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滝亭、活魚水槽再生で里海体験を創出する宿泊業の取り組み

冬季限定「活ずわいがにプラン」(活ガニ付き特別会席)
CoCoRo編集部

が和倉で被災したを金沢で再生し、を打ち出す取り組みを開始します。からのと、による集客を両立させたいの経営者やご担当者にとって、ヒントの多い事例ではないでしょうか。この記事では、滝亭の取り組みを整理しつつ、自館で応用できそうなポイントを読み解きます。

金沢犀川温泉「滝亭」(金沢市末町)

本記事のポイント

  • 滝亭が和倉温泉で使えなくなった活魚水槽をに移設し、「活ガニ会席」と「里海体験」という新たな商品にしている背景と狙いを整理
  • 里山×里海×読書滞在という滝亭ならではのコンセプトから、「自館の強みを掛け合わせた体験づくり」の考え方を解説
  • 被災設備の再利用や地域資源を活かした滞在価値の向上を、自社にどう落とし込むかのチェックポイントを紹介

ニュースの概要

石川県七尾市に本社を置く事業者「株式会社のと楽」は、能登半島地震で被災した和倉温泉「日本の宿 のと楽」の活魚水槽設備を、金沢市の金沢犀川温泉「滝亭」敷地内へ移設したと発表しています。2025年冬から、この活魚水槽を活用した活ガニ付き夕食プランと、里海体験付き日帰りランチの提供を開始する方針としています。

和倉での再設置が困難になった理由として、給排水や温度管理など、高度な管理が必要な設備である点を挙げています。そのため、営業を継続している金沢犀川温泉「滝亭」を新たな設置場所とし、同施設の設備環境・運営体制を活かして早期の再生を図る方針としています。

滝亭では、冬季限定で石川県産ブランドずわいがに「加能蟹」を使った「活ずわいがにプラン(活ガニ付き特別会席)」を宿泊向けに提供するとともに、通年で「里海ランチ+活魚体験」の日帰りプログラムを展開するとしています。オプションとして日帰り温泉の利用も可能とし、里海の食と温泉を組み合わせた体験として訴求する構成です。

さらに滝亭は、約7,000冊以上の蔵書を備えた3つのライブラリーを整備し、「読書滞在」を軸とした施設価値の再構築も進めていると説明しています。今回の活魚体験と組み合わせることで、「里山の環境」と「里海の食」を同一施設で味わえる新しい旅のスタイルを目指しているとしています。

宿泊業にとってのポイント:滝亭の里海体験と読書滞在から学べること

滝亭の事例は、単に「活ガニプランを始めました」という商品の話ではなく、「既存資産の再活用」と「体験価値の再設計」を同時に進めている点がポイントと考えられます。

まず、和倉で使えなくなった活魚水槽を廃棄せず、滝亭に移設して再生している点は、「の延命」と「復興ストーリーの見える化」を両立した動きと捉えられます。設備償却を考えると、本来であれば「損切り」になりがちな被災設備を、別拠点で活かすという発想は、複数施設を運営する事業者にとって参考になりそうです。

「滝亭」敷地内に移設・設置した活魚水槽。今後、周辺の意匠や導線を整え、体験提供に向けた環境を整備します。
「滝亭」敷地内に移設・設置した活魚水槽。今後、周辺の意匠や導線を整え、体験提供に向けた環境を整備します。

次に、滝亭の既存コンセプトである「読書滞在」と、今回の「里海体験」を掛け合わせている点も重要です。静かに本を読む滞在と、海の恵みを味わう体験は、一見別軸の価値に見えますが、「ゆっくり過ごしながら地域の文化に触れる」という共通テーマで束ねることで、滞在全体のストーリー性を高めていると見ることができそうです。

宿泊業の現場では、「料理」「温泉」「客室」「アクティビティ」がそれぞれ個別最適になりがちです。滝亭のように、読書滞在・里山・里海というキーワードを一本の軸に並べることで、「滞在全体のタグライン」をつくる発想は、自館のにも応用できるのではないでしょうか。

