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アパホテル〈札幌大通駅前西〉開業で札幌中心部の宿泊ニーズをどう変えるか

スクラップ&ビルド計画第1弾 北海道初新築ホテル アパホテル〈札幌大通駅前西〉 開業テープカット
CoCoRo編集部

駅前西〉の開業は、札幌中心部の宿泊ニーズの変化や、既存戦略を考えるうえで参考になる事例と言えそうです。この記事では、札幌市内8棟目・初の新築アパホテルとして開業したの特徴を整理しながら、都市型ホテルがこれからどのように「ハード更新」「」「」を進めていくと良いかを、の視点から読み解いていきます。

本記事のポイント:アパホテル〈札幌大通駅前西〉開業が示す方向性

  • アパホテル〈札幌大通駅前西〉は、老朽化した既存ホテルを建て替え、客室数を60室から218室へ大幅増床したスクラップ&ビルド計画第1弾として位置づけられていることがポイントです。
  • アジャストスリッパやウォーターサーバー、トリプル1システム(1ステップ予約・1秒チェックイン・1秒チェックアウト)など、「小さな不満」をつぶしつつ省人化を図る工夫が随所に見られ、向上にもつながりやすい構成になっていると考えられます。
  • 5言語対応の館内案内システム、多数のピクトグラム、Wi-Fi6など、アパホテル〈札幌大通駅前西〉が採用した対応・デジタル対応は、中小規模のホテル・でも一部を取り入れやすい要素が多く、自施設の改善アイデアのヒントになりそうです。

ニュースの概要:アパホテル〈札幌大通駅前西〉とは

記者発表
記者発表

アパホテル株式会社は、2025年12月18日に札幌市中央区でアパホテル〈札幌大通駅前西〉(全218室)の開業を迎えたと発表しています。札幌市内では8棟目のアパホテルであり、新築ホテルとしては北海道初の開業だとしています。開業前には150室・最大300名を無料招待する試泊会を行い、約38倍という高倍率の応募があったと説明しています。

このアパホテル〈札幌大通駅前西〉は、2001年から前身ホテルとして営業してきた建物を、老朽化を理由に2024年2月にクローズし、新築の14階建てホテルとして建て替えたものとしています。建て替えによって客室数は60室から218室へと大幅に増え、全室禁煙・複数タイプの客室構成で再スタートした形です。

立地は、札幌市営地下鉄3路線が交差する「大通駅」や、「西11丁目駅」「西8丁目駅」から徒歩圏で、商店街やすすきのエリアにも近接しています。発表では、ビジネス・観光・イベント・インバウンドなど、幅広い宿泊需要を取り込む拠点として位置づけているとしています。

ハード面では、シングル・ダブルに加えて、隣り合う客室を内部でつなげる「コネクトルーム」や、ソファ付きで2名利用もしやすい「コージールーム」、バリアフリールームなど、滞在スタイルに応じた客室ラインナップを用意したとしています。全室に大型テレビ、Wi-Fi6、ユニバーサルコンセント、USBポート、オリジナルベッド・寝具、節水型ユニットバスなど、同社の「新都市型ホテル」の最新仕様を導入したと述べています。

サービス面では、1階に札幌市民に人気の「中国料理布袋」が入居し、ザンギや麻婆豆腐、らーめんなどを組み合わせた朝食プレートや、「アパ社長カレー&布袋のザンギセット」といったコラボメニューを提供するとしています。客室の新たなイノベーションとしては、マジックテープで足のサイズに調節できる「アジャストスリッパ」、ベンダーコーナーへのウォーターサーバー設置によるマイボトル対応などを挙げています。

インバウンド対応としては、ISO・JIS規格とオリジナルを組み合わせた全525種類のピクトグラムによる館内サイン、BBCニュースの英語音声放映、5言語対応の館内案内システム「アパデジタルインフォメーション(ADI)」、マルチタイプの電源・充電ポートなどを備えたと説明しています。

さらに、アパホテル〈札幌大通駅前西〉では、アプリ予約と連動した「1秒チェックイン機」や、カードキー投函で自動的にチェックアウト処理が完了するエクスプレスチェックアウトポストなど、トリプル1システムによる非接触・省時間のデジタルサービスも導入したとしています。今後は札幌駅周辺に2つの新ホテルを開業する計画も示しており、札幌エリアでのドミナント展開を進める方針だと述べています。

