2025.12.12

ホテルインターゲート大阪梅田のアートルームに学ぶ産学連携戦略

CoCoRo編集部

ホテルインターゲート大阪梅田が大阪芸術大学と連携して生み出したアートルーム企画は、都市型ホテルでもできる産学連携とコンセプトルーム戦略のヒントが詰まっています。本記事では、神戸須磨シーワールドをテーマにした期間限定ルーム「都会に潜む夜の海」を題材に、宿泊業の経営者・企画担当・現場マネージャーの方に向けて、自社で応用できそうなポイントを整理します。

この記事の目次

本記事のポイント
ニュースの概要
宿泊業にとってのポイント
背景と理由の整理
具体的な取り組み・ニュース内容の解説
自社への活かし方のヒント
まとめ
企業情報
- 株式会社グランビスタホテル＆リゾート
- ホテルインターゲート大阪梅田
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本記事のポイント

ホテルインターゲート大阪梅田と大阪芸術大学によるアートルーム「都会に潜む夜の海」の概要と、期間限定コンセプトルームならではの収益・集客メリットを整理します。
アート作品やARフォトなど、神戸須磨シーワールドとの世界観を活かした体験設計が、リピーター獲得やインバウンド対策にもつながる可能性を解説します。
自館でも取り入れやすい「小さく始める産学連携」や「従業員エンゲージメントを高めるコラボ企画」の進め方のヒントをまとめます。

ニュースの概要

ホテルインターゲート大阪梅田（運営：株式会社グランビスタホテル＆リゾート）は、大阪芸術大学との産学連携プロジェクト第5弾として、神戸須磨シーワールドをテーマにしたアートルーム「都会に潜む夜の海（URBAN MIDNIGHT SEA）」の販売開始を発表しています。ご宿泊期間は2026年1月5日から3月31日までで、2025年12月12日から予約受付がスタートします。

舞台となるのは、31㎡のデラックスツインルーム。コンセプトは「海のない梅田に、夜の海が突然現れたような世界」です。大阪芸術大学デザイン学科の学生が、シャチ・イルカ・ペンギンなど神戸須磨シーワールドの生きものをモチーフに、室内全体を「夜の海」に変えるアートを制作しています。

客室内には、オリジナルデザインのシャンプーボトルや窓ステッカー、クッションに加え、シャチが泳ぐ様子を再現した海中ジオラマ、ギヤマンクラゲやチンアナゴをかたどったネオンなどを配置。コースターやステッカー、ポストカード、シャチ型の歯ブラシ立てなど、宿泊記念として持ち帰れるアイテムも用意されています。販売価格は、2名1室利用・朝食付きで1名あたり18,500円（税込・サービス料込、宿泊税別）からとされています。

さらに、シャチやクラゲと一緒に撮影できる「ARフォト」コンテンツも館内に設置され、アートルームに宿泊しないお客様も楽しめるようになっています。ホテルインターゲート大阪梅田2階フロント前で体験できるため、館内の回遊性向上やSNS発信のきっかけ作りにもつながりそうです。

宿泊業にとってのポイント

ホテルインターゲート大阪梅田のアートルームが示す体験価値のつくり方

今回のアートルームは、「泊まる」だけでなく「海の世界に浸る」体験に重点を置いている点が特徴的です。ホテルインターゲート大阪梅田の客室という限られた空間の中で、ネオン、ジオラマ、オリジナルグッズなど複数のタッチポイントを重ねることで、ゲストにストーリー性のある時間を提供しようとしています。

宿泊業の視点で見ると、以下のような価値が期待できます。

写真映えする空間演出により、SNSで自然発生的なクチコミが生まれやすい
客室で完結する体験コンテンツのため、悪天候でも満足度が下がりにくい
テーマ性の高い空間が「記念日」「推し活」「親子旅」などの目的利用を呼び込みやすい

一般的なコンセプトルームは、特定のキャラクターやIPとのライセンスコラボが多くなりがちですが、ホテルインターゲート大阪梅田では自社グループ施設である神戸須磨シーワールドの世界観を活かすことで、ブランド全体のシナジーを生み出している点も参考になります。

