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リゾナーレ八ヶ岳 宿泊者限定ワイン体験に学ぶ「ここでしか味わえない滞在」のつくり方

Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024
CoCoRo編集部

リゾナーレ八ヶ岳では、真夜中に収穫したシャルドネのみで醸造したワイン「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」を、宿泊者限定で提供する取り組みをスタートすると発表しています。本記事では、このリゾナーレ八ヶ岳の事例を手がかりに、地域ワイナリーとの連携で「ここでしか味わえない滞在価値」をどう設計し、客単価やリピーター、従業員エンゲージメント向上につなげていくかを、宿泊業目線で整理します。

本記事のポイント(リゾナーレ八ヶ岳の宿泊者限定ワイン企画)

  • リゾナーレ八ヶ岳がドメーヌ ミエ・イケノと提携し、「ナイトハーベスト」というストーリー性の高いワインを宿泊者限定で提供する狙いを整理します。
  • メインダイニング「OTTO SETTE」とワインショップ「八ヶ岳ワインハウス」をつなぐ導線から、客単価アップと体験価値向上を両立する設計のヒントを読み解きます。
  • 自社の規模にかかわらず応用できる、「地域の造り手と組んだ一杯づくり」や、スタッフの説明力を高める研修・エンゲージメント施策の考え方を提案します。

ニュースの概要(リゾナーレ八ヶ岳の新ワイン企画)

自然豊かな八ヶ岳エリアに位置するリゾナーレ八ヶ岳は、八ヶ岳山麓のワイナリー「ドメーヌ ミエ・イケノ」との提携により、2024ヴィンテージのシャルドネから「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」と「Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」の2種類を宿泊者限定で販売すると発表しています。販売開始は12月6日で、滞在ゲストのみが楽しめる限定企画です。

「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」は、月明かりの下、真夜中に収穫する「ナイトハーベスト」で摘んだシャルドネだけを使用したワインと紹介されています。冷えた果実をそのまま仕込みまでつなげることで、豊かな香りときれいな酸味を閉じ込めたスタイルが特徴とされています。

真夜中の葡萄収穫の様子
真夜中の葡萄収穫の様子

一方、「Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」は、オーク樽で丁寧に熟成させたワインで、柑橘やハーブ、サンダルウッドなどの香りと、柔らかな口当たり、バランスの取れた酸味が魅力と説明されています。

これらのワインは、リゾナーレ八ヶ岳のメインダイニング「OTTO SETTE」で料理とのマリアージュとして提供されるほか、ワインショップ「八ヶ岳ワインハウス」でボトル購入も可能です。ワインハウスでは、山梨・長野産ワイン24種類を少量からテイスティングできる環境も整えられており、ゲストが気に入ったワインを客室やレストランで楽しめるようになっています。

宿泊業にとってのポイント(リゾナーレ八ヶ岳の事例から)

リゾナーレ八ヶ岳のように「ここでしか飲めないワイン」を設計する意味

リゾナーレ八ヶ岳の取り組みは、「ナイトハーベスト」「月香」「八ヶ岳山麓の小さなドメーヌ」といった要素を組み合わせ、「この場所で、この季節に、この宿に泊まった人だけが味わえる一本」を打ち出している点が特徴的です。

宿泊業にとって、こうした唯一性の高い商品は、単なる物販ではなく「滞在全体の記憶に残るシーン」をつくる装置ともいえそうです。ワインそのもののクオリティはもちろん重要ですが、それ以上に「どうしてこの土地で、このスタイルのワインなのか」という背景ストーリーを含めて設計することで、価格以上の価値を感じてもらいやすくなります。

宿泊者限定という設計で体験価値と客単価を両立

今回のワインは「宿泊者限定」という条件が付いています。これは、一般的なワイン販売ではなく、「宿に泊まること自体の価値」を高める設計と考えられます。

  • 宿泊者だけがアクセスできる限定商品
  • ダイニングでのペアリング、ワインショップでの購入、客室でのくつろぎという一連の体験
  • 「滞在しないと買えない・飲めない」という希少性

