佐渡フェアをテーマにしたベルナティオの期間限定レストラン企画は、佐渡島の食材や日本酒を取り入れることで、宿泊業における地域連携と食体験コンテンツの作り方を考えるうえで参考になりそうな事例です。この記事では、新潟県十日町市のリゾートホテルが実施する佐渡フェアの内容を整理しつつ、他のホテル・旅館が自館で応用する際のポイントを解説していきます。
本記事のポイント
- 佐渡フェアは、世界遺産登録1周年というタイミングを活かしつつ、佐渡島の食材と日本酒を核にした「地域単位の食フェア」の好例となっている。
- 佐渡フェア限定メニューやドリンクは、家族・カップル・グループなど多様な客層に対応しており、館内レストランの単価アップと滞在満足度向上の両立をねらった設計と考えられる。
- 自館で佐渡フェアのような取り組みを行う場合、観光庁が示す観光コンテンツトレンド(イベント・生活没入など)や生産性向上の考え方と組み合わせることで、売上・業務負荷・地域連携をバランスよく設計しやすくなる。
ニュースの概要:ベルナティオの佐渡フェアとは

新潟県十日町市の「あてま高原リゾート ベルナティオ」は、東京駅から新幹線利用で約2時間の場所にあるリゾートホテルです。このベルナティオでは、佐渡島の金山世界遺産登録1周年を記念し、「佐渡フェア」を開催していると発表しています。会場はブッフェレストラン「森のシンフォニックダイニング コスモス」で、期間は2025年11月26日(水)から2026年3月4日(水)までとしています。
佐渡フェアでは、日本海の豊かな漁場で水揚げされる海産物や、柿・みかん・ルレクチェなどの果物、佐渡乳業のチーズなど、佐渡島の食材を用いた料理が提供されるとしています。銘酒の産地としての側面にも着目し、ベルナティオの唎酒師が選んだ佐渡の日本酒とともに楽しめる構成と説明しています。
メニューの一例として、身の締まりと脂乗りのバランスが特徴という「佐渡銀鮭と鮮魚おまかせ握り寿司」、搾乳から6時間以内の生乳で作るというモッツァレラチーズを使った「佐渡乳業 農場モッツァレラチーズのリゾットグラタン」、佐渡産みかんや柿を使ったデザート各種などが挙げられています。また、レストランスタッフ考案のノンアルコールを含む6種の期間限定ドリンクも佐渡フェアのラインナップに含めているとしています。
ベルナティオは今回の佐渡フェアを、地域やパートナー企業と連携し、新潟ならではの食を通じて地域ファンを増やしていく取り組みの一環と位置づけていると説明しています。
宿泊業にとってのポイント:佐渡フェアが示す地域食フェアの可能性
佐渡フェアは、一見すると「期間限定フェア付き宿泊プラン」の一つに見えますが、宿泊業の視点で見ると次のようなポイントが見えてきます。
1. 「一つの島」に焦点を絞ったわかりやすいテーマ設定
佐渡フェアは、佐渡島という明確な地理的テーマと、金山世界遺産登録1周年というタイムリーなフックを掛け合わせています。テーマがはっきりしていることで、販促コピーや館内ポスター、スタッフのトークが組み立てやすく、販売・現場運営双方にとってメリットがあると考えられます。
観光庁の観光コンテンツ調査では、旅行トレンドとして「イベント」や「生活没入型の体験」が今後も重要になると分析されており、地域の食を通じてその土地の暮らしに触れられる企画は価値が高いと整理されています。
佐渡フェアはまさに、佐渡島の日常(漁業・酪農・果樹)を食体験として切り出した「生活没入」型コンテンツと見ることもできそうです。
2. 食材調達とパートナーシップを通じた「地域連携の入口」
佐渡フェアのメニュー構成を見ると、銀鮭・乳製品・柿・みかん・日本酒と、佐渡島の一次産業と直結した食材が意図的に選ばれています。これは単なるメニュー開発ではなく、
- 生産者や食品メーカーとの継続的な取引
- 観光協会・自治体との連携(世界遺産周知やパンフレット設置など)
- 将来のツアー造成や2次交通への連携
など、地域との関係性を広げるきっかけになり得ます。
観光庁がまとめたサステナブルツーリズムの事例集では、持続可能な観光は環境配慮だけでなく、地域経済への貢献とビジネス成長の機会でもあるとされています。
