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新宿ワシントンホテルの長期滞在客室「スカイレジデンスルーム」とは

スカイレジデンス リビングルーム(イメージ)
CoCoRo編集部

新宿ワシントンホテルで2025年12月に予約開始される長期滞在客室「スカイレジデンスルーム」について、宿泊業の担当者向けに特徴とビジネス上のポイントを整理します。都心のシティホテルがレジデンス型の長期滞在客室を打ち出した背景を読み解きながら、自社の客室商品開発やインバウンド対応にどう生かせるかを考えていきます。

本記事のポイント

  • 新宿ワシントンホテルが、約96㎡・最大6名の「スカイレジデンスルーム」という長期滞在客室を1室限定で新設したねらいを整理します。
  • インバウンドや生活没入型観光のトレンドを踏まえ、新宿ワシントンホテルのような“キッチン付き・洗濯機付き”レジデンス型客室がなぜ重要になっているかを解説します。
  • 自社でも真似しやすい「1室だけ長期滞在仕様にする」「HPでの見せ方を変える」など、段階的な導入ステップを提案します。

ニュースの概要

新宿ワシントンホテル(東京都新宿区、西新宿)は、25階建て本館24階にワシントンホテルブランドとして初めて長期滞在を前提とした「スカイレジデンスルーム」を導入すると発表しています。予約開始日は2025年12月18日、実際の宿泊開始は2026年1月7日からとしています。

スカイレジデンスルームは、広さ約96㎡のワンフロア1室タイプで、最大6名まで利用できる構成としています。ツインタイプのベッドルームに加え、2段ベッド2台とシングルベッド2台を備え、ファミリーやグループでもゆったり使えるようにしたと説明しています。客室は温かみのあるウッド調のインテリアと大きな窓を備え、新宿の街並みや夜景が一望できる眺望を特徴としているそうです。

設備面では、キッチン(調理器具・食器)、冷蔵庫、電子レンジ、ドラム式洗濯機、プロジェクター・スクリーンなど、長期滞在を意識した機能を揃えています。料金は1泊1室90,000円(税込・サービス料込)からで、予約は新宿ワシントンホテルの公式サイト経由としています。

新宿ワシントンホテルは1983年12月開業で、2025年で42周年を迎えた老舗シティホテルです。JR新宿駅南口から徒歩約8分、都庁前駅からも徒歩圏という立地で、本館1,281室、別館ANNEX337室という大規模な客室数を持ち、ビジネス・観光双方の需要に応えてきたとしています。

宿泊業にとってのポイント

新宿ワシントンホテルが示す「都心×長期滞在」の可能性

新宿ワシントンホテルが、あえて既存のシティホテルの中に「スカイレジデンスルーム」を1室だけ設けたことは、都心ホテルにおける長期滞在ニーズの高まりを象徴していると考えられます。

  • 96㎡・最大6名という規模は、一般的なシティホテルの客室を大きく上回る広さです。
  • キッチンや洗濯機を備えることで、「泊まる場所」から一歩進んだ「暮らす拠点」としての機能を持たせています。
  • 1室限定のため、オペレーション負荷を抑えつつ、新しい商品コンセプトを試す「テスト導入」としての意味合いもありそうです。

同様のアプローチは、地方の温泉旅館や観光ホテルでも「1室だけ長期滞在仕様に変えてみる」という形で応用しやすいと言えそうです。

客単価アップと新セグメント獲得の両立

新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームは、1泊1室90,000円の設定とされています。6名利用であれば、1名あたりの単価は1万5千円程度になり、周辺の一般客室との価格バランスも取りやすい水準と考えられます。

  • ファミリー・グループ・3世代旅行など、「複数名で1室」を前提とした販売がしやすい
  • 長期滞在者をターゲットに「週単位・月単位」での料金設計も検討できる
  • プロジェクターや広いリビングを活用した「小規模オフサイト」「合宿利用」も想定できる

新宿ワシントンホテルの事例は、「高単価でありながら1人あたりの割高感は抑えられる、長期滞在向け大人数客室」という新しい売り方のヒントになるかもしれません。

スタッフオペレーションと従業員エンゲージメントの観点

約96㎡・6名定員の客室は、通常客室と比べて清掃や備品管理の負荷が変わります。一方で、1室限定であれば「専門チームを作る」「清掃時間を固定で確保する」など、オペレーション設計もしやすくなります。

生産性向上のハンドブックでも、施設の生産性・業務の生産性・顧客価値の3つの観点から業務を整理することが推奨されています。
新宿ワシントンホテルのような長期滞在専用客室は、この3つを一体で見直すきっかけにしやすいと考えられます。

  • 1室あたり清掃時間・備品補充の標準時間を設定しやすい
  • 「長期滞在ゲスト担当」といった役割を設けることで、スタッフの専門性やモチベーション向上につながりやすい
  • 滞在中のコミュニケーションを通じて、クチコミ・リピーター化を狙える

