星野リゾートの「馬旅」は、2026年の午年に向けて全国の施設で「馬」をテーマにした開運ステイを展開すると発表している取り組みです。この記事では、旅館・ホテルの経営者・企画担当・現場マネージャーの方に向けて、この星野リゾートの「馬旅」から、干支や地域資源を活かした集客施策づくりのヒントを整理します。
本記事のポイント|星野リゾートの午年「馬旅」
- 星野リゾートが全国74施設の強みを活かし、「馬旅」という共通テーマで体験コンテンツと神社巡りを束ねている狙いを整理します。
- 馬との触れ合い体験や「馬の神社」巡りなど、星野リゾートが打ち出す馬旅コンテンツを、宿泊業が真似しやすい切り口に分解して解説します。
- 自館でも応用できる「干支×地域資源×開運」の企画づくりや、従業員エンゲージメント向上につなげるポイントを具体的なステップで提案します。
ニュースの概要|星野リゾートが提案する「馬旅」
星野リゾートは、「旅を楽しくする」をテーマに国内外74施設を運営していると説明しており、2026年の干支である午年に合わせ、「馬」をテーマにした体験プログラム「馬旅(うまたび)」を全国で展開すると発表しています。雪原でのストーブ馬車、白銀の乗馬体験、海辺の乗馬など、各地の自然環境を活かしたアクティビティを組み合わせ、「活力」や「飛躍」の象徴である馬のイメージと開運ニーズを取り込んだステイを提案している形です。
具体的には、青森屋の「ストーブ馬車」、リゾナーレ八ヶ岳の「馬のお世話体験」や体験乗馬、星のや沖縄の海辺乗馬、星野リゾート トマムの「白銀の乗馬体験」など、看板馬・看板ポニーと触れ合えるプログラムを各施設で打ち出しているとしています。いずれも初心者でも参加しやすい内容にしている点が強調されています。
さらに、「午年の初詣はここで決まり」と題して、界 霧島と霧島神宮、OMO5京都三条と上賀茂神社・藤森神社、界 仙石原と箱根元宮、星のや東京と神田明神、界 津軽と白山姫神社など、馬や勝負運にゆかりのある神社を組み込んだ開運旅を紹介しています。最後に、OMO5横浜馬車道の「馬車道」という地名の由来を通じて、地域の歴史ストーリーも「馬旅」の文脈で伝えている構成です。
こうした星野リゾートの取り組みは、干支という季節性の高いテーマを軸に、「動物×体験×神社×地域ストーリー」を一体で訴求する企画として位置づけられそうです。
宿泊業にとってのポイント|午年の馬旅と開運ステイ
星野リゾートの「馬旅」が示す3つの方向性
星野リゾートの「馬旅」は、単に「馬に乗れる」企画ではなく、次の3つの軸で整理すると分かりやすそうです。
- 「癒やしの触れ合い体験」:看板馬やポニーとの触れ合い、写真撮影、ブラッシングなど、誰でも楽しめるソフトな馬旅体験。
- 「絶景アクティビティ」:雪原、森、海辺など、その土地ならではの環境を活かした乗馬プログラム。星野リゾート トマムの白銀の乗馬体験や、星のや沖縄の海辺乗馬がこれに当たります。
- 「開運・神社巡り」:霧島神宮、上賀茂神社、藤森神社、箱根元宮、神田明神、白山姫神社など、馬や勝負運と縁のある神社との連携による開運ステイ。
宿泊施設側から見ると、「自館の周辺に馬がいないから真似できない」という話ではなく、「自分たちの地域で置き換えられる“動物・自然・神社・歴史ストーリー”は何か」を考えるヒントになりそうです。


看板馬・ポニーを軸にしたファンづくり
星野リゾートの馬旅では、青森屋のポニー「のれ」「それ」、リゾナーレ八ヶ岳の「デイジー」、星のや沖縄の「グース」「グッディー」、トマムの「ガロ」など、名前を持つ看板馬・看板ポニーが多数登場します。
宿泊業の視点では、この「名前のある動物」は次のような強みにつながりやすいと考えられます。
- リピーターやSNS上で「推し馬」として語られやすい。
- スタッフが「馬の性格やエピソード」を語ることで、コミュニケーションのきっかけになる。
- 従業員エンゲージメントの面でも、「自分たちの施設のキャラクター」として愛着を持ちやすい。
自館に馬や動物がいない場合でも、地域の牧場や乗馬クラブと提携し、「◯◯牧場の看板馬△△」という形でストーリーを共有することは十分可能です。星野リゾートの事例を参考に、「名前・キャラクター・エピソード」をセットで設計しておくと、ファンづくりに役立つかもしれません。


