ヒルトン横浜が発表したReFaとの限定ウェルネス宿泊プランは、都市型ホテルにおける「整う滞在」のモデルケースと言えそうです。ヒルトン横浜の事例を入り口に、今後増えていくであろうウェルネス志向のお客様にどう応えるかを、ホテル・旅館の経営者や企画・現場マネージャーの視点で整理していきます。
本記事のポイント
- ヒルトン横浜のReFaコラボ宿泊プランを通じて、「寝るだけ」から「心身を整える」へとシフトするホテルステイのトレンドを把握できます。
- リカバリーウェアや高機能タオルを客室に組み込み、スパを増設せずにウェルネス価値を高めるヒルトン横浜の設計思想を読み解きます。
- 中小規模施設でも真似しやすい、小さく始めるウェルネス宿泊プランの作り方と、従業員エンゲージメント向上へのつなげ方のヒントを紹介します。
ニュースの概要
ヒルトン横浜は、2025年12月11日から2026年6月30日までの期間限定で、美容ブランドReFaの「ReFa VITALWEAR」「ReFa LINEN」と連携した宿泊プラン「Wellness Experience(ウェルネス体験)」を販売すると発表しています。宿泊対象期間は2026年1月5日から6月30日までで、予約期間は2025年12月11日から2026年6月29日までとしています。
本プランでは、血行促進繊維「VITALTECH」を採用したリカバリーウェアやピロー、吸水性と肌触りにこだわったタオル・マット・ラグ、ローブ、シャワーヘッド、ドライヤー、ヘアアイロン、シャンプー・トリートメント・ボディウォッシュなど、ReFa関連のアイテム計14種類を客室内で体験できるとしています。休息そのものを上質なケアとして捉え直し、ホテル滞在を「整えるための時間」として再定義することを狙った内容です。
客室は31㎡以上のゆとりある造りで、アール・デコの要素を取り入れた「Yokohama Déco」スタイルの内装とされています。一日の締めくくりにバスタイムとリカバリーウェアで深い眠りへ導き、翌朝は約150種類の和洋ビュッフェ朝食と、宿泊者が無料で24時間利用できるフィットネスジムでパワーチャージする流れを提案していると説明しています。
販売は1日1室限定、大人1〜2名利用を想定したプランとされ、ReFa製品の多くはあくまで「体験」が目的であり、持ち帰り不可である点も明記されています。予約はヒルトン横浜公式サイトの専用ページからのみ受付としています。


宿泊業にとってのポイント(ヒルトン横浜ウェルネスプラン)
ヒルトン横浜のウェルネス体験が示す方向性
ヒルトン横浜の今回の試みは、「ベッド+朝食」という従来型の宿泊価値から一歩進み、「睡眠・回復・セルフケア」をパッケージ化した体験型コンテンツへ踏み出した事例と見ることができそうです。
ポイントは、スパ施設や大規模リノベーションに頼らず、「客室内アメニティの再設計」でウェルネス体験を構成している点です。リカバリーウェアや高機能ピロー、タオル・バスリネン、バスパウダーなどを組み合わせ、客室を小さな“ウェルネススイート”に変えていると捉えられます。
また、ReFaという美容ブランドとのコラボレーションにより、美容・セルフケアに関心の高い顧客層に対する訴求力が高まり、宿泊プラン自体がブランドのショールームとして機能する構造になっています。ホテル側は付加価値の高い宿泊単価を狙いつつ、ブランド側は新規顧客への体験接点を獲得できる、相互にメリットのある設計だと考えられます。
「1日1室限定」が示唆するオペレーション設計
1日1室限定という設定は、「希少性マーケティング」であると同時に、現場オペレーションへの配慮とも受け取れます。
専用リネンのセッティングやReFa商品の配置・管理は、通常の客室清掃よりも手間がかかる可能性があります。販売室数を絞ることで、
- 清掃・セットアップの品質を安定させやすい
- 従業員教育の範囲を限られた客室タイプに集中できる
- 宿泊後のレビューを見ながら、段階的に改善・横展開しやすい
