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観光庁の観光政策・制度を宿泊業で活かす基本ガイド|基本法・計画・インバウンド戦略の読み解き

観光庁の観光政策・制度を宿泊業で活かす基本ガイド|基本法・計画・インバウンド戦略の読み解き
CoCoRo編集部

観光庁のサイトには、観光立国の方向性や法律、各種の制度・認定が整理されていますが、忙しい現場から見ると「どこから見ればいいのか分からない」「自分たちの仕事とどう関係するのかイメージしづらい」と感じることも多いと思います。
このガイドは、観光庁の「観光政策・制度」に関する情報のうち、宿泊業に関係が深い部分を中心に、「全体像」と「宿泊業としてどこを意識するとよいか」をざっくりつかんでいただくことを目的にまとめました。すべてを完璧に理解する必要はありませんので、気になるところから読み進めていただき、日々の判断や地域との対話の際に少しでもお役立ていただければ幸いです。

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観光庁「観光政策・制度」ページの全体像

観光庁の「観光政策・制度」ページには、観光立国に向けた「ルール」と「方向性」に関する情報が、次のようなブロックに整理されています。

さらに、「観光政策・制度」配下の個別ページとして、例えば次のような制度・仕組みが用意されています。

宿泊業としては、「国として観光をどう位置づけているか」という上位の考え方と、「自分たちの施設や地域に直接関係する制度・認定」が両方絡んできます。以下で、それぞれを少しずつ紐解いていきます。

観光立国の「土台」になる基本法・計画・推進体制

観光立国推進基本法:観光を成長分野として位置づける法律

「観光立国推進基本法」は、観光をわが国の重要な成長分野と位置づけ、地域活性化や雇用の拡大、諸外国との相互理解の増進などを目的とした枠組みを定めた法律です。

ここで示されているポイントとして、例えば次のような内容があります。

  • 観光は力強い経済を取り戻すための重要な成長分野である
  • 地域が一丸となって個性ある観光地域を作り上げ、積極的に発信していくことが重要
  • 訪日観光の振興と同時に、国内旅行の振興も重視する

宿泊業にとっては、「インバウンドだけが観光政策のターゲットではない」「地域全体での価値づくりが前提」といった視点を持つうえで押さえておきたい位置づけです。

観光立国推進基本計画:3つのキーワードと3つの戦略

「観光立国推進基本計画」は、この基本法に基づいて政府が定める中期計画で、直近のものは令和5年3月31日に閣議決定されています。

現在の計画では、観光立国の持続可能な復活に向けたキーワードとして、

  • 持続可能な観光
  • 消費額拡大
  • 地方誘客促進

の3つが掲げられており、これに対応する形で、

  • 持続可能な観光地域づくり戦略
  • インバウンド回復戦略
  • 国内交流拡大戦略

という3つの戦略が示されています。

料金設定や投資、人材育成を考えるときに、「国全体としてはどこを重視しているのか」を理解しておくと、自治体やDMOとの連携や、補助金・支援メニューの活用の方向性もつかみやすくなります。

推進体制:どのように政策が決まっていくのか

「推進体制」のページでは、観光立国を実現するための主な会議体として、例えば以下が紹介されています。

  • 観光立国推進閣僚会議
  • 交通政策審議会 観光分科会

これらは直接宿泊施設の現場が参加する場ではありませんが、

  • 観光白書や基本計画がどのようなプロセスで決まっているのか
  • 閣僚レベルでどの程度観光が議論されているのか

といった「政策決定の重み」を知る手がかりになります。

宿泊業に直結する主な制度・認定

観光庁の観光政策・制度の中には、宿泊業により直接関係する仕組みや認定制度も含まれています。

国際観光ホテル整備法:外客宿泊施設の登録制度

「国際観光ホテル整備法」は、国際観光の振興に寄与するため、外客宿泊施設について登録制度を実施し、その整備と情報提供を図る法律です。

概要としては、

  • 外国人旅行者の受け入れに適した基準を満たしたホテルなどを登録する
  • 登録ホテル等に関する情報を提供し、インバウンドの受け入れ体制を整える

といった趣旨が示されています。インバウンド比率が高いホテルや、今後本格的に海外ゲストの受け入れを強化したい施設にとっては、検討対象になりうる制度です。

観光施設における心のバリアフリー認定制度

「観光施設における心のバリアフリー認定制度」は、高齢者や障害のある方が安全・快適に旅行できるよう、バリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組む観光施設を認定する制度です。認定施設には観光庁が定める認定マークが交付されます。

  • 客室や館内設備のバリアフリー対応
  • スタッフの接遇・研修
  • ウェブサイトなどでの情報提供

などに取り組む宿泊施設にとっては、「取り組みを外部に分かりやすく伝える手段」として活用が考えられます。

通訳ガイド制度:通訳案内士・地域通訳案内士との連携

「通訳ガイド制度」のページでは、全国通訳案内士や地域通訳案内士の制度概要が紹介されています。地域通訳案内士は、特定の地域で報酬を得て通訳案内を行う存在として位置づけられ、各自治体の研修を通じて登録されます。

