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京成電鉄3400形トレインルームで学ぶ体験型コンセプトルーム戦略

京成電鉄3400形トレインルーム
CoCoRo編集部

京成電鉄3400形トレインルームは、鉄道ファン向けの体験型コンセプトルームとして稼働し、今回のバージョンアップによって宿泊業にとっても示唆に富んだ事例になったと言えるでしょう。この記事では、京成電鉄3400形トレインルームの取り組みのポイントを整理しながら、ホテル・旅館など宿泊施設が自館で体験価値を高め、収益と従業員エンゲージメントの両方を向上させるヒントをまとめます。

本記事のポイント

  • 京成電鉄3400形トレインルームのバージョンアップ内容から、体験型コンセプトルームの収益化・差別化ポイントを整理
  • 運転シミュレーターや展示拡充など、鉄道コンテンツを「リピーター戦略」「ファン化」の仕組みに転換する考え方を解説
  • 自館で同様のコンセプトルームや体験型プランを検討する際の、投資の考え方・現場運営・従業員巻き込みのヒントを提示

ニュースの概要

京成グループの千葉京成ホテルが運営する「京成ホテルミラマーレ」では、営業運転を終了した京成電鉄3400形の実物部品を活用したコンセプトルーム宿泊プラン「京成電鉄3400形トレインルーム」を提供しています。クラウドファンディングの支援を受けて誕生し、2023年10月の販売開始から2年間で延べ1,174名が利用するなど、鉄道ファンを中心に高い支持を集めてきました。

今回は運転体験シミュレーターの機能拡充と室内展示の追加によってバージョンアップします。シミュレーターには、京成本線(上り)成田空港〜京成上野間の全線運転区間が追加され、普通・快速・快速特急・通勤特急・特急まで全種別の運転体験が可能になりました。

さらに、リピーター限定の「スカイライナーモード」が新設され、3400形の運転台を使って、AE形スカイライナーや3100形アクセス特急でスカイアクセス線を疾走する、現実には存在しない特別仕様の運転体験も楽しめるようになります。室内装飾面では、実際の3400形で使用されていた方向幕3種類(種別幕・行先幕など)が新たに展示され、幕回しも体験できる展示が追加されました。

バージョンアップを記念して、2025年12月4日以降の宿泊者先着200名に、京成電鉄提供のノベルティグッズがプレゼントされます。客室は本館ラグジュアリーツイン(42㎡)1室のみで、1室2名朝食付き56,000円(税込・サービス料込)〜とし、大人3名+添い寝2名まで対応可能という設定です。

宿泊業にとってのポイント ― 「京成電鉄3400形トレインルーム」が示す体験価値

京成電鉄3400形トレインルームは、単なる「鉄道がテーマの部屋」ではなく、「本物の部品」「本物の運転台」「本線全線運転体験」という一次体験を組み合わせることで、高付加価値なコンセプトルームへと昇華させている点が特徴と言えそうです。

宿泊業にとっての主なポイントは次の通りです。

  • テーマの明確さと深さ
    • 京成電鉄3400形という“車両単位”にまでフォーカスしているため、コアなファンの心を強くつかみやすい構造です。
  • 体験価値の継続的アップデート
    • 販売開始から2年を経て、顧客の声を反映した「全線開通」や「スカイライナー運転」などの追加コンテンツを投入し、リピーター需要をさらに喚起しています。
    • 「バージョンアップ記念特典」のように、アップデートをニュース化しやすい設計にしている点も参考になるでしょう。
  • 希少性とプレミアム感の両立
    • 1室のみの提供とすることで、希少価値と予約の“取りづらさ”をブランド化しやすくしています。
    • 料金も、広さ・朝食付き・特別な体験価値を含めると「プレミアム体験として納得感のある価格帯」に収まっているように見えます。

鉄道テーマに限らず、温泉地の歴史・地元企業とのコラボ・スポーツチームとの連携など、自館ならではのテーマを深堀りすることで、類似の体験型コンセプトルームを設計できるのではないでしょうか。