これらを組み合わせることで、宿泊単価だけでなく、館内消費の単価アップも期待できる構造になっています。リゾナーレ八ヶ岳のように、「泊まる意味」を商品設計の段階から織り込む視点は、他の宿泊施設にも参考になりそうです。

ワイン体験が従業員エンゲージメントにもつながる可能性

このようなストーリー性の高い商品は、従業員のエンゲージメント向上にも寄与しやすいと考えられます。リゾナーレ八ヶ岳でも、ブドウ畑やナイトハーベストの話、醸造家のこだわりなどをスタッフがゲストに語ることで、「ただ提供するだけ」のサービスから一歩踏み込んだコミュニケーションが生まれそうです。

  • スタッフがワイナリーを見学し、造り手の話を聞く
  • テイスティング研修を通じて味の違いを体感する
  • ストーリーを自分の言葉で説明できるようになる

こうしたプロセスを踏むことで、現場スタッフにとっても「誇りを持っておすすめできる一杯」となり、結果としてゲスト満足度と従業員エンゲージメントを同時に高めることにつながるかもしれません。

背景と理由の整理(リゾナーレ八ヶ岳とワイン体験の文脈)

八ヶ岳エリアのワイン文化とリゾナーレ八ヶ岳のポジション

ドメーヌ ミエ・イケノ 葡萄畑
ドメーヌ ミエ・イケノ 葡萄畑

リゾナーレ八ヶ岳は、「山岳のヴァカンツァが叶う街」をコンセプトに掲げ、八ヶ岳の自然とワイン文化を組み合わせた滞在を提供していると紹介されています。ドメーヌ ミエ・イケノとの提携は2006年から続いているとされており、「土地のワインを楽しむ」ことが施設コンセプトの中核に位置づけられていると考えられます。

こうした長期的なパートナーシップがあるからこそ、単発キャンペーンではなく、「今年のヴィンテージ」「今季のマリアージュコース」といった継続的な企画が打ち出しやすくなります。地域ワイナリーと信頼関係を築き、自施設のブランドと結び付けていく姿勢は、多くの宿泊施設にとってヒントになりそうです。

旅行者の志向変化と「地元の一杯」

近年の旅行では、「地元らしさ」や「ローカルな造り手との出会い」を求める動きが強まっています。ワインはその象徴的なコンテンツのひとつであり、ブドウ畑や醸造家のストーリーが伝わるほど、その土地への愛着や再訪意欲にもつながりやすくなります。

リゾナーレ八ヶ岳のように、ワイナリーを「仕入れ先」としてではなく、「パートナー」として位置付けることで、単なる商品の提供から、「地域の物語を共有する場づくり」へとステップアップしていると見ることもできそうです。

ナイトハーベストというストーリー性

「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」は、月光の下、真夜中にブドウを収穫する「ナイトハーベスト」を採用していると紹介されています。気温が下がる時間帯に果実を収穫し、冷えた状態のまま仕込みを行うことで、香りと酸味を保つという技法です。

この「夜に収穫する」という事実は、テクニックであると同時に、滞在体験の物語にもなり得ます。例えば、チェックイン時に「今夜のディナーでお出しするワインは、八ヶ岳の畑で真夜中に収穫したシャルドネなんです」と伝えるだけでも、ゲストの記憶に残る一言になりそうです。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説(リゾナーレ八ヶ岳×ドメーヌ ミエ・イケノ)

月の光を閉じ込めた「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」

Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024
Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024

「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」は、淡い金色の外観を持ち、洋梨やカリン、白桃、グレープフルーツ、パイナップルといった果実の香りに加え、オレンジリキュールのようなニュアンスも感じられると説明されています。締まった酸味とほのかなキャラメル、グレープフルーツピールの香りが重なり合う、香り豊かなスタイルとされています。

