宿泊・旅行業界ニュース

mont(モン)開業に見る築100年旅館再生の実務

【長野県・野沢温泉村】築100年の旅館を再生。「火と水」をテーマにしたブティックホテル「mont(モン)」
CoCoRo編集部

mont(モン)が野沢温泉村で開業したニュースは、築古ストックを“”に変える設計と、運営チームづくりを同時に考えるヒントになります。宿泊業の経営者・企画・人事の視点で、改修の勘所と現場での運用ポイントを整理します。

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本記事のポイント

  • mont(モン)の「小規模×飲食×物語設計」は、単価と稼働を両立させる発想として参考になる
  • 」から、需要の強弱と地域差を読み、改修投資の前提を整えられる
  • 採用・定着は“世界観”だけで決まらないため、運営設計(役割分担・教育・評価)まで落とし込むと安心です

発表内容の整理

長野県野沢温泉村のメインストリートに位置する築100年の元旅館をフルリノベーションし、ブティックホテル「mont(モン)」として2026年1月19日に開業した。運営主体は株式会社野沢温泉企画で、まちづくりスタートアップのグループ会社にあたる。

mont(モン)は「火と水」をモチーフに、薪火を使う1階のレストランと、全10室の客室で滞在体験を構成する。レストランは22席で宿泊者以外も利用できる運用を想定し、地域の食材を活かしたメニューを提供する方針が示された。

改修では既存建物の構造や階段、外観などの価値を残しつつ、耐震・断熱性能の向上や設備の更新も行った。運営チームは地元メンバーと移住者を中心に組成する計画が記載されている。

出典:PR TIMES『【・野沢温泉村】築100年の旅館を再生。「火と水」をテーマにしたブティックホテル「mont(モン)」2026年1月19日(月)グランドオープン』 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000129934.html

宿泊業にとってのポイント:mont(モン)に学ぶ

mont(モン)の“小規模ブティック”が効く場面

mont(モン)のような全10室規模は、需要が読みにくい局面でも運用の可変性を持たせやすい点が強みです。客室数が少ないぶん、レストランや地域体験を絡めて「滞在の理由」を作り、単価の納得感を設計できます。

一方で小規模は、欠員が出たときのオペレーション耐性が落ちやすい側面もあります。客室・飲食・接客の役割設計を細かく分けすぎず、クロストレーニング前提で組むと回りやすくなります。

旅館再生を“文化の入口”に変える発信設計

mont(モン)は「門(入口)」という意味付けを打ち出し、地域文化に触れる導線として宿を位置づけた。宿泊施設を単体で売るのではなく、外湯や祭り、食文化と結びつけて語ると、予約前の理解が揃いやすくなります。

ここで重要なのは、コピーの巧さより現場の再現性です。スタッフが同じ言葉で語れるよう、チェックイン説明、館内サイン、サービス手順に“物語の要素”を織り込むとブレが減ります。

背景と理由の整理:mont(モン)と宿泊需要

観光庁データで読む「需要の波」と投資判断

観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年10月・第2次速報、2025年11月・第1次速報)」では、2025年10月の延べ宿泊者数が5,861万人泊、うち外国人が1,648万人泊で全体の28.1%を占めた。翌11月は全体5,772万人泊で、客室稼働率は全体65.9%と公表されている。
同資料の都道府県別では、2025年10月の長野県の延べ宿泊者数が1,711,380人泊と示され、需要の厚みはある一方で月次の上下を前提に運営を組む必要が見えてきます。

季節性が強いエリアほど、改修投資は「ピークで取り切る」設計に寄りがちです。肩・閑散期の滞在理由(食、、ワークスペース、イベント連携など)を先に言語化しておくと、資金計画と人員計画が現実的になります。

空き家の増加が“再生”を事業機会に変える

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査(速報)」では、全国の空き家が900万2千戸、空き家率は13.8%と示された。築年数のある建物が増える環境では、宿泊業が地域の既存ストックを活かす余地も広がります。