背景と理由の整理 ― なぜ京成電鉄3400形トレインルームは支持されるのか

京成電鉄3400形トレインルームが2年間で1,174名の利用を集めた背景には、鉄道ファンマーケットだけでは説明し切れない要因があると考えられます。宿泊業の視点で、背景を整理してみます。

1. 体験ニーズと「推し活」トレンドの合流

  • 旅行者のニーズは「モノ消費」から「コト消費」「トキ消費」へとシフトしていると言われます。
  • 鉄道ファンにとって、「推し車両と一晩過ごす」「推しの運転台に座る」という、非常に分かりやすい“推し活”体験になっています。
  • 宿泊と体験をセットにしたパッケージは、旅行計画の中心目的にもなりやすく、宿泊単価の向上にもつながりやすいでしょう。

2. SDGs・サステナビリティの観点

  • 営業運転を終了した3400形の部品を再利用し、運転台や計器類、表示灯、車掌スイッチなどを生かしている点は、「廃棄せずに価値を再創造する」好例と捉えられます。
  • 宿泊業でも、古い備品や建材・地域資源をサステナブルな形で再活用する動きが広がりつつあり、京成電鉄3400形トレインルームはその象徴の一つと考えられます。

3. 従業員エンゲージメントへの波及

  • こうした特別なコンセプトルームは、スタッフにとっても「自分の施設ならではの強み」を理解しやすいコンテンツになります。
  • 予約対応時やチェックイン時に、「京成電鉄3400形トレインルームの楽しみ方」「運転シミュレーターのおすすめポイント」を説明することで、スタッフのロールプレイングや接客スキル向上の機会にもつながります。
  • 現場の声をもとに改良を重ねる仕組みをつくれば、従業員エンゲージメントの向上にも寄与しやすいでしょう。

このように、体験ニーズ・サステナビリティ・従業員エンゲージメントという複数の要素を一体の施策として実装している点で、宿泊業にとって学びの多い事例だと考えられます。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説 ― 京成電鉄3400形トレインルームのアップデート

ここでは、今回のニュースで発表された京成電鉄3400形トレインルームの具体的なバージョンアップ内容を、宿泊業の視点から整理します。

1. 運転シミュレーターの「全線開通」とラインナップ拡充

今回の大きな変更点は、京成本線(上り)成田空港〜京成上野間の全線運転が可能になったことです。

  • 追加区間
    • 京成津田沼→京成高砂(上り)
    • モーニングライナー(AE形) 成田空港→京成上野(上り)

これにより、利用者は普通・快速・快速特急・通勤特急・特急といった全種別を体験できるようになりました。宿泊業の目線で言えば、「初回利用時にすべて遊びきれない」ほどのコンテンツ量があることは、リピート動機の創出につながります。

2. リピーター限定「スカイライナーモード」

リピーター向けに、新たに「スカイライナーモード」が搭載されます。

  • 内容の例
    • AE形スカイライナー:京成上野→成田空港(スカイアクセス線・下り)
    • 3100形アクセス特急:京成上野→印旛日本医大(スカイアクセス線・下り)

現実には3400形が走らない区間・種別を、3400形の運転台で疑似体験できる“特別仕様”です。これは、「ファンが思わずニヤリとする」体験設計と言えるでしょう。

宿泊施設の立場から見ると、

  • 「リピーター限定モード」という名称で、会員制のような特別感を演出
  • 前回の宿泊情報(名前・住所・連絡先など)でリピーター判定を行うため、顧客情報の活用にもつながる

といった点が、CRM(顧客関係管理)の観点でも参考になります。

3. 室内展示の強化と「方向幕」コンテンツ

室内装飾では、実際の3400形で使用していた方向幕3種類が新たに展示されます。

  • 壁面に埋め込まれた種別幕(車両正面を再現)
  • 展示壁に設置した車両正面の行先幕
  • 車両側面の種別幕+行先幕(2種)

いずれも幕回しを楽しめる仕様となっており、「滞在中に何度でも遊べる展示」として機能します。写真映えしやすい要素でもあるため、SNS投稿を通じた口コミ拡散も期待しやすいでしょう。

