「日本は本当にきれいだ」
訪日した外国人から、たびたび聞かれる感想です。駅や電車には汚れや落書きが少なく、街中にごみ箱があまりないのに、道にはごみがほとんど落ちていない。公園や駅のトイレを無料で使えるうえ、比較的きれいに保たれていることにも驚かれます。
旅行記やSNSでは、日本を「今まで訪れたなかで最もきれいな国」「世界一清潔に感じた国」と表現する外国人観光客も珍しくありません。一方、日本人自身は「繁華街にはごみがある」「すべてのトイレがきれいなわけではない」と感じています。環境に関する国際ランキングを見ても、日本は必ずしも世界一ではありません。
それでは、外国人が感じる「日本の清潔さ」は単なるイメージなのでしょうか。
複数の公的調査を照合すると、日本は環境性能のすべてで世界一という国ではない一方、旅行者や生活者が日常的に接する空間では、世界トップクラスの清潔さを実感させる国だと分かります。その状態は、日本に古くからある清めや掃除の価値観だけで生まれたものではありません。学校教育、行政や事業者による清掃、地域の習慣、規制、近年の施設改修が重なってつくられています。
- 日本人にとっての「普通」と外国人にとっての「驚き」
- 日本は世界一清潔な国?7つのデータから分かる本当の評価
- 外国人が驚く日本の清掃シーン|海外の反応
- 日本が清潔な理由①|神道・仏教に根ざした清めと掃除の文化
- 日本が清潔な理由②|周囲まできれいにする地域の習慣
- 日本が清潔な理由③|学校教育が育む清掃文化
- 日本が清潔な理由④|ごみを捨てず、使った場所を元に戻す習慣
- 日本が清潔な理由⑤|自治体と施設管理者による清掃と美観整備
- 日本が清潔な理由⑥|規制と安全対策が清潔さを後押しした
- 日本の清掃観は古く、現在のきれいな街は近年さらに整備された
- 日本は「トイレがきれいな国」として世界一なのか
- 街はきれいなのに、なぜ日本にはごみ箱が少ないのか
- 日本の清潔さが抱える課題
- 日本は清潔すぎる?清潔さのデメリットと衛生仮説
- シンガポールと日本の清潔さは何が違うのか
- 清潔な社会は他国でも実現できるのか
- まとめ|日本は外国人が「世界一」と感じるほど清潔さを体感しやすい国
- 日本の清潔さに関するよくある質問
日本人にとっての「普通」と外国人にとっての「驚き」
ごみ箱がないのに、ごみが落ちていない街
外国人観光客が日本で不思議に感じることの一つが、「ごみ箱が少ないのに、なぜ街がきれいなのか」です。
日本では、外出中に出たごみをすぐ捨てられなければ、購入した店や商業施設のごみ箱を探し、それでも見つからなければ持ち歩く人が少なくありません。誰もがすべてのごみを自宅まで持ち帰っているわけではありませんが、道路へ捨てず、適切に処分できる場所まで持っておく行動が日常に組み込まれています。
イベント後や夜の繁華街にはごみが残ることもあります。それでも、旅行者が移動する多くの場所で、ごみが景観を覆うほど放置されていない。その相対的な違いが「日本は清潔だ」という強い印象につながります。
無料なのにきれいな日本の公共トイレ
日本の清潔さを体感しやすい場所として、公共トイレは外せません。
駅、公園、商業施設などに無料で利用できるトイレがあり、トイレットペーパーが備えられ、定期的に清掃されています。温水洗浄便座、自動洗浄、非接触式の水栓なども、日本のトイレを印象づける設備です。
すべての公共トイレが新しく、常に汚れがないわけではありません。それでも、無料で使える駅や公園のトイレまで比較的きれいに保たれていることは、日本が世界トップクラスに清潔だと外国人観光客が感じる大きな理由です。公共トイレの清潔さを同じ条件で比較した公的な世界ランキングはありませんが、日本のトイレは「清潔な国」を実感する代表的な場所といえるでしょう。
日本人は「そこまできれいでもない」と思っている
日本人には、混雑した観光地、夜の繁華街、古い公共施設など、きれいとはいえない場所も見えています。普段から日本で暮らしていれば、清潔な駅や店舗は驚きではなく、日常の基準になります。
旅行者は自国の日常と日本の旅行環境を比べ、日本人は理想的な状態と目の前の日本を比べる。この比較対象の違いも、評価の差を生む理由です。
日本は世界一清潔な国?7つのデータから分かる本当の評価