宿泊業にとってのポイント:アパホテル〈札幌大通駅前西〉が教えてくれること

アパホテル〈札幌大通駅前西〉の事例からは、都市部宿泊施設が抱えやすい課題に対するいくつかのヒントが見えてきます。

まず、老朽化した中規模物件を「維持しながら少しずつ改装」するのではなく、一度クローズしてスクラップ&ビルドで客室数・仕様ともに一気に引き上げている点が象徴的です。客室60室規模から218室へ増床することで、固定費あたりの売上を高めやすくなり、同一敷地での収益性を大きく改善できる可能性があります。札幌中心部という立地であれば、こうした「土地のポテンシャルを最大限に活かす建て替え」は他施設でも検討に値する選択肢と言えそうです。

次に、アパホテル〈札幌大通駅前西〉で導入されたアジャストスリッパやウォーターサーバーは、一見すると小さな変更ですが、ゲスト体験と運営効率の両方に効く工夫です。スリッパのサイズ問題やペットボトル水の確保は、フロントや客室清掃にとっても頻繁に問い合わせ・補充が発生しがちなポイントです。調整可能なスリッパと共用のウォーターサーバーによって、ゲストの満足度を維持しながら、備品管理の手間やゴミ量を減らす視点は、自社でも真似しやすい部分ではないでしょうか。

また、トリプル1システムをはじめとしたチェックイン・チェックアウトのデジタル化は、フロント業務の負荷軽減と従業員エンゲージメント向上に直結しやすい領域です。スタッフが長時間「列のさばき」に追われるのではなく、困っているお客様への案内や、観光相談などの付加価値の高いコミュニケーションに時間を使えるようになれば、働きがいの向上にもつながります。

最後に、アパホテル〈札幌大通駅前西〉が強調している5言語対応のADIや多数のピクトグラムは、「言語に頼りすぎない案内設計」の良い例と言えそうです。特に、フロントやレストランに英語・中国語話者を十分に配置できない施設ほど、サインや客室内インフォメーションの工夫で不安を減らすことが、結果的にクレーム削減やスタッフの心理的負担軽減につながる可能性があります。

こうした観点を押さえておくと、アパホテル〈札幌大通駅前西〉のニュースを自施設の改善テーマに落とし込みやすくなりそうです。

背景と理由の整理:札幌・インバウンド・スクラップ&ビルド

アパホテル〈札幌大通駅前西〉の開業背景には、札幌というマーケット特性と、ポストコロナ期の宿泊業を取り巻く環境変化が重なっていると考えられます。

札幌市中心部は、ビジネス・観光・イベント・インバウンドが年間を通じて混在するエリアです。雪まつりなどのイベント時期には短期的なピークが発生し、普段はビジネス・個人観光がベースとなるため、「平常時は効率よく運営しつつ、ピーク時は高単価・高回転で稼ぐ」ことが求められます。アパホテル〈札幌大通駅前西〉のように、駅近・商店街近接という立地で客室数を増やすスクラップ&ビルドは、こうした需要構造に合った戦略と言えそうです。

また、発表ではアパホテルグループ全体として、老朽化したホテルを建て替えるスクラップ&ビルド計画を全国的に進めているとしています。既存建物のままでは、Wi-Fi6、ユニバーサルコンセント、バリアフリー、環境配慮型など、現在求められる標準仕様を十分に満たせないケースも増えてきます。建て替えによって「最新仕様を一括で導入する」ことは、長期的な維持コストの抑制にもつながる可能性があり、投資判断の一つの考え方といえるでしょう。

インバウンドの回復・拡大も、アパホテル〈札幌大通駅前西〉の仕様に強く反映されています。多言語対応のADIや豊富なピクトグラム、キャスト機能付きのテレビなどは、「日本語が読めない・話せない」ゲストでもストレスなく滞在できるようにするための設計です。こうした設備は、訪日客だけでなく、日本人ゲストにとっても使い勝手が良いケースが多い点も見逃せません。

さらに、環境配慮の観点からも、節水型浴槽やバイオマス・再生プラスチック由来のアメニティ、ウォーターサーバーの活用など、「持続可能な観光」に向けた取り組みが随所に盛り込まれていると受け取れます。今後は価格や立地だけでなく、「環境配慮型の宿かどうか」を重視するゲストも増えることが予想されるため、この点も中長期的な競争力につながりやすい要素ではないでしょうか。

このように、アパホテル〈札幌大通駅前西〉の開業は、札幌の宿泊需要構造と、インバウンド・環境対応・老朽化建物の課題が交差するタイミングでのひとつの回答として整理できそうです。

