石川県七尾市の和倉温泉にある「白鷺の湯 能登 海舟」が、能登半島地震による長期休館を経て、2026年7月16日に営業を再開しました。地元食材を取り入れた食事に加え、震災の記録と能登各地の観光情報を伝える館内展示も始まります。宿泊そのものを楽しむだけでなく、地域の現在を知り、周辺へ足を延ばすきっかけをつくる再出発です。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。
本記事のポイント
- 「白鷺の湯 能登 海舟」が約2年半の休館を経て、2026年7月16日に営業を再開しました。
- 夕食と朝食には、能登の里山里海の食材や石川県の郷土料理、地域に根付く調味料が取り入れられています。
- 館内の震災アーカイブと観光案内を通じ、宿を能登各地への周遊の出発点とする情報発信が始まります。
発表内容の整理

共立メンテナンスが運営する「白鷺の湯 能登 海舟」は、和倉温泉駅から車で約5分の場所にある全98室の温泉宿です。客室には天然温泉露天風呂付きのタイプがあり、大浴場では和倉温泉の湯を楽しめます。
再開後の夕食では、黒毛和牛しゃぶしゃぶ、またはのど黒と鮑のしゃぶしゃぶを選べる台の物として用意し、赤魚のいしる焼きや治部煮なども組み合わせます。朝食には、とり野菜味噌仕立ての汁物、石川県産米「ひゃくまん穀」、地元ブランド牛乳「能登そだち」などを取り入れます。
1階ロビーには、石川県が運営する震災アーカイブと連携した写真展示を設置します。能登地域の観光パンフレットやリーフレットもそろえ、宿泊者が地域の歩みを知り、翌日の周辺観光を考えられる場として活用されます。
発表では、主要な交通インフラは概ね復旧している一方、和倉温泉地域では護岸工事などが続き、景観や提供サービスが震災前と一部異なる場合があることも案内されています。現地の状況を率直に伝えたうえで迎える姿勢に、利用者との信頼を大切にする丁寧な情報設計がうかがえます。
出典:PR TIMES 【本日営業再開】 『白鷺の湯 能登 海舟』、2年半ぶりにお客様のお迎えをスタート
営業再開を地域との接点にする受入設計
今回の営業再開で注目したいのは、宿の復旧だけでなく、地域の状況を来訪者と共有する受入設計です。石川県の「能登半島地震アーカイブ」によると、2024年1月1日の地震では最大震度7を観測しました。こうした大きな災害の記憶を、宿泊者が落ち着いて理解できる形で伝えることは、復興途上の地域を訪れる際の背景理解につながります。
工事の継続やサービス上の制約を事前に明示することも、安心感を支える実務の一つです。予約画面、到着前案内、館内説明で情報をそろえ、更新日を示して発信すれば、現場への問い合わせ集中を抑えながら、旅行者にも無理のない行程を考えてもらいやすくなります。
能登の食文化を滞在価値へつなぐ料理
夕食と朝食には、魚介や米だけでなく、いしる、治部煮、とり野菜味噌といった地域の食文化が織り込まれています。高級食材だけに頼らず、調味料や家庭料理の背景まで含めて能登・石川らしさを伝える構成は、土地への理解を深める魅力として映ります。
観光庁の「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証調査」は、地域資源を来訪者の目線で磨き、域内の事業者が連携して観光消費の波及につなげる考え方を示しています。白鷺の湯 能登 海舟でも、生産地や作り手、料理の由来を献立や接客で簡潔に伝え、売店や周辺店舗の案内へ結び付けることで、食事の余韻を地域内の次の行動へ広げられます。
震災アーカイブから周辺観光へ導く館内展示
震災記録の写真と観光パンフレットを同じ館内で案内する取り組みは、過去の記憶を伝えるだけでなく、現在の能登へ関心を向けてもらう接点になります。展示を見た後に、営業中の施設、移動時間、立ち寄り先の状況をスタッフが案内できれば、宿泊者は地域への配慮を持ちながら周遊先を選びやすくなります。
観光庁の「持続可能な観光地域づくりのための事例集」では、観光地域づくりに住民参加やコミュニティとの関係を組み込む視点が示されています。館内展示も、地域の声や各地の最新情報を継続的に更新することで、宿から一方向に説明する場ではなく、宿泊者と地域をつなぐ案内拠点へ育てられます。能登全体に目を向けるきっかけを宿の中につくる点は、現場でも参考になる取り組みです。
観光需要の回復を地域の持続性につなげる視点
2026年7月10日に閣議決定された観光庁の「令和8年版観光白書(概要版)」では、地域の特性を生かした観光コンテンツ造成などに612億円を充てる方針が示されています。また、2030年に訪日外国人旅行者6,000万人を目指し、地方誘客を進める方向も掲げられています。今後、能登を訪れる人の背景や情報ニーズが多様になることを見据え、多言語案内や交通情報、地域で守ってほしい行動を分かりやすく伝える準備も重要になります。
一方で、復興途上の地域では来訪者数だけを追うのではなく、営業状況に応じた無理のない受入と、地域内での滞在・消費を両立させる必要があります。料理、展示、周遊案内を一つの滞在体験として整える白鷺の湯 能登 海舟の再開は、宿泊施設が地域の入口として担える役割を具体的に伝えています。
まとめ
白鷺の湯 能登 海舟は、約2年半の休館を経て、能登・石川の食文化と地域の現在を伝える温泉宿として営業を再開しました。食材や郷土料理を通じて土地の魅力を届けること、震災の記録と周辺観光情報を同じ滞在の中で案内することは、宿泊者の理解と地域内の周遊を穏やかに支えます。
復興工事が続く状況も誠実に案内しながら、お客様を迎える環境を整えた関係者の歩みに敬意を表します。今回の再開が、和倉温泉をはじめとする能登各地を訪れ、地域の今に触れる機会へつながることが期待されます。
企業情報
- 運営会社: 株式会社共立メンテナンス
- 施設名: 白鷺の湯 能登 海舟(共立リゾート)
- 所在地: 石川県七尾市和倉町ワ部31番地
- 客室数: 98室
- 公式情報: 株式会社共立メンテナンス公式サイト
参考資料
- 石川県『能登半島地震アーカイブ 震災の記憶・復興の記録(令和6年1月1日)』: 能登半島地震アーカイブ 震災の記憶・復興の記録
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(令和8年度)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁(国土交通省)『持続可能な観光地域づくりのための事例集(公表資料)』: 持続可能な観光地域づくりのための事例集