佐渡フェアのように特定地域の食材を継続的に扱うことは、まさにその方向性に合致しているといえそうです。
3. 従業員エンゲージメント向上につながる「関わりしろ」
レストランスタッフが考案したという期間限定ドリンクは、現場スタッフのアイデアを形にした要素です。佐渡フェアのような企画では、
- 料理長やパティシエのレシピ開発
- スタッフによるドリンク提案
- 唎酒師による日本酒選定と説明
など、各ポジションの専門性を活かす場が自然に生まれます。
観光庁の生産性向上ハンドブックでは、宿泊業の高付加価値化において「施設の生産性」「業務の生産性」「顧客価値」の3つの観点を重視し、それぞれで従業員のエンゲージメント向上が重要だとしています。
佐渡フェアのように現場主体の工夫を取り入れた企画は、この3つの観点を同時に押さえやすいと言えるかもしれません。
背景と理由の整理:世界遺産と佐渡フェアを軸にした広域観光
1. 世界遺産登録1周年という「ストーリー」がある
佐渡フェアは、佐渡島の金山世界遺産登録1周年を記念した企画とされています。単なるご当地フェアではなく「世界遺産」という国際的なブランドと結びついている点は、インバウンドを視野に入れる宿泊施設にとってもヒントになります。
観光庁の世界的潮流調査では、コロナ後のインバウンド市場において、地方誘客と高付加価値化を両立させるコンテンツが重視されていると整理されています。
世界遺産×食のように、既に認知がある観光資源と日常の体験(食・宿泊)を組み合わせることで、地方でも選ばれやすい商品設計ができるという考え方です。
2. 佐渡島側でも「持続可能な観光」を模索している
観光庁が実施したオーバーツーリズム対策の先駆モデル地域の事例集では、佐渡市(佐渡島)が受入環境整備や二次交通の強化など、持続可能な佐渡観光の推進に取り組んだ事例が紹介されています。
こうした流れを踏まえると、十日町市側で佐渡フェアを実施することは、
- 佐渡への実際の旅行を検討する前段階で「佐渡ってどんなところか」を知ってもらう
- 佐渡島のピークシーズン以外にも関心を持ってもらう
- 冬期の佐渡のアクセス課題を補完しつつ、島への興味を途切れさせない
といった形で、広域での観光回遊を支える役割も担いうると考えられます。
3. 観光トレンドとしての「イベント」と「生活没入」との親和性
前述の観光トレンド調査では、観光コンテンツの中長期的な流れとして、ウェルネス、ネイチャーアクティビティ、聖地巡礼、イベント、生活没入といったテーマが整理されています。
佐渡フェアは、
- 「イベント」…期間限定フェアやコラボ企画
- 「生活没入」…佐渡の一次産業に根ざした食材・日本酒
- 「ウェルネス」…雪景色の中で温泉と地元食材を楽しむ滞在
といった複数のトレンド要素を取り込んでいると解釈できます。自館で類似のフェアを企画する際も、「どのトレンド要素を強めるのか」を意識して設計すると、打ち出し方が明確になりそうです。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説:佐渡フェア限定メニューを読み解く
ここでは、佐渡フェアの限定メニュー構成を、宿泊業視点で整理し直してみます。
1. メインの象徴「佐渡銀鮭と鮮魚おまかせ握り寿司」

フェアの顔となるメニューは、佐渡沖の速い潮流で育ったとされる佐渡銀鮭を使った握り寿司です。身の締まりと脂のバランスが特徴という説明は、料理提供時にスタッフがストーリーテリングしやすいポイントです。
加えて、毎朝市場で仕入れる料理長厳選のネタを組み合わせる構成にすることで、
- フェア期間中でも日替わりの変化を出せる
- 仕入状況に応じて柔軟にメニューを調整しやすい
- 常連客にも「今日は何が出るか」という楽しみを提供できる
といった運営上のメリットも見込めそうです。
2. 乳製品を活かす「佐渡乳業 農場モッツァレラチーズのリゾットグラタン」

搾乳から6時間以内の生乳で作られるモッツァレラチーズを使ったリゾットグラタンは、和の要素が強い寿司とのバランスを取る役割もありそうです。
