フェニックス・シーガイア・リゾートは、温泉施設「松泉宮」に新浴棟「満月」を2026年8月12日に開業する予定です。黒松林に囲まれたリゾートの環境、日本神話を思わせる空間演出、宿泊者専用の温浴体験を組み合わせることで、滞在中の過ごし方にもう一段の奥行きを加える発表です。
宿泊施設にとって温浴は、単なる付帯設備にとどまらず、滞在時間の質、館内回遊、再訪理由づくりに関わる重要な接点です。今回の取り組みは、地域の物語性と自然環境をどのように宿泊者体験へ編み込むかという点で、ホテル・旅館の現場にも参考になる要素を含んでいます。
本記事のポイント
- 松泉宮の新浴棟「満月」は、2026年8月12日にフェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー宿泊者専用で開業予定です。
- 高床式建築、黒松林の眺望、日本神話をモチーフにした設計により、宮崎らしい滞在体験を温浴空間へ落とし込んでいます。
- 観光庁が地域資源の保全・活用や受入環境整備を重視する中、自然・文化・ウェルネスを組み合わせた館内体験づくりの事例として注目できます。
発表内容の整理

発表によると、新浴棟「満月」はフェニックス・シーガイア・オーシャン・タワーに隣接する温泉施設「松泉宮」内に設けられます。施設は収容人数100名、延床面積756.83平方メートルで、営業時間は朝6時から11時、15時から23時30分までとされています。利用対象は同ホテル宿泊者で、既存の「新月」と男女入れ替え制で運用される予定です。
空間面では、高床式建築によって松林の高さに視線を合わせ、露天風呂と内湯の双方から黒松林を望める設計が示されています。松泉宮がもともと持つ月をテーマにした世界観を継承しながら、「高天原」を着想源にしたデザインを加えることで、宮崎の神話性を体験として伝える構成です。
出典:PR TIMES 【フェニックス・シーガイア・リゾート】松泉宮に新浴棟「満月」2026年8月12日オープン。日本神話をモチーフにした、黒松林と調和する新たな温浴空間が誕生。
黒松林を館内価値に変える温浴設計
「満月」の特徴は、浴槽そのものだけでなく、黒松林を眺める視線の高さまで設計に含めている点にあります。リゾートの敷地が持つ自然資源を、客室外の滞在時間にも自然に接続しているため、宿泊者は朝、夕方、夜で異なる表情を楽しみやすくなります。
観光庁の「持続可能な観光地域づくりのための体制整備等の推進」では、令和7年度までに地域資源を保全・活用したコンテンツ造成に取り組む支援地域を50地域、受入環境整備に取り組む支援地域を50地域としています。宿泊施設側から見ると、地域の自然や文化を守りながら、滞在体験として伝わる形に整えることが一層重要になっています。
神話性を伝える体験は地域ブランドの入口になる
宮崎は神話のふるさととして語られる地域性を持ちます。「満月」が高天原をモチーフにし、既存の「月読」「新月」といった月の世界観を受け継ぐ構成は、単なる意匠ではなく、宿泊者が地域らしさを体感する入口として機能します。
観光庁(国土交通省)の『観光地域づくり事例集 第5章「地域の魅力発信強化」』では、地域の認知度向上やブランド化には、プロモーションだけでなく、滞在コンテンツの開発や受入環境整備を戦略的に行う視点が示されています。今回の温浴棟は、広告文言で地域性を語るだけでなく、建築、眺望、名称、入浴時間の過ごし方を通じて地域の物語を体験に変換している点に、宿泊事業者が学べる余地があります。
宿泊者専用だからこそ生まれる館内回遊
「満月」はフェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー宿泊者専用とされています。外来利用を広げるのではなく、宿泊者の満足度と館内滞在の密度を高める方向に置かれている点が特徴です。朝風呂、夕食前、就寝前といった時間帯ごとの利用動機をつくりやすく、館内で過ごす理由を自然に増やします。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」は、2026年2月分の第1次速報値が最新公表月として示されています。宿泊需要を読むうえでは、月次の動きが継続的に更新されるため、施設側は最新値を確認しながら、滞在単価だけでなく滞在時間の充実にも目を向ける必要があります。温浴、スパ、食、アクティビティをどう結び付けるかは、リゾートホテルの運営実務で重要な検討点です。
美容要素は温泉体験の記憶を補強する
発表では、松泉宮の温泉成分を使用したオリジナル泥パックも紹介されています。温泉の泉質や自然眺望に加えて、美容体験を組み合わせることで、入浴後の満足感や会話のきっかけをつくりやすくなります。
宿泊施設の現場では、設備投資の大きさだけでなく、利用後に宿泊者が何を記憶し、誰に伝えたくなるかが重要です。泥パックのような体験要素は、客室、売店、スパ、食事との接続も考えやすく、滞在全体の印象をやわらかく高める工夫として映ります。
既存施設の世界観を更新する丁寧さ
松泉宮には、月読、新月、貸切温泉「離れ湯」、湯道を体現する「おゆのみや」など、すでに複数の個性的な湯屋があります。新浴棟を単独の新設設備として見せるのではなく、既存の月の物語や回廊の体験に重ねることで、施設全体の世界観を崩さずに更新している点に丁寧な設計がうかがえます。
ホテル・旅館が増改築やリニューアルを行う際、新しさを打ち出すほど既存ファンの記憶との接続が課題になります。「満月」は名称、景観、モチーフの連続性によって、既存の魅力を残しながら新しい滞在理由を加える取り組みとして受け止められます。
まとめ
松泉宮の新浴棟「満月」は、黒松林、温泉、日本神話、美容体験を組み合わせ、宿泊者専用リゾートの滞在価値を深める発表です。自然環境を眺めるだけでなく、建築や導線、名称、利用時間に落とし込むことで、宿泊者が宮崎らしさを身体感覚として受け取りやすい構成になっています。
地域資源を活用した観光コンテンツづくりが重視される中、今回の取り組みは、館内施設を地域ブランドの体験接点として磨くヒントを示しています。宿泊事業者にとっても、既存施設の世界観を大切にしながら新しい利用動機を加える実務例として参考になる内容です。
企業情報
- フェニックス・シーガイア・リゾートは、宮崎市の太平洋沿いに広がるリゾート施設です。フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワーを中心に、宿泊、温泉、スパ、ゴルフ、テニス、アクティビティなどを展開しています。
- 運営会社:フェニックスリゾート株式会社
- 所在地:宮崎県宮崎市
- 対象施設:フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー 温泉施設「松泉宮」
- 公式情報: 温泉施設「松泉宮」公式ページ
参考資料
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(2026年2月分(第1次速報値))』: 宿泊旅行統計調査
- 観光庁『持続可能な観光地域づくりのための体制整備等の推進(令和7年度まで)』: 持続可能な観光地域づくりのための体制整備等の推進
- 観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第5章「地域の魅力発信強化」(公表資料)』: 観光地域づくり事例集 第5章「地域の魅力発信強化」