現場のオペレーション目線で見ると、ソムリエやサービススタッフがこうした香りの要素を自分の言葉で言い換えられるようにしておくことで、ゲストとの会話が弾みやすくなります。「月の光で育ったような、きれいな酸のシャルドネです」といった一言が添えられるだけでも、印象は大きく変わります。

樽熟成の「Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」

Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024
Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024

「Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」は、緑がかった淡い黄金色と、柑橘の皮やハーブ、サンダルウッドを思わせる香りが特徴とされています。柔らかな口当たりとバランスの取れた酸味を備えたワインで、樽熟成による奥行きが料理とのペアリングを広げてくれるスタイルと考えられます。

2種類のシャルドネを揃えることで、料理やゲストの好みに応じた提案がしやすくなります。例えば、「前菜には月香を、魚料理にはシンフォニー八ヶ岳を」といった組み立てができれば、ペアリングコースの価値も高まりやすいでしょう。

メインダイニング「OTTO SETTE」でのマリアージュ提案

メインダイニング「OTTO SETTE」は、「ワインと野菜」を意味する「Vino e Verdura」をコンセプトとし、地域の食材をふんだんに使ったコースを提供していると紹介されています。ワインカーヴを思わせる空間で、冬限定コースとともに「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」や「Mie Ikeno シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」を味わえる構成です。

宿泊業の視点で見ると、以下のような工夫が参考になりそうです。

  • コース料理に合わせたペアリングコースを明確な価格で設定する
  • メニュー上で、ワインと料理の関係性を一言で説明するコピーを用意する
  • ナイトハーベストや八ヶ岳の畑の写真を、メニューや店内でさりげなく見せる

リゾナーレ八ヶ岳のように、「ダイニング自体のコンセプト」と「地域ワインのストーリー」が一体になっていると、ゲストの理解も深まりやすくなります。

「八ヶ岳ワインハウス」でのテイスティングとボトル販売

リゾナーレ八ヶ岳のワインショップ「八ヶ岳ワインハウス」では、宿泊者限定で今回の2種類のワインをボトル販売するほか、山梨県と長野県のワイン24種類を、25mlからテイスティングできる環境を整えているとされています。

この構成は、次のような点で優れた導線設計といえそうです。

  • ダイニングでワインの印象が良ければ、そのままワインハウスでボトル購入につながる
  • 少量テイスティングで新たな好みを発見してもらい、次の食事やリピーター利用のきっかけをつくれる
  • BYO(ワイン持ち込み)サービスを組み合わせることで、「お気に入りの1本を連れてレストランへ」という体験も設計できる

リゾナーレ八ヶ岳のように、「飲む場所」「買う場所」「客室で楽しむ場所」をきちんと設計しておくと、館内消費の総量を自然に高められそうです。

自社への活かし方のヒント

小規模宿でもできる「地域の一杯」のつくり方

リゾナーレ八ヶ岳とドメーヌ ミエ・イケノの提携は、スケールの大きなリゾートの事例に見えるかもしれませんが、考え方自体は中小規模の旅館・ホテルでも応用可能です。

例えば次のようなステップが考えられます。

  1. 自館から30〜60分圏内で、小規模ワイナリーやブルワリー、酒蔵、ロースターなど「造り手」を探す
  2. その造り手の定番商品の中から、自館のコンセプトに合う一本を選ぶ
  3. ラベルや黒板、メニュー上に「この一杯が生まれた背景」をひと言コメントで紹介する
  4. 可能であれば、造り手を招いた試飲会やゲストトークを年数回行う

リゾナーレ八ヶ岳のような完全オリジナルワインでなくても、「地域の造り手とタッグを組んだ一杯」があるだけで、滞在の印象は大きく変わってきます。

F&Bとショップ、客室をつなぐ導線設計

「八ヶ岳ワインハウス」全景
「八ヶ岳ワインハウス」全景

今回の事例では、「OTTO SETTE」でのペアリング体験から「八ヶ岳ワインハウス」での購入、そして客室での二次利用までが、ひとつのストーリーとして設計されています。

