下田プリンスホテルが打ち出した「ワンちゃんと楽しむ!ひと足早い桜ステイ」プランは、早咲きの桜とペット同伴ニーズを掛け合わせた、季節商品の好例といえそうです。伊豆・下田エリアの立地を活かしながら、館内コンテンツやスタッフ手作りの「桜めぐりMAP」まで組み合わせた今回の取り組みは、ホテル・旅館の企画担当や経営者にとって、春の集客やペット受け入れ強化のヒントになり得ます。この記事ではニュースの要点を整理しつつ、他施設が応用しやすい形でポイントを読み解きます。
本記事のポイント
- 下田プリンスホテルの桜ステイは「館内体験×周辺観光×ペット同伴」を一つのストーリーにまとめた事例であり、自施設の春企画や犬と泊まれる宿づくりにも転用しやすい構成です。
- 早咲きの桜と愛犬家のニーズを組み合わせることで、「時期」と「テーマ」の両面から価格と稼働率の底上げを狙う考え方は、季節イベント全般に応用しやすい発想です。
- スタッフ目線の桜めぐりMAPやフォトサービスなど、現場参加型の仕掛けは、従業員エンゲージメント向上や地域連携にもつながる取り組みと捉えることができそうです。
ニュースの概要
下田プリンスホテル(静岡県下田市白浜)では、2026年2月1日〜3月10日の期間限定で、愛犬と一緒に早咲きの桜を楽しむ宿泊プラン「ワンちゃんと楽しむ!ひと足早い桜ステイ」を販売すると発表しています。伊豆の早春観光の定番である「河津桜」と「みなみの桜」両方へのアクセスの良さを生かし、桜観光の拠点としての宿泊需要を取り込む狙いとしています。
プランでは、カフェスペースで楽しむ「わんわん桜アート体験」、飼い主向けのディナー「桜コース」、ワンちゃん用の「さくらおやつ」など、館内でも桜を感じられる仕掛けを用意しているとしています。また、スタッフが選んだ南伊豆エリアの桜鑑賞スポットや飲食店をまとめた「桜めぐりMAP」を配布し、周辺観光も含めた滞在提案を行う構成です。
料金は1名20,849円から(1室2名利用時)で、1泊2食に加えワンちゃん用おやつを含むパッケージとして販売するとしています。ワンちゃんの受け入れは1室2頭まで、有料(1頭あたり3,300円)とし、ワクチン接種証明書の提出や館内移動ルール、超大型犬の受け入れ不可など、利用規約も明示している点が特徴です。
宿泊業にとってのポイント
下田プリンスホテルの事例にみる「ペット同伴×季節イベント」の相性
今回の下田プリンスホテルの桜ステイは、「愛犬と一緒に季節を楽しみたい」という明確なターゲット像を描いた商品といえそうです。桜という短いピークと、ペットとの思い出づくりを組み合わせることで、「このタイミングだから行きたい」と思ってもらえる動機付けが生まれます。
観光庁が2024年に公表した観光コンテンツのトレンド調査では、ウェルネスやネイチャーアクティビティ、イベント、生活没入などのキーワードが中長期的な重要トレンドとして整理されています。 愛犬との桜散歩や、地域の神社参拝、菜の花畑へのお出かけは、まさに「自然・イベント・日常では味わえない体験」がセットになったコンテンツと位置付けることもできるでしょう。
「館内体験+地域の桜+フォトサービス」の三点セット
下田プリンスホテルは、わんわん桜アート体験、桜コース、さくらおやつといった館内コンテンツに加え、桜フォトスポットでの撮影サービスや桜めぐりMAPを組み合わせています。
このように「館内だけ」「周辺観光だけ」に寄らず、両方をつなぐ動線をつくることで、
- 天候が悪い日でも館内で楽しめる
- 晴れた日は桜の名所へ足を伸ばしたくなる
という、リスク分散と満足度向上の両立がしやすくなります。
スタッフ参加型の企画でエンゲージメントを高める
桜めぐりMAPをスタッフ手作りにしている点も、下田プリンスホテルならではの工夫といえそうです。スタッフ自身が「どのお店やスポットを紹介したいか」を考えるプロセスは、地域理解の深まりや、接客時の会話ネタづくりにつながります。
観光庁がまとめた宿泊事業者向けの生産性向上ハンドブックでも、従業員が自らアイデアを出し、顧客価値向上に関わることが高付加価値経営の一要素とされています。 現場参加型の季節企画は、採用や定着の面でもプラスに働く可能性がありそうです。
背景と理由の整理
伊豆・下田エリアの立地をどう生かしているか
伊豆エリアは早咲きの河津桜で知られ、2月〜3月にかけて「河津桜まつり」「みなみの桜と菜の花まつり」などのイベントに多くの観光客が訪れます。今回のプランでは、下田が両イベントの中間地点であることを踏まえ、桜観光の拠点としての機能を前面に出していると読み取れます。
宿としては、「イベント会場そのもの」ではなく「行き来しやすいベースキャンプ」であるからこそ、