神社・パワースポットと組み合わせる宿泊商品の可能性
星野リゾートの「馬旅」では、「界 霧島×霧島神宮」「OMO5京都三条×上賀茂神社・藤森神社」「界 仙石原×箱根元宮」「星のや東京×神田明神」「界 津軽×白山姫神社」といった形で、神社との関係性を丁寧に説明しています。

ここから見えてくるポイントは次の通りです。
- 「馬」「勝負運」「干支」など、神社側が持つストーリーを尊重しつつ、自館の宿泊プランに自然に組み込んでいる。
- 移動時間(例:車で10分、車で35分など)を明示することで、旅程イメージを描きやすくしている。
- 参拝だけでなく、「特別参拝」「干支モチーフの和菓子」「開運茶」など、館内コンテンツと組み合わせて体験価値を高めている。
午年に限らず、「干支×神社×地域コンテンツ」は、多くの宿泊施設で応用できるパターンといえそうです。

背景と理由の整理|干支と星野リゾートの馬旅需要
干支イベントは毎年使える「定番ネタ」
2026年は午年であり、日本では干支と結びつけた商品・イベントが毎年多数企画されます。星野リゾートは、午年を「飛躍」「活力」「物事が“うま”くいく」といったポジティブな意味と結びつけて「馬旅」を打ち出していると述べています。
干支は12年に一度しか巡ってこないテーマではありますが、「干支×開運×旅」という枠組みは毎年形を変えて使えるフォーマットです。
今回の星野リゾートの「馬旅」は、その具体的な活用例として参考になるでしょう。
ウェルネス・ネイチャー・聖地巡礼のトレンドとの相性
旅行ニーズのトレンドとして、ここ数年は「ウェルネス」「ネイチャーアクティビティ」「聖地巡礼」のようなテーマが注目されていると言われます。馬旅は、この3つを自然に掛け合わせることができる企画です。
- ウェルネス:馬との触れ合いや自然の中での乗馬は、心身のリフレッシュ体験として訴求しやすい。
- ネイチャーアクティビティ:雪原、海辺、森など、その地域ならではの自然環境が舞台となる。
- 聖地巡礼:霧島神宮、上賀茂神社、藤森神社、箱根元宮、神田明神、白山姫神社といった「馬」と関わりの深い神社巡りを組み込んでいる。
星野リゾートの「馬旅」は、こうした世界的な観光トレンドと、日本独自の干支文化を接続した事例と捉えることができそうです。


インバウンドが共感しやすい「馬旅」要素
インバウンド視点で見ると、星野リゾートの馬旅には、次のような魅力があります。
- 「神馬」「白馬神事」「絵馬」のように、日本文化の背景を学べるストーリーが豊富。
- 雪原、富士山を望む山頂、沖縄の海岸線など、写真映えするロケーションが揃っている。
- 「うまくいく」「勝ち馬」「飛躍」といった分かりやすいメッセージ性があり、プロモーションもしやすい。
今後インバウンド比率が高まる宿泊施設にとっても、星野リゾートの「馬旅」は、単なる国内向けの干支キャンペーンにとどまらないヒントになるのではないでしょうか。


