宿泊・旅行業界ニュース

ガーディコラボルームで沖縄ファンづくりと宿泊業のヒント

おきなわ応援ポケモン「ガーディコラボルーム」
CoCoRo編集部

ガーディコラボルームは、ウォーターマークホテル沖縄 久米アイランドが発売すると発表している、おきなわ応援ポケモン「ガーディ」とのコラボ客室です。本記事では、このガーディコラボルームの狙いや特徴を整理しつつ、他のホテル・旅館が自館のコンセプトルーム企画やインバウンド集客、従業員エンゲージメント向上にどう生かせるかを読み解いていきます。

この記事の目次
  1. ガーディコラボルーム本記事のポイント
  2. ガーディコラボルームニュースの概要
  3. ガーディコラボルームが宿泊業にとってのポイント
  4. ガーディコラボルーム誕生の背景と理由の整理
  5. ガーディコラボルームの具体的な取り組み・ニュース内容の解説
  6. ガーディコラボルームから学ぶ自社への活かし方のヒント
  7. ガーディコラボルームまとめと次の一歩
  8. 企業情報(ガーディコラボルーム関連)
  9. 参考資料

ガーディコラボルーム本記事のポイント

  • ガーディコラボルームは、「おきなわ応援ポケモン」と地域資源(久米島・沖縄)を組み合わせたコンセプトルームであり、観光コンテンツの世界的トレンドでも重視される「没入型体験」の一例といえそうです。
  • ガーディコラボルームによって、H.I.S.ホテルホールディングスのコンセプトルームは72種類に達したとされており、シリーズ化・ポートフォリオ化されたコンセプトルーム戦略の参考事例と見ることができそうです。
  • 自館でガーディコラボルームのような取り組みを行う場合、インバウンド対応の基本やSNSによる販路拡大、従業員エンゲージメントの観点を押さえることで、売上だけでなく組織づくりにもつなげやすくなります。

ガーディコラボルームニュースの概要

リリースによると、H.I.S.ホテルホールディングス株式会社が運営する「ウォーターマークホテル沖縄 久米アイランド」は、沖縄県久米島町に位置するリゾートホテルです。ここに、おきなわ応援ポケモン「ガーディ」とコラボレーションした「ガーディコラボルーム」を、2025年12月5日(金)から発売するとしています。

「ガーディ」は、各自治体の「推しポケモン」が地域の魅力を発信する取り組み「ポケモンローカルActs」において、「おきなわ応援ポケモン」を務めています。久米島町内には、ガーディなどのポケモンが描かれた「ポケふた」(マンホールのふた)も設置されており、ホテル側は、こうした地域の動きと連動させながら、沖縄や久米島の魅力をホテルからも発信したいと考えたと説明しています。

ガーディコラボルームは、「ガーディのきゅうじつ」をコンセプトとした、ガーディに囲まれて過ごせる客室だとしています。宿泊者には、ガーディをデザインしたホテルオリジナルのポーチとミニタオルをプレゼントし、ロビーにはガーディと記念撮影ができる大型フォトパネルを設置する予定としています。料金は、朝食付きプランが1室1泊22,200円~、素泊まりプランが1室1泊20,000円~(いずれも税・サービス料込)と発表しています。

また、ガーディコラボルームの発売により、H.I.S.ホテルホールディングスが展開するコンセプトルームは72種類となり、同社は「ホテル業界でも最大級のバリエーション」と位置付けています。グループ全体では、日本・米国・韓国など7つの国と地域で、変なホテル、ウォーターマークホテルなど12ブランド・50ホテルを展開しているとしています。

ガーディコラボルームが宿泊業にとってのポイント

ガーディコラボルームは、一見すると「ポケモン×ホテル」の話題性のある企画に見えますが、宿泊事業者の視点では次のようなポイントが読み取れそうです。

1. 地域IPと連動したコンセプトルームの好例

今回のガーディコラボルームは、単なる人気キャラクターとのタイアップではなく、「おきなわ応援ポケモン」という地域と紐づいたIPを活用している点が特徴です。

地域で既に展開されている「ポケふた」などの施策とホテル側のコンセプトルームをつなぐことで、宿泊そのものが「久米島・沖縄の物語に浸る体験」へと変わります。観光庁の観光コンテンツ調査でも、世界的なトレンドとして「聖地巡礼」や「生活への没入(ライフスタイル体験)」が挙げられており、キャラクターや物語性を軸にした滞在が支持されていると分析されています。