ただし空き家活用は、建物の状態が案件ごとに大きく違います。構造・防火・避難・断熱の更新範囲を早期に見立て、運営収支とセットで判断する姿勢が欠かせません。

ニュース内容の解説:mont(モン)の運営設計を分解

mont(モン)の施設スペックを“運用”に置き換える

mont(モン)の要点は、建築コンセプトではなく日々の運用にあります。整理すると次のようになります。

項目内容(公表情報ベース)宿泊業の論点
客室全10室(クイーン/ツイン/ダブル)客層の取り分け、清掃の標準化
飲食1Fレストラン22席、外来利用も想定、回転設計、仕入れの安定
立地村のメインストリート館外導線と近隣配慮、夜間の運用
改修既存価値を残しつつ耐震・断熱等を更新工事コストと光熱費、冬季品質

小規模ホテルで外来飲食を受ける場合、現場は「宿泊の満足」と「地域の繁忙」が同時に来ます。ピークの待ち時間、騒音、導線の混雑がレビューに直結しやすいため、席数より“受け方”を先に決めておくと安心です。

人材面で見える、採用・定着の現実

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」では、有効求人倍率が1.18倍と示され、求人が求職を上回る基調が続く。産業別では「,飲食サービス業」の新規求人が前年同月比で減少した月もあり、採用は量だけでなく質の設計が課題になります。

mont(モン)のように“地域の暮らし”を価値にする場合、接客スキルと同時に地域理解の学習設計が必要です。OJT任せにせず、・食文化・季節イベントの案内をテンプレ化すると、新人でも品質を揃えやすくなります。

自社への活かし方のヒント:mont(モン)型の再生を自分ごとにする

mont(モン)を参考にするなら、最初に決めたい3点

  1. 体験の核を1つに絞る
    薪火、湯、雪国の静けさなど、核が明確だと施設投資も販促も迷いにくくなります。自社でも「何を持ち帰ってもらう宿か」を一文にしておくと強い。
  2. 飲食を“売上”ではなく“満足の装置”として設計する
    外来比率を高めたいときほど、宿泊者の食体験が崩れやすい。時間帯で席を区切る、宿泊者の優先枠を作るなど、ルールを先に決めるやり方もあります。
  3. 採用は“役割”で語る
    世界観だけで集めると、繁忙期の現実にギャップが出がちです。フロント、清掃、飲食、予約管理の責任範囲を言語化し、評価と育成の筋道まで整えておくと定着につながります。

現場の落とし穴:改修品質と運営品質は別物

旅館再生では、耐震や断熱などの更新が進んでも、滞在満足は別レイヤーで決まります。冬の動線(濡れ・雪・荷物)、騒音、客室の温熱ムラ、飲食の提供時間など、運営で初めて露呈する課題が残りやすい。プレオープンで“生活者目線の点検”を多めに回すという選択肢もあります。

まとめ

  • mont(モン)の事例は、「小規模×体験×地域導線」で単価の納得感を作る考え方を示している
  • 観光庁「宿泊旅行統計調査」の月次データで需要の波を確認し、改修投資と人員計画を揃えておくと安心です
  • 空き家増(総務省統計局)を踏まえると、旅館再生は地域課題と事業機会が重なる領域になりやすい
  • 採用・定着は役割設計と教育設計まで落とすと、mont(モン)型の運営に近づきます

企業情報

  • 施設名:mont(モン)
  • 所在地:長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷9521-1
  • 開業日:2026年1月19日
  • 客室数:全10室
  • 付帯施設:(22席、宿泊者以外も利用想定)
  • 運営:株式会社野沢温泉企画
  • 公式サイト:mont-nozawaonsen.com
  • 公式Instagram:mont_nozawaonsen
  • 会社名:株式会社NEWLOCAL
  • 所在地:東京都中央区日本橋小舟町14-7
  • 代表者:石田 遼
  • 設立:2022年7月
  • 公式サイト:newlocal.co.jp

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参考資料

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