長野県佐久市湯原で、1982年築の日本家屋を改装した一棟貸しの宿「屯 TON」が2026年7月27日に開業しました。最大12名で一棟を貸し切り、田んぼを望むダイニングやウッドデッキ、最大8名で利用できるサウナなどを備えます。目的を細かく設定しなくても人が集まり、長く過ごせる「家」として滞在を設計した点が特徴です。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。

本記事のポイント
- 「屯 TON」は、長野県佐久市湯原に開業した最大12名の一棟貸し宿です。
- 既存住宅の構造を生かしながら、サウナ、DJブース、田園に開くダイニングなどを重ね、グループが自然に滞在を共有できる場を目指しています。
- 地域の景観やつくり手との接点を宿泊体験に組み込む考え方は、地域資源を観光価値へつなげる宿づくりのヒントになります。
発表内容の整理

株式会社BUPPHAは、同社の新規事業として「屯 TON」を開業しました。施設は、1982年築の木造2階建て日本家屋を改装した一棟貸しで、寝室4室、セミダブルベッド4台と布団8組を用意し、最大12名に対応します。
館内にはフルキッチン、DJブース、プロジェクター、仕事用のデスク・電源、高速Wi-Fiを設置。庭ではBBQができ、田んぼに面したウッドデッキやダイニングも備えます。最大8名で利用できるサウナは、個人利用だけでなく、同行者との会話や時間の共有を前提に据えた設備として位置付けられています。
出典:PR TIMES デザイン会社がつくった、屯(たむろ)するための家。長野・佐久に一棟貸しの宿「TON」オープン
「集まること」を主役にした一棟貸しの設計
屯 TONのコンセプトは、観光地を効率よく巡ることよりも、気心の知れた人々が理由なく集まって過ごす時間にあります。一棟を丸ごと使えるため、食事、会話、仕事、休息といった過ごし方を、同行者のペースで切り替えやすい構成です。
宿泊施設にとって、客室や共用部を「何をする場所」と限定しすぎず、滞在者が自分たちの時間をつくれる余白を残すことは、グループ利用の満足度に関わる要素です。田園を望むダイニング、庭、ウッドデッキを一体で使える設計には、滞在そのものを集いの口実へ変えようとする丁寧な意図がうかがえます。
既存住宅を現代の滞在体験へ編み直す
改装では和の構造を基本的に残しながら、漆喰の壁、杉の無垢材の床、ステンレス天板のキッチン、和紙を天板に仕込んだテーブルなどを組み合わせています。古い建物の要素を保存対象として閉じるのではなく、滞在中に手で触れ、使い続ける空間の質へつなげている点が印象的です。
観光庁(国土交通省)の「観光地域づくり事例集 第3章『地域資源の活用強化』」は、自然、景観、歴史、文化などを観光の価値へ結び付ける多様な実践を扱っています。既存住宅と田園景観を宿泊の背景ではなく体験の一部として扱うことは、地域の固有性を滞在の記憶に残す方法の一つとして参考になります。
大人数サウナと多目的設備が広げる滞在の選択肢
最大8名で利用できるサウナ、DJブース、プロジェクター、フルキッチン、BBQができる庭をそろえたことで、宿泊だけにとどまらない利用場面を描きやすくしています。友人・家族の集まりに加え、企業のオフサイト利用や撮影利用の相談も受け付ける方針です。
設備を増やす際は、導入の数よりも、利用人数や滞在動線とどう結び付くかが重要です。屯 TONでは、サウナを静かに一人で使う設備ではなく、会話の続く場として構想しています。設備の役割を施設の滞在テーマとそろえることで、予約前の利用イメージも伝わりやすくなります。
デザインを運営資産として一貫させる
運営する株式会社BUPPHAは、ブランディングやWebサイト制作、デザインを手がける会社です。屯 TONではロゴ、Webサイト、館内の紙ものまで自社で制作し、建物の改装と情報発信の表現を一つの体験としてつないでいます。
観光庁(国土交通省)の令和8年版観光白書(概要版)によると、2024年度の宿泊業の一人当たり付加価値額は587万円で、全産業の817万円に対して72%の水準です。限られた人員でも施設の魅力を伝え、利用前から利用後までの接点を整えることは、価格だけに依存しない価値づくりを考える上で欠かせません。空間、案内物、予約導線の表現を一貫させる同施設の取り組みは、小規模宿におけるブランド運用の実践例として映ります。

まとめ
屯 TONは、佐久の田園と既存住宅の持つ雰囲気を生かしながら、グループで長く過ごすための設備と表現を重ねた一棟貸し宿です。滞在者が目的を決め込みすぎずに集まれる場を用意する発想は、地域の暮らしに近い時間を宿泊体験へ取り込む試みとして魅力があります。地域資源、設備、情報発信をどのように一つの滞在価値へ結ぶかを考える事業者にとっても、示唆の多い開業といえそうです。
施設概要
- 施設名: 屯 TON
- 所在地: 長野県佐久市湯原38-6
- 形態: 一棟貸し(最大12名)
- 建物: 1982年築の木造2階建てを改装
- 設備: サウナ・焚き火スペース・庭・キッチン・DJブース・Wi-Fi
- チェックイン: 13:00/チェックアウト: 12:00
- 料金: 一棟 ¥40,000/泊~(2名まで)
- ペット: 同伴可(体重10kg以内・2頭まで・1頭¥5,000)
- オープン日: 2026年7月27日
- 旅館業許可: 長野県佐久保健所指令08佐保第11-24号
- 公式サイト: https://ton-nagano.com
- Instagram: @ton_nagano
- 運営: 株式会社BUPPHA
参考資料
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(2024年度)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第3章「地域資源の活用強化」(公表資料)』: 観光地域づくり事例集 第3章「地域資源の活用強化」