こうした視点で見ると、新宿ワシントンホテルの取り組みは、長期滞在商品づくりだけでなく「現場の働き方」を見直す材料にもなりそうです。

背景と理由の整理

インバウンド回復と「生活没入・長期滞在」ニーズ

観光庁の資料では、2024年の訪日外国人旅行者数・旅行消費額はいずれも過去最高水準にあり、体験型・長期滞在型のコンテンツが重要になっていると整理されています。

特に次のような傾向があると考えられます。

  • 観光地を「点」で巡る周遊より、1つの都市・エリアに腰を据えて滞在するスタイルが増えている
  • 料理・買い物だけでなく、「日常生活そのもの」を体験する“生活没入型”の観光コンテンツが注目されている
  • ファミリーやグループ旅行では、ホテル2室よりも「キッチン付き・洗濯機付きの1室」にまとめて泊まりたいというニーズが強い

新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームは、この「生活没入」「長期滞在」「グループユース」という3つのトレンドに正面から応えた商品設計だと見ることもできそうです。

新宿エリアと新宿ワシントンホテルのポジション

新宿エリアは、ビジネスと観光の両方が集積する東京有数のターミナルです。新宿ワシントンホテルは、JR新宿駅から徒歩約8分、都庁駅からも近い立地で、長年にわたりビジネス客・団体客・観光客を受け入れてきたとしています。

このポジションを踏まえると、スカイレジデンスルームには次のような使い方が想定されます。

  • 出張+家族合流での「Bleisure(ブレジャー)」滞在
  • 周辺観光(新宿・渋谷・原宿・浅草など)の拠点としての長期滞在
  • 首都圏在住者の「都心おこもりステイ」「マイクロツーリズム」

既に多くの一般客室を持つ新宿ワシントンホテルだからこそ、「上層階の1室だけを長期滞在向けに特化させる」という戦略は、在庫バランスを崩さずに新しい需要を取り込むアプローチと言えそうです。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説

スカイレジデンスルームの基本仕様

新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームは、次のような仕様とされています。

  • 所在階:本館24階(25階建て)
  • 広さ:約96㎡
  • 定員:最大6名(1名利用も可)
  • ベッド構成:2段ベッド2台、シングルベッド2台
  • 料金:1泊1室 90,000円〜(税込・サービス料込)
  • 室数:全1室

眺望は新宿の街並みが一望できる設計で、夜景や都心の景色を楽しめる点を特徴として打ち出しています。

スカイレジデンス ベッドルーム(イメージ)
スカイレジデンス ベッドルーム(イメージ)

長期滞在を支えるレジデンス型設備

設備面では、一般的なホテル客室に比べて「暮らす」ための機能が強化されています。

  • キッチン(調理器具・食器を含む)
  • 冷蔵庫
  • 電子レンジ
  • ドラム式洗濯機
  • プロジェクター・スクリーン など

これにより、例えば次のような滞在シーンが想定されます。

  • ファミリーやグループで、朝食・簡単な夕食を客室で自炊する
  • 長期滞在や連泊中も、洗濯を客室内で完結させる
  • プロジェクターで映画鑑賞をしたり、小規模な勉強会・ミーティングを行う

新宿ワシントンホテルは、「暮らすように旅する」スタイルを意識した客室と説明しており、設備構成はそのコンセプトに沿ったものと考えられます。

想定される利用イメージ

スカイレジデンスルームのイメージとして、次のような利用シーンが考えられます。

  • インバウンドのファミリーや友人グループが、1週間程度滞在しながら東京観光を楽しむ
  • 都内企業のチームが「オフサイトミーティング+懇親会」を兼ねて1〜2泊する
  • アーティストやクリエイターが、制作のための「都心アトリエ」として連泊する
  • 地方から東京に長期出張するビジネスパーソンが、家族を招いて週末を共に過ごす

新宿ワシントンホテルの既存客室では拾いきれなかったこうしたニーズを、スカイレジデンスルームが受け止めるポジションになりそうです。

自社への活かし方のヒント

1. まず「自館での長期滞在ニーズ」を棚卸する

新宿ワシントンホテルのように新規で客室を改装する前に、まずは自館の現状を整理しておくと安心です。

  • 直近1〜2年で「3連泊以上」の利用がどれくらいあるか
  • ファミリー・グループでの利用比率(OTAレビューや予約台帳からでも把握可能)
  • 近隣に長期滞在ニーズを生む施設(オフィス街・工業団地・大学・病院など)があるか

これらを整理したうえで、「長期滞在専用客室を設けると、どの層のニーズをより深く取れるか」を検討すると、投資判断がしやすくなります。

2. 既存客室の「簡易レジデンス化」から始める

いきなり96㎡の大規模改装は難しい場合でも、次のようなステップから始める選択肢もあります。

  • キッチンまでは難しくても、電子レンジ・大型冷蔵庫・簡易調理器具を備えた客室タイプを作る
  • ランドリー設備がない場合は、館内コインランドリーや近隣ランドリーとの連携案内を整える
  • デスク+チェア・照明を見直し、「ワーケーション対応ルーム」として位置付ける