- 洋風メニューを好む層へのアプローチ
- ワインや日本酒とのペアリング提案
- 「短時間で加工される新鮮さ」というストーリーによる差別化
など、館内レストランの提案力を高める要素として位置づけられます。ベジタリアンではないものの、肉よりも魚・乳製品を選びたいゲストへの選択肢としても機能するでしょう。
3. デザートで「佐渡の四季」を伝えるフルーツの使い方

デザートには、佐渡産みかんや柿をふんだんに使ったジュレ、パンナコッタ、シャーベットがラインナップされています。みかんの甘酸っぱさ、ヤスダヨーグルトのコク、柿と梅の組み合わせなど、それぞれの一皿に佐渡の風土や四季を想起させる工夫が見られます。
デザートは写真映えもしやすく、SNS投稿や館内POPとの相性が良い領域です。観光庁のSNS活用セミナー資料では、プラットフォームごとの特性を踏まえた「映え」の重要性が指摘されており、こうした視覚的に訴求しやすいメニュー開発は、オンラインでの話題づくりにもつながると考えられます。
4. 佐渡フェア限定ドリンクで家族連れ・ノンアルユーザーにも対応

期間限定ドリンクがノンアルコールを含む6種で構成されている点は、家族連れやアルコールを飲めないゲストへの配慮といえます。
- ノンアルコールカクテルで見た目の特別感を出す
- 日本酒を使ったカクテルで佐渡の銘柄をカジュアルに体験してもらう
- 温泉入浴後の「一杯」をイメージしたドリンク提案を行う
といった活用をすることで、レストラン単体ではなく、宿泊体験全体の満足度を底上げできそうです。佐渡フェアという名称のもと、ドリンクにも「佐渡らしさ」を紐づけている点は、コンセプト設計として参考になります。
自社への活かし方のヒント:自館ならどんな佐渡フェアを企画できるか
ここからは、ベルナティオの佐渡フェアを踏まえ、他のホテル・旅館が自館で応用する際のヒントを整理します。必ずしも佐渡フェアそのものをまねる必要はなく、「地域特化型フェア」の設計の仕方として読み替えていただくイメージです。
1. まず「どの地域の何を伝えたいのか」を一つに絞る
佐渡フェアは、「佐渡島×世界遺産×食」という軸が明快です。自館で企画する場合も、
- 例:自県の島嶼部×伝統工芸×食
- 例:県境エリア×酒蔵×山の幸
- 例:世界ジオパーク認定エリア×温泉×発酵食
など、地域名+象徴的な資源+日常体験(食・温泉など)をセットで考えると、コンセプトがぶれにくくなります。
観光庁の生産性向上ハンドブックでは、「顧客価値」の観点でターゲットや提供価値が曖昧なまま施策を打つことのリスクが指摘されています。
佐渡フェアのようにテーマを絞り込むことは、顧客価値の明確化にも役立つと言えるでしょう。
2. メニュー構成は「象徴メニュー+バランス」を意識する
佐渡フェアのメニュー構成は、ざっくりと次のように整理できます。
- 象徴メニュー:佐渡銀鮭の握り寿司
- バランスメニュー:モッツァレラのリゾットグラタン(洋要素)
- フィナーレ:佐渡産フルーツを使ったデザート
- プラス要素:佐渡フェア限定ドリンク
自館でフェアを企画する際は、
- 「その地域を象徴する一皿」を決める
- 客層の嗜好に合わせて和・洋・スイーツ・ドリンクのバランスを取る
- SNS映えや物販への展開を見据えて一部メニューを設計する
といった流れで構成を組むと、オペレーションとプロモーションの両面で扱いやすくなります。
3. 従業員参加型の企画にしてエンゲージメントを高める
佐渡フェアでは、レストランスタッフが限定ドリンクの考案に関わったとされています。自館でも、
- ドリンクやスイーツなど、一部をスタッフ提案枠にする
- 仕入先訪問や生産者とのオンライン交流に若手スタッフを同席させる
- スタッフによるメニュー紹介コメントをPOPやWebに掲載する
といった工夫をすると、現場の主体性や学びの機会にもつながります。
宿泊施設向けのサステナブルツーリズム事例集でも、持続可能な観光に取り組む施設の多くが、従業員の理解・参画を重視していることが紹介されています。