滝亭の取り組みから見える背景と理由の整理

滝亭が活魚水槽の再生に踏み切った背景には、少なくとも次のような要素があると考えられます。

  1. 能登半島地震からの復興と資産活用
    和倉温泉「日本の宿 のと楽」では建物や設備に大きな被害が生じ、活魚水槽も安全な再設置が難しい状況が続いていたと説明されています。
    そのままでは、「使えない資産」として残るリスクがありましたが、金沢の滝亭へ移設することで、復興に向けた前向きなストーリーへと転換しています。
  2. 金沢という観光拠点での情報発信効果
    滝亭は金沢市内に位置し、観光拠点としてのポテンシャルが高いエリアにあります。そこに能登・加賀の里海体験を持ち込むことで、「まずは金沢で体験してもらい、その後の能登周遊につなげる」役割を担わせようとしているように見えます。
  3. 体験型コンテンツへの需要の高まり
    を含む観光需要の回復局面では、「モノ消費」から「コト消費」「体験コンテンツ」へのシフトが続いています。滝亭の活ガニ会席や里海ランチ+活魚体験という構成は、まさに「食べるだけでなく、学び・体験が伴う商品」として企画されていると考えられます。
  4. 既存コンセプトとの親和性
    すでに滝亭は、7,000冊以上の蔵書を備えたライブラリーを整備し、「読書滞在」を打ち出しています。ここに「里海体験」を加えることで、新たな設備投資だけに頼らず、コンセプトの厚みを増す狙いも見えてきます。

こうした背景を踏まえると、滝亭の事例は「被災地支援」「資産の再活用」「コンセプト強化」「体験価値向上」を一体で進めるための一つのモデルケースと捉えることができそうです。

滝亭が提供する具体的な里海体験・活ガニ会席の解説

金沢犀川温泉「滝亭」
金沢犀川温泉「滝亭」

滝亭の新しいサービス内容を、宿泊業の視点から整理し直してみます。

冬季限定・宿泊向け「活ずわいがにプラン」

【宿泊】冬季限定「活ずわいがにプラン」(活ガニ付き特別会席)
  • 敷地内に新設された活魚水槽で管理した石川県産ブランドずわいがに「加能蟹」を使用
  • 最適な状態で提供する特別会席として、冬のメイン商材に位置付け
  • 料理人による旬・産地・食文化についての解説を交え、単なる「カニのフルコース」ではなく、里海文化を伝える要素を盛り込む構成としています

宿泊施設側の目線で見ると、「食材の鮮度+ストーリーテリング」を組み合わせた典型的な高付加価値メニューと言えそうです。カニそのものの原価が高くなりがちな中で、「学び」や「体験」の要素をパッケージに含めることで、価格への納得感を高める狙いも読み取れます。

通年・日帰り向け「里海ランチ+活魚体験」

  • 活魚水槽で管理する魚介類を使ったランチと里海体験を組み合わせた日帰りプログラム
  • 冬季は宿泊と同様に「活ガニ付き特別会席」の日帰り版を提供
  • 春以降は能登・加賀の魚介や貝類を活かした季節ごとのランチコースに切り替える構成としています

日帰り商品を通年展開することで、

  • 冬の活ガニの強さを活かしながら、
  • 春以降も「里海体験」を軸に稼働を平準化し、
  • かつ温泉日帰り利用をオプションにすることで単価アップも狙える、

という設計と考えられます。

同様の構造は、他地域の旅館でも応用しやすく、「冬は看板食材、春〜秋は地域の旬の魚介や農産物でテーマを変える通年体験プログラム」として設計すると、販売しやすくなりそうです。

オプションとして日帰り温泉の利用も可能です。
オプションとして日帰り温泉の利用も可能です。

里山 × 里海 × 読書滞在というコンセプト設計

滝亭では、里山の環境の中にある旅館という立地を活かしつつ、館内に3つのテーマ別ライブラリーを整備することで、「読書滞在」という過ごし方を提案しています。そこに今回の里海体験を加え、「自然の中で静かに過ごす」「地域の食文化を味わう」「本を通じて土地の背景を知る」といった複数の価値を組み合わせていると説明しています。(

この組み合わせは、「滞在の導線をどう設計するか」という観点で見ると非常に示唆的です。
例えば、自館であれば次のような組み立ても考えられます。

  • チェックイン後:ロビーやラウンジで、地域の歴史や食文化に関する本・映像コンテンツに触れてもらう
  • 夕食:地元食材を使った会席やコース料理で「味わう体験」を提供
  • 食後〜翌朝:館内の小さなライブラリーやギャラリーで「学びの余韻」に浸ってもらう

