ホテルファミリーオ館山が「TAUTAU Terrace Tateyama」として全面リニューアルオープンした今回のニュースは、海辺のリゾート再生やリブランディングを検討する宿泊業の方にとってヒントの多い事例と言えそうです。館山の夕日とともに“たゆたう”時間を軸に、約2,700㎡のテラスやフリードリンク&スナック、ワーケーション対応などを一体で設計したホテルファミリーオ館山の変化を整理し、自社で応用する視点をまとめます。既存施設のリニューアルで、地域との関係性や従業員エンゲージメントをどう高めていくかを考える材料としてお役立てください。
本記事のポイント|ホテルファミリーオ館山リニューアルの要点
- ホテルファミリーオ館山が等身大リゾート「TAUTAU Terrace Tateyama」として全面リニューアルし、海辺テラス・飲食・客室・ワークプレイスを再構成した狙いを整理します。
- 東京駅直通の高速バス延伸や「JRE Local Hub 館山」によるワーケーション機能など、館山エリアの宿泊業が参考にできるアクセス・働き方の取り込み方を解説します。
- 自館でも真似しやすい「海辺テラスの回遊導線」「フリードリンク&スナックの設計」「地域連携とサステナビリティ」「従業員エンゲージメント向上」の観点でチェックポイントを提示します。
ニュースの概要|館山リゾートホテルの全面リニューアル
株式会社ブルー・スカイ・アソシエイツは、東日本旅客鉄道株式会社千葉支社と連携し、旧・ホテルファミリーオ館山を全面リニューアルした「TAUTAU Terrace Tateyama(タウタウ テラス タテヤマ)」の運営を担い、本日2025年12月17日(水)に開業したと発表しています。ブルー・スカイ・アソシエイツが運営する施設としては8施設目となるそうです。
コンセプトは「南房総の海と夕日を眺め、時間を忘れて“たゆたう”海辺のホテル」。リニューアルに際しては、海へと続く約2,700㎡のテラス整備、館内レストランの一部改装とフリードリンク&スナックエリアの新設、館山の夕日をイメージした「サンセットイエロー」をキーカラーにした7タイプ・全31室の客室改装などを行ったとしています。テラスにはウッドデッキや芝生、砂場、リゾートチェア、ファイヤーピット、光るバナナモニュメントなどを配置し、自由な過ごし方ができる空間を目指しているとのことです。
飲食面では、南房総の旬の魚介に加え、シカやイノシシ肉を活用した「館山ジビエ」、地元野菜を用いた料理などを提供し、海と里山に囲まれた土地ならではの味わいを前菜からメインディッシュまで楽しめるとしています。客室は、テラスに面した「シーサイドテラスルーム・プレミア」、愛犬と泊まれる「ドッグフレンドリールーム」、ゆとりある「ユニバーサルルーム」などを用意し、観光・ビジネス双方の利用を想定した構成になっていると説明しています。
また、館内にはコワーキングスペースと一棟貸しレンタルオフィスから成る地方創生型ワークプレイス「JRE Local Hub 館山」を併設し、ワーケーション拠点や館山エリア内外のコミュニティをつなぐ場所として機能させるとしています。アクセス面では、ジェイアールバス関東の高速バス「房総なのはな号」が2025年12月12日から延伸され、「東京駅」と「タウタウテラス館山前」を結ぶ直通便(下り4便・上り3便)が毎日運行されると案内しています。