- チェックイン前後や早朝・夜の過ごし方提案
- 交通混雑を避けた時間帯のモデルコース提示
など、時間の使い方を含めた提案が重要になります。滞在スケジュール例を示している点は、こうした不安を事前に解消する意図がありそうです。
ペット受け入れとルール設計のバランス
ワンちゃんの受け入れについては、頭数制限、体重制限(超大型犬不可)、ワクチン接種証明書の提出、館内移動ルールの指定など、リスクヘッジの条件が丁寧に示されています。
ペット同伴は集客の武器になる一方で、
- 館内汚損や騒音トラブル
- 他のお客さまからの苦情
- 衛生・アレルギーへの配慮
といった課題も抱えやすい領域です。あらかじめ条件を明文化し、予約前に同意を得る形にしておくことで、現場スタッフの負担を軽減しつつ、受け入れの安心感を高めることができます。
高付加価値化と「体験を含めた料金設計」
本プランは、客室・食事に加えて複数の体験コンテンツをセットにしながら、一定の価格帯で提供する構成になっています。単純な値上げではなく、「桜アート」「フォトサービス」「MAP」などの付加価値を含めたパッケージとして打ち出すことで、ゲストも価格の理由をイメージしやすくなります。
観光庁の高付加価値化ガイドラインでも、「値下げ競争から価値競争への転換」が重要とされており、体験を含めて一泊の価値を設計する考え方は、今後の宿泊業全体の方向性とも合致していると言えそうです。
具体的な取り組み・ニュース内容の解説
わんわん桜アート体験:ゲスト参加型コンテンツのつくり方
下田プリンスホテルの「わんわん桜アート体験」では、縦約80cm×横100cmの台紙に、ワンちゃんの足型スタンプで桜の花を咲かせる仕掛けとしています。
宿泊業目線で見ると、
- 大きな壁面やボードを1枚用意すればよい
- 室内スペースで完結するため天候の影響を受けにくい
- 足拭きタオルやマットを用意しておけば清掃負担もコントロールしやすい
といった運営メリットがあります。
同様の仕組みは、桜以外にも「夏の海の絵」「紅葉」「雪だるま」など季節に応じてアレンジしやすく、小規模旅館でも真似しやすいコンテンツと言えるでしょう。
桜コースとさくらおやつ:人と犬それぞれに「ごちそう」を用意
飼い主の夕食には、桜まつりシーズンに合わせた「桜コース」をメインダイニングで提供し、ワンちゃんには桜をイメージしたおやつを客室に用意する構成としています。
「人だけが特別な料理を食べる」のではなく、「人にも犬にもそれぞれ季節のごちそうがある」という設計は、愛犬家にとって大きな満足ポイントになります。また、食物アレルギー表示については、特定原材料8品目を中心とした対応範囲をあらかじめ明示しており、できること・できないことの線引きをしっかり伝える運営姿勢も参考になります。
スタッフ手作りの桜めぐりMAPとフォトサービス
スタッフが選んだ桜スポットや飲食店を地図にまとめた「桜めぐりMAP」は、単なる観光パンフレットの再配布ではなく、宿独自の視点を盛り込んだツールといえます。地元スタッフだからこそ知っている「犬と一緒に入りやすい店」「写真映えする時間帯」などの情報を足していくことで、他施設との差別化にもつながります。
また、敷地内の河津桜を背景にしたフォトスポットで、スタッフが記念撮影を行うサービスも用意しているとしています。 スマートフォンでの撮影補助だけでも十分価値があり、SNSでの拡散や口コミ投稿を自然に促す仕掛けとして機能しそうです。
滞在スケジュールの提示で「何をして過ごせばいいか」を解消
プレスリリースには、チェックインからチェックアウトまでのモデルスケジュール(1日目のアート体験〜2日目の白濱神社参拝、みなみの桜と菜の花まつりへの移動まで)が記載されています。
初めて訪れるエリアでは、「どの時間帯にどこへ行くのが良いか」が分からず、行動が後ろ倒しになりがちです。事前に「この順番で回るとスムーズ」という例を示しておくことで、ゲストは旅行前から具体的なイメージを持ちやすくなり、滞在中の迷いも減らせます。
自社への活かし方のヒント
まずは「限定フロア・限定日」で小さくペット同伴を試す
下田プリンスホテルのように本格的なペット同伴プランを展開するには、客室清掃や設備面での配慮が必要になります。一方で、いきなり全館対応に踏み切る必要はありません。
例えば、
- 特定フロアだけペット同伴可にする
- 閑散期の週末のみ「モデルプラン」として販売する
- 1日あたりの受け入れ頭数を絞る
といった形で、運営負荷をコントロールしながらテストする方法もあります。観光庁の「旅館向け インバウンド受入ポイント集」でも、小さく始めてノウハウを蓄積するアプローチが紹介されており、自館のスタッフ体制に合わせた段階的な導入が現実的とされています。