具体的な取り組み・ニュース内容の解説:アパホテル〈札幌大通駅前西〉の「ハード×デジタル×おもてなし」

ホテル外観
ホテル外観

ここでは、アパホテル〈札幌大通駅前西〉で示された取り組みを、宿泊業が真似しやすい観点で整理します。

1. 客室タイプ・ハード面の工夫

アパホテル〈札幌大通駅前西〉では、「シングル」「ダブル」に加え、「コージールーム」「コネクトルーム」「バリアフリールーム」を組み合わせて構成しているとしています。これにより、ビジネス客の1名利用から、カップル・友人同士・家族・高齢者や車椅子利用者まで、幅広いターゲットを同一ホテルで受け入れやすくなります。

特にコネクトルームは、家族・グループ利用に対応しながらも、「2部屋分の売上」を確保しつつ運営もシンプルにできる点が魅力です。戸建て旅館のように大規模改装が難しい施設でも、「隣り合う客室を将来的にコネクト化できるか」を設計段階から検討しておくと、稼働状況に応じた売り方の幅が広がる可能性があります。

また、全室禁煙とすることで、清掃負担の平準化や臭いトラブルの削減が期待できます。喫煙スペースを館内の特定箇所に集約し、清掃・設備管理を効率化している点も、運営側にはメリットが大きいと考えられます。

コネクトルーム
コネクトルーム

2. アジャストスリッパ・ウォーターサーバーに見る「小さな不便」の解消

アパホテル〈札幌大通駅前西〉のイノベーションとして挙げられている「アジャストスリッパ」は、マジックテープでサイズ調整できる客室スリッパです。これまでのワンサイズスリッパでは「小さすぎる」「大きすぎて歩きづらい」といった不満が出やすく、特にインバウンドゲストではサイズ差も顕著です。調整機能を持たせることで、追加サイズの在庫管理を減らしつつ、満足度を上げやすくなります。

ウォーターサーバーの設置も、マイボトル利用が広がる中で合理的な選択といえます。自動販売機・製氷機と同じベンダーコーナーに置くことで、宿泊者は24時間自由に給水でき、ペットボトル購入回数を減らせます。施設側にとっては、部屋置きミネラルウォーターのコスト削減や、ペットボトルゴミの減量といったメリットも期待できます。

他のホテル・旅館でも、「スリッパ」と「水」はすぐに改善しやすい項目です。アパホテル〈札幌大通駅前西〉のようなアジャスト式でなくても、サイズバリエーションの見直しや、共用ウォーターサーバーの導入を検討してみる価値はありそうです。

3. デジタルを活かした非接触・省時間オペレーション

トリプル1システムとして紹介されている「1ステップ予約」「1秒チェックイン」「1秒チェックアウト」は、予約情報とチェックイン機・カードキー回収ポストを連動させることで、フロントの滞留を減らす発想です。アパホテル〈札幌大通駅前西〉でも、アプリチェックインや自動チェックイン機の活用により、当日の手続き簡素化を図っているとしています。

中小規模の施設でも、以下のような段階的な導入が考えられます。

  • 事前のWebチェックインフォームで、宿泊者情報や到着時間を収集
  • 当日はタブレットや簡易セルフチェックイン端末で署名・支払を完了
  • チェックアウトは、カードキー返却ボックス+自動精算機やオンライン決済で対応

こうした仕組みにより、フロントスタッフのピーク時負担が軽減されれば、残業時間の削減や、笑顔での応対余力にもつながります。結果として「働きやすさ」と「接客品質」の両立がしやすくなり、従業員エンゲージメントにも良い影響を与える可能性があります。

4. インバウンドに向けた多言語・ピクトグラム対応

アパホテル〈札幌大通駅前西〉は、全525種類ものピクトグラムを使った館内サインや、5言語対応のADIによるテレビ画面表示など、かなり踏み込んだインバウンド対応を打ち出しています。ここまでのボリュームは難しくても、他施設でも取り入れやすいポイントはあります。

例えば、

  • 館内サインは、最低限「日本語+英語+ピクトグラム」を基本にする
  • 客室内の案内や緊急時対応は、QRコードから多言語ページに飛べるようにする
  • 朝食や夕食メニューには、アレルゲン・宗教配慮の簡易表示や英語表記を加える

といった対応だけでも、外国人ゲストの安心感は大きく変わります。アパホテル〈札幌大通駅前西〉のような先行事例をベンチマークにしつつ、自施設の規模に合った「ミニマム・スタンダード」を決めると、段階的にレベルアップしやすくなりそうです。