開業記念として、2025年12月17日〜2026年3月31日の期間(一部除外日あり)で、1泊2食付きプランが通常料金の30%オフとなる特別料金プランも設定したとしています。ホテル基本情報としては、所在地が千葉県館山市大賀81-17、総客室数31室、1泊2食付き21,000円〜(1室2名利用時の1名料金)、JR館山駅から車で約15分、東京駅八重洲口から高速バスで約2時間と紹介されています。
宿泊業にとってのポイント|ホテルファミリーオ館山リニューアル事例から
旧・ホテルファミリーオ館山の全面リニューアルは、「建物の刷新」だけでなく、海辺のロケーションを核にした滞在価値の再設計だと捉えることができそうです。特に、約2,700㎡のテラスを公園のように開放し、フリードリンク&スナックやファイヤーピットなどを組み合わせたことは、「客室滞在中心」から「共用部で過ごす時間」が主役のリゾート設計への転換と見ることができます。
観光庁が示している「宿泊事業者における経営改善マニュアル」では、生産性向上のために「施設の生産性」「業務の生産性」「顧客価値」の3つの観点から取り組みを整理する重要性が示されています。 ホテルファミリーオ館山のリニューアルは、このうち「顧客価値」と「施設の生産性」を同時に高める設計と捉えることができ、テラスやラウンジといった共用空間を活用した時間消費型の滞在価値づくりの好例と言えるでしょう。
さらに、「JRE Local Hub 館山」によるワーケーション対応や、高速バスのホテル前停車という新たなアクセス導線は、平日を含めた新たな需要の取り込みを狙った動きと考えられます。これにより、ホテルファミリーオ館山はリゾート宿泊だけでなく、テレワーク・合宿・地域の打ち合わせなど多用途な利用シーンを想定した「地域のハブ」としての役割も担おうとしているように見受けられます。
加えて、リニューアル後のホテルファミリーオ館山が「地域密着型ホテルとして地域の雇用創出や地産地消に貢献する」としている点は、宿泊施設向けのサステナブル観光の取組事例集で強調されている「地域住民と観光客双方の利益につながる取り組み」の方向性とも重なります。 単に“おしゃれなリゾート”を目指すのではなく、地域と共に持続可能なビジネスモデルを構築していく姿勢は、他地域の宿泊施設にとっても参考になる視点ではないでしょうか。
背景と理由の整理|館山エリアと宿泊業を取り巻く環境
館山エリアは首都圏からのアクセスが比較的良く、海水浴やマリンスポーツ、花摘みなどで知られる観光地です。一方で、近年は旅行スタイルが「遠くの非日常」から「身近なエリアでのゆったり滞在」にシフトしつつあり、日常と地続きの“等身大リゾート”へのニーズも高まっていると考えられます。ホテルファミリーオ館山が掲げる「時間を忘れてたゆたう海辺のホテル」というコンセプトは、この流れに合致した再定義と捉えられます。
観光庁の経営改善マニュアルでは、ポストコロナ時代の観光地再生と観光産業の強化を背景に、「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」に基づく実践的な指針を示しているとされています。 単に客室数や稼働率を追うのではなく、顧客単価や滞在時間の伸長、地域との協働などを通じて、宿泊事業の収益性と社会的価値を両立させる方向性が求められていると理解できます。
また、オーバーツーリズム対策の先行モデル地区の事例集では、観光客の受け入れと住民の生活の質の両立を図るために、二次交通の整備や需要の分散・平準化、地域住民との協働施策などが整理されています。 館山のような海辺リゾートにおいても、今後さらに来訪者が増える可能性を踏まえると、高速バスの延伸やホテル前停車といったアクセス強化は、地域全体の交通計画や渋滞対策とセットで考えていく必要があると言えそうです。
その意味で、旧・ホテルファミリーオ館山の再生は、「既存施設の活用」「アクセスの再設計」「地域との共創」「ワークプレイス機能の組み込み」という、ポストコロナ・ポストオーバーツーリズム時代の宿泊業が直面するテーマに対する一つの回答と見ることもできそうです。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説|TAUTAU Terraceとホテルファミリーオ館山
ここからは、ニュース本文に記載された取り組みを、ホテルファミリーオ館山のリニューアルという視点から整理し直してみます。
1. 約2,700㎡の海辺テラスを「滞在の主役」に

リニューアルの象徴が、海へと続く約2,700㎡のテラスです。ウッドデッキや芝生、砂場、リゾートチェア、ファイヤーピット、光るバナナモニュメントなどを組み合わせ、公園のような開放的空間としたと説明しています。
運営面では、こうした広い共用テラスを設けることで、
- チェックイン前後や食事の前後に滞在時間を自然に伸ばせる
- 子ども連れやグループ、ワーケーション利用者など、異なる属性が同じ空間でそれぞれの過ごし方を選べる
- 「夕日鑑賞」「焚き火時間」「テラスヨガ」など、時間帯別の小さなコンテンツを組み込みやすい
といったメリットが期待できます。
一方で、夜間の騒音管理や安全管理(火の取り扱い・転倒防止など)、雨天時の代替動線の設計など、運営ルールを明文化しておく必要もありそうです。
2. フリードリンク&スナックで「体験価値」と「オペレーション効率」を両立

