エッセイ

土足文化の海外でこたつが人気の理由|日本式こたつの魅力と背景を解説

CoCoRo編集部

なぜ“土足文化”の海外で日本のこたつが人気なのか──歴史・住宅文化・猫動画まで紐解く世界的ブームの背景

この記事の目次
  1. こたつの起源と日本で進化した理由
  2. 海外は本当に土足文化なのか:映画と現実のズレ
  3. こたつが“海外の家でも使える”文化的・構造的理由
  4. 旅館やホテルでは見かけないのに、なぜ海外ではこたつが知られているのか
  5. こたつ人気の世界的ブームを決定づけた“猫”という存在
  6. 外国人がこたつに強く惹かれる5つの理由
  7. 海外で進化する“新しいこたつ文化”
  8. まとめ:こたつが“文化ギャップ × 暮らしの合理性 × 猫”で世界に広まった理由

こたつの起源と日本で進化した理由

囲炉裏から始まった“床を暖める文化”

こたつの原型は中世の囲炉裏にあります。囲炉裏は調理と暖房の両方を担う生活の中心であり、その周囲には自然と人が集まりました。囲炉裏の上に木枠を置き、布をかぶせて足元から暖を取る「火燵(こたつ)」が生まれたのはこの頃です。語源である中国語の「火榻(ホータ)」は“火のそばに座る台”を意味し、この考え方が日本の生活文化と結びついて、こたつは徐々に家庭の冬の象徴となっていきます。

囲炉裏は、床座で暮らす日本の生活様式と非常に相性が良いものでした。椅子ではなく畳に座る文化の中では、暖房器具は人体に近い場所にあるほど効率が高まります。こたつはまさにその合理性から生まれ、床座の生活に自然と融合していったのです。

畳・床座・気候が生んだ独自の暖房様式

こたつの発展には日本特有の住宅構造も深く関わっています。・障子・土壁といった伝統的な建材は断熱性が高いとはいえず、部屋全体を暖めるのは容易ではありませんでした。そのため、日本では“部屋を暖める”より“身体を暖める”暖房方法が発展しやすい環境にありました。

さらに、日本の冬は気温が低いだけでなく湿度も下がり、体感温度は実際の気温以上に寒く感じられます。こうした条件下で、こたつは少ない熱量で確実に身体を温めることができる便利な暖房器具でした。部屋全体を暖める欧州の暖炉とは対照的に、こたつは日本の気候と住宅に最適化された暖房方法だったのです。

電気こたつが誕生し生活文化として定着した背景

昭和期に電気ヒーターが普及すると、火を使わないこたつが誕生しました。これにより安全性が高まり、都市部の住宅でも取り入れやすくなります。電気こたつの普及は、こたつが日本の冬の暮らしに定着した大きな転換点でした。

こたつは単なる暖房器具ではなく、家族の交流を促す“生活の場”としても機能しました。テレビを見る、食事をする、宿題をする――こたつは家族の時間を育む場所だったのです。この“人が集まる家具”という性質は現在でも海外の人々に魅力的に映っています。


海外は本当に土足文化なのか:映画と現実のズレ

ハリウッド映画の演出が生んだ“誤解”

日本人が抱きやすい誤解のひとつに「海外は家でも土足で生活している」というイメージがあります。これは映画やドラマで描かれる表現による影響が大きいと考えられます。物語のテンポを保つために、登場人物が靴を脱ぐ動作を省略したり、衣装管理の都合で靴のまま撮影したりする場面が多く、これが誤解を生む原因となっているのです。

実際には、映画が描く生活と現実の生活は必ずしも一致しません。日本の映像作品がしばしば現実よりも“礼儀正しい日本”を描くように、海外の作品もまた“分かりやすい記号としての土足”を使っているに過ぎないのです。

実際には多くの国で“家庭内は脱靴”が一般的な理由

現実の欧米では、家庭内で靴を脱ぐ習慣を持つ地域が多数あります。特に雪の多いカナダや北欧では、濡れた靴で家に入ることは不快であり、汚れや衛生面から避けられています。アメリカでも都市部や若年層を中心に脱靴文化が広まりつつあります。

海外では玄関の構造が日本ほど明確に“靴の境界”を示しているわけではありませんが、土や砂を持ち込まないための習慣として自然に脱靴する様子が見られます。つまり、“海外=どこでも土足”というイメージは実態と大きく異なるのです。