具体的な取り組み・ニュース内容の解説|全国の馬旅コンテンツ
馬と触れ合う宿泊体験(青森屋・リゾナーレ八ヶ岳・星のや沖縄・トマム)
星野リゾートの馬旅では、各地の看板馬・ポニーと触れ合えるプログラムが紹介されています。
- 青森屋 by 星野リゾート:玄関でポニー「のれ」「それ」がゲストを出迎え、冬季には看板馬「うるる」「きらら」が引く「ストーブ馬車」に乗れるとしています。雪景色を眺めながら、薪ストーブのぬくもりと蹄の音を楽しむ体験は、「青森の馬文化」の解説付きで提供されると説明されています。
- リゾナーレ八ヶ岳:小淵沢の「馬のまち」という地域性を活かし、体験乗馬、馬の学校、お世話体験など、レベル別のプログラムを用意しているとしています。看板馬「デイジー」との触れ合いは、子ども連れや初心者にも参加しやすい入口になっていそうです。
- 星のや沖縄:近隣で暮らす愛馬「グース」「グッディー」とのアクティビティを通じて、海辺の乗馬や散歩を楽しめると紹介しています。潮風や波音を感じながらの海岸線乗馬は、写真・動画映えする体験としても相性が良さそうです。
- 星野リゾート トマム:一面の銀世界の中で馬の背に揺られる「白銀の乗馬体験」を提供するとしています。スタッフが綱を持つ引き馬スタイルのため、乗馬の初心者でも安心して参加できると説明されています。
共通しているのは、「本格的な乗馬ができる人向け」というより、「初心者でも安心」「家族連れでも参加しやすい」ような設計になっている点です。宿泊業としても、自館のターゲットに合わせて「ハードルの低い参加型コンテンツ」を意識したいところです。


午年の初詣と馬の神社巡り(霧島・京都・箱根・東京・津軽)
星野リゾートの「馬旅」では、午年の初詣におすすめの「馬の神社」も具体的に紹介されています。
- 界 霧島×霧島神宮:国宝本殿前での特別参拝が含まれる「霧島開運旅2026」を提供するとしており、午を模した上生菓子や「開運茶一杯」など、館内での体験とも連動させています。
- OMO5京都三条×上賀茂神社・藤森神社:上賀茂神社は「乗馬発祥の地」と伝えられ、白馬奏覧神事が行われると説明しています。藤森神社は勝運・馬の神様として知られ、「勝ち馬」を願う旅行者のニーズに応えています。
- 界 仙石原×箱根元宮:箱根・駒ケ岳山頂の箱根元宮では、「神様が白馬に乗って降臨した」という伝説や「馬降石」「馬乗石」などの史跡を紹介し、富士山や芦ノ湖を望む絶景と合わせて「天空の社」として打ち出しています。
- 星のや東京×神田明神:仕事運や商売繁盛のご利益で知られる神田明神と連携し、話題の神馬(ポニー)「あかりちゃん」や「うまくいく御守」といった午年らしい要素を取り上げています。
- 界 津軽×白山姫神社:津軽独自の「一代様」信仰の中で、午年の守り神にあたる白山姫神社への参拝を提案しています。雪深い山道を登り切った先での達成感や、静かな境内での初詣体験が強調されています。
これらを自館の文脈で読み替えると、「地域の神社と連携し、移動時間や参拝の意味合いも含めた一連の体験として宿泊商品に組み込む」というヒントになりそうです。


エリアの歴史ストーリーを活かす「馬車道」などの番外編
番外編として紹介されているOMO5横浜馬車道 by 星野リゾートでは、「馬車道」という地名そのものがストーリーの中心に置かれています。開港当時に外国人が馬車で往来したことから始まり、日本で初めて馬車が走った道、日本初のガス灯やアイスクリームなど、文明開化の象徴としての馬車道の歴史に触れているとしています。
ここから学べるのは、「実際に馬がいなくても、『馬』にまつわる地名や歴史を切り口にストーリー化できる」という点です。星野リゾートのように、「午年×歴史ストーリー」をうまく掛け合わせることで、散策ツアーやシティホテルのコンセプトづくりにもつなげられそうです。