4. バージョンアップ記念特典と販売設計

  • バージョンアップ日(12月4日)以降の宿泊者先着200名に、京成電鉄提供のノベルティグッズを進呈
  • 客室タイプ:本館ラグジュアリーツイン(42㎡)
  • 宿泊条件:大人3名+添い寝2名まで(未就学児)
  • チェックイン:13:00〜、チェックアウト:〜11:00
  • 料金:1室2名朝食付き 56,000円(税込・サービス料込)〜

単なる展示ではなく「記念グッズ」「写真映えコンテンツ」「たっぷり遊べる長めの滞在時間」とセットにした宿泊体験としてデザインしている点は、多くのホテル・旅館でも参考になる部分ではないでしょうか。

自社への活かし方のヒント ― 京成電鉄3400形トレインルームをモデルに考える

最後に、京成電鉄3400形トレインルームの事例を、自社の宿泊施設でどのように活かせるかを考えてみます。

1. テーマ設定と「本物」を軸にしたコンセプトづくり

  • 自館や地域が持つ資産を洗い出し、「本物」を軸にしたコンセプトルームや体験プランを検討してみると良さそうです。
    • 例:引退したバスや船舶の部品、地元工場の機械、伝統工芸の道具、スポーツチームのロッカー風ルーム など
  • 京成電鉄3400形トレインルームのように、名称にテーマをストレートに盛り込むことで、検索性と話題性を高めることができます。

2. シミュレーターや体験コンテンツの「段階設計」

  • 初回利用者向けに「基本コース」、リピーター向けに「特別モード」を用意するなど、体験を段階的に設計すると、再訪の理由を作りやすくなります。
  • 鉄道に限らず、VR・AR体験やワークショップ、ガイドツアーなどを組み合わせることで、滞在時間を“体験時間”に変換することができます。

3. 顧客の声とデータを起点にしたバージョンアップ

  • 京成電鉄3400形トレインルームのバージョンアップは、「京成本線全線を運転したい」「スカイライナーを運転したい」という顧客の声に応える形で行われています。
  • 自館でも、アンケートやSNS投稿、レビューサイトのコメントを定期的に分析し、年に一度はコンセプトルームや体験プランを見直すサイクルを作ると、常にニュース性を維持しやすくなります。

4. 従業員エンゲージメントと教育への活用

  • 特別ルームや体験プログラムを、スタッフ教育や評価の仕組みと結びつけることも有効です。
    • 例:
      • 「京成電鉄3400形トレインルームの魅力を30秒で説明するロールプレイ」研修
      • シミュレーター操作説明マニュアルを現場スタッフと一緒にブラッシュアップするワークショップ
  • こうした取り組みは、現場が「コンセプトの共創者」として関わるきっかけとなり、従業員エンゲージメントの向上にもつながるかもしれません。

自館ですぐに大掛かりな設備を導入することは難しい場合も多いと思いますが、「本物の活用」「リピーター限定コンテンツ」「顧客の声を反映したバージョンアップ」という考え方は、比較的低コストな施策からも応用できるのではないでしょうか。

まとめ

  • 京成電鉄3400形トレインルームは、本物の運転台や部品を活用し、運転シミュレーターや展示を組み合わせることで、高付加価値な体験型コンセプトルームとして成功している事例です。
  • 顧客の声を反映した「京成本線全線開通」やリピーター限定の「スカイライナーモード」など、京成電鉄3400形トレインルームのバージョンアップは、リピート促進とファン化を意識した設計と言えるでしょう。
  • 自館でも、地域資源や自社アセットを生かした「本物志向」のコンセプトルームや体験型プランを検討することで、差別化と単価アップを同時に目指せるという選択肢もあります。
  • まずは小さなテーマルームや限定プランから試し、顧客の声と従業員の意見をもとに段階的にバージョンアップしていくと安心です。

企業情報

  • 会社名:京成電鉄株式会社

本リリースに関するお問い合わせ

  • 会社名:京成ホテルミラマーレ
  • 部署名:フロント
  • 電話番号:043-222-2111

出典表記

出典:PR TIMES『「京成電鉄3400形トレインルーム」がバージョンアップ!運転体験シミュレーターついに、京成本線全線開通!2025年12月4日(木)よりご利用開始』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000164008.html)

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