ボザッピィルームは、箱根ホテル小涌園が藤田観光70周年企画の一環として生まれた1日1室限定のコンセプトルームです。箱根小涌園ユネッサンのオリジナルキャラクター「ハコネコ ボザッピィ」の世界観で客室全体を包み込み、「ボザッピィのおうちに泊まりたい」というお子さまの夢を形にした取り組みとなっています。ファミリー層を中心とした宿泊ニーズの変化や、キャラクターを軸にした体験価値づくりを考えるうえで、宿泊業の皆さまに多くの示唆を与えてくれそうです。
本記事のポイント
- ボザッピィルームという1日1室限定のコンセプトルームが、ファミリー向け・体験重視の宿泊ニーズにどう応えているかを整理します。
- ユネッサンのキャラクターを活用したボザッピィルームの設計から、コンセプトルームやキャラクタールームの作り方のヒントを読み解きます。
- 自館にキャラクターがなくても応用できる、ボザッピィルーム発の「小さく始めるコンセプトルーム」導入ステップを提案します。
ニュースの概要
箱根ホテル小涌園では、隣接する箱根小涌園ユネッサンのマスコットキャラクター「ハコネコ ボザッピィ」をテーマにした特別なコンセプトルーム「ボザッピィルーム」を2025年11月19日に開設したと発表しています。ボザッピィルームは、壁紙や家具、小物に至るまでボザッピィデザインを施し、「ボザッピィのおうちに遊びに来た」ような没入感ある世界観を特徴としているとしています。
この取り組みは、藤田観光70周年記念企画「あなたの夢叶えます~7つの夢旅~」に寄せられた「ボザッピィのおうちに泊まりたい」というお子さまの声を実現するものと説明されています。応募総数900件を超える夢の中から選ばれた1つであり、長年ユネッサンを利用してきた家族のストーリーを軸に企画されたと述べています。
販売期間は2025年11月19日から2026年3月31日までで、1泊2食付き・ユネッサン&森の湯入り放題付きで1人35,500円~(税別・入湯税別)としています。特典としてオリジナルマグカップとコットン巾着(1室につき1セット)が付き、オプションとしてボザッピィが客室に訪れるグリーティング(最大15分・有料)も用意していると紹介しています。客室タイプは30㎡のスタンダードルームAタイプで、大人4名まで宿泊可能な仕様としています。
宿泊業にとってのポイント(ボザッピィルームを題材に)
ボザッピィルームは、単なる「キャラクターが描かれた部屋」ではなく、宿泊そのものを物語性のある体験として設計している点がポイントと言えそうです。ユネッサンで遊んだあとに、そのままボザッピィの「おうち」に戻るというストーリーが生まれ、1日の流れ全体がファミリー向けのパッケージとして完結します。
観光庁の観光コンテンツ調査でも、ウェルネスや「生活没入型」の体験コンテンツが中長期トレンドとして重視されていると整理されています。 ボザッピィルームも、キャラクターの暮らしに入り込む没入体験という意味で、この潮流と親和性が高い事例と見られます。
また、1日1室限定のボザッピィルームは、供給量を絞ることで「特別感」と「予約の取りにくさ」を演出しやすい設定といえます。ピーク時のファミリー層やリピーターに対して、やや高単価でも「記念旅行」として選ばれやすい設計になっている可能性があります。こうした少数のコンセプトルームは、館内の標準客室と比べて販売単価を上げやすく、全体の売上・利益を底上げする手段にもなり得ます。
さらに、ボザッピィルームはユネッサン&森の湯の入り放題とセットにしているため、館内・隣接施設への回遊を促す仕組みともなっています。これは、観光庁が示す「宿泊を起点とした体験コンテンツの造成」や、地域内消費の拡大という方向性とも整合的だと考えられます。
従業員側の視点でも、ボザッピィのグリーティング対応や、ボザッピィルームならではの接客ストーリーを共有することで、スタッフが企画に参加している実感を持ちやすくなります。観光庁の生産性向上ハンドブックでも、顧客価値向上と並行して従業員エンゲージメントを高めることの重要性が指摘されており、 ボザッピィルームのような「一体感のある企画」はその土台づくりに役立つと考えられます。