「世界一清潔な国ランキング」を探すと、さまざまな順位表が見つかります。日本を世界一と感じる旅行者の声も数多く見られますが、道路を歩いたときのごみの少なさ、駅やトイレの清掃状態などを、世界共通の方法で測定した公的ランキングはありません。
環境分野の代表的な国際指標、廃棄物統計、外国人を対象とした調査を並べると、日本の特徴がより正確に見えてきます。
| 資料 | 年 | 対象・母数 | 測っているもの | 日本の結果 | この結果からいえること |
|---|---|---|---|---|---|
| EPI総合 | 2024年 | 180か国 | 58指標による環境政策・環境衛生・生態系など | 27位、61.4点 | 世界全体では上位だが、環境性能全体の1位ではない |
| EPI廃棄物管理 | 2024年 | 180か国 | 1人当たり廃棄物発生量・適正管理・資源/エネルギー回収 | 2位、73.6点 | 廃棄物管理分野は世界的に高く評価されている |
| OECD一般廃棄物 | 2021年 | OECD加盟国等 | 1人当たり排出量・焼却・リサイクル・埋立 | 326kg/人。約80%を焼却し、約20%をリサイクル | 排出量はOECD平均より少ない一方、焼却割合はOECDで最も高い |
| DBJ・日本交通公社調査 | 2021年 | 12地域の訪日旅行希望者3,372人 | 日本を観光で訪れたい理由 | 「清潔だから」83% | 清潔さは訪日希望理由の上位で、日本の強みになっている |
| 在留外国人調査 | 2024年度 | 満足理由への有効回答6,039人 | 日本での生活に満足している理由 | 「居住環境(清潔さ等)がよい」34.2%で最多 | 日本で暮らす外国人からも生活環境が評価されている |
| 観光庁訪日客調査 | 2024年度 | 訪日外国人4,189人 | 旅行中に困ったこと | 「ごみ箱の少なさ」21.9%で最多 | 清潔な印象と、ごみを捨てる場所の不足が併存している |
| 観光庁訪日客調査 | 2025年度 | 訪日外国人4,110人 | 旅行中に困ったこと | 「ごみ箱の少なさ」17.2%で最多 | 前年度より4.7ポイント改善したが、依然として最大の困りごとである |
出典:2024 Environmental Performance Index、OECD「Environment at a Glance: Japan」、DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査、出入国在留管理庁「令和6年度在留外国人に対する基礎調査」、観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」
EPI総合では27位、廃棄物管理では2位
米国イェール大学などが公表する2024年の環境パフォーマンス指数(EPI)で、日本は180か国中27位でした。EPIは気候変動、大気、水、生物多様性、廃棄物など58指標を組み合わせた評価です。日本が「環境性能のすべてで世界一」とはいえないことが分かります。
ところが、その一分野である廃棄物管理では日本は2位です。この指標は、廃棄物の発生量だけでなく、適正に回収・管理されているか、資源やエネルギーが回収されているかを評価します。
総合27位と廃棄物管理2位は矛盾ではありません。「清潔さ」をどこまで広く捉えるかによって、日本の順位が変わることを示しています。
OECD統計では、ごみの排出量が少ない一方で焼却割合が高い
OECDによると、日本の2021年の一般廃棄物排出量は1人当たり326kgで、OECD平均を大きく下回ります。一方、その約80%が焼却され、リサイクルは約5分の1です。焼却割合はOECDで最も高いとされています。
ここで注意したいのは、EPIの「廃棄物管理2位」と、OECDが示す「焼却依存」は両立するということです。EPIは管理されない投棄を抑え、廃棄物を回収し、焼却時にエネルギーを回収することも評価します。EPIで上位だから、資源循環の方法まで理想的だという意味ではありません。
なぜ統計上の順位と外国人の実感に差が生まれるのか
EPIやOECDが測るのは、大気、水、生態系、廃棄物処理などを含む国全体の環境性能です。一方、外国人が日本で感じる清潔さは、道路、駅、電車、トイレ、宿泊施設、店舗など、旅行中や生活中に直接触れる空間の状態です。
