香川県丸亀市で、全3室の小さなホテル泊丸が2026年9月15日に開業予定です。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の近くに位置し、アート鑑賞、商店街や路地の散策、宿で過ごす夜をひと続きの旅として提案します。目的地を増やすのではなく、まちで受け取った印象を滞在時間のなかで深めるという考え方が、この宿の核になっています。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。

本記事のポイント
- 泊丸は丸亀市本まちに開業予定の全3室のホテルで、JR丸亀駅から徒歩3分、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に近い立地です。
- 美術館、港街、商店街を巡った後に一晩を過ごすことで、鑑賞体験を地域滞在へ広げる構成が特徴です。
- 文化施設を地域一体の観光につなげる観光庁の方針とも重なり、少客室の宿がまちとの接点を丁寧に育てる実例として注目されます。
発表内容の整理

泊丸は、株式会社丸亀企画が企画・運営する宿泊施設です。2026年9月15日の開業に向けた事前発表であり、客室は2階の「□」、3階の「△」、4階の「○」の各フロア1室、計3室で構成されます。1924年竣工のRC造・地上4階建ての建物を活用し、株式会社oocが設計を担当します。
宿名には丸亀の「丸」、船名に添えられる「丸」、そして「泊まる」という行為が重ねられています。美術館で作品に触れ、駅前から商店街や港街を歩き、宿に戻って一日を振り返る。翌朝に再びまちへ出るまでの時間を、旅の途中で静かに停泊する体験として描いています。
出典:PR TIMES 瀬戸内の港街・丸亀に、旅の途中で静かに停泊するように滞在するホテル「泊丸」が開業
美術館の鑑賞を、まち歩きと宿泊へつなぐ
泊丸の立地で重要なのは、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館を訪れる行為が、館内だけで完結しないことです。作品鑑賞の前後に駅前、商店街、路地、港の風景へ自然に足を延ばせるため、宿泊が地域を知る時間の受け皿になります。館内の体験と市街地の日常を切り離さずに扱う姿勢は、丸亀らしい滞在の輪郭として魅力的に映ります。
観光庁は「文化観光の推進」で、美術館・博物館などの文化施設を中核に、地域が一体となった観光を進める方向性を示しています。泊丸のように文化施設の近くに宿泊の拠点を置くことで、来訪者の滞在時間を延ばすだけでなく、飲食店や商店、地域の人々との接点を無理なく生み出すことが期待されます。
少客室だからこそ設計できる、余韻のための一泊
3室という規模は、客数を追う大型施設とは異なる運営の可能性を持ちます。客室をそれぞれ独立したフロアに配置し、○・△・□という形を名称にも取り入れることで、空間そのものを滞在の記憶に残す工夫がうかがえます。客室入口には平山昌尚氏による作品を設け、滞在を重ねる中で作品が更新される予定です。
観光庁の「令和8年版観光白書(概要版)」は、宿泊業における人材確保と生産性向上を重要なテーマに掲げています。少客室の宿では、接客を増やすことだけで差別化するのではなく、導線、案内、地域との連携をあらかじめ滞在体験に組み込むことが現場の負荷を抑える手がかりになります。泊丸が掲げる「歩く、立ち止まる、戻る、眠る、朝を迎える」という過ごし方は、スタッフが一方的に演出し続けなくても、ゲスト自身がまちとの関係を育てられる設計として参考になります。

歴史ある建物と現代のクリエイティブを重ねる
泊丸は1924年竣工の建物を活用します。新築ではない建物の時間を単なる意匠として消費せず、猪熊弦一郎の色と形へのまなざし、UMA / design farmによるロゴと周辺設計、株式会社oocによる空間設計を重ねている点が特徴です。地域に蓄積された建築や文化の文脈を、現代の宿泊体験へ丁寧に翻訳する試みといえます。
宿泊施設の改修では、建物の由来を説明するだけで終わらせず、客室名、サイン、地域案内、スタッフの語り方まで一貫させることで、滞在価値が伝わりやすくなります。泊丸のようにアートと建物の物語を入口から客室へつなげる構成は、地域資源を宿の体験品質へ結びつけるヒントになります。
地域の事業者とつくる、丸亀の新しい接点
運営会社の株式会社丸亀企画は、馬場商事、株式会社NEWLOCAL、VITAMINの知見を掛け合わせて2025年に設立されました。不動産、宿泊・地域事業、飲食・プロデュースの担い手が関わることで、宿の中だけに体験を閉じず、丸亀の事業者や文化との接点を広げていく体制が描かれています。
「令和8年版観光白書(概要版)」では、観光地・観光産業の強靱化と、住民生活の質に配慮した誘客の両立が施策の柱に位置付けられています。小規模宿が地域の既存資源を起点に滞在を組み立てることは、来訪者に地域の日常を伝えるとともに、地域側と対話を重ねながら受入環境を整えていく契機にもなります。丸亀で暮らし働く人々との関係を大切にする姿勢は、今後の滞在拠点づくりにおいても心強い要素です。

まとめ
泊丸は、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の鑑賞、港街の散策、歴史ある建物での宿泊をつなぐ、2026年9月15日開業予定の全3室のホテルです。短い滞在でも「次へ進む前に一度とどまる」時間を提案することで、地域の文化や風景をより深く味わう旅を目指します。文化施設を核に地域一体の観光を考える宿泊事業者にとって、規模に応じた体験設計と地域連携を考える一つの示唆となりそうです。
企業情報
- 施設名 :泊丸(tomaru/とまる)
- 所在地 :香川県丸亀市本まち20-1
- 開業予定日 :2026年9月15日
- 客室数 :3室(2階「□」、3階「△」、4階「○」、各フロア1室)
- 建物 :RC造・地上4階、1924年竣工
- アクセス :JR予讃線丸亀駅から徒歩3分
- 設計 :株式会社ooc
- ロゴ・CI :UMA / design farm
- 客室入口作品 :HIMAA(平山昌尚、随時更新予定)
- 会社名:株式会社丸亀企画
参考資料
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(2026年7月1日)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁『文化観光の推進(2024年3月22日更新)』: 文化観光の推進
- 観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第4章「インフラの整備と活用強化」(公表資料)』: 観光地域づくり事例集 第4章「インフラの整備と活用強化」

