宿泊業界の課題と対策

宿泊業界のDX成功事例まとめ!人手不足を補う5つのIT導入と職場改善のヒント

宿泊業界のDX成功事例まとめ!人手不足を補う5つのIT導入と職場改善のヒント
CoCoRo編集部

人手不足が深刻な宿泊業界。この記事では、ホテル・旅館の業務効率化とスタッフ定着を実現する最新のDX導入事例と、評価ややりがいを高める「CoCoRo」との連携活用法まで徹底解説いたします。

なぜ今、宿泊業にDXが必要なのか?

労働力不足と高い離職率

日本の宿泊業界(ホテル・旅館業界)は慢性的な人手不足に陥っています。日本商工会議所の調査では、宿泊業では約73%もの企業が「人手が足りない」と感じており、この割合は全業種中で情報サービス業に次いで2番目に高い水準です。また、有効求人倍率(求職者1人あたりの求人の数)は宿泊分野で6.15倍にも達しており、全職業平均の1.38倍を大きく上回っています。これは「6つの求人に対し求職者が1人」という状態であり、いかに人手不足が深刻かを示すものです。

さらに離職率の高さも大きな課題です。厚生労働省の雇用動向調査(令和5年)によると、ホテルを含む「宿泊業・飲食サービス業」の離職者数は142.27万人で産業別で最も多く、離職率も26.6%と全産業平均の15.4%を大幅に上回っています。これは業種別でトップクラスの高さで、他業種よりも従業員が辞めやすい現状を示しています。離職率が高い背景には、宿泊業界ならではの長時間労働や不規則シフト、休日取得の困難さ、低賃金といった労働環境の厳しさが指摘されています。こうした要因で新卒社員がすぐ辞めてしまうケースも珍しくなく、慢性的な人手不足と高離職率がサービス品質や経営にも悪影響を及ぼしています。

令和5年 雇用動向調査結果の概要「産業別の入職と離職」表4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率(令和5年(2023))
出典:厚生労働省.“令和5年 雇用動向調査結果の概要「産業別の入職と離職」”.厚生労働省公式サイト.2024年8月.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/kekka_gaiyo-02.pdf,(参照:2025年7月8日).

DXがもたらす定着率改善とコスト最適化

このような人手不足・高離職率の悪循環を断ち切るために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用が急務となっています。DX推進によって業務を効率化し、従業員の負担を軽減できれば、早期離職の防止や従業員エンゲージメントの向上につながると期待されています。実際、ホテル業務にデジタル技術を導入することで業務の効率化と省力化が実現し、人手不足の解消や既存スタッフの働きやすい環境づくりに寄与します。たとえばフロント業務の自動化やバックヤード業務のIT化によって残業や過重労働を減らせれば、スタッフに余裕が生まれ接客品質も向上するでしょう。

また、DXはコスト最適化の面でも大きなメリットがあります。ホテルの運営コストの中で人件費は最大の割合を占めますが、DXによる業務自動化・無人化で人件費負担を減らせば、中長期的に経営効率が高まります。例えばオンライン予約システムやモバイルチェックインを導入してフロント手続きを簡略化すれば、人手を削減できるだけでなく深夜帯対応の人件費も抑えられます。さらに館内のIoT機器でエネルギー管理を行えば電力等のコスト削減にもつながるでしょう。このように、DXの推進は業務効率化によるコスト削減と従業員の働きやすさ改善の両面から、宿泊業界の課題解決に寄与すると期待されています。

宿泊業で導入が進む5つのDXツール

宿泊業界では人手不足を補い業務効率を上げるため、様々なデジタルツールの導入が進んでいます。ここでは特に注目すべき5つのDXツールを紹介します。それぞれの特徴と導入効果を見てみましょう。

無人チェックインシステム

フロント業務を効率化する代表的なDXツールが、無人チェックインシステム(スマートチェックイン)です。これは専用の端末やキオスク、またはタブレット・スマホを活用して、ゲスト自身にチェックイン手続きを行ってもらう仕組みです。従来、宿泊カードの記入や本人確認、鍵の受け渡しなどにフロントスタッフの手間がかかっていましたが、無人チェックインならそれらを非対面かつ自動化できます。例えば、宿泊者情報の登録から鍵の発行まで機械で完結するため、チェックイン対応のスタッフ人数や対応時間を大幅に削減できます。実際に、一部のホテルではフロントを無人化し24時間対応の自動チェックイン機を導入しており、深夜の人件費削減や多言語対応強化につなげています。また、コロナ禍以降は非接触ニーズも高まったため、無人チェックインの導入はゲストに安心感を与える効果もあります。