つまり、同じ「清潔さ」という言葉で、異なる対象を見ています。
DBJ・日本交通公社の2021年調査では、12地域の訪日旅行希望者3,372人のうち83%が、日本を訪れたい理由として「清潔だから」に「非常にそう思う」または「そう思う」と回答しました。清潔さは上位5項目に入り、競合する旅行先との比較でも日本の強みと評価されています。
これは訪日経験者だけを対象にした評価ではありません。しかし、旅行先としての日本に「清潔」という強いイメージがあることは分かります。
さらに、出入国在留管理庁の2024年度調査では、日本での生活に満足している理由への有効回答6,039人のうち34.2%が「居住環境(清潔さ等)がよいから」を選び、最多となりました。短期旅行者の期待だけではなく、日本で暮らす外国人の評価にも、清潔な生活環境が表れています。
日本は環境に関するあらゆる指標で世界一なのではありません。しかし、人が実際に使う場所の清潔さは、外国人が「世界一」と表現するほど強い印象を残しています。訪日希望者の83%、在留外国人の生活満足理由34.2%という数字は、その印象が一部の旅行記だけではないことも示しています。このギャップこそ、日本の清潔さを考える出発点です。
外国人が驚く日本の清掃シーン|海外の反応
新幹線の「7分間清掃」が世界で話題になった理由
外国人が日本の清掃文化に驚く代表的な場面が、新幹線の折り返し清掃です。
限られた停車時間のなかで、座席の向きを変え、ごみを回収し、テーブルや床を整え、次の乗客を迎える。注目されたのは速さだけではありません。作業を分担し、利用者の目の前で手際よく車内を整える姿が、清掃を交通サービスの一部として扱う日本の特徴を伝えました。
毎朝の掃き掃除と年末の大掃除
開店前に店舗スタッフが店の前を掃く。住宅の前に落ち葉があれば住人が掃き集める。担当する敷地の境界を少し越えて、周囲まで整える光景も見られます。
年末の大掃除も、日本の清掃観を象徴する習慣です。汚れを落とすだけではなく、住まいや職場を整え、新しい年を気持ちよく迎える区切りの行為になっています。
外国人が驚くのは、特別な清掃イベントだけではありません。旅行中に何度も目にする小さな清掃の積み重ねが、「誰かが街をきれいに保っている」という実感をつくります。
日本旅行から帰ったあと、街の歩きやすさや公共交通、清潔な環境まで恋しく感じる人もいます。こうした感情については、日本ロス(ジャパンロス)とは?で詳しく紹介しています。
日本が清潔な理由①|神道・仏教に根ざした清めと掃除の文化
神道における「穢れ」と清めの思想
日本では、清潔さが衛生だけでなく、気持ちや場の状態と結びつけて考えられてきました。
神道では、祭りや参拝の前に身や場所を清めます。神社で手水を使い、境内を掃き清める行為にも、汚れを物理的に取り除くだけではなく、場を整える意味があります。
仏教では掃除も修行の一部
寺院では、掃除が日々の務めに組み込まれています。禅宗の作務に代表されるように、手を動かして場所を整えることは、自分自身の姿勢を整える行為でもあります。
もちろん、古代から現代まで日本の街が一貫してきれいだった、という意味ではありません。ただ、掃除を単なる雑務ではなく、心や共同体を整える行為として見る文化的な土台は、20~30年前に突然生まれたものではないのです。
日本が清潔な理由②|周囲まできれいにする地域の習慣
「向こう三軒両隣」の感覚
「向こう三軒両隣」は、自宅の向かい側と左右の近隣まで含めた、身近な地域関係を表す言葉です。日本の地域社会には、自分の敷地だけでなく、家や店の前、共有する路地や側溝なども一緒に整える習慣がありました。
海外にも地域清掃やボランティア活動はあります。ただし、公共空間の清掃を行政や専門業者の仕事として明確に分ける地域もあれば、住民や店舗が日常的に周囲を掃く地域もあります。日本の特徴は、後者の行動が学校、職場、町内会など複数の場所で繰り返されやすいことにあります。
日本が清潔な理由③|学校教育が育む清掃文化
日本の多くの学校では、児童や生徒が教室、廊下などを掃除します。清掃方法や分担は学校によって異なり、近年は教職員の負担や衛生管理を考えて外部委託する作業もありますが、「自分たちが使う場所を自分たちで整える」という経験は広く共有されています。