ホテルインターゲート大阪梅田の限定プランにみる料金設計と収益性

今回のプラン料金は、デラックスツインを2名1室・朝食付きで1名あたり18,500円〜という設定です。アートルーム専用の装飾や制作コストを考えると、通常客室よりもやや高めの価格帯と想定されますが、

室数を絞った期間限定販売で「特別感」と「希少性」を演出
ビジュアル訴求しやすく、公式サイトや予約サイト上で目立つ商品になる
物販を兼ねたお持ち帰りアイテムにより、体験価値と単価の両立を図れる

といった設計により、客室単価アップとブランド訴求を同時に狙っていると考えられます。

自館で同様の企画を検討する際には、「通常客室との差額をどこで説明するか」「写真やグッズなど目に見える価値をどう積み上げるか」がポイントになりそうです。ホテルインターゲート大阪梅田のように、企画背景や学生のコメントも合わせて発信することで、単なる装飾ではないストーリー性も付加できます。

産学連携で従業員エンゲージメントを高める可能性

ホテルインターゲート大阪梅田と大阪芸術大学の産学連携は、学生側の学びだけでなく、ホテル側の従業員エンゲージメント向上にもつながる可能性があります。

学生と一緒に客室づくりを進めることで、スタッフが「企画の当事者」になりやすい
清掃やメンテナンスの際にも、アート作品への理解が深まり、丁寧な扱いにつながる
現場スタッフがゲストに企画背景を説明できるようになると、コミュニケーションの質が上がる

「人手不足だから、なるべく手間のかからない運営を」と考えがちな局面ほど、こうした体験型コンテンツをきっかけに、現場のモチベーションが高まる例もあります。小さく始めて、運営オペレーションやスタッフの反応を見ながら改善していく姿勢があると安心です。

背景と理由の整理

なぜ「海のない梅田」で夜の海をテーマにしたのか

ホテルインターゲート大阪梅田が位置する梅田は、ビジネス・ショッピングのイメージが強いエリアです。あえて「海のない梅田に現れた夜の海」というコンセプトを掲げることで、

都心ホテルでも非日常感の高い体験ができることを訴求
日中は大阪観光、夜は客室で「海」に浸る二層構造の滞在イメージを提案
仕事帰りの近距離需要や、ファミリー層にも響くストーリーを用意

といった狙いが読み取れます。

地方リゾートとは違い、都市部のホテルでは「周辺エリアとのギャップ」を演出するコンセプトが有効な場合も多いです。ホテルインターゲート大阪梅田の事例は、その一つの形といえそうです。

グループ施設とのシナジーづくり

神戸須磨シーワールドは、同じグランビスタグループの施設として2024年に開業しています。今回のアートルームは、グループ内のリソースを活かしたコラボレーションとしても注目できます。

生きものモチーフのアートによって、水族館への興味喚起につながる
「次の旅行では実際の神戸須磨シーワールドにも行ってみたい」という動機付けになる
グループ全体のブランドイメージを「体験重視・家族で楽しめる」として統一しやすい

宿泊業界では、グループ内の他施設・他業態とのコラボをどのように設計するかが一つのテーマになりがちです。ホテルインターゲート大阪梅田のように、直接送客だけでなく「世界観を共有する」形での連携も一案ではないでしょうか。

学生との協働で生まれる「今っぽさ」とコストバランス

大阪芸術大学デザイン学科の学生が参加している点も、今回の企画の特徴です。プロのクリエイターに一括発注するのとは違い、

若い感性による「今のSNSトレンド」を反映しやすい
予算を抑えつつ、手作り感を生かした温度のあるデザインにできる
産学連携プロジェクトとして社会的な意義も打ち出せる

といったメリットが期待できます。

もちろん、学生との協働ではスケジュール管理や品質のすり合わせが重要になります。その点、ホテルインターゲート大阪梅田では、学生代表が進行管理を担ったことや、指導教員が客室の機能性・安全性とのバランスを重視したコメントを寄せている点からも、丁寧なプロジェクト設計がうかがえます。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説

