ホテルの雑学

ビジネスホテルが駅前や駅近に集まり客室をコンパクトにしている理由とは?

ビジネスホテルが駅前や駅近に集まり客室をコンパクトにしている理由とは?
CoCoRo編集部

ビジネスホテルの部屋に入って、思ったより狭いと感じた理由が気になったことはないでしょうか。ビジネスホテルが駅前や駅近に集まり、客室がコンパクトに作られているのは、出張や移動を主な目的とする利用者が、宿泊費より移動時間の短さを優先する傾向にあるためです。宴会場や広いロビーなど滞在時間を伸ばす設備を持たず、ベッドとデスクと浴室に機能を絞ることで、地価の高い駅近立地でも料金を抑えやすくしています。

ただし、客室の狭さを法律が定めているわけではありません。旅館業法施行令が定める客室面積の最低基準は、寝台を置く客室でも9平方メートル以上とかなり低く、実際の客室面積はチェーンや価格帯によって差が大きく出ます。ビジネスホテルだから必ず狭いと言い切ることはできません。

そこで本記事では、駅近で客室がコンパクトになる理由を、法令の下限と価格設計の両面から解説していきます。宿泊先を選ぶ基準がほしい方は、ぜひご参考にしてください。

この記事でわかること

  • 客室の広さに法令上の下限があるのかどうか
  • 駅に近い立地と客室の広さが連動する理由
  • コンパクトな客室が価格に与える影響
  • 予約時に広さを確認する方法

駅近立地と客室の絞り込みは同じ経営判断から生まれている

ビジネスホテルが駅近に集まり客室を絞り込むのは、出張利用者の行動パターンに合わせた一つの経営判断です。ビジネスホテルとは、宿泊のみ、または宿泊と簡単な食事の提供を主な機能とし、比較的手頃な料金で運営される宿泊施設を指すマーケティング上の呼び方です。

旅館業法施行令第1条第1項第1号は、一客室の床面積を7平方メートル以上、寝台を置く客室は9平方メートル以上と定めています。法令が決めているのは下限だけで、上限はありません。どこまで広くするかは、立地の取得費と客室数のバランスから各施設が判断しています。

出張利用者は移動時間の短さを優先する

出張で宿泊する人の多くは、日中は取引先やオフィスで過ごし、夜に戻って眠るだけという使い方をします。駅や主要な業務エリアに近いほど移動の負担が減るため、立地そのものが選ばれる大きな理由になります。休憩や滞在を楽しむための空間より、翌朝までに体を休められる機能が優先されます。

駅近の地価は宿泊料金に跳ね返る

駅前や繁華街に近い土地は取得や賃借のコストが高くなります。同じ延べ床面積であっても、そこに何室分の客室を収められるかが収益性を左右するため、1室あたりの面積を抑えて客室数を増やすことで、料金を大きく上げずに立地の良さを確保する設計が採られやすくなります。

宴会場やレストランを持たないことで料金を抑える

結婚式の披露宴会場や複数の飲食店を備えるシティホテルと違い、ビジネスホテルの多くは客室と最小限の朝食スペースに設備を絞ります。維持費のかかる大規模な共用施設を持たない分、客室の広さや料金にその差が反映されます。近年は大浴場や無料の朝食ビュッフェを備え、出張以外の用途にも対応する施設が増えています。

客室が狭いという印象は法律ではなく経営判断から来ている

客室が狭いという印象の背景には、法律上の理由はほとんどありません。面積の基準を定めているのは旅館業法施行令で、その水準は実際のビジネスホテルの客室面積よりかなり低く設定されています。

法律上の最低基準は9平方メートル程度にすぎない

旅館業法施行令第1条第1項第1号は、1客室の床面積を7平方メートル以上、寝台を置く客室では9平方メートル以上と定めています。これは営業許可を得るための最低ラインであり、実際の客室面積の目安ではありません。多くのビジネスホテルの客室はこの基準を上回っており、狭く感じられる客室であっても、法律ぎりぎりの広さで営業しているわけではないのが実情です。

