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ほうじ茶の起源と歴史|なぜ今、日本人に選ばれているのか

ほうじ茶は、もったいない精神から生まれたと言われますが、それは半分正解、半分間違いです。起源や歴史をたどりながら、なぜ今の日本人にしっくりくるのかを丁寧に解説します。
CoCoRo編集部

なぜ最近、ほうじ茶がこんなにしっくりくるのか

──起源・歴史から見直す、日本人とほうじ茶の関係

冬の寒い日に、コンビニや自販機の前に立つ。
厚手の上着のポケットに手を入れたまま、表示を眺める。
コーヒーも甘い飲み物も並んでいるのに、と視線が止まるのは「ほうじ茶」。

缶を手に取る。
手袋を外し、指先に伝わるぬくもりを確かめる。
一口含んだ瞬間、「ちょうどいい」という感覚だけが残り、余計な言葉が浮かばない。

最近、そんな体験をする人は少なくありません。
ほうじ茶が流行っているから、という説明では少し足りない。
いまの生活感覚に、ほうじ茶が静かに重なってきた
この記事では、その理由を起源や歴史、そして現代の変化からひもといていきます。


この記事の目次
  1. そもそも、ほうじ茶とは何か──焙じることで生まれる日本茶
  2. ほうじ茶の起源と歴史──番茶と焙煎から生まれた日常茶
  3. ほうじ茶は、ずっと身近にあった。でも主役ではなかった
  4. ほうじ茶が「流行った」のではない。生活の感覚が変わった
  5. 煎茶・抹茶と何が違うのか──ほうじ茶が担ってきた役割
  6. ほうじ茶の香ばしさは、偶然ではなく「焙煎で作られている」
  7. なぜ「夜」「冬」「疲れているとき」に失敗しにくいのか
  8. ほうじ茶は「削ったお茶」ではなく、「作り替えたお茶」
  9. 外国人に人気が出たのは、理由がある。でも主役はそこではない
  10. 飲み物から「素材」へ。ほうじ茶がスイーツで広がった理由
  11. コンビニと自販機は、現代の「茶屋」かもしれない
  12. 「体にいい」よりも、「体に無理をさせない」飲み物
  13. ほうじ茶は、主張しないまま定位置に戻ってきた

そもそも、ほうじ茶とは何か──焙じることで生まれる日本茶

ほうじ茶とは、茶葉を高温で焙じて仕上げた日本茶です。
原料は煎茶や番茶と同じ緑茶の茶葉ですが、焙煎という工程を経ることで性格が大きく変わります

苦味や渋味は抑えられ、代わりに立ち上がるのは香ばしい香り。
色も鮮やかな緑ではなく、赤褐色に近い落ち着いた色合いになります。

「ほうじ茶」という名前自体が、産地や格式を示していません。
どう作られたかだけを、そのまま表した名前です。
この点は、日本茶の中でも少し珍しい。

つまり、ほうじ茶は
「どこで採れたか」
「どれだけ高級か」
ではなく、生活の中でどう扱われるかを起点に成立したお茶だと言えます。


ほうじ茶の起源と歴史──番茶と焙煎から生まれた日常茶

ほうじ茶は、抹茶や煎茶に比べると比較的新しい日本茶とされています。
現在の形で定着したのは、江戸後期から明治期にかけてです。

当時の庶民の暮らしを想像すると、
今のように「お茶を選ぶ」という感覚はほとんどありませんでした。
食事のそばにあり、喉を潤し、口の中を整える。
それが茶の役割でした。

日常で飲まれていたのは番茶です。
成長した硬い葉や茎を含み、旨味は控えめ。
そのまま淹れると、渋みや青臭さが出やすい茶葉でもありました。

そこで行われたのが、焙じるという工夫です。
火を入れることで、
・渋みを抑える
・香りを立たせる
・食事と合わせやすくする

これは価値を誇示する工夫ではなく、
毎日の生活に無理なく馴染ませるための調整でした。

では「京番茶」と呼ばれる強めに焙じた番茶文化が根づきます。
朝や食後、家族で囲む食卓。
特別な場ではなく、何度も口にする時間のためのお茶として定着していきました。

「もったいないから生まれた」は半分正解で、半分間違い

ほうじ茶について、
「余った茶葉を捨てるのはもったいないから生まれた」
と語られることがあります。

この説明は、半分は正しく、半分は後から付け加えられたものです。

確かに、番茶や硬い葉が使われたのは事実です。
焙煎によって飲みやすくしたのも事実です。
しかし、「もったいない」という思想が先にあり、
それを形にした結果がほうじ茶だったわけではありません。