滝亭のように、「読む・味わう・泊まる」の3つを一体でデザインする発想は、客単価や滞在満足度を高めたい宿泊業にとって参考になりそうです。

自社への活かし方のヒント:滝亭の事例を自館にどう応用するか

最後に、滝亭の取り組みを、自館で実践する際のヒントとして整理します。

1. 「眠っている資産」を掘り起こす

滝亭は、和倉で使えなくなった活魚水槽を「金沢で再生する」という選択をしました。
自館でも、次のような観点で資産の棚卸しをしてみると良さそうです。

  • 使われなくなった設備や備品で、別用途なら活かせそうなものはないか
  • 休館中の別館・宴会場などを、体験スペースやギャラリーとして再活用できないか
  • 他施設(グループ館・地域の旅館)と連携して、設備やコンテンツをシェアできないか

「新しい物を買う前に、まず既存の資産を活かす」という視点は、投資負担を抑えながら新しい体験をつくるうえで有効な選択肢となりそうです。

2. 「里海・里山・街」のどこを軸にするかを決める

滝亭は、里山の環境(犀川沿いの自然)と里海の食(能登・加賀の海産物)を、金沢という観光都市からアクセスできる位置関係の中で組み合わせています。

自館の立地が、

  • 海沿いなら「里海体験+市場見学」
  • 山間部なら「里山体験+農業体験」
  • 都市部なら「街歩き+伝統文化体験」

といったように、「何と何を掛け合わせると自館らしいか」を一度言語化してみると、商品企画の方向性が見えやすくなることが多いです。

3. 宿泊と日帰りをセットで設計する

滝亭のように、

  • 宿泊向けの活ガニ会席
  • 日帰り向けの里海ランチ+活魚体験

というペアで設計しておくと、販売チャネルやターゲットを広げやすくなります。

自館でも、次のような整理をすると具体化しやすくなります。

  • 「宿泊でしか提供しない特別体験」と「日帰りでも味わえるハーフ版」をどう分けるか
  • 平日の日帰り需要を増やして、館内の稼働を平準化できないか
  • 宿泊ゲストが日帰りプランをギフトとして家族や友人に紹介できるようにする など

日帰り商品は客単価が下がりやすい一方で、「リピートや紹介のきっかけ」になりやすい側面もあります。滝亭の事例を参考に、自館に合ったバランスを探ってみる価値がありそうです。

里海ランチ

4. コンセプトを「言葉」にして伝える

滝亭は、「里山 × 里海 × 読書滞在」というわかりやすいキーワードで、自館の価値を打ち出しています。

自館でも、

  • 「○○温泉 × 地元ワイン × 大人の隠れ家」
  • 「古民家 × 里山ステイ ×

といった具合に、3つ程度のキーワードでコンセプトを整理しておくと、Webサイト・OTA・パンフレット・求人など、あらゆる場面で一貫性のあるコミュニケーションがしやすくなります。

滝亭のように、滞在スタイルを一言で表せるキャッチを持っておくと、スタッフ同士の共通認識づくりにも役立つという視点も押さえておくと良さそうです。

滝亭 スタッフ一同
滝亭 スタッフ一同

まとめ

  • 滝亭は、能登半島地震で被災した和倉の活魚水槽を金沢で再生し、「活ガニ会席」と「里海体験」という新たなコンテンツに変えることで、復興ストーリーと収益性の両立を目指している事例といえます。
  • 里山の環境・里海の食・読書滞在という滝亭ならではの要素を掛け合わせている点は、「自館の強みを言葉にして体験化する」うえで参考になり、自社のタグラインづくりのヒントにもなりそうです。
  • 滝亭のように、既存設備の再活用や日帰りと宿泊のペア商品設計など、「まずは今ある資産からできること」を洗い出しておくと安心です。
  • 滝亭の取り組みを自館に当てはめて、「眠っている資産」「掛け合わせる地域資源」「宿泊と日帰りのバランス」を一度棚卸ししてみるという選択肢もあります。

企業情報

本リリースに関するお問い合わせ

  • 会社名:株式会社のと楽
  • お問い合わせ先:プレスリリース上に個別の問い合わせ窓口の記載はありません

出典:PR TIMES『金沢犀川温泉「滝亭」、和倉の被災活魚水槽を再生 冬は活ガニ会席、通年で里海体験を提供』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000056180.html

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