館内レストランの一部をリニューアルし、フリードリンク&スナックエリアを新設した点も、ホテルファミリーオ館山リニューアルの大きな特徴です。房総半島のラムを用いたカクテルやビール、ソフトドリンク、ウェルカムバナナ、落花生スクープなどが提供され、テラスや客室、ロビーなどへ持ち込み可能としています。
この仕組みは、
- 「好きな時に・好きな場所で楽しめる」自由度を提供しつつ、
- 一定の時間帯にスタッフを集中配置すればオペレーションを効率化しやすい
- 地元産のラムや落花生を組み込むことで、地産地消とストーリーテリングがしやすい
という点で、顧客価値と業務効率の両立を図る仕掛けと言えます。
観光庁の経営改善マニュアルでは、顧客満足度と原価率の双方を見ながら、コストをかける価値のある商品と削減すべき商品を分類し、継続的に見直すことの重要性が示されています。 フリードリンクやスナックも「体験価値が高いアイテム」に絞り込み、原価管理をしながらメニュー構成を定期的に見直していくことがポイントになりそうです。
3. 7タイプ・全31室の客室と「ドッグフレンドリー」「ユニバーサル」対応
客室は、サンセットイエローをキーカラーにした7タイプ・全31室へ改装したとしています。シーサイドテラスルーム・プレミア、ドッグフレンドリールーム、ユニバーサルルームなど、ターゲットごとのニーズに合わせた構成が特徴です。

こうした複数タイプの客室構成は、
- ファミリー・カップル・ペット同伴・高齢者や障がいのある方など、多様なゲストを受け入れられる
- それぞれのニーズに合わせた料金設定がしやすく、ADR向上を狙いやすい
- 予約段階で「目的別のプラン設計」がしやすく、販売戦略を組み立てやすい
といったメリットがあります。
一方で、ドッグフレンドリーやユニバーサルルームは、清掃・備品・避難誘導など、通常客室とは異なるオペレーションが必要になります。マニュアル整備やスタッフ教育を怠ると、トラブル時の対応品質に差が出てしまうため、標準化と継続的な改善の仕組みづくりが重要です。観光庁のマニュアルでも、業務フローの可視化と標準化された手順書づくりの必要性が指摘されています。
4. 「JRE Local Hub 館山」と高速バス延伸によるワーケーション・二次交通の強化
館内の「JRE Local Hub 館山」は、コワーキングスペースと一棟貸しレンタルオフィスを備えたワークプレイスとして整備され、ワーケーション拠点やエリア内外のコミュニティをつなぐ場として活用するとしています。これにより、ホテルファミリーオ館山は「泊まる場所」から「働く・集う・学ぶ場所」へと役割を拡張していると見てよさそうです。
加えて、高速バス「房総なのはな号」がホテル前まで延伸され、東京駅からの直通アクセスが確保されたことは、二次交通のハードルを下げ、クルマを持たないゲストやワーケーション客にとっての利便性を大きく高めます。オーバーツーリズム対策の事例集でも、シャトルバスや循環バス等の整備が交通渋滞緩和や来訪者満足度向上に有効である事例が紹介されており、 同様の発想を館山エリアに取り入れたものと考えられます。

自館の立地によっては、ここまで大規模な二次交通の整備は難しいかもしれませんが、ローカルバスやタクシー、送迎サービスとの連携を「地域全体の交通計画」の中で考える視点は、今後さらに重要になりそうです。
自社への活かし方のヒント|館山エリアの等身大リゾートづくりを参考に
ホテルファミリーオ館山のような大規模リニューアルは簡単ではありませんが、エッセンスを抽出すれば、規模の小さなホテル・旅館でも応用できるポイントが多くあります。
1. 「たゆたう時間」を生む共用スペースづくり
- 既存のテラス、庭、ロビー、駐車場の一角などを見直し、「夕日が見える場所」「風が気持ち良い場所」など自然を感じられるゾーンを再発見する
- ベンチやハンモック、ローチェアなど、長時間座っても疲れにくい家具を少しずつ追加し、「何もしない時間」を過ごしやすくする
- 照明・焚き火・ランタンなど、夜の雰囲気づくりを工夫しつつ、安全管理と近隣への配慮をマニュアル化する
こうした小さな工夫でも、「チェックインから就寝までずっと客室」の滞在から、「館内を回遊しながら過ごす」滞在へと変えていくことができるかもしれません。
2. フリードリンク&スナックを「地域とストーリーの窓口」に
- ラウンジの一角やフロント周りに、セルフサービスのミニドリンクコーナーを設けるところから始める
- 地元の茶葉やコーヒー、季節の農産物を使った一口お菓子などを取り入れ、「なぜこの地域でこの一品なのか」をスタッフが説明できるようにしておく
- 原価管理については、メニューごとに「顧客満足度」と「原価率」を簡単に整理し、高い満足度を生むアイテムには適切にコストをかける一方、効果の薄いアイテムは絞っていく
観光庁のマニュアルでも、顧客満足度データとコストを組み合わせて商品やサービスを継続的に見直すことが推奨されており、 フリードリンクやスナックも同じ発想で改善していくと、無理のない形で「おもてなし」と「採算」を両立しやすくなります。
3. ワーケーション・ローカルハブ機能の小さな導入
- まずは客室ではなく、ラウンジや空き会議室に「電源付きデスク+高速Wi-Fi+オンライン会議に使える背景」を整える
- 平日は「デイユース・ワークプラン」、週末は「合宿・研修プラン」など、曜日や季節ごとにターゲットを分けたプランを企画する
- 地元の事業者やフリーランスに向けて、コワーキングとして開放する時間帯を設け、地域の人と滞在者が自然に交わる場にする
観光庁が整理しているオーバーツーリズム関連事例でも、地域住民と観光客双方にメリットがある形で観光需要を地域づくりに活かすことの重要性が示されており、 ワーケーション機能は、その一つの具体策になり得ます。
4. 従業員エンゲージメントとストーリーテリングの強化
ホテルファミリーオ館山のように「海」「夕日」「地産食材」「ワークプレイス」など複数の要素を組み合わせたリゾートでは、スタッフがそれぞれの要素の背景や意味を理解し、お客様に語れるかどうかが体験価値を左右します。

