Yard miyakojimaは、宮古島トゥリバー地区に誕生する“みんなの中庭”として設計された賑わい施設であり、2026年4月1日にキャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾートと同時開業を予定しています。
本記事では、Yard miyakojimaが宮古島の宿泊体験や観光動線にどのような変化をもたらしうるのかを整理し、ホテルや旅館の経営者・企画・現場マネージャーが、自施設の戦略にどう組み込めるかを考えるヒントをまとめます。
本記事のポイント
- Yard miyakojimaを「客室の外の滞在価値」を高める装置として捉え、宮古島の宿泊・観光体験を拡張する視点を整理
- クラフトビール、アイランドカフェ、中華レストラン、体験型ショップなど、多様なテナント構成を自施設の商品企画・連携にどう生かすかを解説
- 宮古島エリア全体での回遊性向上や、インバウンド対応・サステナブルな観光の観点から、Yard miyakojimaと周辺宿泊施設のつながり方を提案
ニュースの概要
Yard miyakojimaは、「(仮称)宮古島トゥリバー地区2期ホテル計画」の一部として整備された賑わい施設です。宮古島市平良のトゥリバー地区に位置し、隣接するキャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾートとともに、2026年4月1日の開業を予定しています。
コンセプトは、トゥリバー地区だけでなく宮古島全体の「みんなの中庭」。宮古島の植栽や果物、大地といった内陸部の魅力を取り入れたホテルと親和性を持たせながら、観光客と地域住民が共に過ごせる日常+旅の場づくりを目指しています。
施設は2階建てで、中庭を囲むように8つのショップとレストランが配置されます。クラフトビールブルワリー、スペインレストラン、コーヒー&マート、アイスクリーム&コーヒー、クリエイティブな中華レストラン、スキンケアブランドのギャラリーショップ、陶芸体験工房、スイムウェア・アパレルショップといった構成です。
屋上にはサンセットテラスも整備され、海辺リゾートらしい夕景を楽しめるビュースポットとしての活用も想定されています。宮古空港から車で約15分、下地島空港から約25分と、島のゲートウェイからもアクセスしやすいロケーションです。
宿泊業にとってのポイント|Yard miyakojima活用の視点
Yard miyakojimaは、隣接ホテルだけの付帯施設というよりも、宮古島エリア全体の宿泊・観光事業者が「外部リソース」として活用できるポテンシャルを持っています。
1. 客室外の体験を充実させる“共用リビング”的な場
観光庁の観光コンテンツ調査では、「ウェルネス」「ネイチャーアクティビティ」「イベント」「生活没入」など、滞在型・体験型の観光コンテンツが中長期トレンドとして示されています。(国土交通省)
Yard miyakojimaの中庭やサンセットテラス、クラフトビール、カフェ、陶芸体験などは、このトレンドと非常に相性が良い要素と言えます。客室や館内だけで完結しない「過ごし方の余白」を外部施設に補完してもらえる点は、宿泊業にとって大きなメリットではないでしょうか。
- 雨の日・チェックイン前後・連泊中の“手持ち無沙汰時間”の受け皿
- グループ旅行で「それぞれ別行動」をしやすい空間
- 宿泊施設内では提供しきれないジャンルの飲食・ショッピング・体験の外部委託先
として、Yard miyakojimaを旅程の中に組み込むことが考えられます。
2. 外部テナントを活用したF&B戦略の拡張
インバウンド受入のガイドでは、和朝食だけでなくコーヒーや洋朝食などの選択肢があると安心感につながるという声が紹介されています。
ただし、すべてを自前の厨房で用意するのは現実的でない施設も多いでしょう。Yard miyakojimaには以下のような飲食テナントがあり、外部連携によるF&B拡張が期待できます。
- mueh brewing:島の水と素材を活かしたクラフトビールと食事
- Island Café & Spanish Restaurant Blanquita:パエリアやカフェスイーツを提供するアイランドカフェ&モダンスパニッシュ
