星のや京都の「薫香bar」は、ジャパニーズウイスキーと香木の香りを組み合わせて楽しむ、大人向けのナイトプログラムです。約130年前に建てられた蔵を舞台に、静かな嵐山の夜に「香りを味わう」ひとときを用意し、星のや京都らしい非日常の体験価値を高めています。
この記事では、星のや京都の薫香barの内容を整理しつつ、ホテル・旅館の経営者や企画担当、現場マネージャーが自館の高付加価値な夜のコンテンツづくりにどう応用できるかを解説します。
本記事のポイント
- 星のや京都が、約130年前の蔵を活用した「薫香bar」で、ジャパニーズウイスキーと香木を組み合わせた静かな夜の体験を提供
- 香木専門店の監修と星のや京都ならではのペアリング提案により、「香りを味わう」奥行きのあるナイトプログラムとして差別化
- 既存スペースの活用、地域事業者との協業、スタッフ育成など、星のや京都の取り組みを他施設が応用するための視点を整理
星のや京都「薫香bar」ニュースの概要
星のや京都は、京都・嵐山の大堰川沿いに佇む、全室リバービューの宿泊施設です。渡月橋から船で向かうアプローチや、水辺の私邸のような設えで、特別感のある滞在を提供しています。
今回発表された「薫香bar」は、星のや京都の敷地内にある約130年前に建てられた蔵を改装した空間で行われる、夜限定のバーコンテンツです。テーマは「静寂な夜に香りを味わう」。ジャパニーズウイスキーと香木・香原料の香りを組み合わせることで、香りの調和を楽しむ大人のための時間を提案しています。
提供されるのは、厚岸蒸留所「大寒」や「イチローズモルト WWR」、和スピリッツ「TSUMUGI」のカクテルなど、個性あるウイスキー・カクテルと、それぞれに合わせた伽羅、沈香、龍涎香などの香木・香原料のペアリングです。ウイスキーを味わった後に香木の香りを「聞く」ことで、鼻腔の中で新たな香りの世界が広がる構成になっています。
香りのラインナップは、250年以上にわたり香木や香原料を扱ってきた老舗「山田松香木店京都本店」が監修。星のや京都がウイスキーとの相性を検証し、独自の組み合わせを提案している点が特徴です。
開催概要は以下の通りです。
- 期間:2025年12月15日〜通年(年末年始など除外日あり)
- 時間:20:30〜23:00(ラストオーダー22:30)
- 場所:星のや京都「蔵」
- 対象:星のや京都の宿泊者限定
- 料金:2,420円〜
- 予約:不要
静かな奥嵐山の夜に、少人数のゲストが蔵の空間でじっくり香りと向き合う、落ち着いたバータイムと言えるでしょう。
星のや京都「薫香bar」が宿泊業にもたらすポイント
星のや京都の薫香barは、一見すると「ウイスキーバーの新メニュー」のように見えますが、宿泊業の視点で見ると、いくつか重要な示唆が見えてきます。
第一に、「夜の時間そのものを体験価値として設計していること」です。多くの旅館・ホテルでは、夕食後〜就寝前の時間帯は自由時間としてゲストに委ねられがちです。星のや京都は、この時間を「薫香bar」という明確なコンテンツとしてデザインし、滞在全体のストーリーの中で位置付けています。
第二に、「香り」という見えない要素を活用した体験価値の創出です。ジャパニーズウイスキーと香木を組み合わせることで、単なる飲食ではなく、嗅覚・味覚にフォーカスした没入型の体験へと昇華させています。星のや京都のように、視覚以外の感覚を軸にしたプログラムは、他施設との差別化にもつながりやすいと言えるでしょう。
第三に、「大人向け・少人数向けの高単価コンテンツ」としての設計です。大規模な設備投資を伴わずに、既存の空間と少し特別なプロダクトを組み合わせることで、星のや京都は夜の一部時間帯の単価と満足度を高めています。この考え方は、規模の小さな旅館やブティックホテルでも応用しやすいポイントではないでしょうか。
星のや京都と嵐山の香文化という背景
