宿泊・旅行業界ニュース

観光庁データで読む訪日客過去最高と宿泊運営の備え

CoCoRo編集部

2025年12月17日の観光庁の長官会見で、訪日需要が「過去最高」水準にあることが示されました。ホテル・旅館にとっては追い風である一方、需要の偏りやキャンセル要因への備えがないと、現場負荷だけが増える可能性もあります。本記事では、観光庁の発表内容を宿泊運営の実務に落とし込み、次の一手が見える形で整理します。

本記事のポイント

  • 観光庁の最新発表をもとに、訪日需要の「量」だけでなく「市場の多様化」を宿泊戦略に反映する視点が分かります
  • 観光庁会見で触れられた論点(旅客税の呼称、違法民泊対策、IRなど)を、ホテル・旅館の現場判断にどうつなげるか整理します
  • 観光庁の数字を「売上」だけで終わらせず、価格・人員・販売チャネルの運用に落とし込むチェックリストを持ち帰れます

ニュースの概要

出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.訪日外国人旅行者数の推移
出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001973355.pdf,(参照:2025年12月18日).

観光庁は長官会見で、2025年11月の訪日外国人旅行者数が推計で351.8万人となり、11月として過去最高になったと説明しています。加えて、2025年1月から11月の累計は3,906.56万人となり、前年の年間実績を上回って暦年ベースの過去最高が確定したとのことです。

出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.2025年11月の訪日外国人旅行者数
出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001973355.pdf,(参照:2025年12月18日).

同会見では、国際観光旅客税について、報道上の略称として「出国税」と呼ぶと誤解を招きやすいため、略称は「旅客税」を用いてほしいという趣旨の呼びかけもありました。宿泊事業者にとっては、ゲスト対応や社内の用語統一にも関わる論点です。

さらに、特定複合観光施設(IR)の区域整備計画について、新たな申請期間を2027年5月6日から11月5日とする方向で、政令改正案の意見募集を始めると説明しています。質疑では、中国発需要の変動リスク、温泉文化の国際的な発信、違法民泊対策として制度運営システム改修と仲介サイト連携の強化、能登の観光復興、アウトバウンド促進など幅広い論点が扱われました。

観光庁発表から読む宿泊業にとってのポイント

観光庁の「過去最高」は稼働率の上振れだけを意味しない

観光庁が示した過去最高の水準は、需要が強いことを示す材料です。
ただし宿泊現場では、「満室」よりも前に次の課題が出やすくなります。

  • 予約の取りこぼし(在庫・販売条件の設計ミス)
  • 客層変化によるオペレーション負荷の増大(言語、食、決済、ルール)
  • 特定市場の変動(注意喚起、航空座席、為替)によるキャンセル波

観光庁の数字を見たときは、稼働率の期待だけでなく「どの市場が伸びているか」「変動しやすい要因は何か」を同時に見ておくと安心です。

観光庁会見が示唆する「市場の多様化」を販売に反映する

会見では、欧米豪や中東などの伸びが強いという説明がありました。
宿泊側の実務では、次のような設計に直結します。

  • 連泊比率を前提にした客室清掃・リネン回収の山谷設計
  • 直前予約が多い市場と、早期予約が多い市場での料金・在庫の分け方
  • OTAと公式の配分(高単価期は公式誘導、閑散期は露出強化など)

「どの市場にも同じプラン」だと、強い需要局面でも利益率が伸びにくくなります。観光庁の説明を、プラン設計の差別化の根拠にしておくと運用が楽になります。

観光庁のアウトバウンド増は「国内需要の読み違い」を起こしやすい

出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001973355.pdf,(参照:2025年12月18日).出国日本人数の推移
出典:観光庁.“観光庁長官定例会見配付資料「訪日外国人旅行者数(2025 年 11 月)について」”.観光庁公式サイト.2025年12月17日.
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001973355.pdf,(参照:2025年12月18日).

観光庁配付資料では、出国日本人数も増加傾向にあると示されています。
国内旅行の動きは、連休配置や物価、海外イベントなど複数要因で揺れます。

訪日が好調でも、国内需要が同じロジックで伸びるとは限りません。
ホテル・旅館は「訪日」と「国内」の需要モデルを分けて、売り止めや値付けを運用しておくと混乱が減ります。

観光庁会見の背景と理由の整理

観光庁が示す増加要因は「供給制約」の裏返しでもある

訪日が伸びると、宿泊・交通・体験の供給制約が表面化しやすくなります。
供給制約が強い地域では、価格が上がりやすい一方で、クチコミ悪化やスタッフ疲弊が起きやすい傾向もあります。

短期の売上最大化だけでなく、レビューと人材定着を守る運用に寄せると、中長期の収益が安定しやすいでしょう。

観光庁が「旅客税」という呼称に触れた意味を現場で捉える

観光庁は、国際観光旅客税の略称として「旅客税」を用いてほしい趣旨を述べています。
宿泊現場では、次のような影響が想定されます。

  • フロントや予約センターでの問い合わせ対応(用語の統一)
  • ゲスト向け案内文の表記ゆれ(プラン注意事項、FAQ)
  • ニュースに反応した誤解の火消し(「日本人だけが負担するのか」等)