学校清掃には、汚れを落とす以上の教育的な意味があります。役割を分担して作業すること、自分が汚したものを誰かに任せきりにしないこと、次に使う人を考えることを、日常の行動として学びます。
海外では清掃を専門職が担う学校も多く、日本の学校を訪れた人が児童・生徒の掃除に驚くことがあります。一方で、地域奉仕やボランティアを通して公共心を育てる教育もあります。方法は異なっても、日本では学校生活のなかで清掃を繰り返し経験することが、大人になってからの行動にもつながっていると考えられます。
日本が清潔な理由④|ごみを捨てず、使った場所を元に戻す習慣
日本では、「自分が使った場所を大きく汚したままにしない」「周囲の人に迷惑をかけない」という判断が、清潔さを支えています。
スポーツ観戦後に観客が座席周辺のごみを集める、花見や地域行事のあとに参加者が片づける、といった行動も同じ延長にあります。すべての人が同じように行動するわけではありませんが、片づける行為が周囲から肯定され、汚したまま立ち去ることが好ましくないと見られる社会規範があります。
きれいな場所では、小さなごみや落書きがかえって目立ちます。汚れに気づいた人や管理者が早めに対応すれば、次の人も捨てにくくなる。この循環は、「小さな乱れを放置すると、さらに大きな乱れを招く」という割れ窓理論とは逆向きに、清潔な状態を維持する力として働きます。
日本が清潔な理由⑤|自治体と施設管理者による清掃と美観整備
日本の街は、住民のマナーだけできれいになっているわけではありません。
道路、公園、公衆トイレなどでは、自治体の職員や委託事業者が清掃、廃棄物回収、設備点検を行います。駅や電車は鉄道事業者、商業施設やオフィスは施設管理者や清掃会社が維持しています。店舗スタッフが開店前に店内や周辺を整えることも、街の印象をつくります。
普段は目立たない多数の仕事が重なり、旅行者が目にする「いつもきれいな場所」がつくられています。清潔さを日本人の国民性だけで説明すると、こうした専門的な仕事と費用が見えなくなってしまいます。
公共トイレや駅は近年大きく改善した
現在の日本の公共施設を見て、「日本は昔からこの状態だった」と考えるのも正確ではありません。
かつては、公共トイレが暗い、臭い、利用しづらいと感じられることも珍しくありませんでした。駅のバリアフリー化、トイレの改修、商業施設の更新、清掃手順の改善などが進み、現在の使いやすさと清潔感につながっています。
日本の清掃観には長い歴史がありますが、旅行者が現在目にする施設の状態は、近年の投資と現場の運用によって更新され続けているのです。
日本が清潔な理由⑥|規制と安全対策が清潔さを後押しした
文化や教育だけでなく、ルールも街の清潔さに影響しています。
1995年の地下鉄サリン事件などを受け、鉄道駅では安全上の理由からごみ箱を撤去したり、中身の見える容器へ変更したりする動きが広がりました。現在も警備上の理由で一時的にごみ箱やコインロッカーが封鎖されることがあります。
ただし、日本のごみ箱が少ない理由を一つの事件だけで説明することはできません。不適切な家庭ごみの持ち込み、分別、回収費用、設置スペースなど、複数の事情が関係しています。
路上喫煙やポイ捨てを防ぐ条例も各地に広がりました。日本が罰則だけで清潔さを維持しているわけではありませんが、マナー、教育、清掃体制に規制が加わることで、吸い殻やごみを捨てにくい環境がつくられています。
日本の清掃観は古く、現在のきれいな街は近年さらに整備された
日本の清潔さを考えるとき、「昔から清潔だった」と「ここ20~30年で清潔になった」のどちらか一方を選ぶ必要はありません。
清めや掃除を大切にする価値観は、古くから日本社会で育てられてきました。一方、過去の駅や電車では喫煙が珍しくなく、公共トイレや繁華街の環境も現在と同じではありませんでした。
現在の目に見える清潔さは、古来の価値観だけの結果ではありません。その価値観を土台として、この20~30年に自治体、施設管理者、企業、地域、住民が進めた清掃、改修、禁煙・分煙、景観整備などが積み重なって形成されました。
文化は「昔から変わらないもの」ではなく、制度や技術、社会の期待を取り込みながら、現在の行動として更新されているのです。