背景と理由の整理(ボザッピィルーム誕生の文脈)
ボザッピィルーム誕生の背景には、藤田観光70周年という節目と、これまで長く支えてきた顧客への感謝を形にする、という企業側の意図があるとしています。「あなたの夢叶えます~7つの夢旅~」という企画自体が、顧客の声を起点にした共創型のプロジェクトであり、その中で選ばれた「ボザッピィのおうちに泊まりたい」という夢を実際の客室に落とし込んだ点が特徴的です。
一方で、宿泊業界全体を見ても、ファミリー層やインバウンドを含む多様な旅行者が「写真映え」だけでなく「物語性」や「共感」を重視する傾向は強まっています。観光庁の基礎調査でも、世界の観光トレンドとして「生活没入」「聖地巡礼」など、物語やキャラクターと結びついた体験が注目されていると整理されています。
こうした中で、箱根ホテル小涌園は、既に認知度の高いユネッサンとマスコットキャラクター・ボザッピィを活かし、箱根エリアでの滞在体験をより立体的にする方向へ舵を切っていると見ることもできそうです。温泉・プール・宿泊という物理的な機能に、「ボザッピィと過ごす一日」という感情的な価値を加えることで、価格競争だけに陥らない差別化を図っていると考えられます。
また、観光庁が旅館向けのインバウンド受入ポイント集の中で示しているように、客室や設え自体を「文化体験の場」として位置づける発想は、外国人旅行者を含む多様なゲストの満足度向上にも有効とされています。 ボザッピィルームも、ネコ型キャラクターを通じて日本の温泉リゾートらしさや箱根らしさを表現する「ゆるやかな文化体験」として活用できる余地があると言えそうです。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説(ボザッピィルーム編)
ボザッピィルームは、販売期間を2025年11月19日から2026年3月31日までに限定し、1泊2食付き・ユネッサン&森の湯入り放題をセットにしたプランとして販売するとしています。客室自体は30㎡のスタンダードルームAタイプで、大人4名まで宿泊可能な仕様です。あえて特別な広さ・間取りではなく、既存の客室タイプをベースに世界観を作り込んでいる点が、他施設でも参考にしやすいポイントではないでしょうか。
特典として用意されているオリジナルマグカップとコットン巾着は、1室につき1セットがプランに含まれます。追加購入も可能としており、館内での物販・グッズ購入のきっかけにもなりそうです。こうした「宿泊者限定グッズ」は、家に持ち帰った後もボザッピィルームの思い出を想起させ、将来のリピートや口コミにつながる要素になり得ます。
さらに注目したいのが、オプションとして設定されている「ボザッピィによる客室グリーティング」です。チェックイン当日の16〜18時の間で最大15分、追加料金5,500円(税込)でボザッピィが客室に登場し、写真撮影やふれあいを楽しめるとしています。滞在中ずっとの「会える保証」ではなく、短時間・時間帯限定・有料とすることで、スタッフの稼働やキャラクター運用コストをコントロールしながら高付加価値の体験を提供していると言えます。
客室設備自体は、温水洗浄トイレ、シャワールーム、冷蔵庫、金庫、電気ケトル、TV(55型)など一般的な設備に加えて、作務衣や各種アメニティを備えた標準的なリゾートホテル仕様とされています。ここにボザッピィのビジュアルとストーリーを重ねることで、「非日常性」と「安心感」のバランスを取っていると考えられます。
自社への活かし方のヒント(ボザッピィルームから学ぶ)
ボザッピィルームの取り組みは、そのまま真似するというよりも、「小さく始めるコンセプトルーム」の具体例として参考にしやすい構造を持っています。自館にキャラクターがいない場合でも、以下のような形で応用することができそうです。
ボザッピィルームのような「1日1室限定」コンセプトの設計