ホテル・公共空間・家庭で異なる靴のルール

海外のホテルでは靴を履いたまま過ごす人が多いですが、それはホテルが“半公共空間”であり、靴のまま行動することが前提で設計されているためです。しかし、ベッドに入る時は靴を脱ぐのが一般的で、寝具は清潔に扱うべきという価値観は日本と同じです。

このように、海外では“公的空間と私的空間の境界”を基準に靴の扱いを判断します。この感覚の違いこそ、日本人が「海外の人は家でも靴のままなのか」と誤解しやすい理由のひとつです。


こたつが“海外の家でも使える”文化的・構造的理由

カーペット文化が“脱靴スペース”を自然に生み出す

欧米の住宅ではリビングルームにカーペットを敷く文化が広く見られます。カーペットは靴で踏めばすぐに汚れ、掃除も大変です。そのため、カーペットの上では自然と靴を脱いで座る習慣が根付いています。

こたつはカーペットとの相性が良く、布団を敷けばさらに暖かさが増します。海外の住宅文化の中に、こたつを置くための“自然な環境”がすでに存在していたという点は興味深い事実です。

暖房効率の低い住宅で床暖房的効果が評価される

広い居室を暖めるには大量のエネルギーが必要となり、特に欧米では電気代の高さが問題視されています。こたつのような部分暖房は省エネ性が高く、限られた範囲を効率よく温めるという点で評価されています。

こたつは身体の接触面から熱を伝えるため、暖まる速度が速く、空気を乾燥させにくいという特徴があります。これは湿度が低く乾燥しやすい地域にとって心地よく感じられる暖房方法であり、海外の住宅環境にも適応しやすいのです。

「家具兼ヒーター」という構造が海外住宅に適合した理由

テーブルとヒーターが一体になっているこたつは、家具としての役割と暖房としての役割を同時に果たすユニークな存在です。海外のユーザーにとっては、家具と家電が融合したデザインが新しく、生活を効率化するアイテムとしての魅力が高まっています。

特にミニマリスト志向の人々にとっては、単機能で場所を取る暖房器具より、複合的な役割を持つこたつのほうが合理的だと受け取られることも多いようです。


旅館やホテルでは見かけないのに、なぜ海外ではこたつが知られているのか

アニメ・漫画で描かれる“冬の象徴としてのこたつ”

こたつが海外で知られる大きな要因となったのは、日本のアニメや漫画で描かれる日常生活のシーンです。こたつにみかん、こたつでうたた寝する猫、こたつで勉強する子ども――こうした情景は“日本ならではの冬”として世界中に発信されてきました。

アニメ文化が世界的に広がる過程で、日本の生活様式を象徴するアイテムとしてこたつは定着しました。旅館やホテルでの経験ではなく、メディアを通じてこたつを知る外国人が増えたのはこのためです。

YouTubeで広まった「Kotatsu Life」の海外人気

こたつを紹介する動画はYouTubeでも高い人気を誇ります。特に「Japanese Kotatsu」というキーワードで検索すると、家の中でこたつを使う様子を紹介した動画が多数見られ、いずれも海外ユーザーから「温かそう」「欲しい」というコメントが多く寄せられています。

動画を通じて“実際の使い心地”や“生活の中でのこたつの位置付け”が見えるため、外国人にとってこたつは単なる家具ではなく“日本の暮らしを象徴する体験”として捉えられているのです。

民泊やゲストハウスでの体験談がSNSで拡散した背景

旅館やホテルでは衛生管理や火災リスクからこたつを置くことは稀ですが、一方で民泊やゲストハウスでは設置例が多く見られます。特に古民家を利用した宿泊施設では、冬の体験としてこたつを導入するケースも増えています。

外国人旅行者がこたつを初めて体験する場は、旅館よりもこうした民泊であることが多く、帰国後にSNSで感想をシェアすることで“こたつの認知”がさらに広がっています。


こたつ人気の世界的ブームを決定づけた“猫”という存在

“Kotatsu Cat” 動画が海外でバイラル化した理由

こたつが海外で急速に普及するきっかけとなったのは、猫がこたつでくつろぐ動画の存在です。顔だけ出して眠る姿や、こたつ布団の中に隠れて温まっている姿は、言語を超えて世界中の人々から親しまれました。SNSで拡散されることで、こたつは“猫が幸せになる家具”としてのイメージを獲得しました。

こたつと猫が象徴する“日本の冬の癒やしイメージ”