「ビジネスホテル」は法律上の営業区分ではない

旅館業法第2条では、ホテルや旅館は「・ホテル営業」という一つの営業種別としてまとめて定義されています。、リゾートホテルといった呼び方は、営業許可上の区分ではなく、施設が自らの特徴を伝えるために使うマーケティング上の呼称にすぎません。2018年6月15日施行の改正旅館業法で、それまで別々だったホテル営業と旅館営業が旅館・ホテル営業へ統合されたことも、この整理を裏づけています。

観光庁の統計でも施設タイプは分類上の区分にとどまる

観光庁の宿泊旅行統計調査は、集計上の分類として旅館、、ビジネスホテル、シティホテル、簡易宿所などの区分を用いています。これは調査を集計しやすくするための分類であり、旅館業法上の営業許可区分とは別物です。統計上の呼び名がそのまま法律上の格付けを意味するわけではありません。

実際には客室の広さも稼働の様子もチェーンによって差がある

ビジネスホテルの客室が一律に狭いという説明は、実態を単純化しすぎています。稼働率は確かに高い水準にありますが、それは狭さの直接の証明にはならず、客室面積そのものはチェーンや開業時期によって幅があります。

ビジネスホテルは他タイプより稼働率が高い傾向にある

観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年間値、速報値、対象期間は2025年1月から12月)によると、施設タイプ別の客室稼働率はビジネスホテルが75.3パーセント、シティホテルが74.2パーセント、リゾートホテルが56.9パーセント、旅館が38.4パーセントでした。ビジネスホテルの稼働率の高さは、客室を効率よく埋める運営と相性が良い設計であることを示していますが、これは稼働の高さを示す数値であって、客室の狭さそのものを裏づける統計ではありません。

近年は客室の広さを売りにする施設も増えている

、コインランドリー、コワーキングスペースなどを備え、長期滞在やワーケーション需要を意識した客室を広めに取ったビジネスホテルも増えています。価格帯が上がるほど客室面積も広がる傾向があり、駅近であることと客室が狭いことは、必ずしも一体の条件ではありません。

駅から離れた郊外型でも客室を絞る施設はある

郊外のロードサイドに立つビジネスホテルでも、駐車場を広く確保する代わりに客室面積を抑える例が見られます。狭さの理由は駅近という立地条件だけでなく、料金と客室数のバランスをどう取るかという、施設ごとの経営判断に左右される部分が大きいといえます。

客室の広さで選ぶときに確認したいポイント

客室の広さは予約前にある程度確認できます。専有面積の表示と立地条件を見比べることが、想定と実際の差を減らす近道です。

予約サイトの専有面積表示を確認する

多くの予約サイトやホテル公式サイトには、客室タイプごとに平方メートル表示があります。同じ「シングルルーム」という名称でも面積は施設によって異なるため、写真の印象だけで判断せず、数値を確認しておくと当日のギャップを減らせます。

立地の利便性と客室の広さはトレードオフになりやすい

駅から徒歩数分の立地を最優先すると、同じ料金なら客室面積が控えめになりやすく、逆に駅から少し離れた施設を選ぶと、同程度の料金でも広めの客室に出会えることがあります。移動の負担と室内の快適さのどちらを優先するかを決めておくと、選択の基準がはっきりします。

まとめ

  • ビジネスホテルが駅近で客室が狭めなのは、移動時間を優先する利用者に合わせ、地価の高い立地でも料金を抑える経営判断が理由です。
  • 旅館業法施行令の客室面積の最低基準は寝台のある部屋で9平方メートル以上であり、法律が狭さの直接の原因ではありません。
  • ビジネスホテルという呼び方は法律上の営業区分ではなく、旅館業法上はホテルも旅館も旅館・ホテル営業として一つにまとめられています。
  • 観光庁の統計でビジネスホテルの稼働率は高い一方、客室面積はチェーンや価格帯で差が大きく、駅近だから必ず狭いとは言い切れません。

参考資料

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