自社への活かし方のヒント|星野リゾートの馬旅から学ぶ企画術
自館版「馬旅」づくりの5ステップ
星野リゾートの「馬旅」をそのまま真似する必要はありませんが、考え方のフレームは他施設でも活かしやすいです。午年に限らず、今後の干支企画づくりに応用できるステップとして、次のように整理できます。
- 自館・周辺エリアの棚卸し
- 動物:馬、牛、鹿、猿、猫など、干支や動物に関係する施設・牧場・スポットはないか。
- 自然:雪原、海、湖、森、棚田など、体験の舞台になりそうな自然環境は何か。
- 神社・寺:干支や勝負運、商売繁盛など、自館ターゲットと相性の良いご利益の神社はどこか。
- テーマの一本化(◯◯旅のネーミング)
- 星野リゾートが「馬旅」と名付けたように、「干支+旅」のわかりやすい名前を付ける。
- 例:午年なら「馬旅」、辰年なら「龍旅」、卯年なら「うさぎ旅」など、覚えやすさを重視。
- 既存コンテンツの再編集
- すでに行っている体験(乗馬、スノーシューツアー、神社ツアーなど)を「干支テーマ」で束ね直す。
- 新しい投資をする前に、「今あるものを組み合わせる」視点で企画する。
- 宿泊プラン化と導線設計
- 宿泊+体験+神社参拝+館内コンテンツ(スイーツ、ドリンク、グッズなど)をパッケージ化する。
- 移動時間やタイムテーブルを明示し、予約時点で旅程のイメージが湧くようにする。
- 情報発信と口コミの設計
- プラン名・ビジュアル・ストーリーを統一し、WebサイトやSNSで発信する。
- 看板馬や干支キャラクターなど、「写真に撮りたくなる要素」を意識的に設計する。
この流れを意識すると、星野リゾートの馬旅のように、「ストーリーを感じる企画」として打ち出しやすくなりそうです。
従業員エンゲージメントを高める参加型プロジェクト
星野リゾートの馬旅は、現場スタッフが馬の性格や地域の文化を語ることで成り立つコンテンツでもあります。自館で応用する場合は、企画段階から従業員を巻き込むことが、エンゲージメント向上につながりやすいと考えられます。
例としては、次のような取り組みが考えられます。
- 「馬旅」プロジェクトチームを組成し、フロント・料飲・マーケティングなど部門横断でアイデアを出し合う。
- スタッフ自身に「推し馬」「推し神社」「推しスポット」を語ってもらい、パンフレットやSNSの記事に登場してもらう。
- 研修の一環として、馬の扱い方や神社の歴史などを学ぶ機会を設け、サービスストーリーに深みを持たせる。
こうした参加型の設計にすることで、星野リゾートの「馬旅」と同様、自館の従業員エンゲージメントを高める効果も期待できるのではないでしょうか。
安全配慮・動物福祉・宗教配慮のチェックポイント
馬旅のような体験型コンテンツを企画する際には、安全面や倫理面の配慮も欠かせません。
- 乗馬・馬車体験:専門の乗馬クラブや牧場と提携し、インストラクターの同伴、安全装備、天候判断のルールを明確にしておく。
- 動物福祉:馬やポニーの負担にならない運用時間・頭数・休憩を確保し、「かわいいから触らせる」だけの企画にならないようにする。
- 神社・宗教施設:ご祈祷や特別参拝などは、神社側のルールや受け入れ体制を尊重し、過度な演出にならないよう慎重に調整する。
- インバウンド対応:写真撮影の可否や、参拝マナーの説明など、外国人ゲストにも分かりやすいガイドの工夫を検討しておく。
星野リゾートも、それぞれの神社や乗馬施設と連携しながら馬旅を企画していると考えられます。自館で取り組む際も、安全と尊重の観点を押さえておくと安心です。
まとめ
- 星野リゾートの「星野リゾート 馬旅」は、午年という干支テーマを活かし、「動物×自然×神社×歴史」のストーリーを全国の施設で束ねた好例といえそうです。
- 自館でも、馬や他の動物に限らず、地域の自然や神社、歴史を組み合わせることで、干支や季節イベントに沿ったオリジナル体験を構築するという選択肢があります。
- 従業員が企画づくりから参加することで、星野リゾートのように現場のエンゲージメントを高めつつ、ゲストに語れるストーリーを増やしておくと安心です。
- 2026年の午年に向けては、今年のうちから「自館版・星野リゾート的馬旅」を試作し、小さく始めてブラッシュアップしていく動き方も現実的ではないでしょうか。
企業情報
- 会社名:星野リゾート
- 事業内容:国内外のホテル・旅館・リゾート施設の運営
- 主なブランド:星のや、界、リゾナーレ、OMO、BEB、LUCY など
- 施設数:国内外74施設(国内69、海外5)と発表
- 公式サイト:星野リゾート 公式サイト
出典:PR TIMES『【星野リゾート】2026年は午年(うまどし)!運気も気分も駆け上がる飛躍の「馬旅」へ』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001965.000033064.html


