東急ステイ渋谷 恵比寿が、2026年3月17日(火)に開業します。東急不動産と東急リゾーツ&ステイが恵比寿エリアに新設するこの施設は、全77室・5タイプの中長期滞在対応客室に加え、オールデイダイニングや複数の地域事業者との協業コンテンツを組み合わせ、客室の占有率だけに頼らない収益設計と体験価値の向上を同時に図っています。宿泊業において滞在価値の多様化が急務となるなか、東急ステイ渋谷 恵比寿の取り組みは、都市型ホテルにとって参考になる設計思想を提示しています。
スタッフのやりがい向上や離職防止に課題を感じていませんか?
導入費用無料のデジタルチップサービス「CoCoRo」で従業員エンゲージメント低下を解決!
⇒CoCoRoの概要資料を見る
本記事のポイント
- 東急ステイ渋谷 恵比寿が採用した暮らせる機能と休める快適性の両立は、中長期滞在ニーズとインバウンド需要の双方を取り込む設計として注目されます
- オールデイダイニングEZAROや地域事業者との協業は、客室稼働に依存しない付加価値収益と体験差別化を同時に実現するモデルとして参考になります
- カラマツ間伐材由来の植物由来洗濯洗剤など運営面でのサステナビリティ実装は、施設選択基準が多様化するゲストへの訴求力を高める取り組みとして検討に値します
発表内容の整理
東急不動産と東急リゾーツ&ステイは、2026年3月17日(火)に東京都渋谷区恵比寿西1-9-5に東急ステイ渋谷 恵比寿を開業します。日比谷線「恵比寿」駅から徒歩1分、JR「恵比寿」駅から徒歩2分という駅至近の立地に全77室・5タイプの客室を備え、ビジネス・観光・中長期滞在の幅広いニーズへの対応を想定しています。
CLOCKのデザイン監修のもとで実現した客室空間はTokyo Artisanal Collectiveをコンセプトに、自然素材と煉瓦意匠を取り入れた構成です。収納設計と照明計画で長期滞在者の生活動線に配慮し、リビング&ダイニング付きの客室タイプも設けています。レセプションカウンターバーは夕方からゲストとスタッフが交流できる場へと演出を変え、シグニチャーカクテルやアペリティーボの提供を通じた滞在体験の提案も行います。
ホテル2階にはオールデイダイニングEZAROが入居し、朝食・ランチ・カフェ・ディナーを一体的に提供します。朝ビュッフェでは4種のメインプレートから選択できる構成で、米澤豚のグリルや黒毛和牛のローストビーフといったシグネチャーメニューも展開します。代官山の紅茶専門店THESIERとのウェルカムティー共同開発、SS&Wとの恵比寿オリジナルコーヒーHANG OUTの提供、サッポロビールとのオリジナルドリンク・スイーツ開発など、地域事業者との多彩な連携も特徴です。また、Three Fieldsおよび東急リゾートタウン蓼科との協業で、蓼科のカラマツ間伐材アロマを用いた100%植物由来の洗濯洗剤を客室に設置します。東急ハーヴェストクラブとの毎月開催フェアでは、全国30カ所の会員制リゾートホテルから1施設を選び、地域食材を活かしたホテル限定アレンジメニューをEZAROで提供します。
出典:PR TIMES『「東急ステイ渋谷 恵比寿」 2026年3月17日(火)開業 広域渋谷圏のハブとなる”都市滞在の拠点”へ』 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000963.000055787.html
東急ステイ渋谷 恵比寿が示す顧客価値設計の論点
東急ステイ渋谷 恵比寿の開業は、客室稼働率だけでは差別化しにくい都市型ホテル市場において、ダイニング機能と地域連携コンテンツを核とした収益構造の多様化モデルを提示しています。宿泊業担当者として着目すべき論点は、大きく3つに整理できます。
アパートメントホテルとしての機能設計
アパートメントホテルとは、一般的な宿泊機能に加えてキッチンや洗濯機などの生活設備を備え、中長期滞在を主な利用対象として設計されたホテル業態です。東急ステイはこの業態のパイオニアとして1990年代から展開してきた実績を持ちます。今回の東急ステイ渋谷 恵比寿では、リビング&ダイニング付き客室タイプと客室内洗濯乾燥機を標準装備し、ビジネス・観光の短期利用者に加えて数週間単位の滞在ニーズにも対応しています。客室設計の細部にわたる配慮は、長期滞在者のリピート獲得において重要な差別化要素となります。
ダイニング機能による収益補完の可能性
オールデイダイニングとドリンクバーの組み合わせは、宿泊客以外の地域顧客を取り込む余地を生みます。EZAROのテラス席・バーカウンター・個室という多様なシーン設定と、東急ハーヴェストクラブとの月次フェアによるメニューの刷新は、地域の飲食需要を継続的に引きつける仕掛けとして評価できる設計です。全国ブランドの強みを地域密着型の食体験に変換しようとする発想の丁寧さは、規模を問わず参考になる視点を含んでいます。
地域事業者連携が生む体験差別化
ウェルカムドリンクや客室備品レベルでパートナーのストーリーを届ける設計は、施設自体を街の一部として位置づける体験設計です。THESIER・SS&W・Three Fieldsとの連携は、いずれも東京・神奈川に拠点を置く事業者との組み合わせで、地域性のある体験を滞在の付加価値として積み重ねています。
インバウンド需要の拡大と都市型ホテルに求められる役割
インバウンド需要の急拡大を背景に、訪日外国人ゲストを取り込める都市型ホテルへの期待が高まっています。その環境に照らすと、東急ステイ渋谷 恵比寿の多機能設計は筋の良い取り組みとして評価できそうです。
