東京都墨田区両国で、築古ビルを一棟再生したブティックホテル「illi Sui Asakusa-Ryogoku」が2026年9月に開業予定です。最大8名まで泊まれる客室と、江戸文化・相撲・町工場・隅田川という地域の文脈を抽象化した空間設計を掲げ、グループやファミリーの滞在需要に応えます。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。

本記事のポイント
- 遊休化した築古ビルを一棟コンバージョンし、両国での新たな滞在拠点として2026年9月の開業を予定しています。
- 最大8名のグループ滞在に対応し、地域文化をそのまま模倣せず、空間の構造・曲線・素材・光へと翻訳した設計です。
- 地域資源と宿泊体験を結び、既存建物の価値を滞在商品へつなげる実践例として注目されます。
発表内容の整理

株式会社BARE NOTE STUDIOは、グループ滞在向けホテルブランド「illi」の新施設として、illi Sui Asakusa-Ryogokuを開業します。所在地は東京都墨田区石原二丁目で、JR総武線・都営大江戸線「両国」駅から徒歩7分です。
今回の発表は開業前段階の更新です。既存の築古ビルをホテルへ転用し、最大8名が滞在できる客室を整備します。illiブランドは2019年の無人運営ホテルから展開を始め、今回を含む今夏の複数施設開業により累計総客室数100室に到達したとしています。
出典:PR TIMES 【両国】築古ビルをブティックホテルへ。最大8名で泊まれる『illi Sui Asakusa-Ryogoku』が2026年9月オープン
既存建物を滞在価値へ転換する取り組み
一棟コンバージョンは、新築では得にくい建物の個性や街との連続性を、宿泊体験へ取り込める手法です。illi Sui Asakusa-Ryogokuでは、遊休不動産だった建物をグループ利用に対応するホテルへ転用し、既存ストックに新たな役割を与えます。
宿泊事業者にとっては、立地や建物条件を一律に整えるのではなく、建物に残る特徴を客室の使い方や滞在シーンへ結び付ける視点が重要です。不動産再生と運営設計を一体で進める同社の姿勢は、物件の活用可能性を広げる工夫として映ります。
地域の文脈を空間体験へ翻訳
施設名の「Sui」は、隅田川の「水」と、職人文化に通じる「粋」に由来します。江戸切子に見られる規則性をシンメトリーな空間構造に、相撲の円や低重心を丸窓・曲線照明・ブラウン調の内装に重ね、町工場の手仕事や隅田川の水面の印象も素材と光の表現へ取り入れたといいます。
墨田区の「産業と観光の将来構想~あえる!~」は、ものづくりによる社会課題の解決や、地域内外の多彩な交流の促進を方向性に掲げています。地域の文化を装飾的に消費せず、滞在者が室内で感じるリズムや落ち着きへと置き換える設計は、地域資源を宿泊商品の個性として伝える際の一つの手掛かりになります。
最大8名の滞在設計が支える旅行の選択肢
最大8名まで泊まれるゆとりある客室は、家族旅行や友人同士の旅行で、同じ空間に集まりながら過ごす需要を受け止める設計です。観光庁の令和8年版観光白書(概要版)が示す「観光地・観光産業の強靱化」という施策の柱に照らしても、客層と利用人数に合わせて滞在の選択肢を増やすことは、需要の変化に対応する基盤の一つになります。
客室の収容人数だけでなく、複数人がくつろぐ際の動線、荷物の置き場、滞在中の会話が生まれる余白まで見据えることが、グループ滞在では欠かせません。地域散策の拠点であると同時に、室内で過ごす時間にも意味を持たせる考え方に、丁寧な設計がうかがえます。

下町エリアでブランドの広がりを生かす
同社は浅草・押上に続き、東京の下町エリアでの展開を進めています。ブランド全体で累計100室に到達した節目に、両国の歴史・文化と建物再生を組み合わせることで、施設ごとに異なる地域性を滞在の理由へつなげようとしています。
墨田区は観光消費額等調査で、観光施策の効果検証と今後の施策展開の方向性を検討するための基礎情報を整備しています。宿泊施設側でも、地域の回遊先や文化資源との接点を意識し、宿泊単体にとどまらない滞在提案を更新していくことが、街との関係を育てるうえで大切です。
まとめ
illi Sui Asakusa-Ryogokuは、築古ビルを一棟再生し、最大8名のグループ滞在と両国らしい空間表現を組み合わせる、2026年9月開業予定のブティックホテルです。既存建物の個性、地域文化、滞在者の利用シーンを一つの体験へ編み込む取り組みは、都市部でのホテル開発・運営を考える際にも参考になるでしょう。
施設概要
- 施設名 :illi Sui Asakusa-Ryogoku(イリー スイ アサクサリョウゴク)
- 所在地 :〒130-0011 東京都墨田区石原2丁目11-9
- アクセス :JR総武線・都営大江戸線「両国」駅 徒歩7分
- 出店スキーム :不動産再生
- 企画・開発・運営:株式会社BARE NOTE STUDIO
- 設計デザイン :株式会社moss.(Instagramはこちら)
- 建物工事 :株式会社スリーライフ
- 所有者 :株式会社東京アセットソリューション
- 出資 :株式会社室井商会
会社情報
- 会社名 :株式会社BARE NOTE STUDIO
- 代表 :黒木 郁己
- 設立 :2017年12月25日
- 本社 :〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-22-9 AD-O渋谷道玄坂 5F
- 事業内容:ホテル開発・運営事業、不動産再生事業、クリエイティブ事業
- 企業HP :https://barenotestudio.com/
- 〈お問い合わせ〉
- メール :info@barenotestudio.com
- フォーム:https://barenotestudio.com/contact/
参考資料
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(2026年7月10日)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 墨田区『産業と観光の将来構想~あえる!~(2022年6月)』: 産業と観光の将来構想~あえる!~
- 墨田区『観光消費額等調査・外国人観光客等の実態及び観光ニーズ等調査(平成29年度)』: 観光消費額等調査・外国人観光客等の実態及び観光ニーズ等調査
- 観光庁(国土交通省)『ATWS2023を契機としたアドベンチャーツーリズムの推進に向けたヒアリング・アンケート調査結果(2024年3月)』: ATWS2023を契機としたアドベンチャーツーリズムの推進に向けたヒアリング・アンケート調査結果