客室タイプ・料金・販売期間

ホテルインターゲート大阪梅田のアートルーム「都会に潜む夜の海」は、次の条件で販売されます。

対象客室：デラックスツインルーム（約31㎡）
ご宿泊期間：2026年1月5日〜3月31日
料金目安：2名1室・朝食付きで1名あたり18,500円〜（税・サービス料込、宿泊税別）

比較的広めのツインルームをベースにしているため、アート作品を多く配置しても狭さを感じにくい設計といえそうです。自館での応用を考える場合も、「どの部屋タイプなら装飾との相性が良いか」「ベースレートとの差をどの程度設けるか」を検討する参考になります。

室内アートとお持ち帰りアイテムの構成

客室内のアート作品・アイテムは、大きく次のように整理できます。

室内で世界観をつくる要素
- 生きものをモチーフにしたシャンプーボトルや窓ステッカー、クッション
- シャチが泳ぐ様子を表現した海中ジオラマ
- ギヤマンクラゲやチンアナゴをイメージしたネオン装飾
宿泊後も思い出が残るお持ち帰り要素
- コースター（全5種から3枚を提供）
- ステッカー（全3種）
- ポストカード（全6種）
- シャチ型の歯ブラシ立て

宿泊中の体験と、退館後の記憶の両方にアプローチしている構成といえます。ホテルインターゲート大阪梅田の事例からは、「全部を大掛かりな装飾にするのではなく、日常使いできる小物にテーマを落とし込む」手法が学べそうです。

ARフォトの設置と館内回遊

アートルームと並行して、ホテルインターゲート大阪梅田2階フロント前には「ARフォト」スポットが設置されます。スマートフォンをかざすことで、シャチやクラゲと一緒に写真が撮れる仕組みで、アニメーションするシャチの姿も楽しめるとしています。

ポイントは、次のような点です。

アートルーム宿泊者以外のゲストも楽しめるコンテンツとして設計されている
フロント前という動線上の要所に置くことで、滞在中の小さな「寄り道体験」を生む
SNS投稿を促す導線としても機能しやすい

デジタル技術を使った演出は、導入ハードルが高そうに感じられるかもしれませんが、既存のARサービスやアプリを活用すれば、比較的スモールスタートも可能です。まずは館内の1か所から試してみる、という選択肢もあります。

大阪芸術大学との継続的な産学連携

今回のプロジェクトは単発ではなく、ホテルインターゲート大阪梅田における産学連携プロジェクト第5弾とされています。開業時から大阪芸術大学と協働し、大阪の未来を担う若手アーティストを応援する取り組みを継続していることが示されています。

学生代表が進行管理を担当し、納期や条件を整理しながら共同制作を進めたこと
異なるデザイン領域の学生が、それぞれの得意分野を持ち寄って客室空間を構成したこと
指導教員が、既存客室の機能性や安全性との両立を重視して指導したこと

といったコメントから、単なる装飾発注ではなく、「学び」と「実務」の両方を意識した枠組みで進められたことがうかがえます。自館での産学連携を検討する場合も、「学生の学びの成果をどう評価し、次年度につなげるか」という視点を盛り込みながら設計していくと、長期的な関係構築につながりやすくなります。

自社への活かし方のヒント

小さく始めるコンセプトルームづくり

ホテルインターゲート大阪梅田のような本格的なアートルームは魅力的ですが、「いきなりここまで」はハードルが高いと感じる施設も多いはずです。まずは次のようなステップから検討してみるのも一案です。

既存客室を1〜2室だけ「お試しコンセプトルーム」として位置づける
壁紙の全面張り替えではなく、アートパネルやファブリック、照明など動かせるアイテムから着手する
オリジナルコースターやポストカードなど、低コストな持ち帰りアイテムから始める

このように段階的に進めることで、清掃オペレーションや備品管理の影響度も確認しやすくなります。ホテルインターゲート大阪梅田の取り組みを参考にしつつ、自館の規模や人員に合わせたスモールスタートを設計しておくと安心です。

