株式会社アースボートは、長野県上田市真田町に「Earthboat Ueda Onsen(上田温泉)」を2026年7月31日に開業します。全12室にプライベート薪サウナ、水風呂、温泉露天風呂を備え、隣接する温泉施設「十福の湯」と食や温泉資源で連携するアウトドアホテルです。既存の自然環境と地域の温泉文化を客室体験へつなぐ設計は、滞在価値を広げる事例として注目されます。
観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第4章「インフラの整備と活用強化」』では、インバウンドを考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。
本記事のポイント
- 全室で薪サウナ、温泉露天風呂、水風呂、外気浴までを完結させる、プライベート性の高い滞在を提案します。
- 長年使われていなかった遊休地と既存の温泉設備を生かし、十福の湯との協業によって地域資源を宿泊体験へつなげます。
- 自然景観、温浴、朝食、ペット同伴対応を組み合わせ、少人数旅行の多様な滞在目的に応える構成です。
発表内容の整理

Earthboat Ueda Onsen(上田温泉)は、地蔵峠の山頂付近、標高975メートルの「真田いずみの森」に開業します。客室には「Earthboat Cave」モデルを採用し、薪をくべて利用するプライベートサウナ、温泉露天風呂、水風呂を設置。深い森や小川、岩のある敷地の表情を生かし、客室ごとに異なる景観を楽しめる計画です。
温泉露天風呂には、徒歩約1分の十福の湯と同じアルカリ性単純泉を引き込みます。朝食では同施設のベーカリーで焼き上げるパンを取り入れる予定で、宿泊棟だけで完結させず、既存施設のサービス文化を滞在の一部として伝える工夫がうかがえます。定員は最大3名で、ペットは種類・大きさ・頭数の制限なく同伴可能です。
出典:PR TIMES 全室にプライベート薪サウナと温泉露天風呂を完備!「Earthboat Ueda Onsen(上田温泉)」7月31日グランドオープン
温泉と薪サウナを客室体験として束ねる
温泉、サウナ、水風呂、外気浴を客室テラスで連続して楽しめることは、共用設備の利用時間に左右されにくい滞在を生みます。天候や季節の変化も屋外で過ごす時間の一部として取り込みながら、ベッドや水回りの快適性を確保するEarthboatの考え方は、アウトドア志向の旅行者にとって選択しやすい安心感につながりそうです。
薪を扱う体験を商品価値にする場合は、火入れの案内、安全確認、清掃・補充の動線まで含めて滞在設計にすることが重要です。ハードの魅力を、利用前後の説明や現場オペレーションで丁寧に支えることが、心地よい体験の継続に結び付きます。
遊休地の個性を宿泊価値へ変える視点
本拠点は、かつて十福の湯がペット施設を運営していた遊休地を再生するものです。既存の源泉引き込みや土地の履歴を引き継ぎながら、森、水場、小川、岩といった敷地固有の要素を景観づくりに生かしています。新たに均質な景観をつくるのではなく、土地が持つ違いを客室ごとの魅力として扱う姿勢が印象的です。
観光庁の「観光地域づくり事例集 第4章『インフラの整備と活用強化』」は、受入環境の整備をハードとソフトの両面から捉えています。宿泊施設においても、自然資源を見せるだけでなく、アクセス、案内、周辺事業者との役割分担を整えることで、土地の魅力が旅行者に届きやすくなります。上田温泉のように既存温泉施設との近接性を具体的な体験へ変換する発想は、遊休地活用を検討する地域に示唆を与えます。
地域パートナーとの連携を朝食までつなげる
十福の湯との関係は、温泉供給にとどまりません。館内ベーカリーの手づくりパンを朝食に取り入れることで、宿泊者が地域の食に触れる接点をつくります。周辺にある既存の人気施設と宿泊棟の役割を分けながら結び付けることで、双方の強みが滞在全体に自然に表れます。
長野県の令和6年「観光地利用者統計調査」は、市町村が選定する年間延利用者数がおおむね5,000人以上の観光地を調査対象としています。地域での来訪実態を把握するための枠組みが整うなか、宿泊事業者には周辺施設との送客・回遊の接点を記録し、地域との協業を継続的に磨く視点が求められます。
小規模客室の価値を運営計画に落とし込む
12室・最大3名という規模は、客室ごとのプライベート設備を維持しながら、清掃、薪の管理、温泉設備の点検を標準化しやすい単位でもあります。小さな子どもや小型犬を連れた宿泊者に配慮したフラットフロアと、ペット同伴の受入方針も、予約時の案内から現地の備品・清掃基準まで一貫させることで、施設らしい安心感として伝わります。
観光庁の「生産性向上のためのハンドブック 宿泊事業者における経営改善マニュアル」では、投資の優先順位と、管理帳票に基づく継続的な振り返りの大切さが示されています。設備の充実度が高い施設ほど、稼働率だけでなく、客室タイプ別の利用状況、清掃時間、メンテナンス頻度、付帯サービスの利用を見ながら、体験価値と運営負荷の両方を確かめていくことが実務上の鍵になります。
また、観光庁は2026年3月30日時点で、経営改善アドバイザーによる常駐型の伴走支援を全国4施設で実施しています。個別施設の課題を整理しながら改善を進める支援の存在も、設備投資やサービス設計を見直す際の参考になります。
まとめ
Earthboat Ueda Onsen(上田温泉)は、薪サウナと温泉露天風呂を全室に設けるだけでなく、遊休地の自然環境、十福の湯の温泉と食、ペット同伴対応を一つの滞在体験に編み込んだ施設です。地域の既存資源を尊重しながら、新しい宿泊の選択肢として形にする取り組みは、自然立地を生かした施設づくりを考える事業者にとって参考になるでしょう。
企業情報
- 株式会社アースボートは、「Nature Escape」をコンセプトに、プライベートサウナ付きアウトドアホテル「Earthboat」を展開しています。 Earthboat公式サイト
参考資料
- 観光庁『宿泊事業者の経営改善に役立つツール(2026年3月30日)』: 宿泊事業者の経営改善に役立つツール
- 長野県『観光地利用者統計調査(令和6年)』: 観光地利用者統計調査
- 観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第4章「インフラの整備と活用強化」(公表資料)』: 観光地域づくり事例集 第4章「インフラの整備と活用強化」