実際には、
・安価で
・飲みやすく
・毎日の生活に無理がない
という実用性が先に積み重なった

その結果として、
「無駄が出にくい」
「最後まで使い切れる」
という構造が生まれ、後から「もったいない」という言葉で説明されるようになったのです。

日本人は、
まず生活の中で使い続け、
後から意味や言葉を与える。
ほうじ茶は、その典型的な例だと言えるでしょう。


ほうじ茶は、ずっと身近にあった。でも主役ではなかった

ほうじ茶は、特別な記憶に残りにくいお茶です。
家庭の食後、給食、のお茶。
そこにあって当然で、話題にする必要がありませんでした。

抹茶は儀礼や体験の象徴。
煎茶は味や産地を語る対象。
一方で、ほうじ茶は説明しなくていい存在だった。

説明しなくていいものは、物語になりにくい。
ブランドにもなりにくい。
だからこそ、長く変わらず使われ続けてきました。


ほうじ茶が「流行った」のではない。生活の感覚が変わった

最近になって、ほうじ茶が目に入るようになった。
その理由は、ほうじ茶が変わったからではありません。
飲む側の感覚が変わったからです。

30代以降、飲み物に求める基準が変わってくる

年齢を重ねると、
甘さが前に出る飲み物を重く感じる瞬間が増えます。
苦味が強いものも、少し疲れる。

「美味しいかどうか」だけでなく、
「あとに残らないかどうか」が、自然と基準に加わります。

「美味しい」より「あとに残らない」が大事になる

飲んだ後に喉が渇かない。
胃に負担を感じない。
そうした感覚は、言葉にしにくいですが確実に存在します。

ほうじ茶は、
飲んだ後に何も主張しない。
その控えめさが、いまの感覚に合ってきました。

無糖で満足できる飲み物が、実は少ない

無糖で、しかも満足感がある飲み物は多くありません。
ほうじ茶は香りによって、その不足を自然に補います。
量や時間帯を選ばず飲める点が、選ばれる理由です。


煎茶・抹茶と何が違うのか──ほうじ茶が担ってきた役割

煎茶は味わいを楽しむ茶。
抹茶は体験や象徴性を担う茶。
ほうじ茶は、場面を選ばず生活に寄り添う茶です。

食事の邪魔をしない。
飲む人の状態を問わない。
この役割分担が、日本の生活の中で自然に形成されてきました。


ほうじ茶の香ばしさは、偶然ではなく「焙煎で作られている」

ほうじ茶の魅力は、立ち上がる香りにあります。

香りの正体は、焙じることで生まれる成分

焙煎によって、青々しさは抑えられ、
ローストした穀物やナッツに近い香りが前に出ます。

緑茶というより、ローストの香りに近い理由

この方向性は、コーヒー文化に慣れた現代人にも直感的です。

熱いほど美味しく感じやすい、珍しいお茶

温度が高いほど香りが立ち、
冬の屋外や自販機のホット設定でも美味しさが崩れにくい。


なぜ「夜」「冬」「疲れているとき」に失敗しにくいのか

夜に飲み物を選ぶとき、人は無意識に失敗を避けています。

夜に飲んで後悔しない飲み物は意外と少ない

眠れなくなる、胃が重くなる。
そうした経験があるからです。

カフェインが比較的少ないとされる理由

焙煎の影響により、一般的な緑茶より控えめとされています。

香りと安心感の関係について分かっていること

焙煎香が落ち着いた感覚と結びつく反応を示した研究報告もあり、
「そう感じやすい理由」として説明できます。


ほうじ茶は「削ったお茶」ではなく、「作り替えたお茶」

焙煎によって、性質が別のものに組み替えられています。
生野菜と焼き野菜が別物になるように、
完成形が違うお茶です。


外国人に人気が出たのは、理由がある。でも主役はそこではない

海外の者の間でも、ほうじ茶は飲みやすい日本茶として選ばれています。
ただしこれは、新しい価値が生まれたわけではありません。
日本人が日常として使ってきた性質が、外側から照らされたにすぎません。


飲み物から「素材」へ。ほうじ茶がスイーツで広がった理由

乳製品や甘さと合わせても香りが負けず、苦味が出にくい。
抹茶ほど主張せず、それでいて輪郭が残る。
この特性が、大人向けの味として評価されています。


コンビニと自販機は、現代の「茶屋」かもしれない

大量生産でも味が破綻しにくい。
どこで買っても「だいたい思った通りの味」。
街の中で、ちゃんと美味しいお茶として成立しています。


「体にいい」よりも、「体に無理をさせない」飲み物

ほうじ茶が支持される理由は、健康効果を強調しない点にもあります。

無糖で、刺激が少ない。
続けやすく、生活の中で無理がない。
体にいいから飲むのではなく、無理がないから続く。


ほうじ茶は、主張しないまま定位置に戻ってきた

ほうじ茶は変わっていません。
変わったのは、私たちの生活と感覚です。

冬の街、自販機の前、静かな夜。
その中で、主張せず、でも確かに美味しい。
ほうじ茶は、本来の居場所に戻ってきただけなのかもしれません。

CoCoRo編集部
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