地域資源との「世界観コラボ」を探す

神戸須磨シーワールドとの連携は、水族館という明快なテーマがある分かりやすい例ですが、ほかにも地域資源との「世界観コラボ」は多く考えられます。

近隣の美術館・博物館・劇場の企画展や公演テーマと連動した客室
地元の伝統工芸・食文化・祭りをモチーフにした装飾やアメニティ
夜景・川・山など、周辺の自然景観を室内に取り込むアート表現

ホテルインターゲート大阪梅田のケースのように、「都会に潜む夜の海」といったコピーを添えることで、単なるコラボを超えたストーリーが生まれます。自館周辺にある「意外な組み合わせ」を探し、宿泊体験に落とし込む発想が重要です。

大学・専門学校とのパートナーシップの組み立て方

産学連携を検討する際には、次のようなポイントを押さえておくと進めやすくなります。

どの学科・専攻と相性が良いか（デザイン・建築・観光・ホスピタリティなど）
授業の一環として取り組むのか、課外プロジェクトとして行うのか
制作物の権利関係（デザインの著作権・写真利用など）を事前に整理しておく
学生・教員・ホテル側の担当者、それぞれの役割と決裁フローを明確にする

ホテルインターゲート大阪梅田のように、学生代表や教員がプロジェクトマネジメントに関与する形にすると、ホテル側の負担を抑えつつ、教育的効果も高めやすくなります。従業員エンゲージメントの観点からも、現場スタッフが企画会議に参加する機会を設けるなど、「一緒につくる」体制を整えると良さそうです。

ホテルインターゲート大阪梅田に学ぶ情報発信とSNS活用

今回のようなアートルーム企画は、情報発信の仕方によって成果が大きく変わります。ホテルインターゲート大阪梅田の事例から応用できるポイントとしては、次のようなものが考えられます。

ビジュアルのインパクトが伝わる写真を用意し、公式サイトや予約サイトのサムネイルを工夫する
学生や教員のコメントを載せ、「どのような思いでデザインしたのか」を言語化する
ARフォトスポットと連動したハッシュタグを設定し、宿泊者による発信を促す
英語・中国語など、多言語での簡単な説明も用意し、インバウンドにも対応する

こうした情報発信は、一度仕組みを整えておくと、次の企画にも転用しやすくなります。ホテルインターゲート大阪梅田のように、「地域と旅行者がつながる空間」というビジョンと結びつけて発信することで、ブランドストーリーとしても積み上げていくことができそうです。

まとめ

ホテルインターゲート大阪梅田のアートルーム「都会に潜む夜の海」は、グループ施設や大学と連携しながら、都市型ホテルでも非日常体験を提供できることを示す好例といえそうです。
アート作品とお持ち帰りアイテム、ARフォトを組み合わせた設計は、客室単価アップとゲストの思い出づくりを両立させる仕組みとして、自館でも一部から取り入れてみる価値があります。
自社でコンセプトルームや産学連携に挑戦する際は、まずは1〜2室・短期間から始め、オペレーションや従業員エンゲージメントの変化を見ながら、段階的に広げていくと安心です。
ホテルインターゲート大阪梅田のような事例をきっかけに、「地域資源とどう組み合わせれば、自館らしい世界観が描けるか」をチームで話し合ってみることも、一つの大切なステップになりそうです。

企業情報

株式会社グランビスタホテル＆リゾート

会社名：株式会社グランビスタホテル＆リゾート
所在地：東京都千代田区内神田2-3-4 S-GATE大手町北5F
創立：1958年8月27日
資本金：1億円
代表者名：代表取締役社長荒井幸雄
事業内容：シティホテル、ビジネスホテル、温泉旅館、海洋レジャー施設、水族館、ゴルフ場、ハイウエイレストランなど、各種施設の運営およびホテル運営受託事業
主なグループ・提携施設（一部）：札幌グランドホテル、札幌パークホテル、熊本ホテルキャッスル、白良荘グランドホテル、ホテルゆもと登別、鴨川シーワールド、神戸須磨シーワールド、神戸須磨シーワールドホテルほか
公式サイトURL：https://www.granvista.co.jp/
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