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大丸別荘 お土産処リニューアルに学ぶ旅館売店づくりのポイント

旅の余韻と地元の魅力を接続する“もうひとつの大丸別荘”「大丸別荘のお土産処」をリニューアル
CoCoRo編集部

大丸別荘 の「大丸別荘のお土産処」リニューアルは、老舗旅館が売店を“もうひとつの大丸別荘”として位置づけた取り組みです。宿泊業に携わる皆さまにとって、旅の余韻と地元の魅力をどう売店で接続するか、その具体的なヒントになる事例ではないでしょうか。
本記事では、このニュースを整理しつつ、旅館・ホテルの売店戦略や従業員エンゲージメント向上、地域連携の観点から実務に落とし込めるポイントを解説します。

本記事のポイント

  • 大丸別荘 のお土産処リニューアルは、「地のもの」と「大丸別荘らしさ」で売店を滞在体験の延長として設計している点が参考になります。
  • 地元食材・オリジナル商品・歴史を感じるアイテムを三層で構成し、地域と老舗旅館のブランドを同時に伝える売店づくりの考え方が学べます。
  • 大丸別荘 のように、売店をEC展開やマルシェ企画と連動させることで、「帰ってからも続く旅」を設計し、リピーターづくりや単価アップに活かすことができそうです。

ニュースの概要

福岡県筑紫野市・二日市温泉の老舗旅館 大丸別荘(株式会社大丸別荘)は、館内売店を「大丸別荘のお土産処」としてリニューアルしたと発表しています。テーマは「地のもの」と「大丸別荘らしいもの」。朝食や館内のしつらえで大切にしてきた“本物志向”をそのまま売店の商品構成に反映し、滞在中だけでなく自宅でも楽しめるラインナップを揃えたと説明しています。

売店の空間デザインでは、ブルーとイエローの絨毯が印象的な「迎賓の間」との連続性を意識しつつ、ショーケースや棚の高さを揃えて商品を見やすくし、木調什器で館内の世界観になじむ設えとしたとしています。単なる物販スペースではなく、「大丸別荘という体験の延長」として設計した点が特徴です。

取り扱い商品は、地元・筑紫野や福岡の食材(うちのたまごや地元加工品など)、大丸別荘オリジナル菓子(ハラペコラボとコラボした商品)や松山油脂と共同開発したソープ、さらに文化財建築をモチーフにしたグッズや職人との一点物など、多層的な構成になっています。

このリニューアルは、創業160周年に合わせた「大丸別荘リニューアルプロジェクト」の一環と位置づけられており、今後は季節限定ミニマルシェやオリジナル商品の追加開発、EC展開、地元食材とのコラボレーションなどを通じて、宿の文化を広く発信する場にしていくとしています。

大丸別荘のお土産処

宿泊業にとってのポイント

大丸別荘 の“もうひとつの玄関口”としての売店の意味

大丸別荘 は、売店を「旅の余韻を持ち帰るもうひとつの玄関口」と位置づけています。これは、チェックアウト直前まで“大丸別荘の物語”を感じてもらう装置と考えることもできそうです。

多くの宿泊施設で、売店は「最後に立ち寄る物販スペース」として扱われがちですが、大丸別荘 のケースでは、

  • 館内デザインと連続性のある空間構成
  • 地元食材・宿オリジナル・歴史商品を組み合わせた編集
  • 今後のマルシェ・ECとの連動構想

などから、「ブランド体験の最終章」としての役割を明確化していると読み取れます。こうした発想は、客単価アップだけでなく、宿への愛着や口コミ醸成にもつながる可能性があります。

大丸別荘 のお土産処がつくる“地元×宿”の共創関係

大丸別荘 のお土産処では、うちのたまごなど地元食材と、ハラペコラボや松山油脂とのコラボ商品、文化財建築モチーフのグッズなどを一体的に扱っています。これは、地域の一次産業・加工業・クリエイターを巻き込んだ「小さなマーケット」のような構造です。