この文脈で見ると、ガーディコラボルームは「ファン向けのフォトジェニックな部屋」だけでなく、「地域のストーリーに没入できる宿泊体験」として位置付けられそうです。

2. シリーズ化されたコンセプトルーム戦略の一環

同グループでは、ガーディコラボルームを加えることで72種類のコンセプトルームを展開しているとしています。これは、一つひとつのコラボレーションを単発で終わらせず、「コンセプトルームのポートフォリオ」として継続的に育てているとも解釈できます。

宿泊事業者にとっては、以下のようなメリットが考えられます。

  • リピーターに対して「次は別のコンセプトルームを試してみたい」という滞在動機をつくりやすい
  • 稼働状況や売上実績を比較しやすく、投資回収の検証材料が増える
  • コンセプト別にターゲット(ファミリー、インバウンド、カップルなど)を分けてマーケティングできる

自館でガーディコラボルームのような取り組みを検討する際も、「1部屋作って終わり」ではなく、「中長期的に積み上がるシリーズ」として設計しておくと、経営的な評価がしやすくなりそうです。

3. インバウンド目線では「宿泊=文化体験」のわかりやすい形

観光庁・JNTOが取りまとめた「旅館向け インバウンド受入ポイント集」では、宿泊そのものを「文化体験」として捉え、滞在中の過ごし方を具体的にイメージできるように伝えることの重要性が強調されています。

ガーディコラボルームのように、

  • 部屋全体にテーマがある
  • もらえるグッズやフォトスポットなど、滞在中の行動イメージが描きやすい
  • 「ガーディのきゅうじつ」という一日の過ごし方を想起させるコンセプトが掲げられている

といった要素は、インバウンドゲストにも「ここで何を体験できるのか」が直感的に伝わる設計だと考えられます。

4. 従業員エンゲージメントの起点にもなりうる

観光庁の「生産性向上ハンドブック」では、業務の生産性向上と並んで、従業員のエンゲージメント向上を重要な柱として掲げています。

コンセプトルームの導入は、

  • 若手スタッフが企画・装飾・SNS発信などに参画しやすい
  • フロントやレストランスタッフが「推しポイント」を説明しやすく、コミュニケーションのきっかけになる
  • 清掃・施設管理などバックヤードでも「見せ方」を意識した業務改善につなげやすい

といった意味で、従業員を巻き込むプロジェクトにしやすいテーマです。ガーディコラボルームのように分かりやすいテーマであれば、館内横断のチームづくりにもつなげやすいのではないでしょうか。

ガーディコラボルーム誕生の背景と理由の整理

ガーディコラボルームの背景には、国内外の観光トレンドと、地域施策とのシナジーが見えてきます。

1. 「イマーシブ(没入型)」体験の拡大

観光庁が2024年に公表した「世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業」では、

  • ウェルネス
  • ネイチャーアクティビティ
  • 聖地巡礼
  • イベント
  • 生活没入

といった5つのトレンドが整理され、共通するキーワードとして「イマーシブ(没入性)」が示されています。

ガーディコラボルームは、

  • ガーディが活躍する世界観に「泊まりながら浸る」
  • 沖縄・久米島というリアルな土地の自然・文化とキャラクターの世界観が重なる

という点で、「聖地巡礼」と「生活没入」の両方の要素を備えたコンテンツと見ることもできそうです。

2. 自治体施策との連携による発信力の強化

久米島町では既に「ポケふた」が設置されており、町全体としてポケモンを通じた情報発信に取り組んでいます。

ホテル側がガーディコラボルームをつくることで、

  • 町内の回遊(ポケふた巡り)と宿泊体験が一体化する
  • 自治体・ホテル・IP(ポケモン)の三者が、それぞれのメディアで情報発信できる
  • ファンにとって「久米島に行く理由」がより明確になる

という相乗効果が期待できます。これは、地方宿泊施設が今後コンテンツづくりを行う際、「地域の既存施策をどう自館の企画とつなぐか」という視点の重要性を示しているともいえそうです。

3. 多様な客層に届きやすいテーマ設定

ポケモンというIPは、国内外の幅広い年代に認知されており、

  • 小さな子どもを連れたファミリー
  • 大人のポケモンファン
  • インバウンドのアニメ・ゲームファン

など、多様な層にアプローチしやすいテーマです。

宿泊業にとっては、ターゲットを絞りきれずにプランが埋没してしまう課題も多いなか、ガーディコラボルームのように「誰に向けたプランか」がひと目で伝わる企画は、販売面でも有利になりやすいと考えられます。