- DOUG’S COFFEE & MART:コーヒーと軽食、そして土産物も扱うコーヒーショップ兼マート
- SR ice cream coffee Miyakojima:アイスクリームと自家焙煎コーヒー
たとえば、
- 朝食を軽めにしたいゲスト向けに「Yard miyakojimaモーニング券」を販売
- 夕食を外で楽しみたい宿泊客向けに、mueh brewingやBlanquitaとの提携ディナーコースを設定
- 売店を持たない小規模宿は、DOUG’S COFFEE & MARTと連携し“滞在中のミニコンビニ”的存在を案内
といった使い方が考えられます。
3. インバウンド対応・多様なニーズへのワンストップ対応
観光庁の「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」では、多様な食習慣・宗教的習慣を持つ旅行者が増えており、飲食・宿泊事業者の対応が重要とされています。(国土交通省)
すべての宿が自前でフル対応するのは負荷が大きいため、
- ハラールやベジタリアン対応の余地があるメニューを持つ店舗をYard miyakojima内で把握し、必要なゲストに案内
- 英語メニューやアレルギー表記の整備状況を宿側で確認し、安心して紹介できる店舗リストを社内共有
といった「地域の中で役割分担するインバウンド対応」が現実的な解決策になりそうです。
背景と理由の整理|Yard miyakojimaが宮古島にもたらす文脈
1. 宮古島の観光・宿泊を取り巻く環境
訪日外国人旅行者数は2024年に約3,700万人と過去最高を記録し、観光需要はコロナ前を上回る水準に回復しています。(国土交通省)
一方で、観光庁がとりまとめた調査では、日本の観光コンテンツは「宿泊・移動」に比べて現地体験や娯楽サービスの比率がまだ低いという課題も指摘されています。(国土交通省)
宮古島のようなリゾート地では、
- 日中は海やアクティビティに出かける
- 夜はホテル内で食事を取って完結する
というパターンが多く、エリア全体での「街歩き」「ナイトライフ」「文化体験」の余地がまだ大きいと言えそうです。
Yard miyakojimaは、海だけでなく「食・カルチャー・買い物・体験」を束ねるハブとして、このギャップを埋める役割を担えるかもしれません。
2. 世界的潮流としての“生活没入型・ウェルネス型”コンテンツ
世界的な観光トレンドの調査では、以下のようなキーワードが中長期トレンドとして整理されています。(国土交通省)
- ウェルネス(心身のリセット・癒やし)
- ネイチャーアクティビティ(自然とのふれあい)
- イベント(音楽・フェス・季節行事)
- 生活没入(ローカルの暮らし・文化への参加)
Yard miyakojimaのテナント構成を見ると、
- クラフトビール、スペイン料理、中国料理、コーヒー・スイーツなどの多様な飲食体験
- 首里石鹸のギャラリーショップによる香り・スキンケアのウェルネス体験
- やちむん陶芸工房によるクラフト・アート体験
- 宮古島限定アイテムを扱うALEXIA STAMでのリゾートファッション体験
といった形で、「生活没入」や「ウェルネス」に直結しやすいコンテンツが揃っています。
3. インバウンド受入環境と多言語対応の必要性
インバウンド受入のガイドラインでは、メニューの英語表記や、フォーク・ナイフと箸の選択肢、コーヒーや洋朝食の提供などが、外国人ゲストの安心感向上に役立つとされています。
また、インバウンド研修テキストでは、スマートフォン翻訳や多言語コミュニケーションシートの活用など、「完璧な英語」ではなくツールを組み合わせた対応の重要性が強調されています。
Yard miyakojimaのように複数の店舗が集積する施設では、
- 施設としての案内サイン・フロアマップの多言語化
- 各店舗のメニュー・POPの多言語対応
- 宿泊施設との間で共有する共通の多言語案内ツール
を整備することで、島全体の受入レベルを一段押し上げることができるでしょう。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説|Yard miyakojimaの構成を読み解く
ここでは、Yard miyakojimaのテナントや施設構成を、宿泊業目線で整理してみます。