観光庁の調査でも、旅行者の関心は“観光地を見る”だけでなく、地域コミュニティや日常生活に触れる「生活没入型」の体験へと広がっているとされています。
この観点から見ると、大丸別荘 の売店は、宿泊と地域の日常をつなぐ入り口として機能し得る構成になっていると言えそうです。

従業員エンゲージメントとオペレーションの観点

売店を「文化の入口」として位置づけると、スタッフの関わり方も変わってきます。

  • 商品説明が「この商品はどこから来たのか」「大丸別荘 とどう関わるのか」という物語紹介になる
  • 仕入れや商品選定に、現場スタッフが参加できる余地が生まれる
  • マルシェやイベント企画など、スタッフのアイデアを活かしやすい

観光庁の生産性向上ハンドブックでは、施設の生産性・業務の生産性・顧客価値の3つの観点で経営改善を進めることが推奨されていますが、
売店を戦略的に位置づけることは、このうち「顧客価値」と「業務の生産性」を同時に高める余地がある部分だと考えられます。

背景と理由の整理

大丸別荘 のような老舗旅館が“売店強化”に踏み切る背景

大丸別荘 は創業160年の老舗旅館です。こうした歴史ある宿でも売店リニューアルに踏み切る背景として、以下のような業界全体の流れが考えられます。

  • 訪日客・国内旅行ともに、「モノ」だけでなく「ストーリー」や「背景」に価値を置く傾向が強まっている
  • 物価高や人件費上昇のなかで、付帯収益(売店・アクティビティなど)を伸ばす必要性が高まっている
  • SNSを通じた口コミで、「買ったもの」そのものが旅館の広告媒体になる

観光庁の報告書では、世界的トレンドとして「ウェルネス」「生活没入」「聖地巡礼」などのキーワードが挙げられ、日本コンテンツの高付加価値化や地方誘客において、体験と消費を一体で設計する重要性が示されています。
大丸別荘 のように、売店を通じて“宿の日常”や“地域の営み”を持ち帰ってもらう発想は、まさにこの流れに沿った動きと見ることができそうです。

サステナブルな観光とお土産戦略

持続可能な観光の文脈では、「環境・地域社会・経済」のバランスを取りながら観光を設計することが求められています。

大丸別荘 のお土産処のように、

  • 地元生産者や職人の商品を扱う
  • 長く使える生活雑貨や、ストーリー性のある工芸品を選ぶ
  • 文化財建築の価値を伝えるアイテムを揃える

といった取り組みは、地域経済への還元と文化継承の両面で効果が期待できる構成です。
「大量に並べて大量に売る」売店から、「選び抜いた地のものを丁寧に届ける」売店へシフトする流れは、サステナブルな観光の観点からも押さえておきたいポイントです。

インバウンド需要と“買いやすさ”の整備

訪日客が増える中で、食の制限や宗教的背景、文化の違いを踏まえた商品設計・情報提供も重要になっています。観光庁のガイドでは、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム旅行者への配慮として、原材料表示やコミュニケーションの工夫が求められるとされています。

売店であっても、

  • アレルギー・ハラール・ベジ対応など、最低限の英語表示
  • 食品・コスメの成分や使用方法の分かりやすい説明
  • キャッシュレス決済や免税対応の検討

といった工夫があると、インバウンドの「買いやすさ」が大きく変わってきます。大丸別荘 の取り組みを参考に、インバウンド視点での売店改善も意識しておくと良さそうです。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説

大丸別荘 の空間デザインから学べること

大丸別荘 のお土産処は、「迎賓の間」の印象的な絨毯と連続した空間構成や、棚・ショーケースの高さを揃えた見せ方など、旅館全体の世界観と一体になった設計が行われています。

