押し上げられてきました。その効果が薄れ、平常モードに戻りつつある可能性があります。
  2. 物価・生活コストの上昇
    生活費や移動費の負担感が増す中で、「泊まりがけの旅行は年数回に絞る」「近場の短期旅行にする」といった行動変化も、日本人延べ宿泊者数のマイナス要因になっているかもしれません。
  3. 外国人旅行者の回復と多様化
    一方で、外国人旅行者は航空路線の回復や国際イベント、SNSを通じた情報拡散などを背景に、引き続き増加傾向にあります。団体ツアーだけでなく、地方の温泉地や小規模旅館を訪れる個人旅行者が増えている地域も多いのではないでしょうか。

宿泊旅行統計調査は、こうしたマクロな動きを数字として可視化してくれます。ただし、全国平均の数字だけを見て「うちは同じように下がっている」「伸びている」と決めつけてしまうと、判断を誤るリスクもあります。

大事なのは、「全国平均」と「自社の実績」を並べてみて、その差が生まれている理由を現場視点で仮説立てすることです。そのプロセス自体が、経営層と現場スタッフが同じ方向を向くきっかけになり、従業員エンゲージメントの向上にもつながっていくかもしれません。

宿泊旅行統計調査を踏まえた具体的な取り組み・ニュース内容の解説

宿泊旅行統計調査の2025年9月・10月の結果を、より実務的な視点で見ていきます。

1. 延べ宿泊者数の推移をどう読むか

  • 9月:全体 5,310万人泊(前年同月比-3.6%)
  • 10月:全体 6,025万人泊(前年同月比+1.1%)

9月は全体として前年割れ、10月はわずかながらプラスという動きです。台風や天候、連休の並びなど、月ごとの要因も絡みますが、「急激な落ち込みではないが、伸び悩みも感じられる」という状態ではないでしょうか。

ここから読める実務的なポイントは、次のようなものです。

  • 短期的な増減に一喜一憂するより、「四半期単位」でトレンドを見る
  • マーケット全体が横ばい〜微増のときは、「シェアの奪い合い」が起きやすい
  • 価格競争に陥る前に、付加価値やターゲットの明確化で差別化を図る

2. 日本人と外国人のバランスを踏まえた商品設計

日本人宿泊者数は9月・10月とも前年割れ、外国人宿泊者数はプラス成長という結果でした。

  • 日本人向けには、「近場」「短期」「コストパフォーマンス」を意識したプラン
  • 外国人向けには、「体験型コンテンツ」「多言語情報」「支払い手段の多様化」などで単価アップ

宿泊旅行統計調査を見ながら、自施設の国籍別構成比を確認し、「どちらの比率を高めたいのか」「そのために足りていないものは何か」を具体的な施策に落とし込むと良さそうです。

3. 客室稼働率と人員配置の見直し

  • 9月 客室稼働率:63.2%
  • 10月 客室稼働率:67.4%

この水準は、施設によって「忙しさ」の感じ方が異なる数字かもしれません。例えば、平均単価が高い高級旅館では、70%前後でもかなり忙しく感じられる一方、ビジネスホテルでは80%以上を目標とするケースもあります。

ここで重要なのは、「自社の理想的な稼働率」と「実際の稼働率」を明確にし、人員配置やシフト設計に反映させることです。

  • 月次の宿泊旅行統計調査の公表タイミングに合わせて、自社の稼働・売上・人件費を振り返る
  • 稼働が高い日・低い日をカレンダーで可視化し、清掃・フロント・レストランの人員計画を見直す
  • 稼働が低い日は、館内メンテナンスや教育研修など、将来に効く業務を計画的に実施する

こうした動きは、従業員の「忙しすぎる日」と「暇すぎる日」のギャップをならし、エンゲージメントを高める一助にもなるのではないでしょうか。

宿泊旅行統計調査を自社戦略へ活かすヒント

最後に、宿泊旅行統計調査を「見て終わり」にしないための実務的な使い方のヒントを整理します。

1. 自社月次レポートへの組み込み

毎月の宿泊旅行統計調査が公表されたタイミングで、以下のような簡易レポートを作成してみる方法があります。

  • 全国(または都道府県)の延べ宿泊者数の前年同月比
  • 全国(または都道府県)の客室稼働率
  • 自社の延べ宿泊者数・客室稼働率の前年同月比
  • 日本人・外国人の構成比とその変化

これを1枚の資料にまとめ、経営会議やマネージャーミーティングで共有すると、「感覚」ではなく「数字」で議論できる土台ができます。

2. 年間計画・投資計画との連動

宿泊旅行統計調査は、単月だけでなく、年間を通じたトレンドを見ることで価値が高まります。

  • ここ数年で外国人比率が着実に高まっているなら、フロントの多言語対応強化や決済端末の見直しを検討
  • 日本人需要が頭打ちなら、ワークケーションや長期滞在プランなど、新しい滞在スタイルへの投資を検討
  • 客室稼働率のボトム期に合わせて、リニューアル工事や設備投資を計画

こうした中長期の視点を持つことで、短期的なキャンペーンに振り回されない経営判断がしやすくなると言えるでしょう。

3. 現場との対話ツールとして使う

宿泊旅行統計調査の数字は、現場スタッフとの対話のきっかけとしても有効です。

  • 「全国では日本人が減っている中で、当館はどうか」
  • 「外国人比率が高まると、どの業務で負荷が増えるか」
  • 「客室稼働率がこの水準のとき、スタッフは忙しさをどう感じているか」

こうした議論を通じて、経営層の視点と現場感覚のギャップが見え、業務改善や教育・評価制度の見直しなど、次の一手につながるかもしれません。

まとめ

  • 宿泊旅行統計調査では、2025年9月は延べ宿泊者数が前年割れ、10月はわずかながらプラスに転じ、日本人減・外国人増という構図が続いていることが分かります。
  • 宿泊旅行統計調査の全国平均と自社の実績を比較することで、需要トレンドの中で自社がどの位置にいるのかを把握しやすくなり、料金戦略や販促方針の見直しに活かせます。
  • 客室稼働率の推移を踏まえて、人員配置やシフトを計画的に調整しておくと安心ですし、従業員エンゲージメント向上にもつながる可能性があります。
  • 宿泊旅行統計調査を定期的にチェックし、月次レポートや年間計画に組み込むという選択肢もあります。数字を「見て終わり」にせず、現場との対話や次年度の打ち手の検討に役立てていけると良さそうです。

宿泊旅行統計調査(2025年(令和7年)9月・第2次速報、2025年(令和7年)10月・第1次速報)に関するお問い合わせ

  • 部署名:観光庁 観光戦略課 観光統計調査室
  • 電話番号:03-5253-8111

出典:観光庁『宿泊旅行統計調査(2025年(令和7年)9月・第2次速報、2025年(令和7年)10月・第1次速報)』(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00068.html)

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