自社で導入する場合は、次のような観点で導線を見直してみると良さそうです。

  • レストランと売店の距離・動線を、食後に立ち寄りやすい配置にできるか
  • メニュー上に「気に入ったワインは館内ショップで購入できます」と一文を添えられるか
  • 客室に「本日のワインのご案内」など簡単なリーフレットを置く余地があるか

リゾナーレ八ヶ岳のように、「飲む」「買う」「持ち込む」の関係性を分かりやすく示しておくと、ゲストにとっても行動しやすくなります。

リゾナーレ八ヶ岳のようにストーリーを「言語化」して伝える

リゾナーレ八ヶ岳
リゾナーレ八ヶ岳

ナイトハーベストや月光をテーマにしたワインは、視覚的・言語的なストーリーづくりに非常に向いています。自社で地域の一杯を打ち出す場合も、次のような要素を意識して言語化すると、スタッフが説明しやすくなります。

  • どの地域の、どんな畑・工房・蔵で生まれたか
  • どのようなこだわりや苦労があるのか
  • 自館のコンセプトとどの部分で共鳴しているのか

リゾナーレ八ヶ岳の事例を参考に、「この宿でこの一杯を飲む意味」を一文で言い表すコピーをつくっておくと、現場のトークも統一しやすくなるでしょう。

従業員教育と評価への落とし込み

最後に、従業員エンゲージメントの観点です。リゾナーレ八ヶ岳のようなワイン企画は、ただのアップセル施策として捉えるのではなく、「スタッフが成長を感じられる場」として設計しておくと良さそうです。

例えば、

  • 新人スタッフ向けに「ワインの基本+地域ワインのストーリー」研修を設ける
  • 一定の説明や提案ができるスタッフには、評価やインセンティブで応える
  • 醸造家や生産者と直接話す機会を設け、モチベーションアップにつなげる

といった取り組みです。リゾナーレ八ヶ岳のように、地域のパートナーと組んだ商品を軸に、学びと評価の機会をつくる発想を持っておくと、長期的な人材定着にも寄与しやすくなりそうです。

まとめ

  • リゾナーレ八ヶ岳の「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」と「シンフォニー八ヶ岳 Chardonnay 2024」は、ナイトハーベストや宿泊者限定販売など、滞在価値そのものを高める要素を備えた事例といえそうです。
  • 地域ワイナリーや造り手との連携は、規模の大小にかかわらず、各地の宿泊施設でも応用しやすい選択肢があります。小さな一杯でも「ここで飲む意味」を言語化しておくと安心です。
  • メインダイニングとショップ、客室をつなぐ導線を意識し、リゾナーレ八ヶ岳のように館内体験を一つのストーリーとして設計しておくと、客単価アップとゲスト満足の両立を図りやすくなります。
  • 従業員研修や評価に、地域ワインや食のストーリーを組み込むことで、現場スタッフのやりがいを高めるという選択肢もあります。こうした視点を持って準備しておくと安心です。

企業情報

施設情報(リゾナーレ八ヶ岳)

  • 施設名:リゾナーレ八ヶ岳
  • 所在地:〒408-0044 山梨県北杜市小淵沢町129-1
  • 電話:050-3134-8093(リゾナーレ予約センター)
  • 客室数:172室
  • チェックイン/チェックアウト:チェックイン 15:00/チェックアウト 12:00
  • 料金:1泊25,000円〜(2名1室利用時1名あたり、税・サービス料込、食事別)
  • アクセス:JR小淵沢駅から車で約5分(無料送迎バスあり)
  • 施設公式サイトURL:リゾナーレ八ヶ岳 公式サイト

出典:PR TIMES『【リゾナーレ八ヶ岳】月の光の下、真夜中に収穫したシャルドネのみで醸造したワイン「Mie Ikeno 月香 Chardonnay 2024」を宿泊者限定で販売』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001946.000033064.html

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