他の宿泊施設でも応用しやすいポイントとして、

  • ロビーやラウンジの雰囲気とトーンを合わせた売店の配色・素材選び
  • “写真を撮りたくなる”ディスプレイや導線(フォトスポットとしても機能)
  • 在庫を積み上げるのではなく「見せたいもの」を絞り込んでゆとりを持たせる陳列

などが挙げられます。
SNS時代には、売店そのものが発信の場になります。大丸別荘 のように「旅館の世界観を切り取った一角」としてデザインするだけでも、投稿したくなるシーンが自然と生まれてくるはずです。

地のもの×オリジナル×歴史商品の三層構成

大丸別荘 のお土産処では、商品カテゴリーが大きく三つのレイヤーに整理されています。

  1. 地元・筑紫野/福岡の食材
    • うちのたまごや地元加工品、季節の味覚など、地域の“おいしい日常”を感じられるラインナップ
  2. 大丸別荘オリジナル商品
    • ハラペコラボとのコラボ菓子
    • 松山油脂と開発したソープなど、宿の価値観を反映したプロダクト
  3. 160年の歴史を感じる商品
    • 文化財建築モチーフのグッズ
    • 地場職人との一点物など、“ここでしか買えない”要素

この三層構成は、他施設でもそのまま使える考え方です。

  • 「地域の味・素材」
  • 「宿ならではのオリジナル」
  • 「歴史や物語を伝えるもの」

の3カテゴリーで棚を区切るだけでも、商品構成にストーリーが生まれます。仕入れ会議やディスプレイを組み立てる軸としても活用しやすい整理です。

160周年プロジェクトとしての位置づけとマルシェ構想

大丸別荘 の売店リニューアルは、160周年リニューアルプロジェクトの一部とされています。今後は、

  • 季節限定のミニマルシェの開催
  • 新たなオリジナル商品の開発
  • ECサイトでの販売検討
  • 地元食材と旅館文化をつなぐコラボ企画

などを通じて、「売店=一方的な販売の場」から「地域とお客様が出会う場」へと育てていく方針です。

これは、宿泊施設が“地域のショーケース”として機能する一つの形とも言えます。地域の小さな生産者にとっても、観光客と接点を持つ貴重なチャネルになり得ますし、宿側にとっても新しい企画・収益源のタネになる可能性があります。

自社への活かし方のヒント

大丸別荘 を参考に、自館の“ストーリー軸”を決める

まずは、自館にとっての「大丸別荘らしさ」にあたるストーリーを言語化してみることがスタートラインです。

例として、次のような問いから始めてみると整理しやすくなります。

  • 自館の歴史や創業の背景で、お客様にもっと伝えたいエピソードは何か
  • 料理・温泉・建築・庭園など、どの要素が一番“その施設らしい”と感じるか
  • 地域のどんな生産者や職人と一緒に取り組めそうか

この“ストーリー軸”が決まると、

  • どんな商品を優先的に置くか
  • どんなポップや説明文を書くか
  • どんなイベントやマルシェを企画するか

といった意思決定がブレにくくなります。大丸別荘 が「地のもの」と「大丸別荘らしさ」を軸にしていることを、自館のテーマ設定の参考にしてみると良さそうです。

在庫とオペレーションをシンプルに保つ

売店リニューアルは「売るものを増やす」だけでなく、「業務を複雑にしない」ことも重要です。観光庁の経営改善マニュアルでは、施設の生産性・業務の生産性・顧客価値の3つをバランスよく高めることが、生産性向上の鍵だと整理されています。

実務的には、例えば次のような工夫が考えられます。

  • 取扱商品を「よく売れる定番」と「話題性のある少数の企画商品」に二分する
  • 棚ごとに「誰がいつ在庫をチェックするか」を決め、担当を明確化する
  • 仕入れ時に“廃棄リスク”も一緒に確認し、少量からテスト販売する
  • パートスタッフや若手も参加できる「売店ミーティング」を実施する