宿泊施設の立場では、

  • 地域通訳案内士と連携して、館内ツアーや周辺観光ツアーを企画する
  • インバウンド向けの情報提供や館内説明の充実を図る

といった形で、制度の存在を知っておくだけでも選択肢が広がります。

観光地域づくり法人(DMO)と宿泊業

「観光地域づくり法人(DMO)」のページでは、登録DMOの一覧や、過去の情報へのリンクなどが掲載されています。

DMOは、エリア全体のマーケティングや観光戦略を担う存在であり、

  • 宿泊施設として、地域観光のコンセプトやターゲット設定を共有する
  • プロモーションや商品造成で連携する
  • 補助金や支援事業において、一体的に取り組む

といった場面で関わることが多くなります。自社が立地するエリアにどのようなDMOがあり、どんな計画を掲げているかを把握しておくのは、観光政策・制度との橋渡しという意味でも大切です。

3つの戦略と宿泊業で意識したいポイント

観光立国推進基本計画で掲げられている3つの戦略は、いずれも宿泊業に関係しています。

持続可能な観光地域づくり戦略

  • オーバーツーリズム対策
  • 自然環境や文化資源を守りながら観光を続ける仕組みづくり
  • 地域住民との共生

といったテーマが含まれます。宿泊施設としては、節水・省エネ・食品ロス削減などの館内施策だけでなく、地域全体のルールづくりやガイドライン作成にどう関わるかが問われてきます。

インバウンド回復戦略

コロナ禍からの回復を踏まえ、「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」などとあわせて、訪日旅行市場の再成長を目指す戦略です。

  • 単なる訪日客数の回復ではなく、消費額や地方への誘客を重視
  • 高付加価値な体験や長期滞在型の需要創出

といった方向性が示されており、宿泊施設としても、価格だけに頼らない「体験価値の設計」が求められていきます。

国内交流拡大戦略

国内旅行の振興や、地方部への滞在を促す視点です。

  • ワーケーションや二拠点居住など、ライフスタイルの変化に対応した滞在提案
  • 近距離・マイクロツーリズムの推進

などを念頭に、宿泊施設側も「従来型の観光旅行」以外のニーズにどう応えるかがテーマになります。


観光政策・制度との付き合い方:宿泊業の具体的な活用シーン

観光庁の観光政策・制度の情報は、条文や計画書のボリュームも大きく、「読み込もう」と思うと身構えてしまいます。ただ、宿泊業の実務のなかで、次のような場面で少しずつ触れていくと、負担感が軽くなります。

自社の中長期方針を考えるとき

  • 中期的な投資計画やリニューアル、業態転換を検討するとき
  • 「インバウンドにどこまで比重を置くか」「サステナビリティをどう織り込むか」を議論するとき

観光立国推進基本法や基本計画の「キーワード」や「戦略」を押さえておくと、自治体や金融機関、DMOとの対話でも、共通の土台を持った議論がしやすくなります。

補助金・支援メニューを探す前の“予習”として

観光庁や国交省のサイト、e-Govのポータルなどでは、観光分野の施策や関連制度が案内されています。

  • 人材不足対策やDX、バリアフリー化、インバウンド対応など、補助対象になりやすいテーマ
  • 観光政策として今、特に力を入れている分野

を知っておくと、個別の公募ページを見たときに「なぜこのテーマなのか」が理解しやすくなります。

自治体・DMOとの打ち合わせに臨むとき

  • 自地域のDMOが掲げている方針や計画を、観光庁の制度の文脈と合わせて眺めてみる
  • 観光白書や基本計画の一部を事前に読んでおき、会話の中でキーワードとして共有する

こうしたひと手間で、「行政用語の世界」と「現場の感覚」の間に橋をかけやすくなります。

まとめ

観光庁の「観光政策・制度」は、観光立国推進基本法や基本計画といった大きな方向性から、DMOや各種認定制度、通訳ガイド制度、国際観光ホテル整備法のような実務寄りの仕組みまで、宿泊業の皆さまの仕事と少なからず関わりのある情報がまとまっている場所です。すべてを一度に理解する必要はありませんが、「国として観光をどう見ているのか」「どのような制度や認定が自分たちの施設や地域に関係しそうか」を少しずつ押さえておくことで、日々の判断や将来の投資、自治体・DMOとの連携がぐっと整理しやすくなります。忙しい現場の合間に、まずは気になるテーマだけでも触れていただき、このガイドが観光庁の観光政策・制度に向き合う際の小さな案内役としてお力になれれば幸いです。

参考資料

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