星のや京都が位置する嵐山は、平安貴族が別荘を構え、四季の景色を楽しんだ雅なエリアとして知られています。貴族たちは和歌や音楽に加えて、香木を調合する「香り遊び」にも親しみ、香りは教養や美意識を表す重要な要素でした。
今回の星のや京都の薫香barは、こうした歴史的背景を踏まえたコンセプトと言えます。ゲストはジャパニーズウイスキーの香りと、伽羅や沈香、龍涎香といった香木・香原料の香りを重ねることで、平安貴族の「薫物合わせ」に通じるような体験を、現代的な形で味わうことになります。
また、星のや京都はもともと「水辺の私邸」という世界観を大切にしている施設です。川のせせらぎや嵐山の静けさといった環境要素と、蔵の重厚な空間、キャンドルの灯り、ウイスキーと香木の香りが合わさることで、「その瞬間の特等席へ。」というブランドコンセプトが、夜の時間にも自然に表現されています。
各地のホテル・旅館にとっても、自館の立地や歴史、周辺の文化資源を「夜の過ごし方」と結びつけられないかを考えるヒントになるのではないでしょうか。
星のや京都 薫香barの具体的な体験内容
星のや京都の薫香barでは、ウイスキーと香木・香原料のペアリングが、体験の中心に据えられています。
たとえば、複雑なピート香とスパイシーさを持つ厚岸蒸留所「大寒」には、甘さ・辛さ・渋み・苦み・酸味など複数の要素を含むとされる伽羅を合わせることで、重厚感のある香りのレイヤーを作り出します。赤ワイン樽由来の果実香を持つ「イチローズモルト WWR」には、甘く官能的で海のニュアンスもある龍涎香を組み合わせ、エキゾチックな奥行きのある香りの世界へ誘います。
ウイスキーが得意でないゲストに向けては、和スピリッツ「TSUMUGI」をベースに、麹由来の柔らかい甘みや旨味を活かしたカクテルを用意し、そこに沈香の清涼感と上品なウッディさを重ねる提案も含まれています。「ウイスキーは少しハードルが高い」と感じる宿泊者でも、香りとの組み合わせを通じて楽しめる配慮と言えるでしょう。
空間演出も星のや京都らしいポイントです。蔵の漆喰壁や太い梁といった建築の質感に、キャンドルの柔らかな灯りを合わせることで、視覚的にも静かで深い夜の雰囲気をつくり出しています。そこに、奥嵐山の静けさと川の音が重なることで、星のや京都でしか味わえない没入感の高いバー体験が成立しています。
運営面では、宿泊者限定・予約不要・席数限定という設計としつつ、時間帯を20:30〜23:00に絞ることで、現場の負荷と特別感のバランスをとっています。星のや京都のように、「限られた時間・限られた席数」とすることで、スタッフが一人ひとりのゲストと丁寧に会話しやすい環境を整えている点も参考になりそうです。
星のや京都の事例を自社に活かすヒント
ここからは、星のや京都の薫香barの取り組みを、自館の企画や従業員エンゲージメント向上にどうつなげられるかを考えていきます。
既存空間を夜だけ「特等席」に変える
星のや京都は、もともとあった蔵を改装し、日中は自由に使えるスペース、夜は薫香barという二つの顔を持つ空間として運用しています。
多くの施設でも、時間帯によって使用頻度が下がる場所があるのではないでしょうか。例えば、朝食会場として使うレストラン、日中の利用が少ないラウンジ、夜になると空いてしまう宴会場などです。
こうしたスペースに対して、星のや京都のように「夜だけ別の役割を持たせる」という考え方を導入すると、追加投資を抑えつつ高付加価値な体験を生み出しやすくなります。
- 昼はライブラリー、夜は少人数制のバーやテイスティング会場にする
- 昼は会議室、夜はワインと軽食を楽しむ静かなサロンにする
- ロビーの一角を、夜だけキャンドルを灯した「ナイトラウンジ」に変える
星のや京都の薫香barのように、「時間帯」と「雰囲気の切り替え」をセットで設計すると、同じ空間でもゲストから見える価値は大きく変わってくるはずです。
地域の専門店と組んで香り体験をつくる