といったメリットが期待できそうです。人手不足が続く中で新しいコンセプトプランを導入する際は、「限定販売」でテストしながらスケールさせる考え方は、他施設でも参考になるのではないでしょうか。
背景と理由の整理:ヒルトン横浜とウェルネス需要
世界的なウェルネス旅行トレンドとヒルトン横浜
コロナ禍以降、「ただ観光地を巡る」旅行から、心身のリカバリーやメンタルケアを重視する旅行へと価値観が変化していると言われます。短い休暇の中で、睡眠負債や疲労感を少しでも解消したい、というニーズはビジネス・レジャーを問わず広がっています。
ヒルトン横浜は、世界最大級の音楽アリーナ「Kアリーナ横浜」に隣接したエンターテインメント性の高いロケーションにあります。ライブやイベントで夜遅くまで楽しんだゲストが、そのまま「リカバリーのために泊まる」という動線を描きやすいのが特徴です。音楽で高揚した心を客室で静かに整える、というストーリーは、今回のウェルネス宿泊プランと非常に相性が良いと言えそうです。
都市型ホテルでも「整える滞在」が求められる
「ウェルネス=リゾートスパ」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、ヒルトン横浜のような都市型ホテルこそ、
- 出張やライブ遠征などで疲れが溜まりやすい
- 連泊ではなく1〜2泊の短期滞在が中心
- 周辺に飲食・ショッピングが多く、ホテルに戻る時間が遅くなりがち
といった前提があり、「短時間でどれだけ回復できるか」が滞在満足度を左右しやすい環境です。
今回のヒルトン横浜のプランは、そうした背景を踏まえ、「バスタイム→リカバリーウェア→上質な睡眠→朝食ビュッフェ→フィットネス」という一連の流れを設計している点が特徴的です。これは、他のシティホテルやビジネスホテルでも、アイテムや価格帯を調整しながら応用しやすいフレームではないでしょうか。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説:ヒルトン横浜×ReFa
客室・アメニティ構成にみるヒルトン横浜の工夫
ヒルトン横浜のウェルネス宿泊プランでは、ReFa VITALWEARとReFa LINENを中心に、以下のような構成で客室体験を組み立てているとされています。
- リカバリーウェア(スリープウェア)
- リカバリーピローと専用ピローカバー
- ローブ、タオル各種(ハンド・フェイス・バス)、バスマット、ラグ
- 美容シャワーヘッド
- ドライヤー、ストレート/カールアイロン
- シャンプー・トリートメント・ボディウォッシュのパウチ
- バスパウダー



これらをバラバラに置くのではなく、「入浴」「就寝前のケア」「睡眠」「目覚め後の身支度」という時間軸にそって、使うシーンが直感的に分かるように配置している点が重要です。ゲストにとっては、「何から使えばいいか」が分かりやすくなり、結果としてReFaブランドやヒルトン横浜の印象もポジティブに残りやすくなります。
宿泊業目線では、同じように「体験のシナリオ設計」を意識するだけでも、既存アメニティの価値を高めることができます。例えば、入浴剤・パジャマ・枕メニュー・ハーブティーなどを「ぐっすり睡眠セット」としてまとめるだけでも、ゲストの受け取り方は変わってきます。
朝食・フィットネスまで含めた一連のウェルネス体験
ヒルトン横浜のプランは、客室内のReFa体験だけでなく、館内施設も含めた一連の「ウェルネスジャーニー」として設計されている点も見逃せません。
- 約150種類の和洋ビュッフェによる「パワーブレックファスト」
- 宿泊者無料・24時間利用可能なフィットネスジムでの朝活や軽い運動
こうした既存施設を、「Wellness Experience」という物語の中に再配置することで、追加投資を抑えつつ滞在価値を引き上げていると考えられます。