ガーディコラボルームの具体的な取り組み・ニュース内容の解説

ここでは、ガーディコラボルームの要素を分解しながら、企画設計のポイントを整理します。

ガーディコラボルームのコンセプト設計

リリースによれば、ガーディコラボルームのコンセプトは「ガーディのきゅうじつ」です。

このように「誰の、どんな一日なのか」を明示するコンセプトは、

  • 宿泊前の段階で、滞在イメージをふくらませやすい
  • 館内での過ごし方(どこで写真を撮るか、どのグッズを持ち帰るか)を考えやすい
  • スタッフ側もストーリーに沿っておすすめを案内しやすい

というメリットがあります。
自館でガーディコラボルームのような企画を考える場合も、「テーマ+ストーリー(誰の、どんな一日か)」までセットで設計しておくと、訴求力が高まりやすくなります。

オリジナルアメニティと館内フォトスポット

ガーディコラボルームでは、宿泊者にガーディデザインのオリジナルポーチとミニタオルをプレゼントするとしています。

こうしたオリジナルグッズは、

  • 宿泊体験の「持ち帰り価値」として機能する
  • SNS投稿のきっかけになりやすい
  • デイリーユースのアイテム(ポーチ・タオル)であれば、帰宅後もホテルを思い出してもらえる

という意味で、単なるノベルティ以上の役割を持ちます。

さらに、ロビーに大きなフォトパネルを設置することで、

  • 宿泊者以外も含めた「館内回遊のきっかけ」をつくる
  • 写真映えポイントを明示し、ゲスト同士・スタッフとのコミュニケーションを生み出す

といった効果も期待できます。フォトスポットは、客室だけで完結しない「館内全体の演出」として計画する視点が重要になりそうです。

価格設定とプラン設計の示唆

料金は、

  • 朝食付き:1室1泊22,200円~
  • 素泊まり:1室1泊20,000円~

と発表されています(いずれも税・サービス料込)。

詳細な客室タイプや通常料金との比較はリリースからは読み取れませんが、一般的にコンセプトルームの価格設計では、

  • 通常客室との差額を「体験価値+オリジナルグッズ+限定感」で説明できるか
  • 朝食付き・素泊まりなど、ターゲットの過ごし方に合わせたプランバリエーションがあるか
  • 長期的に見たときに、スタッフのオペレーション負荷と収益性のバランスが取れているか

といった点の検討が重要になります。

観光庁の宿泊業向け経営改善ツールでも、施設の生産性向上と顧客価値向上を両立させる価格・商品設計の必要性が示されていますので、コンセプトルーム導入時には収益構造まで含めた検討が欠かせません。

ガーディコラボルームから学ぶ自社への活かし方のヒント

最後に、ガーディコラボルームの事例を踏まえ、他の宿泊施設が自館で応用する際の具体的なヒントを整理します。

1. 「自館の推しテーマ」を決める

必ずしも有名IPとのコラボである必要はありません。

  • 地元のご当地キャラクター
  • 歴史上の人物や物語
  • 伝統工芸や食文化
  • 近隣スポーツチームやイベント

など、「自館が最も愛着を持って伝えられるもの」を軸に、ガーディコラボルームのようなコンセプトルームを設計することができます。

2. 地域施策とつなぐ

久米島のポケふたのように、自治体や観光協会が既に行っている取り組みと連動させることで、発信力は大きくなります。

  • 観光案内所やDMOと連携し、コンセプトルームと周辺観光ルートをセットで紹介してもらう
  • 地域のイベントカレンダーと連動した期間限定プランをつくる
  • フォトラリーやスタンプラリーに宿泊施設を組み込んでもらう

といった形で、「地域の一員としてのコンセプトルーム」を意識すると、長く続く企画になりやすいでしょう。

3. インバウンド向け情報発信をセットで整える

インバウンドゲスト向けには、

  • 英語など多言語でのプラン説明
  • コンセプトの背景にあるストーリー(地域性・文化要素など)の解説
  • 宿泊中のマナーや楽しみ方の案内

が特に重要になります。

「旅館向け インバウンド受入ポイント集」でも、多言語での情報提供や、滞在の具体的なイメージを伝える工夫が推奨されています。
ガーディコラボルームのような企画を行う際は、コンセプト紹介ページや予約導線を多言語対応することも、同時に検討しておきたいところです。