新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームのようなフル装備でなくても、「常連の連泊ゲストがストレスなく過ごせる設備」を少しずつ整えるだけでも、長期滞在の満足度は大きく変わるはずです。

3. 「暮らすように滞在」のストーリーを発信する

長期滞在向け客室は、設備だけでなく「滞在ストーリー」の伝え方も重要です。

  • 公式サイトに、長期滞在プラン専用のページや特集を設ける
  • 1日の過ごし方モデル(朝〜夜のタイムライン)を写真付きで紹介する
  • 近隣スーパーや商店街情報をセットで案内し、「生活」のイメージを持ってもらう

SNS活用の資料でも、プラットフォームごとの特性を踏まえて「日常のシーン」を発信することの重要性が指摘されています。
静止画の「映え」だけでなく、動画でのルームツアーや調理風景を見せると、長期滞在のイメージが共有されやすくなりそうです。

4. 長期滞在オペレーションを「3つの観点」で設計する

宿泊業の経営改善マニュアルでは、「施設の生産性」「業務の生産性」「顧客価値」の3つの観点から生産性向上に取り組むことが整理されています。
新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームを参考に、自社でも次のような項目をチェックしてみると良さそうです。

  • 施設の生産性
    • どのフロア・どの部屋を長期滞在用にするのが、稼働・清掃動線の面で効率的か
    • 投資額と想定ADR(平均客室単価)・稼働率から、回収年数を概算してみる
  • 業務の生産性
    • 1室あたりの標準清掃時間・リネン交換頻度をどう設定するか
    • 長期滞在ゲストとのコミュニケーションを誰が担うか(フロント/コンシェルジュ/専任担当など)
  • 顧客価値
    • 長期滞在ゲストが特に評価しそうなポイント(眺望・キッチン・洗濯・周辺環境)を明確にする
    • 「何泊目で飽きるか」「どこに不便を感じるか」をヒアリングし、改善サイクルを回す

新宿ワシントンホテルのような長期滞在客室は、単なる「新カテゴリの客室」ではなく、こうした経営視点とセットで設計することで、より高い投資効果が期待できそうです。

5. 従業員エンゲージメント向上の場としても活用する

最後に、スカイレジデンスルームのような特別客室は、従業員のエンゲージメント向上にも活用しやすいと考えられます。

  • 研修や勉強会、社内ミーティングの会場として試験的に使い、スタッフ自身に滞在体験をしてもらう
  • 現場スタッフから「長期滞在ゲストにあったらうれしい備品・サービス」を募り、改善提案の場にする
  • 成績優秀者や永年勤続者へのインセンティブ宿泊として提供し、「自社の誇れる商品」として体験してもらう

新宿ワシントンホテルがブランド初の長期滞在客室を打ち出した背景には、こうした社員の誇りやモチベーション向上も意識されている可能性があります。自館でも、商品づくりと人材マネジメントをセットで考えてみると良さそうです。

まとめ

  • 新宿ワシントンホテルのスカイレジデンスルームは、都心シティホテルが長期滞在・生活没入ニーズに応える「96㎡・最大6名・レジデンス型客室」という新たなモデルケースといえそうです。
  • インバウンド回復やファミリー・グループ旅行の増加を踏まえると、新宿ワシントンホテルのように「キッチン付き・洗濯機付き」で中長期滞在を想定した商品を持っておくと安心です。
  • 自館でいきなり大規模改装が難しい場合も、既存客室の一部を簡易レジデンス化する、長期滞在プラン専用ページを作るなど、小さく始めるという選択肢もあります。
  • 長期滞在客室は、収益改善だけでなく、スタッフの専門性向上や従業員エンゲージメント強化の場として活用できる余地もあり、「投資+人材育成」をセットで設計していくことが重要かもしれません。

企業情報

藤田観光株式会社

  • 会社名:藤田観光株式会社
  • 事業内容:ホテル・旅館・レジャー施設など観光事業の運営(箱根小涌園、ホテル椿山荘東京などを運営しているとしています)
  • 設立:1955年(2025年11月7日に設立70周年を迎えたとしています)
  • 公式サイト:藤田観光株式会社

新宿ワシントンホテル

  • 施設名:新宿ワシントンホテル
  • 所在地:〒160-8336 東京都新宿区西新宿3-2-9
  • アクセス:JR新宿駅南口より徒歩約8分/都庁駅A4出口より徒歩約5分
  • 客室数:本館1,281室/ANNEX(別館)337室
  • 電話番号:03-3343-3111(代表)/03-3344-0489(宿泊予約直通)
  • 公式サイト:新宿ワシントンホテル公式サイト
新宿ワシントンホテル
新宿ワシントンホテル

出典:PR TIMES『【新宿ワシントンホテル】ワシントンホテルブランド初の長期滞在客室 「スカイレジデンスルーム」(広さ約96㎡/最大定員6名)誕生! 宿泊予約開始12/18(木)・宿泊開始2026/1/7(水)』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000952.000001368.htm

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