季節イベントは「テーマ×館内体験×周辺MAP」のセットで企画する
下田プリンスホテルの事例を型として捉えると、
- テーマ:桜・花火・紅葉・新緑など
- 館内体験:アート、ワークショップ、限定メニュー
- 周辺MAP:散策モデルコースや推しスポット
の三点セットで季節企画を組み立てるやり方が見えてきます。
ペット同伴が難しい宿であっても、「カップル向け桜フォトプラン」「三世代旅行向け紅葉ウォーク」など、ターゲットを変えて応用することができます。
スタッフを巻き込んだ企画づくりで現場力を底上げする
桜めぐりMAPやフォトサービスのように、スタッフが主体的に関わる仕掛けを増やすことで、現場のモチベーションや接客の質が上がりやすくなります。
例えば、
- 各部署から「おすすめスポット」を持ち寄るミーティングを定期的に行う
- スタッフ自身が撮影した写真を館内掲示やSNSに活用する
- ゲストからの感想をフィードバックし、翌年の企画に反映する
といったサイクルを回すことで、企画が「やらされ仕事」ではなく「自分たちのプロジェクト」になっていきます。
インバウンド視点では、案内の多言語化と食の配慮もセットで考える
今後、伊豆エリアでもインバウンド比率が高まることを踏まえると、ペット同伴プランであっても、
- 英語などでの注意事項・利用規約の掲示
- アレルギー表示や宗教・食習慣への基本的な配慮
- 写真やピクトグラムを使った視覚的な案内
といった工夫を入れておくと安心です。
観光庁が公表している「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」では、まずできる範囲から情報開示やメニューの工夫を始めることが推奨されています。 犬連れの国内客を主対象としつつも、「誰にとっても分かりやすい表示」を心がけることで、将来的なインバウンドへの展開もしやすくなるでしょう。
まとめ
- 下田プリンスホテルの「ワンちゃんと楽しむ!ひと足早い桜ステイ」は、愛犬家の感情と早咲きの桜シーズンをうまく結びつけた、ペット同伴×季節イベントの好例といえそうです。
- 季節イベントを「テーマ+館内体験+周辺MAP+フォトスポット」のセットで設計すると、自館の立地や規模に合わせて横展開しやすく、翌年以降のリピート商品として育てやすくなります。
- ペット同伴やインバウンド対応は、まず限定日や限定フロアから小さく始めてルールやオペレーションを整えておくと安心です。
- スタッフ参加型で企画・運営を進めることで、従業員エンゲージメントが高まり、結果としてサービス品質や口コミ評価の向上にもつながるという見方もできるでしょう。
企業情報
- 会社名:株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
- 本社所在地:東京都豊島区南池袋1-16-15 ダイヤゲート池袋
- 代表者名:金田佳季
- 設立:2021年12月
- 資本金:1億円
- 事業内容:日本を中心に、国内外の宿泊施設やスキー場・ゴルフ場などのレジャー施設を運営するホテル運営会社としています。
- コーポレートサイト:西武・プリンスホテルズワールドワイド(公式)
- 施設名:下田プリンスホテル
- 施設所在地:静岡県下田市白浜1547-1
- 下田プリンスホテル公式サイト:下田プリンスホテル
本リリースに関するお問い合わせ
- 会社名:株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
- 電話番号:03-5928-1111(代表)
- コーポレートサイトお問い合わせページ:西武プリンスホテルズ&リゾーツ お問い合わせ
参考資料
- 観光庁『世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業 調査報告書』
- 観光庁『旅館向け インバウンド受入ポイント集』
- 観光庁『生産性向上のためのハンドブック(宿泊事業者における経営改善マニュアル)』
- 観光庁『ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド』
出典:PR TIMES『【下田プリンスホテル】 館内でも外でも桜尽くし、ワンちゃんと春の思い出づくり「ワンちゃんと楽しむ!ひと足早い桜ステイ」プランを販売開始』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003395.000024668.html