導入事例としては、変なホテルのようにフロントをロボットや機械で対応するケースや、地方の旅館で夜間はキオスク端末でセルフチェックインを行うケースなどがあります。ノータッチステイサービスを打ち出したホテルでは、事前にオンラインでチェックインを済ませ、到着後は端末で鍵を受け取るだけという運用を実現しています。こうした無人チェックインシステムにより、フロント業務の省人化と待ち時間短縮、そしてスタッフは他の接客業務に注力できるようになるメリットがあります。

チャットボットによる顧客対応

顧客からの問い合わせ対応を自動化するAIチャットボットも、宿泊業界で導入が進むDXツールの一つです。チャットボットを導入すれば、宿泊予約前の質問(空室状況やアクセス方法など)から滞在中のリクエスト(設備の使い方、周辺情報の案内など)まで、24時間体制で自動応答することが可能になります。人間のスタッフが対応しなくても、よくある質問には即時に回答できるため、フロントや予約担当への電話・メール問い合わせ対応の負担が大幅に軽減されます。特に深夜や早朝における問い合わせや、多言語での質問にも自動対応できる点で、顧客満足度向上にもつながります。

例えば、相鉄ホテルマネジメントでは運営する50の宿泊施設にチャットボットを導入し、日本語・英語・韓国語・中国語(繁体字・簡体字)に対応した多言語サービスを提供しています。これにより訪日外国人からの問い合わせにもスムーズに回答し、現場スタッフの通訳負担を減らしています。また、チャットボットは予約システムと連携して空室状況の確認や予約受付まで自動化できる製品もあり、問い合わせ対応だけでなく売上向上にも貢献します。導入にあたっては、ホテル独自のQ&Aデータや周辺情報を学習させ、的確な回答精度を確保することがポイントです。

勤怠・シフト管理システム

宿泊業界の勤怠管理やシフト作成にもDXツールが活用されています。従来は紙やエクセルでシフト表を作り、出退勤をタイムカードで記録する運用が一般的でしたが、これらをクラウド型のシステムに置き換えることで大幅な効率化が可能です。シフト管理システムを導入すれば、スタッフ各自がスマホやPCで希望シフトや有給休暇を申請し、管理者が画面上で人員配置を最適化することができます。人員の過不足や勤務の偏りも自動でチェックできるため、無理のないシフト編成による労働時間の適正化に役立ちます。これは従業員の休みを取得しやすくし、過重労働を防ぐ効果があり、結果的に定着率向上にもつながります。

また、クラウド勤怠管理を導入すると、打刻から集計まで自動化されるため給与計算や残業管理の正確さと効率が飛躍的に向上します。複数施設を展開するホテルグループでは、一括で勤怠データを管理して人件費を可視化することで、コストコントロールにも役立てています。さらに、最近のシステムではシフト管理と連動してAIが最適な人員配置を提案してくれるものもあり、人手に頼った調整よりも合理的にシフトを組めるようになります。勤怠・シフト管理のDXは目立たない部分ではありますが、スタッフの働きやすさ改善と労務管理コスト削減に直結する重要な取り組みです。

AI清掃管理/IoT機器

客室清掃や設備管理の分野でも、AIやIoTを活用したDXが進んでいます。例えば、大型ホテルでは清掃ロボットを導入し、廊下の掃除や床のバキューム清掃を自動化するケースが増えてきました。ソフトバンクロボティクスの清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」を導入したホテルでは、廊下清掃の一部をロボットに任せることで清掃スタッフの作業負担を軽減し、年間600万円のコスト削減効果を見込んでいます。ロボットがカバーした分、人のスタッフは細かな清掃や仕上げに専念できるため、清掃品質を維持しつつ省人化を実現しています。

また、清掃管理システムを使って客室の清掃状況をリアルタイムに見える化する取り組みも有効です。清掃スタッフがモバイル端末で「●号室清掃完了」と送信すると、フロントや予約システムに即時に反映される仕組みを導入すれば、清掃終了後すぐに部屋を販売可能にするなど回転率向上にもつながります。さらにIoTセンサーを客室に設置し、人の動きを検知して在室状況に応じた清掃や空調制御を行うスマートホテルの事例もあります。これにより、ゲストが退室した部屋に清掃スタッフがすぐ入れるようになったり、無人時は空調・照明を自動オフにしてエネルギー節約したりと、効率化とコスト削減に寄与します。