観光庁の経営改善マニュアルでは、従業員エンゲージメントをアンケートなどで把握し、部門別や勤続年数別に分析したうえで改善施策につなげるステップが示されています。 自館でも、
- 「地域のストーリーや新しい施設コンセプトをどの程度理解しているか」を簡易アンケートで確認する
- 部門別に課題やアイデアを集め、テラスイベントやドリンクメニュー、ワーケーションサービスの企画にスタッフを巻き込む
- 半年〜1年ごとにエンゲージメントの変化を確認し、成功事例を社内で共有する
といったサイクルを回していくと、スタッフのやりがいとサービス品質の両方を底上げできる可能性があります。
ホテルファミリーオ館山のような大規模リニューアルまでは踏み切れない場合でも、「小さな共用スペースのリデザイン」や「ロビーの一角をワークプレイス化」「地元食材を使った一皿の導入」など、できる範囲から始めてみるという選択肢もあります。
まとめ|ホテルファミリーオ館山リニューアルから学べること
- ホテルファミリーオ館山のリニューアルは、海辺テラスやフリードリンク、ワークプレイス機能を組み合わせ、等身大リゾートとしての「たゆたう時間」を軸に再設計した事例と言えそうです。
- アクセス強化(高速バス延伸)と「JRE Local Hub 館山」によって、観光とワーケーション・地域コミュニティをつなぐ役割をホテルが担おうとしている点は、自館の立ち位置を考えるうえでも参考になります。
- 観光庁の各種マニュアルが示すように、顧客価値・業務の生産性・施設の生産性をバランスよく高める視点を持ちつつ、従業員エンゲージメントや地域との共創をセットで考えておくと安心です。
- ホテルファミリーオ館山のような全面リニューアルまで行わなくても、自館のテラスやロビーを見直したり、ミニ・フリードリンクやワーケーションプランを試験導入してみるという選択肢もあります。
企業情報(宿泊業・地方創生関連)
- 会社名:株式会社ブルー・スカイ・アソシエイツ
- 所在地:東京都港区南青山5-12-4 全菓連ビル3階
- 代表者名:代表取締役 金子 岳人
- 事業内容:南房総をはじめとする地方創生事業およびホテル運営事業などを手掛けていると説明しています。
- 公式サイト:https://bluesky-as.com
- 施設名:TAUTAU Terrace Tateyama(タウタウ テラス タテヤマ)
- 所在地:〒294-0031 千葉県館山市大賀81-17
- 総客室数:31室
- 主な料金:1泊2食付き 21,000円〜(1室2名利用時の1名料金)としています。
- アクセス:JR館山駅より車で約15分/東京駅八重洲口よりホテル前まで直通の高速バスで約2時間と案内しています。
- 電話番号:0470-22-8861
- 公式サイト:https://tautau-terrace.com
- 公式Instagram:https://www.instagram.com/tautau_terrace
- 子会社名:株式会社エヴァーブルースカイ
- 事業内容:千葉県と神奈川県で8つのホテル施設を運営し、地域資産の利活用を通じた施設づくりに取り組んでいると説明しています。
- 公式Instagram(グループ):https://www.instagram.com/ever_blue_sky_

参考資料|宿泊業とインバウンド・サステナブル観光
出典:PR TIMES『「ホテルファミリーオ館山」が全面リニューアル。館山の夕日と過ごす等身大リゾート「TAUTAU Terrace Tateyama(タウタウ テラス タテヤマ)」がオープンします。』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000045327.html