自社への活かし方のヒント:アパホテル〈札幌大通駅前西〉から逆算するチェックリスト

最後に、アパホテル〈札幌大通駅前西〉の取り組みを、自社のホテル・旅館でどう活かせるかを、アクションの形で整理します。

1. 建物・客室の「これから10年」を描く

  • 現在の建物や設備の老朽度を棚卸しし、「修繕で持たせるのか」「建て替えや大規模改装を視野に入れるのか」を、経営層と現場で共有する。
  • アパホテル〈札幌大通駅前西〉のように、客室数や客室タイプの再構成によって収益性を高められないかを検討する(例:コネクトルーム化、バリアフリールームの設置など)。
  • 将来の建て替えを見据え、今から「欲しい標準仕様リスト」を作っておくと、設計段階での打ち合わせがスムーズになります。

2. ゲストの「小さなストレス」を洗い出す

  • スリッパ、飲料水、コンセント位置、Wi-Fi、枕の硬さなど、アパホテル〈札幌大通駅前西〉が手を入れているポイントを、自施設でも一度洗い出す。
  • 宿泊後アンケートや口コミを見直し、「よく出ているけれど、後回しにしてきた不満点」がないかを確認する。
  • すぐに実行できる小さな改善(スリッパの種類追加、ウォーターサーバー設置、枕の選択制など)を、半年以内の改善リストとしてまとめてみると動きやすくなります。

3. デジタル化で「並ばない・書かない・待たない」を目指す

  • トリプル1システムのようなフルセット導入は難しくても、「手書きの宿泊者カードを減らす」「事前決済比率を上げる」など、部分的なデジタル化から始める。
  • チェックイン・チェックアウトのピーク時間を把握し、「この1時間のフロント手続きをどれだけ短縮できると理想か」を現場と一緒に数値で考えてみる。
  • デジタル化の効果を「スタッフの残業時間」「クレーム件数」「フロント前の行列の長さ」などで振り返ると、従業員エンゲージメントの向上にも結びつけやすくなります。

4. インバウンド・多言語対応は「100点を目指さず60点から」

  • アパホテル〈札幌大通駅前西〉のような5言語・525種類のピクトグラム対応は理想形と捉えつつ、自施設ではまず「英語+ピクトグラム」を中心に整備する。
  • 館内案内、朝食メニュー、緊急時案内など、「外国人ゲストが特に不安になりやすい部分」から多言語化していく。
  • スタッフ全員に高度な語学力を求めるのではなく、「翻訳アプリ+分かりやすいサイン」で補う設計にすることで、現場の心理的ハードルを下げることも大切です。

こうしたステップを、自施設の経営戦略・人員体制と照らし合わせながら順番づけしていくと、アパホテル〈札幌大通駅前西〉のニュースが「見るだけ」で終わらず、具体的な改善アクションにつながりやすくなるかもしれません。

まとめ:アパホテル〈札幌大通駅前西〉から学べるスクラップ&ビルドと

  • アパホテル〈札幌大通駅前西〉は、老朽化した既存ホテルをスクラップ&ビルドし、客室数・客室タイプ・設備を一気にアップデートした都市型ホテルの事例と言えそうです。
  • アジャストスリッパやウォーターサーバー、多言語対応のADI、トリプル1システムなど、「小さな不便」の解消と省人化・デジタル化を同時に進める発想は、規模を問わず多くの宿泊業で参考になるポイントが多いでしょう。
  • 自施設でも、アパホテル〈札幌大通駅前西〉の取り組みを参考にしながら、「建物の将来像」「デジタル化の優先順位」「インバウンド対応の最低ライン」を決めておくと安心です。
  • すべてを一度に実現する必要はないため、従業員の声も聞きつつ、できる範囲から一つずつ改善していくという選択肢もあります。

企業情報(アパホテル〈札幌大通駅前西〉運営企業)

  • 会社名:アパホテル株式会社(アパホテルズ&リゾーツ)
  • 所在地:東京都港区赤坂3丁目2-3
  • 代表者名:代表取締役社長 元谷 芙美子
  • 事業内容:ホテル・リゾートの運営、フランチャイズ展開などを行っているとしています。
  • 公式サイトURL:https://www.apahotel.com

本リリースに関するお問い合わせ

参考資料

本文中で公的資料を直接参照していないため省略します。

出典:PR TIMES『スクラップ&ビルド計画第1弾 北海道初新築ホテル アパホテル〈札幌大通駅前西〉 本日開業』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000801.000018265.html

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