ボザッピィルームのように、まずは1日1室から始める方法は、投資リスクを抑えながら新しいコンセプトの反応を確かめるうえで有効です。既存の標準客室1室を「実験室」として位置づけ、壁紙・ファブリック・小物の入れ替えなど、比較的低コストな範囲で世界観を作り込むことから始める選択肢があります。
また、「1日1室限定」「期間限定」といった条件は、それ自体がプロモーションメッセージになり、公式サイトやSNSでの発信とも相性が良いです。観光庁の資料でも、宿泊事業者が自館の特徴を絞り込み、ターゲットに届く発信を行うことの重要性が示されています。 ボザッピィルームのような限定性の高いプランは、自館の「何者か」を外部に伝える強いフックになり得ます。
自館版「ボザッピィルーム」をつくるためのキャラクター・テーマの見つけ方
ボザッピィルームは、既に認知されているキャラクターがいたからこそ実現できた側面がありますが、キャラクターがいない施設でも、地域の民話やローカルフード、歴史上の人物などをモチーフに「自館ならではのテーマ」を設定することは可能です。
例えば、山間部の旅館であれば「森のどうぶつたちの秘密基地ルーム」、海沿いのホテルであれば「夜の海と星空を楽しむプラネタリウムルーム」など、子どもや若年層がワクワクするストーリーを軸に、写真映えするポイントを客室内に散りばめる発想が考えられます。旅館向けインバウンド資料でも、客室の設えを通じて地域文化を伝えることの価値が紹介されており、 自館の「物語づくり」と結びつけることで発信力を高めやすくなります。
従業員エンゲージメントを高めるボザッピィルーム的な仕掛け
ボザッピィルームでは、グリーティング対応や客室の設営などに関わるスタッフが、企画の一員として動くことになります。これは、単に新しいプランを売るだけでなく、従業員が「自分たちの手でお客さまの夢を叶えている」という実感を持ちやすい構造とも言えます。
自館で類似のコンセプトルームを導入する際にも、企画段階から多職種のスタッフを巻き込み、「こんな演出をしたい」「こんなメッセージカードを置きたい」といったアイデアを現場から吸い上げると、エンゲージメント向上につながりやすくなります。観光庁のハンドブックでも、現場の気づきを活かした業務改善や価値提案の重要性が強調されているため、 コンセプトルームの導入を「働き方」「やりがい」の見直しとセットで考える視点も持っておくと安心です。
まとめ
- ボザッピィルームは、ユネッサンのキャラクターを軸に「ボザッピィのおうちに泊まる」という物語性を持たせた1日1室限定のコンセプトルームであり、ファミリー層向け体験価値の高め方のモデルケースになり得ます。
- 期間限定・1室限定・特典グッズ・グリーティングオプションといった設計から、自館でも「小さく始めるコンセプトルーム」やボザッピィルーム的な高付加価値プランを設計するヒントを得ることができます。
- 観光トレンドや公的資料でも強調される「没入型体験」「生活への入り込み」といったキーワードを意識しつつ、自館ならではのテーマやキャラクター候補を棚卸ししておくと安心です。
- 従業員エンゲージメント向上や業務改善のきっかけとしても、ボザッピィルームのような企画を参考に「スタッフ参加型の新プランづくり」という選択肢を検討してみる価値があります。
企業情報
- 会社名:藤田観光株式会社
- 会社名(英語表記):FUJITA KANKO INC.
- 所在地:〒112-8664 東京都文京区関口2-10-8
- 代表者名:代表取締役兼社長執行役員 山下 信典
- 設立年月日:1955年11月7日
- 資本金:1億円
- 事業内容:ホテル・旅館業、飲食店業ほか総合観光事業
- 公式サイトURL:藤田観光株式会社 公式サイト
参考資料
出典:PR TIMES『ボザッピィのおうちに泊まれるコンセプトルーム誕生!1日1室限定「ボザッピィルーム」の全容公開』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000934.000001368.html