多くのホテル・旅館でも、「朝食の品数」「浴場」「軽いストレッチができるスペース」など、すでにウェルネス要素は持っているケースが少なくありません。ヒルトン横浜のように、これらを一つのコンセプトに束ねて見せるだけでも、新たな宿泊プランとして商品化しやすくなりそうです。


自社への活かし方のヒント:ヒルトン横浜を参考に
中小規模施設でも真似できるウェルネス演出
ヒルトン横浜のように大規模ホテルでなくても、以下のステップで「自施設版ウェルネス体験」を組み立てることができるかもしれません。
- 自施設の強みを洗い出す
- 静かな立地、温泉、地元食材の朝食、眺望の良さなど、「整う」要素になり得るポイントを書き出してみます。
- 滞在の時間軸でストーリーを作る
- チェックイン〜就寝〜起床〜チェックアウトまでをざっくり4〜5シーンに分解し、それぞれの場面で何を提供できるかを整理します。
- アイテムは「全て新調」ではなく、ポイントを絞る
- まずはパジャマ、ピロー、入浴剤など1〜2カテゴリに投資を集中し、「このプランならでは」の象徴的なアイテムを作ると、伝わりやすくなります。
- 1日1室・曜日限定からテストする
- ヒルトン横浜と同様に、販売数を絞って始めることで、清掃・在庫管理の負荷を抑えつつ、現場の声を聞きながら改善していくことができます。
このように、ヒルトン横浜の事例をそのまま真似るのではなく、「客室でのストーリー設計」「象徴的な1〜2アイテムへの投資」「販売数のコントロール」といったエッセンスに分解して取り入れていくと、自社らしいウェルネス宿泊プランになっていきそうです。
従業員エンゲージメント向上につなげるヒルトン横浜事例の活用
ウェルネス系プランは、従業員エンゲージメント向上のきっかけにもなり得ます。
- スタッフ自身にアイテムを試してもらい、感想を共有してもらう
- 「このプランのゲストには、こう声がけすると喜ばれた」といったナレッジを朝礼やチャットで共有する
- 清掃・フロント・レストランそれぞれの立場から、「もっと心地よくする工夫」を出し合う場を設ける
といった取り組みを通じて、「新しいプランをみんなで育てている」という感覚が生まれやすくなります。
ヒルトン横浜のような分かりやすいコンセプトがあると、従業員もお客様に説明しやすく、モチベーションにもつながりやすいはずです。もし自施設でも新しい宿泊プランを企画するなら、商品の内容だけでなく、「スタッフが誇りを持って語れるストーリーかどうか」という視点も加えてみると良さそうです。
まとめ
- ヒルトン横浜のReFaコラボ宿泊プランは、客室内アメニティの再設計によって、都市型ホテルでも「整う滞在」を実現できることを示す事例と言えそうです。
- ウェルネス宿泊プランは、既存の朝食・浴場・フィットネスなどを一つのストーリーに束ねることで、小さな投資からでも始められる選択肢があります。
- 自施設で取り組む際は、まず1日1室や特定日限定でテスト販売しておくと安心です。オペレーション負荷と収益性のバランスを見ながら段階的に拡大していく発想が大切です。
- 新しいコンセプトプランは、従業員のアイデアや体験も巻き込みながら育てていくことで、スタッフのエンゲージメント向上にもつながる可能性があります。
企業情報
- 会社名:ヒルトン横浜
- 所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい6-2-13
- 施設構成:地上26階・地下1階、339室、レストラン3店舗、エグゼクティブラウンジ、フィットネス、ショップ、宴会場など
- 電話番号:045-641-8100
- 公式サイト:ヒルトン横浜公式サイト
出典:PR TIMES『【ヒルトン横浜】「ReFa VITALWEAR」および「ReFa LINEN」とコラボレーションした限定宿泊プランを販売』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000115530.html