1階:日常と旅をつなぐ「食とコーヒー」のゾーン
1階には、旅のリズムをつくる飲食・カフェ系テナントが集約されています。
- mueh brewing(クラフトビールブルワリー・ビアバー・レストラン)
- 宮古島の水と島の素材を使ったクラフトビール
- 地元客と旅行者の交流が生まれやすい「語らいの場」として機能
- Island Café & Spanish Restaurant Blanquita(スペイン料理・カフェ)
- 昼はパエリアやパスタ、ハンバーガー、パンケーキ・パフェなどのカフェメニュー
- 夜はシーフードスパニッシュとワイン・クラフトカクテル
- DOUG’S COFFEE & MART(コーヒーショップ兼マート)
- 朝の一杯や軽食、ちょっとした買い物をまとめて済ませられる
- 宮古島限定土産もあり、小規模宿の「外部売店」としても紹介しやすい
- SR ice cream coffee Miyakojima(アイスクリーム&コーヒー)
- 島の素材を生かしたアイスクリームと、エスプレッソ系ドリンク
- 花ブロックモチーフのタイルなど、写真映え要素も豊富
宿泊業の目線では、
- 朝・昼・夜いずれの時間帯にも使える飲食店舗が揃っている
- 「しっかり食事」と「軽くつまむ・コーヒー」双方のニーズに対応できる
という点が、滞在設計上の大きな武器になります。
2階:体験・カルチャー・ショッピングのゾーン
2階には、食だけでなく五感で楽しむ体験・ライフスタイル系の店舗が並びます。
- Chinese Restaurant 一凛 宮古(中華)
- 築地・鎌倉・有楽町で展開する一凛グループの新しい挑戦
- 宮古島の「大地と大海原」をテーマに、ローカル食材を活かしたクリエイティブ中華
- SuiSavon-首里石鹸-Yard miyakojima ギャラリーショップ(スキンケア・コスメ)
- 「香りひろがる。記憶よみがえる。」をコンセプトとした沖縄発スキンケアブランド
- 五感をテーマにした体験型ギャラリーとして、滞在中のウェルネス体験の核になりうる
- Laboratorio Arcadia(陶芸観光体験・販売)
- やちむん作り体験と、沖縄の匠による作品・自社オリジナル陶器の販売
- 洞窟のような空間で光と影を感じる特別な陶芸体験を提供
- ALEXIA STAM(スイムウェア・アパレル・雑貨)
- 水着を中心にしたリゾートファッションと、宮古島限定アイテム
- ビーチ滞在と連動したショッピング体験として、特に若年層・女性客との相性が高い
これらは、「観光地での消費」を単なる土産購入から、「自分のライフスタイルや価値観に関わる体験」へと引き上げるラインナップと言えるでしょう。
屋上サンセットテラスとランドスケープ
屋上にはサンセットテラスが整備され、トゥリバー地区の外観デザインと合わせて、海・空・風を感じる開放的な空間になる予定です。
宿泊業としては、
- サンセットタイムに合わせた滞在プラン(サンセットテラス→ディナー→バー)
- 宿泊者向けの貸切イベントや小規模パーティーの可能性
- ヨガ・サンセットピラティスなど、ウェルネス系アクティビティとの連携
など、時間帯を意識した商品設計がしやすい要素と言えるでしょう。
自社への活かし方のヒント|Yard miyakojimaと連携するには
最後に、宮古島内外の宿泊事業者が、Yard miyakojimaをどのように自社の戦略に組み込めるか、具体的なアイデアを整理します。
1. ゲストジャーニーに「Yard miyakojima時間」を組み込む
まずは、ゲストの一日の流れを可視化し、その中にYard miyakojimaで過ごす時間を設計してみると良さそうです。
- 到着日:チェックイン前後の「軽い食事・コーヒー・散歩」に活用
- 滞在中:雨天時やアクティビティの合間の「街歩きスポット」として提案
- 最終日:チェックアウト後の「最後のランチ&お土産購入スポット」として案内
観光庁の事例では、宿泊体験の「一日の過ごし方」を具体的に示すことで、旅行者が滞在イメージを持ちやすくなり、予約の転換率が高まるとされています。
自社サイトや事前案内メール、客室内の案内ツールで「モデルコース+Yard miyakojima」を提案することが、集客や満足度向上につながるかもしれません。