税制そのものの議論とは別に、用語の統一はクレーム予防に効きます。観光庁の呼びかけを、社内の言葉の整備に使うのも一案です。

観光庁が注視する中国要因は「キャンセル耐性」を問う

会見では、中国の注意喚起後に一部キャンセルの動きがある旨にも触れています。
ここで重要なのは、中国市場に限らず「外部要因で予約が動く」前提を、販売条件に織り込めているかです。

キャンセルポリシーと前受金、代替需要の呼び込み導線を、繁忙期前に点検しておくと安心です。

観光庁会見で示された取り組み・ニュース内容の解説

観光庁の数字を「月次の経営会議」に落とし込む見方

観光庁配付資料は、総数だけでなく国・地域別の動きも整理されています。
宿泊側で見るときは、次の順番にすると実務につながりやすくなります。

  1. 自館の構成比が高い国・地域の前年差を確認
  2. その市場の予約リードタイムと、キャンセル率の変化を確認
  3. 価格の上げ下げではなく「在庫の出し方」を先に調整
  4. 最後に料金と最低宿泊数、食事条件を調整

価格だけで調整すると、現場負荷や利益率が読みづらくなります。観光庁の数値は「在庫設計の根拠」として使うのが相性が良いはずです。

観光庁が言及した違法民泊対策と、ホテル側の実務ポイント

会見では、違法民泊対策として制度運営システムの改修や仲介サイトとのデータ連携強化に触れたと説明されています。
ホテル・旅館側で現実的に効いてくるのは、競争環境の「公正さ」が少しずつ整う可能性です。

一方で、現場の落とし穴もあります。
違法民泊の話題が出ると、スタッフがゲストとの会話で断定的に語ってしまい、トラブルを招くことがあります。

  • 断定や非難ではなく、館のルールと安全配慮に話を戻す
  • 予約経路の違いによるトラブル(本人確認、鍵受け渡し等)を館内で再点検する

観光庁の方針を追いながらも、接客トークは中立に寄せておくと安心です。

観光庁が示したIRスケジュールは「採用と商品造成」の予告編

IRの申請期間設定は、すぐに需要が増える話ではないかもしれません。
ただし、中長期でMICEや滞在型需要が動く可能性を示す材料にはなります。

自治体の動きが出る地域では、今のうちから以下を検討しておくと準備が進みます。

  • 団体・長期滞在の受け入れ導線(客室タイプ、ランドリー、朝食動線)
  • 人材採用の競争激化に備えた処遇・教育の整備
  • 地域連携の商品造成(周遊、体験、二次交通)

観光庁の制度スケジュールは、現場にとって「準備開始の合図」と捉えると良さそうです。

観光庁データを自社へ活かすヒント

観光庁の発表を「売上」ではなく「運営KPI」に翻訳する

おすすめは、観光庁の発表をそのまま追うのではなく、自社KPIに翻訳して毎月点検することです。

観光庁会見での論点宿泊運営の着眼点次のアクション例
訪日客が過去最高水準需要の山と客層の変化予約リードタイム別に在庫配分を再設計
市場の多様化(欧米豪・中東等)連泊・単価・要望の違い連泊向け特典、言語対応、体験導線を整備
中国要因などの変動キャンセル波への耐性前受・規約・代替需要の導線を点検
違法民泊対策の強化競争環境とトラブル予防トークの中立化、本人確認・鍵運用の再点検

観光庁の数字を「指標」に変換できると、現場と経営の会話が噛み合いやすくなります。

観光庁の情報を使って、現場説明と社内合意を早くする

忙しい現場ほど、方針変更が遅れがちです。
観光庁の発表を社内共有するときは、文章よりも「判断材料」を先に出すと通りやすくなります。

  • 今月の需給判断(上げる・維持・下げる)
  • その判断の根拠(観光庁の数字、自館の予約曲線、キャンセル率)
  • 変えるのは何か(料金ではなく在庫、条件、販路の順)

観光庁の会見内容は、社内合意の材料としても使いやすいはずです。

観光庁トピックを踏まえた、今月のチェックリスト

  • 観光庁の国・地域別の動きと、自館の構成比のズレを確認する
  • 繁忙期前に、キャンセル規約と前受金、ノーショー対策を点検しておく
  • 高単価期ほど、清掃・朝食・チェックインのボトルネックを先につぶす
  • 「旅客税」など用語の表記ゆれを、館内FAQとスタッフ間で揃える

無理に全部を変える必要はありません。観光庁の情報を「点検のきっかけ」にするだけでも、運営の安定度は上がりやすいでしょう。

まとめ

  • 観光庁が示した訪日客過去最高の流れは、売上機会である一方、運営負荷と品質低下のリスクも含みます
  • 観光庁会見で示唆された市場の多様化は、料金より先に在庫配分とプラン設計を見直すと活かしやすいです
  • 中国要因などの変動に備え、規約・前受・代替需要の導線を整えておくと安心です
  • 用語(旅客税など)の統一や違法民泊トピックへの中立対応も、現場トラブル予防という選択肢もあります

参考資料

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