日本は「トイレがきれいな国」として世界一なのか
日本を「トイレがきれいな国ランキングの1位」とする紹介は数多く見かけます。実際、日本の公共トイレは、外国人が日本を世界トップクラスに清潔だと感じる最も分かりやすい場所の一つです。
世界各国の公共トイレを統一条件で実査した公的ランキングは確認できないため、客観的な順位として1位を証明することはできません。しかし、順位表がなくても、日本が「トイレのきれいな国」の筆頭として語られるだけの体験的な理由はあります。
無料で入れる公共トイレが多く、紙や手洗い設備が備えられ、清掃頻度が一定程度確保されている。さらに、温水洗浄便座や自動洗浄などの設備が加わります。外国人旅行者にとっては、ホテルだけでなく、駅や公園でこの水準のトイレを利用できることが驚きになります。
日本のトイレは、統計的な順位を超えて、人が日本の世界トップクラスの清潔さを体で理解する象徴といえるでしょう。
街はきれいなのに、なぜ日本にはごみ箱が少ないのか
日本の清潔さを語るうえで、ごみ箱の少なさは興味深い矛盾です。
観光庁の調査では、2024年度に訪日外国人4,189人の21.9%が「ごみ箱の少なさ」に困ったと回答しました。2025年度は4,110人の17.2%へ4.7ポイント低下しましたが、それでも旅行中の困りごとで最多でした。
日本人には、ごみを適切に捨てられる場所まで持ち歩く習慣があります。店舗、駅、商業施設、飲料容器の回収ボックスなど、用途ごとに捨てる場所を探すことにも慣れています。しかし、土地勘のない旅行者には、ごみ箱がどこにあるか予測しにくく、「街はきれいなのに、自分のごみを捨てられない」という体験になります。
ごみ箱の少なさをマナーのよさだけで解決できるとは限りません。観光客が集中する地域では、ごみの発生量、回収頻度、分別表示、設置場所を含めた仕組みが必要です。
日本からごみ箱が減った複数の理由や、日本人が外出先でごみをどう処理しているかは、日本はなぜゴミ箱が少ない?で詳しく解説しています。
日本の清潔さが抱える課題
見た目の清潔さと環境負荷は同じではない
街にごみが見当たらなくても、そのごみが環境負荷の少ない方法で処理されているとは限りません。
日本は一般廃棄物の発生量がOECD平均より少なく、回収・管理も高く評価されています。一方で、約80%を焼却する処理構造には、資源循環や温室効果ガスの観点から課題があります。
「日本はきれいだから環境先進国だ」とも、「焼却が多いから廃棄物管理が遅れている」とも、一つの数字だけでは判断できません。見える街の状態、適正な回収、資源としての再利用、最終処分まで分けて考える必要があります。
清潔さは誰かの仕事で維持されている
ごみを捨てないマナーは重要です。しかし、それだけでトイレの汚れは落ちず、駅の床もきれいにはなりません。
清掃員、施設の従業員、自治体職員、地域住民などが手を動かし、清掃の時間と費用を負担しています。「日本人はきれい好きだから」という言葉だけで済ませず、清潔な環境を支える仕事にも目を向ける必要があります。
利用者が気持ちよく過ごせる環境をつくることも、日本のサービス文化の一部です。日本の接客が外国人にどう見えるかは、日本にチップがない理由と海外の反応でも紹介しています。
日本は清潔すぎる?清潔さのデメリットと衛生仮説
「日本は清潔すぎるため、アレルギーが増えた」という説明を見かけることがあります。ここでは、街の美観と医学的な衛生を分けて考える必要があります。
衛生仮説は、幼少期の微生物への接触と免疫系の発達との関係を考える仮説です。しかし、アレルギー性疾患には遺伝、花粉や大気環境、住宅、食生活など多くの要因が関係します。道路のごみが少ないことや、公共トイレがきれいなことから、日本人の免疫力やアレルギー増加を直接説明することはできません。
感染症を防ぐための衛生管理、景観としての清潔さ、過度な除菌への懸念は、それぞれ別の問題です。「清潔すぎる」という印象的な言葉だけで一つにまとめないことが大切です。
シンガポールと日本の清潔さは何が違うのか
日本と並んで清潔な国として名前が挙がるのがシンガポールです。シンガポールはポイ捨てなどへの規制と行政による管理が目立つため、日本との違いを「トップダウン型対ボトムアップ型」と説明されることがあります。