星のや京都の薫香barは、香木・香原料の老舗である山田松香木店京都本店の監修によって、香りのラインナップに深みと信頼性を持たせています。
同じように、他のホテル・旅館でも、地域の専門店や生産者と組むことで、自館では用意できないストーリーと専門性を取り入れることができます。
- 日本酒の産地であれば、地元酒蔵と連携した日本酒と香りのテイスティング
- 茶どころであれば、茶舗と組んだ日本茶と香りのナイトティーサロン
- 森林資源の豊富なエリアであれば、林業者や木工房と連携した「木の香りバー」
星のや京都のように、「誰と組むか」「どのストーリーを伝えるか」を明確にすることで、ナイトプログラム自体がその地域の魅力を体現するコンテンツになっていきます。
スタッフを「香りコンシェルジュ」として育てる
星のや京都の薫香barのようなコンテンツでは、ウイスキーや香木の知識を持ち、ゲストに合わせておすすめできるスタッフの存在が体験価値を左右します。
これは単に「説明ができるスタッフ」というだけではなく、「香りを通じて会話を広げられるコンシェルジュ」としての役割と言えるでしょう。
自館で同様の取り組みを検討する際には、次のようなステップを踏むと、スタッフのエンゲージメント向上にもつながりやすくなります。
- 社内勉強会や外部講師によるミニセミナーで、香り・飲料の基礎知識を共有する
- スタッフ自身が考案したペアリングメニューに名前をつけ、メニュー表に掲載する
- 「香りコンシェルジュ」「ナイトバーアンバサダー」など、役割を明確にして評価につなげる
星のや京都の事例をヒントに、「小さな専門性」を持つスタッフを増やしていくと、ナイトプログラムの質だけでなく、働きがいの向上にもつながっていきそうです。
まとめ
- 星のや京都の薫香barは、ジャパニーズウイスキーと香木の香りを組み合わせ、約130年前の蔵という特別な空間で「静寂な夜に香りを味わう」時間を提供する取り組みです。
- 既存スペースを夜だけ別の顔を持つ場に変える発想や、地域の専門店との協業、スタッフの専門性を育てる工夫など、星のや京都の事例は多くのホテル・旅館が応用しやすい要素を含んでいます。
- 自館でも、星のや京都の薫香barのように、「一杯のドリンク」と「ひとつの香り」から始める小さなナイトプログラムを試してみるという選択肢もあります。
- まずは週に数日・少人数から始めてみると安心ですし、ゲストの反応を見ながら少しずつ内容をブラッシュアップしていく進め方も良さそうです。
企業情報
- 会社名:星野リゾート
- 会社名(英語表記):Hoshino Resorts
- 事業内容:宿泊施設ブランド「星のや」などの運営
【施設情報(星のや京都)】
- 施設名:星のや京都
- 所在地:〒616-0007 京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
- 客室数:25室
- チェックイン/チェックアウト:15:00〜/〜12:00
- 料金:1泊193,000円〜(1室あたり、税・サービス料込、食事別)
- アクセス:阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICより車で約30分
- 公式サイト: 星のや京都 公式サイト
- ブランド情報(星のや): 星のや ブランドページ
本リリースに関するお問い合わせ
- 施設名:星のや京都(星野リゾート)
- 電話番号:050-3134-8091(星のや総合予約)
出典:PR TIMES『【星のや京都】約130年前に建てられた蔵で静寂な夜に「香りを味わう」。ジャパニーズウイスキーと悠久の香りが織りなす「薫香(くんこう)bar」をオープン』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001874.000033064.html