佐渡フェアのような取り組みを「現場発の学びの機会」とセットで設計することも、長期的には重要になりそうです。
4. 佐渡フェアのような地域フェアを「広域連携」の起点にする
佐渡フェアは十日町市のホテルが佐渡島をテーマにしていますが、これは広域連携の視点で見ると非常に興味深い構図です。
- 自館があるエリアだけでなく、フェリー・鉄道・バスでつながる隣接エリアも巻き込む
- フェア会場でパンフレットや周遊パス情報を案内し、次回旅行の候補にしてもらう
- 将来的に、実際に佐渡を訪れる宿泊プランやツアー造成につなげる
といった展開が考えられます。
オーバーツーリズム対策事例集でも、交通や周遊ルートを工夫しながら、観光客を分散しつつ地域全体の満足度を高める取り組みが各地で進んでいることが紹介されています。
佐渡フェアのような企画を、単発の集客施策ではなく「広域観光の入口」として位置づける視点も押さえておくと良さそうです。
部屋タイプ
お子様連れ、ワンちゃん連れ、ご友人同士、3世代でのご旅行など様々なニーズにお応えした部屋タイプ
館内施設
周辺観光
ベルナティオの位置する新潟県十日町市と隣の津南町を合わせて『妻有(つまり)地域』と呼ぶそうです。棚田群やブナ林が作り出す美しい原風景、日本有数の河岸段丘からなる苗場山麓など雄大な「大地」の魅力が詰まった妻有地域。
2000年から3年に一度開催される世界最大級の国際芸術祭の一つ「大地の芸術祭」の舞台でもあり、毎年多くの観光客が訪れている。




まとめ|佐渡フェアから学べること
- 佐渡フェアのように一つの地域にフォーカスした食フェアは、世界遺産や地域資源のストーリーと組み合わせることで、宿泊施設にとって高付加価値な体験コンテンツになり得ます。
- 象徴メニュー・バランスメニュー・デザート・ドリンクといった構成で佐渡フェアを設計している点は、自館で地域フェアを行う際のメニュー構成モデルとして参考になります。
- 従業員参加型のフェア運営や広域連携の視点を取り入れておくと、佐渡フェアのような企画が従業員エンゲージメント向上や地域との関係強化にもつながり、長期的な効果を期待しやすくなります。
- 佐渡フェアのような地域特化フェアを年間計画の中に組み込んでおくと、閑散期の集客やリピーターづくりに役立ち、売上の下支えになって安心です。
企業情報(佐渡フェアを開催するベルナティオ)
- 会社名:あてま高原リゾート ベルナティオ
- 所在地:〒949-8556 新潟県十日町市珠川
- 事業内容:リゾートホテル・宿泊施設の運営(宿泊、レストラン、アクティビティ、ゴルフなど)
- 公式サイトURL:あてま高原リゾート ベルナティオ公式サイト
本リリースに関するお問い合わせ(佐渡フェアについて)
- 施設名:あてま高原リゾート ベルナティオ
- 所在地:〒949-8556 新潟県十日町市珠川
- 電話番号:025-758-4888(代表)
- FAX:025-758-4848
- お問い合わせ窓口:代表電話または公式サイトお問い合わせフォームより
- 公式サイトURL:あてま高原リゾート ベルナティオ公式サイト
参考資料(佐渡フェアの背景にある公的資料)
- 観光庁『世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業 調査報告書』
- 観光庁『宿泊施設向け 国際基準に対応した持続可能な観光にかかる取組事例集』
- 観光庁『宿泊事業者における経営改善マニュアル 生産性向上のためのハンドブック』
- 観光庁『「先駆モデル地域」における取組み事例集(オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業)』
出典:PR TIMES『新潟県十日町市のリゾートホテルベルナティオ、佐渡島の金山世界遺産登録1周年記念『佐渡フェア』好評開催中!【2026年3月4日(水)まで】』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000140757.html