日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2025年の訪日外客数は約4,268万人と過去最高を更新し、前年比15.8%増を記録しました。4,000万人超えは初めてで、インバウンド市場が量・質ともに拡大し続けている状況が確認できます。一方、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、2025年の外国人延べ宿泊者数は約1億7,729万人泊と前年比約8.4%増で過去最高となっており、都市部の宿泊施設に対する旺盛な需要が続いていることが分かります。
こうした需要環境に加え、観光庁が令和7年3月に公表した宿泊業向けの生産性向上のためのハンドブックでは、訪日客ニーズの多様化を踏まえた施設運営の高付加価値化が重要な視点として挙げられています。ダイニング機能の充実や周辺地域との連携による滞在体験の設計は、同資料が示す生産性向上の方向性とも整合しています。
恵比寿という立地は、渋谷・代官山・中目黒などを広域で取り込む広域渋谷圏のハブとして位置づけられており、都市観光のポテンシャルの高さを踏まえると、今回の取り組みは市場環境との相性が良い選択といえそうです。訪日客の滞在の長期化・滞在エリアの分散化が進むなか、多機能な都市型アパートメントホテルへのニーズは今後も堅調に推移することが見込まれます。
東急ステイ渋谷 恵比寿の体験設計と運用のポイント
東急ステイ渋谷 恵比寿が示す運用モデルには、宿泊・ダイニング・体験コンテンツを縦につなぐ設計の特徴があります。現場目線でポイントを整理します。

チェックイン体験から始まる地域コンテンツの連携
ウェルカムドリンクとしてのTHESIERオリジナルティーやHANG OUTコーヒーの提供は、チェックインの瞬間から滞在のストーリーを起動する設計です。従来のホテルに着いたら手続きして部屋に入るという流れを、ホテルに着いたらその土地のものに出会う体験に置き換える構造で、初来場時のブランド印象を高める効果が期待されます。導線として必要な条件は、スタッフが提供の意図と背景を簡潔に説明できるオペレーションの整備です。
ダイニングとイベントによる継続的な来訪理由の創出
月1回の東急ハーヴェストクラブとの連携フェアは、宿泊客以外の地域客にも来訪理由を継続的に生む仕掛けです。10日間限定のメニュー刷新は告知負荷も低く、食材や施設のストーリーを加えることでSNS拡散を誘発しやすい構成になっています。KPIの例として、フェア期間のダイニング売上・新規来客数・SNSメンション数を設定し、毎月の実績を次フェアの企画にフィードバックする運用が現実的です。
運用面での留意点
提携先の多様性はブランド体験の豊かさをもたらす一方、ゲストへの説明コストやスタッフのトレーニング範囲も広がるという側面があります。各パートナーとのコンテンツを絞り込み、最初のフェーズでは2〜3プログラムに集中してオペレーションを安定させてから順次拡張するアプローチが、現場の混乱を防ぐうえで安心です。
自施設の顧客価値強化に活かせるヒント
- 東急ステイ渋谷 恵比寿の事例を参考に、まず自施設周辺の食や体験に関わる事業者との小規模な連携から試してみると、低コストで滞在体験の差別化を始められます
- ウェルカムドリンクや客室備品など、ゲストが最初に触れるものにストーリーのある素材を取り入れることで、宿泊価値の認知を高めるという選択肢もあります
- ダイニング機能を持たない施設でも、地域のカフェや飲食店との提携カードや割引案内をチェックイン時に提供する形で同様の体験連携を実現することが可能です
- サステナビリティ施策は設備投資なしで着手できるものから始めておくと安心で、客室備品の見直しや地域産品の採用といった取り組みが第一歩として取り組みやすいです
まとめ
- 東急ステイ渋谷 恵比寿は、中長期滞在型アパートメントホテルの機能と地域連携コンテンツを組み合わせた顧客価値設計を都市型ホテルの新しい形として示しています
- JNTOの2025年統計が示す訪日外客数約4,268万人(前年比15.8%増)の環境下で、多機能な都市型宿泊施設への需要は引き続き強く、同施設のポジショニングはこの需要に合致しています
- ダイニング機能と地域事業者との協業は、客室稼働に依存しない付加価値収益モデルとして類似施設でも検討に値する取り組みです
- 自施設への応用は小規模な連携から始めておくと安心で、周辺事業者との関係構築が宿泊体験差別化の基盤となります
企業情報
東急不動産株式会社
所在地:東京都渋谷区
代表者:代表取締役社長 星野 浩明
事業内容:総合不動産デベロッパー(都市事業、住宅事業、ウェルネス事業、インフラ・インダストリー事業、海外事業)
公式サイト:東急不動産
東急リゾーツ&ステイ株式会社
所在地:東京都渋谷区
代表者:代表取締役社長 丹下 慎也
事業内容:ホテル・ゴルフ・スキー・EC事業等の施設運営(年間利用者数約680万人)
公式サイト:東急ステイ公式サイト
お問い合わせ先・公開情報
東急ステイ渋谷 恵比寿 公式サイト:https://www.tokyustay.co.jp/hotel/shibuya-ebisu-tokyo
TEL:03-3463-0109
参考資料
- 訪日外客統計(日本政府観光局、2025年年間)
- 宿泊旅行統計調査(観光庁、2025年年間)
- 宿泊業の生産性向上のためのハンドブック(観光庁、令和7年3月)