設備管理の面でもIoTが活用されています。ボイラーや空調機器の稼働データをセンサーで収集し、AIが予兆検知して故障を未然に防ぐ仕組みや、館内設備の遠隔モニタリングによる管理者の負担軽減など、裏方業務のDXも進展しています。これらAI・IoTの導入は初期投資こそ必要ですが、人手に頼っていた清掃・管理業務の生産性を飛躍的に高め、少ない人数で多くの客室を維持できる体制づくりに貢献しています。

感謝可視化ツール「CoCoRo」

従業員のモチベーションアップと定着率向上に効果が期待できるユニークなDXツールとして、感謝可視化ツール「CoCoRo」があります。CoCoRoは、宿泊業界向けに提供されているサービスで、ゲスト(お客様)がインターネットを通じてお気に入りのスタッフやチームに「ありがとう」のメッセージとオンラインの心づけ(チップ)を送ることができる仕組みです。従来、日本のホテル・旅館ではチップの文化は一般的ではなく、またゲストからスタッフへの感謝の声はアンケートや口コミを通じてしか伝わりにくいものでした。CoCoRoを導入すると、ゲストがスマホ等から特定のスタッフ宛に直接「ありがとう」のメッセージを送り、少額のデジタルチップを添えることができます。そしてサービス提供者側(ホテル・旅館)は、そのゲストから届いた感謝を見える化して従業員のモチベーション向上に活用することが可能になります。

具体的には、CoCoRo上でスタッフごとにゲストから寄せられたメッセージを閲覧できるため、「自分のサービスがお客様に喜ばれた」という実感を持つことができます。これは宿泊業界の課題であった「仕事のやりがい」や「貢献実感」の醸成に役立ち、スタッフの離職防止につながると期待されています。さらに、多言語翻訳機能も備えており、外国人ゲスト・外国人スタッフ双方とのコミュニケーション円滑化にも資する点で、DXツールとして活用することが可能です。

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成功事例から学ぶDX導入のステップ

DXツールを導入する際には、現場の混乱を防ぎ効果を最大化するためのステップがあります。実際の成功事例に学びながら、導入時のハードルと解決策、小規模施設でも実践可能なDXパターンについて考えてみましょう。

導入ハードルとクリアすべき課題

DX導入には魅力的なメリットがある一方で、現場ではいくつかの導入ハードルに直面します。まず多くの施設で挙がるのが初期コストの問題です。例えば清掃ロボットや無人チェックイン機などハードウェアを伴うDXは導入費用が高額になるケースがあります。しかし現在は政府や自治体による補助金・助成金制度も充実しつつあり、うまく活用することで費用負担を軽減できます(※2025年時点で観光DX推進の補助金など複数あり)。また、ROI(投資対効果)の明確化も課題になりますが、事前に人件費削減額や生産性向上の数値目標を設定し、小規模から実験導入して効果測定することで経営層の理解を得やすくなるでしょう。

次に、現場スタッフのITリテラシーや抵抗感も乗り越えるべきポイントです。新しいシステム導入時には「使い方が難しい」「従来のやり方に慣れている」という声が上がることもあります。この課題に対しては、ベンダーによる丁寧なトレーニングやマニュアル整備、そして段階的な導入が有効です。例えばまず一部スタッフで試験運用し、成功体験を共有してもらうことで他の従業員にも安心感が広がります。また、DX導入の目的(業務が楽になる、ミスが減る等)をしっかり説明し、現場の意見を取り入れながらカスタマイズしていくことで抵抗感を減らせます。

もう一つのハードルは、複数のシステムをどう統合するかです。ホテルでは予約システム(PMS)、顧客管理、勤怠システムなど様々なソフトを利用していますが、新たなDXツールが既存システムと連携できないと却って手間が増える恐れがあります。そこで、導入前に既存システムとのAPI連携が可能か確認したり、オールインワン型の統合プラットフォームを選ぶといった工夫が必要です。最近ではホテル向けに、予約~チェックイン~館内案内~決済まで一貫して管理できるDXソリューションも登場しています。システムの相互連携と一元管理を意識して選定することで、DXの効果を最大限引き出すことができるでしょう。

小規模宿泊施設でも実現可能なDXパターン

「うちは小さな旅館だから最新DXなんて無理では…」と尻込みしている事業者の方も少なくありません。しかし、小規模な宿泊施設でも手の届くDX手段は十分にあります。ポイントは大きな投資をいきなりせず、今ある無料・安価なデジタルツールから活用することです。