4. SNS前提で設計し、投稿運用を習慣化する

観光庁が公開している「販路拡大に向けたSNSの効果的な活用」では、InstagramやXなどでの継続的な情報発信が、宿泊商品の販路拡大に有効であることが紹介されています。

ガーディコラボルームのような企画は、

  • 室内・ロビーのフォトスポット
  • オリジナルグッズ
  • 滞在中の過ごし方の提案

など、SNSと相性の良い要素が多いため、

  • 公式アカウントでの定期的な投稿
  • 宿泊者によるUGC(投稿)のリポストやハイライト保存
  • ハッシュタグの統一(例:「#ガーディコラボルーム」「#ホテル名+コンセプト名」など)

をあらかじめ設計しておくと、販路拡大や検索時の発見性向上に寄与しやすくなります。

5. 従業員を巻き込んだプロジェクトとして進める

コンセプトルームは、導入時だけでなく、運用のフェーズでスタッフの関わり方が重要になります。

  • 企画段階から現場スタッフを巻き込み、アイデアや改善点を出してもらう
  • 清掃やメンテナンス面での工夫を「見せ方」とセットで検討する
  • 成果や反響を社内で共有し、「自分たちのプロジェクト」という実感を高める

といった取り組みは、従業員エンゲージメントの向上にもつながります。生産性向上ハンドブックでも、現場を巻き込んだ業務の可視化と改善サイクルの重要性が示されており、コンセプトルームはその実践の場にもなり得ます。

ガーディコラボルームまとめと次の一歩

  • ガーディコラボルームは、「おきなわ応援ポケモン」と地域資源を掛け合わせたコンセプトルームとして、聖地巡礼・没入型体験のトレンドを踏まえた宿泊商品の一例といえそうです。
  • 自館でも、地元キャラクターや伝統文化などを軸に、ガーディコラボルームのようなコンセプトルームやテーマ客室を小さく試してみるという選択肢もあります。
  • コンセプトルーム導入時には、ターゲットと価格、SNSでの見せ方、従業員の関わり方を事前に整理しておくと安心です。
  • 今回の事例を、自館の高付加価値化やインバウンド対応、従業員エンゲージメント向上を検討する際のヒントとして振り返ってみると良さそうです。

企業情報(ガーディコラボルーム関連)

株式会社エイチ・アイ・エス(H.I.S. Co., Ltd.)

項目内容
会社名株式会社エイチ・アイ・エス
所在地東京都港区虎ノ門四丁目1-1
代表者名矢田 素史
設立1980年12月
資本金1億円
業種サービス業(旅行関連事業等)としています
公式サイトhttps://www.his.co.jp/

H.I.S.ホテルホールディングス株式会社

項目内容
会社名H.I.S.ホテルホールディングス株式会社
所在地東京都港区(本社所在地)としています
事業内容ホテルを基点とした旅の楽しさ・ビジネスシーンでの利便性を実現するホテル運営事業としています
展開状況日本・米国・韓国など7つの国と地域で、12ブランド・50ホテルを展開しているとしています
グループサイトH.I.S. Hotel Holdings

ウォーターマークホテル沖縄 久米アイランド

項目内容
施設名ウォーターマークホテル沖縄 久米アイランド
所在地沖縄県島尻郡久米島町(詳細住所は公式サイト参照)
電話番号098-985-8001
FAX098-985-8009
公式サイトウォーターマークホテル沖縄 久米アイランド公式サイト
お問い合わせメールinfo-kumeisland@watermark-hotels.com

参考資料

出典:PR TIMES『ホテル業界最大級72種類目のコンセプトルーム ウォーターマークホテル沖縄 久米アイランド おきなわ応援ポケモン「ガーディコラボルーム」発売』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001285.000005110.html

cocoro-lockup-logo-mark-tagline-ja-horizontal
CoCoRo_mockup

スタッフのやりがい向上や離職防止に課題を感じていませんか?

お問い合わせはこちら
CoCoRoのご紹介資料はこちら
CoCoRo編集部
CoCoRo編集部
CoCoRo編集部
サービス業支援メディア運営チーム
CoCoRo編集部は、「感謝の気持ちをカタチにする」ことをテーマに、サービス業界における新しい価値創造を目指す情報発信チームです。​デジタルギフティングや従業員エンゲージメントの向上に関する最新トレンド、導入事例、業界インタビューなど、現場で役立つ実践的なコンテンツをお届けしています。​おもてなしの心をデジタルでつなぐCoCoRoの世界観を、より多くの方々に知っていただくため、日々情報を発信しています。​
記事URLをコピーしました