大丸別荘 のように、テーマに沿って商品を絞り込む発想は、オペレーションの負荷を抑えながら魅力的な売場を保つうえでも有効ではないでしょうか。

インバウンドを意識したお土産ラインナップと情報発信

インバウンド比率が高い施設ほど、売店は“体験を持ち帰る最後のチャンス”になります。
観光庁のインバウンド受入ガイドや多様な食習慣への対応ガイドでは、宗教・文化・食習慣ごとの配慮や、多言語でのコミュニケーションの重要性が繰り返し示されています。

大丸別荘 のお土産処を参考に、次のような点をチェックしてみると良さそうです。

  • 英語表記のない商品が多すぎないか(最低限、名称・用途・主要原材料は英語併記)
  • ベジタリアン・ハラール・アレルギー対応など、安心して購入できる情報が伝えられているか
  • クレジットカードや主要なQR決済への対応状況
  • SNSや公式サイトで、売店・お土産の情報を“体験ストーリー”と合わせて発信できているか

「大丸別荘 に泊まったら、このお土産を買いたい」という“指名買い”を生むには、館内だけでなくオンラインでの発信も欠かせません。

EC・会員制度で“帰ってからも続く旅”を設計する

大丸別荘 は、今後のEC展開を見据えているとしています。売店とECを連動させることで、

  • 宿泊後にお客様が同じ商品をリピート購入できる
  • 四季ごとの限定品やマルシェ情報をメールマガジンやSNSで案内できる
  • 会員向けに「お土産定期便」などの企画も検討できる

といった可能性が広がります。

最初から大掛かりなECサイトを構築する必要はなく、

  • 「人気商品だけを扱う小さなオンラインショップ」から始める
  • 売店のポップやレシートにQRコードを載せる
  • 宿泊者アンケートで「自宅でも買いたい商品」を聞いてみる

といった小さなステップからでも十分です。
大丸別荘 のように、売店を軸に「滞在後もつながる仕組み」を考えてみると、新しい収益源や顧客接点が見えてくるかもしれません。

まとめ

  • 大丸別荘 の「大丸別荘のお土産処」は、売店を“もうひとつの大丸別荘”と位置づけ、地のもの・オリジナル・歴史商品を組み合わせて旅の余韻を自宅につなげる構成が参考になります。
  • 観光トレンドやサステナブルな観光の流れを踏まえると、売店は地域の日常や文化を伝える重要なコンテンツになりつつあり、自館でもストーリー軸を決めた棚づくりを検討しておくと安心です。
  • 在庫・オペレーションをシンプルに保ちつつ、スタッフが商品選定やマルシェ企画に関われる仕組みを整えることで、従業員エンゲージメントと生産性の両方を高める選択肢もあります。
  • インバウンド対応やEC展開を視野に入れて、大丸別荘 のように「帰ってからも続く旅」をデザインしていくと、リピートや口コミにつながる新しい売店のあり方が見えてくるのではないでしょうか。

企業情報

  • 会社名:株式会社大丸別荘
  • 所在地:福岡県筑紫野市湯町1丁目20-1
  • 代表者名:山田 真大
  • 設立:1865年1月
  • 資本金:3,000万円
  • 事業内容:二日市温泉 大丸別荘の運営(旅館業・飲食業)
  • 公式サイト:二日市温泉 大丸別荘 公式サイト

本リリースに関するお問い合わせ

  • 会社名:株式会社大丸別荘
  • 所在地:福岡県筑紫野市湯町1丁目20-1
  • 電話番号:092-924-3939
  • FAX番号:092-924-4126
  • メールアドレス:info@daimarubesso.com
  • 備考:宿泊予約・日帰り利用・取材に関するお問い合わせは、上記連絡先または公式サイトのお問い合わせ窓口より受け付けています。

参考資料

出典:PR TIMES『旅の余韻と地元の魅力を接続する“もうひとつの大丸別荘”「大丸別荘のお土産処」をリニューアル』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000139442.html

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