例えば、予約管理や情報共有を専用システムでなく身近なツールで代替するパターンがあります。具体的には、予約情報や部屋割り・清掃状況の共有に社内SNSやLINEグループを利用することで、紙の伝票や口頭連絡を減らし効率化することができます。実際、スタッフ数名程度のペンションでは、お客様の到着予定やリクエストをグループLINEで共有し合う簡易DXを行い、フロント不在時でも全員が対応できるようにしています。これは特別な費用をかけずに実践できるDXと言えます。

参考:国土交通省 東北運輸局 「観光分野におけるデジタル技術活用マニュアル」

また、エクセルなどの表計算ソフトを活用した業務管理も有効です。市販の会計ソフトを導入しなくても、エクセルで売上や予約データを管理・集計するテンプレートを作成すれば、手計算より大幅に時間短縮でき経理ミスも減らせます。小規模施設では担当者一人が複数業務を兼任していることも多いため、このような手作りDXでも効果は大きいです。

さらに近年は、小規模宿向けに低コストで使えるクラウドサービスも増えています。例として、電子顧客台帳や簡易PMSは月額数千円から利用可能で、予約サイトとの連携機能も備わっています。これを導入すれば、少人数でもダブルブッキング防止や顧客情報の一元化が実現します。同様に、スマートロック(スマホで開錠)は客室数が少ない旅館でも1室あたり数万円の投資で鍵受け渡しの省力化ができますし、タブレットでの多言語案内は貸出用端末を数台用意すれば外国語スタッフ不在でも海外ゲスト対応が可能です。

このように、小さな宿でも段階的に取り組めるDXは数多く存在します。大事なのは自社の課題を見極め、解決に合ったツールから順に導入していくことです。例えば「チェックイン対応が負担ならキーコード送信型の無人チェックインから始める」「まずはCoCoRoでスタッフのモチベーション維持を図る」といった具合に、一歩ずつデジタル化を進めることで無理なくDXを実現できます。

まずは自社を診断:公的チェックリストの活用

ホテル業界の従事者がチェックリストをチェックしている様子

DX導入に取り組む前に、まず自社の労働環境や課題点を客観的に把握することが重要です。そこで、無料で使え、改善の優先順位付けにも役立つ省庁・公的機関が公開しているチェックリストや自己診断ツールをご案内します。

観光庁「宿泊業の生産性向上のためのハンドブック」

宿泊業向けに、現状把握のためのチェックシート優先度確認表を収録。フロント・客室清掃・バックヤードなどプロセス別にムダ取りと生産性向上の打ち手を整理。まずは自施設のボトルネック洗い出しに最適です。

参考:観光庁「宿泊業の生産性向上のためのハンドブック」

厚生労働省「働き方・休み方改善 ポータルサイト|自己診断」

事業場向けに働き方・休み方の自己診断ツールを提供。所定外労働、年休取得、勤務間インターバルなどの実態を数分で診断し、弱点領域の改善ヒントを表示します。宿泊業でも横断的に使えます。

参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト|自己診断」

厚生労働省「働き方・休み方改善ハンドブック(旅館・ホテル業編を含む)」

旅館・ホテル業の課題と解決策を体系化。勤務シフト見直し、年休取得の仕組み化、繁閑の平準化などのチェックリスト的記載と、導入手順の参考様式がまとまっています。

参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ハンドブック(旅館・ホテル業編)」

まとめと今後の展望

深刻な人手不足に直面する宿泊業界において、DX導入はもはや選択ではなく必須の戦略と言えます。業務効率化ツールの活用による省人化とサービス向上、そしてCoCoRoのような人材定着ツールによる働きやすい職場作りを両輪として進めることで、「人が辞めない」「お客様にも選ばれる」ホテル・旅館経営が実現できるでしょう。

今後はAIやIoTのさらなる進化で、よりスマートなホテル運営が可能になると予想されます。一方で、デジタル化が進んでも最後は人のホスピタリティが決め手であることも変わりません。だからこそ、DXをスタッフの負担を減らし笑顔を増やす手段として捉え、人とテクノロジーの協働で魅力ある職場とサービスを追求していくことが重要です。

DXによる業務効率化と人材育成の両面から、宿泊業界が持続可能な成長を遂げることを期待しつつ、本記事のまとめといたします。スタッフがいきいきと働き、お客様に最高のおもてなしを提供できる未来のホテルを目指して、ぜひ一歩ずつDXを推進していきましょう。

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