この比較は分かりやすい一方、現実はそれほど単純ではありません。日本にも路上喫煙やポイ捨てを規制する条例があり、行政や事業者が清掃を行っています。シンガポールにも市民の日常行動や教育があります。
違いは、どちらか一方だけを使っていることではなく、規制、清掃体制、教育、社会規範をどのような比重で組み合わせているかにあります。日本では、学校清掃や地域の掃除、周囲へ迷惑をかけない意識が、行政や事業者の管理を補完していることが特徴です。
清潔な社会は他国でも実現できるのか
日本の清潔さを特別な民族性だけで説明すると、他国には再現できないものになります。しかし、実際に街を支えている要素を分解すると、その多くは具体的です。
- ごみを回収し、適正に処理する仕組み
- 公共施設を定期的に清掃する予算と人員
- 汚れを放置しない施設管理
- 学校や地域で共有空間を整える経験
- ポイ捨てや路上喫煙を抑えるルール
- ごみ箱の場所や分別方法を旅行者にも伝える表示
制度や設備は導入できますが、行動が日常の習慣として定着するには時間がかかります。反対に、文化だけに期待して清掃する人や設備を減らせば、清潔さは維持できません。
日本の経験が示しているのは、文化か制度かの二者択一ではなく、価値観、教育、仕事、設備、規制を重ねることの重要性です。
まとめ|日本は外国人が「世界一」と感じるほど清潔さを体感しやすい国
道路や公共トイレの見た目の清潔さを、世界共通の条件で比べた公的ランキングはありません。そのため統計上の世界一は決められませんが、日本を「今まで訪れたなかで最もきれいな国」と表現する外国人観光客は珍しくありません。駅、電車、道路、トイレ、店舗など、旅行中に何度も利用する場所で清潔さを実感できるからです。
その一方で、EPIの廃棄物管理では2位です。DBJ・日本交通公社の調査では訪日旅行希望者の83%が「清潔だから」と回答し、在留外国人調査でも「居住環境(清潔さ等)がよい」が生活満足の理由として最多になりました。
EPI総合では日本は180か国中27位ですが、廃棄物管理は2位です。日本の特徴は、環境指標のすべてで1位になることではなく、道路、駅、電車、トイレ、店舗など、旅行者や生活者が直接利用する場所で世界トップクラスの清潔さを感じさせることです。
その背景には、古来からの清めや掃除の価値観があります。しかし、文化だけで現在の街ができたのではありません。学校での清掃、住民や店舗の習慣、自治体と施設管理者の仕事、規制、そしてこの20~30年に進んだ公共施設の改修が重なっています。
清潔な街は、日本人にとって当たり前に見えても、誰かの配慮と仕事によって毎日つくり直されているのです。
日本の清潔さに関するよくある質問
日本は世界一清潔な国ですか?
道路や公共トイレの見た目を統一条件で比較した公的な世界ランキングはないため、統計上の世界一は決められません。一方、日本を「今まで訪れたなかで最もきれいな国」「世界一清潔に感じた国」と評価する外国人観光客は珍しくなく、体感的には世界トップクラスといえます。
日本より清潔な国はありますか?
何を清潔さとするかによって答えが変わります。EPI総合では日本より上位の国がありますが、これは道路や駅、トイレの見た目を順位づけしたものではありません。旅行者が体感する公共空間の清潔さでは、日本は世界トップクラスとして頻繁に名前が挙がります。
外国人は本当に日本を清潔だと感じていますか?
DBJ・日本交通公社の2021年調査では、訪日旅行希望者3,372人の83%が日本を訪れたい理由として「清潔だから」を評価しました。在留外国人調査でも、生活満足の理由として「居住環境(清潔さ等)がよい」が34.2%で最多でした。
なぜ日本はごみ箱が少ないのに街がきれいなのですか?
ごみを適切に捨てられる場所まで持ち歩く習慣、住民や店舗の清掃、自治体・施設管理者による回収や清掃が組み合わさっているためです。ただし、ごみ箱不足は訪日外国人の最大の困りごとであり、観光地では改善が必要です。
日本の清潔さは昔から続く文化ですか?
清めや掃除を重視する価値観には長い歴史があります。一方、現在の駅、公共トイレ、街路の状態は昔から同じだったわけではありません。古くからの価値観を土台に、近年の清掃体制、規制、施設改修が現在の清潔さをつくっています。