2. 連携商品・クーポンで“共創型”の売上づくり
Yard miyakojimaのテナントとは、以下のような形で具体的な連携を検討できます。
- 宿泊プランに「mueh brewingのクラフトビール1杯付き」「Blanquitaのディナーコース付き」を組み込む
- 首里石鹸やLaboratorio Arcadiaの体験を組み込んだ「スパ&クラフトステイ」プランを造成
- ALEXIA STAMで使える割引クーポンを、女子旅・カップル向けプランの特典に設定
観光コンテンツ調査では、「体験商品×宿泊」を組み合わせたパッケージの重要性が指摘されています。(国土交通省)
自社だけで完結するプランではなく、「宿泊+Yard miyakojima体験」のような地域連携型の商品設計を検討しておくと、単価アップと滞在時間の延伸に結びつきやすいと考えられます。
3. インバウンド・食の多様性対応を“地域チーム”で
多様な食習慣・宗教的習慣への対応は、単独施設では限界があります。観光庁のガイドでも、まずは「できることから」「情報の見える化から」始めることが推奨されています。(国土交通省)
Yard miyakojimaを含む周辺エリアでは、
- 各店舗が対応できるアレルギー・ベジタリアン・ムスリム対応の有無を一覧化
- 宿泊施設と共有できる多言語メニュー・案内のテンプレートを作成
- 宿泊・飲食・体験事業者を対象にした簡易勉強会・試食会の実施
など、「エリア単位のフードダイバーシティ対応」が現実的ではないでしょうか。
4. 従業員エンゲージメント向上の“フィールド”として使う
生産性向上や人手不足解消のハンドブックでは、「施設が何者かを明確にし、従業員がその価値を共有すること」がエンゲージメント向上につながるとされています。
Yard miyakojimaをきっかけに、次のような取り組みも考えられます。
- 新入社員研修や現場勉強会で、テナントを回りながら「宮古島の新しい魅力」を体感する
- クラフトビールや陶芸、スキンケアブランドのストーリーを学び、自施設の接客トークに取り入れる
- スタッフ同士で「自分ならどんなコラボプランを作るか」を議論するワークショップを実施
こうした体験は、単なる外部施設の紹介にとどまらず、「地域と一緒に宮古島の滞在価値をつくる」という当事者意識を高めるきっかけになるかもしれません。
5. サステナブルな観光・オーバーツーリズム対策の観点
オーバーツーリズム対策の事例集では、観光客の集中を分散し、住民生活との調和を図る取組が重要だとされています。
Yard miyakojima周辺でも、
- 島内の他エリアと組み合わせた回遊ルートを提案し、特定スポットへの過度な集中を避ける
- 夜間や閑散時にイベントや体験プログラムを配置し、時間帯ごとの混雑を平準化する
- ランドスケープデザインを活かした「滞在型」の過ごし方をPRし、単純な“消費だけの観光”からの脱却を図る
といった工夫が、長期的には地域全体の魅力と持続可能性を高めることにつながるでしょう。
まとめ
- Yard miyakojimaは、宮古島トゥリバー地区に誕生する“みんなの中庭”として、宿泊施設の外側にある滞在価値を高めるハブになりうる存在です。
- クラフトビール、カフェ、スペイン料理、中華、スキンケア、陶芸、リゾートファッションなど、Yard miyakojimaの多様なテナントは、「宿泊+体験」「宿泊+食」を組み合わせた新しい商品設計の素材になるでしょう。
- インバウンドや多様な食習慣への対応を、Yard miyakojimaを含めたエリア全体で分担していくことで、自施設だけでは難しいニーズにも応えやすくなります。
- 従業員エンゲージメントやサステナブルな観光の観点からも、Yard miyakojimaを研修や地域連携のフィールドとして活用しておくと安心です。
参考資料
出典:PR TIMES『「(仮称)宮古島トゥリバー地区2期ホテル計画」の「賑わい施設」竣工 『Yard miyakojima』2026年4月1日 開業予定』(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000332.000016002.html)