猫とこたつの組み合わせは、日本人にとっても馴染み深い冬の光景ですが、海外の人々にとっては特に新鮮で魅力的に映ります。日本の冬は静かで、ぬくもりのある時間が流れるという印象が、猫の映像を通して伝わりやすいのです。

猫がこたつの中で安心して眠る姿は、“小さな幸せ”や“ほっとする時間”を象徴しており、多くの国で支持されました。こうした感覚的な魅力がこたつ人気の大きな要素となっています。

海外の猫飼い層がこたつを購入し始めた現象

猫を飼っている海外ユーザーの間で、こたつを猫用に購入する動きが広がっています。こたつは“動物に優しい暖房”として注目され、床面に近い位置で暖を取る構造が猫にとって心地よい環境を生み出します。猫が落ち着いて過ごせる場所を作りたいという飼い主の気持ちと、こたつの構造が合致しているのです。

猫専用ミニこたつの誕生とペット市場の拡大

近年では、ペット用に小型化された“ミニこたつ”が販売されるようになり、こたつはペット市場でも注目される存在となっています。猫だけでなく小型犬や小動物にも利用され、ペットの快適性を追求する商品として海外でも関心が高まっています。


外国人がこたつに強く惹かれる5つの理由

部分暖房による圧倒的な省エネ性

こたつはエネルギー効率が非常に高く、限られた電力で身体を効率よく温めます。寒冷地で暖房費が高額になる国では、この省エネ性が特に評価されています。部屋全体を暖める必要がないため、環境負荷が低い点も魅力です。

“体の芯が温まる”という日本式の暖まり方

こたつは接触する部分から熱を伝えるため、短時間で身体の芯まで温まることができます。これは温風で空気を暖める暖房器具とは異なる体感で、特に冷え性の人にとっては心地よさを実感しやすい特徴があります。

テーブル・布団・ヒーターが一体化した未知の構造

海外にはこたつに似た家具がほとんど存在せず、その構造は多くの外国人にとって新鮮です。テーブルと暖房機能が一体になっているため、家具としても実用的で空間効率が良く、多機能なアイテムとして注目されます。

家族や友人と自然に集まる空間をつくる心理効果

こたつの周りは自然と人が集まり、会話が生まれます。温かさが心理的な安心感を生み、くつろぎの時間が共有されるのです。この“人を引き寄せる力”は、こたつが海外でも愛される理由のひとつです。

“日本の生活感”を体験できる家具としての価値

こたつは日本の家庭文化を象徴する家具であり、日本の日常風景を体験したいと願う外国人にとって魅力的な存在です。旅館やホテルでは体験できない“リアルな生活文化”として、こたつの価値は高まっています。


海外で進化する“新しいこたつ文化”

北欧風デザインこたつの登場と市場拡大

近年では、海外のインテリアに調和するよう、北欧風のミニマルデザインを持つこたつが登場しています。木目を活かしたシンプルな天板や薄型ヒーターを用いたデザインは、欧米の家庭でも取り入れやすいと評価されています。

DIY文化が生んだ自作こたつの拡散

こたつを自作する外国人ユーザーが増えていることも特徴的です。動画サイトやブログでこたつの作り方が紹介され、それを参考にしながら自身の生活環境に合わせて改良するという動きが広がっています。DIY文化とこたつは相性がよく、独自のアレンジが生まれやすい点が人気を後押ししています。

ペット向けヒーター家具としての利用

こたつはペットに優しい暖房として注目されており、小型のミニこたつやペット用こたつ布団が開発されています。人間とペットが同じ空間でぬくもりを共有できることから、ペットオーナーからの支持が高まっています。


まとめ:こたつが“文化ギャップ × 暮らしの合理性 × 猫”で世界に広まった理由

歴史・住宅・生活スタイルが重なって生まれた日本独自の家具

こたつは日本の長い歴史と生活文化が作り上げた暖房器具であり、住宅構造や気候とも深く結びついています。そのため、こたつには日本の生活様式に根ざした独自の魅力があります。

誤解されがちな“海外の土足文化”がこたつ普及を邪魔しなかった理由

海外では家庭内で靴を脱ぐ文化が多く、こたつは意外にも海外の住宅文化と相性が良いことが分かります。映画や映像作品による誤解とは異なり、こたつは海外生活の中にも自然に取り入れられる要素を多く持っています。

デジタル時代に猫が担った世界的プロモーション効果

猫とこたつの映像は世界中に温かさと安らぎのイメージを広げ、こたつの人気を後押ししました。伝統的な家具がデジタル時代に再評価されるという興味深い現象でもあります。

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