NOT A HOTEL株式会社は2026年7月、NOT A HOTEL SETOUCHIの新たな体験コンテンツとして、オリジナルデザインの屋形船「SENTO」の運航を開始しました。瀬戸内海の景観、旬の食材、料理人との対話を一つの時間として組み立てた、オーナー限定のプライベートダイニングです。
今回の発表は施設の新規開業ではなく、既存の滞在価値を海上へ広げる開業後の体験拡充に当たります。宿泊施設の敷地内だけで完結させず、地域の風景や食文化、移動時間までを滞在商品に取り込む取り組みとして、ホテル・旅館の体験設計にも示唆があります。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。

本記事のポイント
- NOT A HOTEL SETOUCHIで、屋形船「SENTO」が2026年7月に運航を開始しました。
- カウンター9席やソファ席、屋上デッキを備え、瀬戸内の旬を味わうプライベートダイニングを提供します。
- 宿泊、食、景観、モビリティを一続きにすることで、目的地で過ごす時間そのものを滞在価値へ変える設計です。
発表内容の整理

「SENTO」は、NOT A HOTELのモビリティ事業「NOT A GARAGE」が開発・運航する屋形船です。水平に延びる端正なシルエット、木の温もりを感じる素材、黒を基調とした外観、余白を生かした船内空間により、NOT A HOTELが築いてきた建築とホスピタリティの世界観を海上へ展開しています。
利用対象は「SUNREEF 80 POWER NOT A GARAGE EDITION」のオーナーおよびNOT A HOTELオーナーです。船内には料理人の調理を間近に感じられるカウンター9席とソファ席が設けられ、屋上デッキでは瀬戸内海を360度見渡せます。少人数の食事からグループ利用までを想定し、移動手段ではなく、景色と料理、大切な人との時間を味わう場として設計されています。
料理は、和食、フレンチやイタリアンの要素を取り入れた約8品のコースに加え、瀬戸内の海の幸を使った鮨と天ぷらのコースも提供予定です。ソムリエが選ぶワインなど、料理との組み合わせを楽しめる飲料も用意されます。
また、2027年初夏にはSETOUCHIで「SUNREEF 80 POWER NOT A GARAGE EDITION」の運航も予定されています。今回の「SENTO」は、別荘とモビリティを組み合わせる構想を段階的に具体化する更新と整理できます。
出典:PR TIMES NOT A GARAGEより、オリジナルデザインの屋形船「SENTO」が誕生。7月よりSETOUCHIで運航開始。海上ならではの新たな食体験を提供
瀬戸内の風景を滞在商品へ変える体験設計
「SENTO」の特徴は、船で目的地へ運ぶことよりも、海上で過ごす時間そのものに価値を持たせている点です。夕暮れの島影や夜の水面、海風、移り変わる眺望は、客室内の設備だけでは再現できない瀬戸内固有の地域資源です。
宿泊事業者にとっては、周辺観光地を案内するだけでなく、地域の風景が最も美しく見える時間帯、移動手段、食事、接客をまとめて設計する考え方が参考になります。天候や日没時刻によって表情が変わる環境を体験の中心に据えたことからも、瀬戸内への丁寧なまなざしがうかがえます。
料理人との対話まで含めた海上ダイニング
カウンター9席という構成は、料理を提供するだけでなく、調理の所作や料理人との会話も体験に含める設計です。瀬戸内の旬の魚介を使う鮨や天ぷら、和食、フレンチやイタリアンの要素を取り入れたコースを用意することで、季節や利用者に応じた提案の幅も生まれます。
地域食材の魅力を伝える際は、産地名を並べるだけでなく、景色、提供時刻、調理のライブ感、飲料との組み合わせまで一つの物語として整えることが重要です。「SENTO」が食と海上空間を一体化した点は、レストラン、ラウンジ、貸切宴会などを運営する現場でも参考になる取り組みです。
限定利用だからこそ求められる運営品質
オーナー限定の体験では、席数の希少性だけでなく、予約から乗船、食事、帰着までの一貫した案内が満足度を左右します。特に船上サービスでは、天候による運航判断、食材や飲料の積み込み、料理人と乗組員の連携、利用者ごとの食事制限への対応など、陸上とは異なる準備が必要です。
その一方、利用者を限定する仕組みは、好みや過去の滞在履歴を踏まえた提案にもつながります。別荘、船、食を別々の商品として扱わず、一続きのサービスとして届ける発想には、長期的な関係を大切にする姿勢が表れています。
観光投資の拡大期に考える地域との接続
観光庁の「令和8年版観光白書(概要版)」では、2026年7月1日に国際観光旅客税が1,000円から3,000円へ引き上げられ、令和8年度の関係予算も前年度の490億円から1,300億円へ拡大したことが示されています。観光地・観光産業の強靱化と、来訪者の受け入れを住民生活の質と両立させる施策が重視されるなか、地域資源を高付加価値な体験へつなげる事業者の役割は一段と大きくなっています。
海上体験では、安全管理や環境への配慮に加え、地域の漁業者、生産者、料理人などとの連携が欠かせません。地域の旬を安定して伝え、利用者の消費を地域内へ循環させる運用まで整えることが、体験の持続性を支えます。「SENTO」のように地域の風景と食を滞在価値へ結び付ける試みは、観光投資を地域の魅力向上へ還元する実践例としても注目されます。

まとめ
屋形船「SENTO」の運航開始は、NOT A HOTEL SETOUCHIの開業後に行われる体験コンテンツの拡充です。瀬戸内海の景観、旬の料理、料理人との対話、モビリティを組み合わせ、海上で過ごす時間自体を宿泊価値へ変えています。
地域固有の風景を生かしながら、食事や接客を細部まで設計する姿勢は、宿泊施設が館外体験を造成する際にも多くの気づきをもたらします。今後予定されるクルーザーの運航を含め、NOT A HOTEL SETOUCHIで滞在と移動がどのようにつながっていくのか注目されます。
企業情報
- 施設・体験:NOT A HOTEL SETOUCHI/屋形船「SENTO」(2026年7月運航開始)
- 運航:NOT A GARAGE
- 会社名:NOT A HOTEL株式会社
- 代表者:濵渦 伸次/江藤 大宗
- 設立:2020年4月1日
- 事業内容:NOT A HOTELの企画・販売・運営。建築、テクノロジー、ホスピタリティを融合した別荘と関連体験を提供
- 会社電話番号:発表元本文に一般公開番号の記載なし
- 会社公式サイト:NOT A HOTEL公式サイト
- 会社お問い合わせ:お問い合わせフォーム
参考資料
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(2026年7月1日)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁(国土交通省)『令和6年度 デジタルノマド受入に向けた環境及び体制整備に関わる実証事業 ナレッジ集(令和7年5月)』: 令和6年度 デジタルノマド受入に向けた環境及び体制整備に関わる実証事業 ナレッジ集

