高級ホテルとシティホテルという種類の線引きがどこにあるのか、迷ったことはないでしょうか。高級ホテル、シティホテル、リゾートホテルといった呼び方は、法律で定められた分類ではなく、規模や立地、サービス内容の違いをもとに業界で慣習的に使われている呼称です。旅館業法という宿泊施設を規律する法律の上では、こうした呼び名による区分は存在しません。
ただし、呼び名に明確な定義がないからといって、意味がないわけではありません。立地や規模、設備の傾向にはある程度の共通点があり、目的に合ったホテルを探すうえでの手がかりにはなります。呼び名だけで格付けまで判断できるわけではない点には注意が必要です。
そこで本記事では、ホテルの呼び分けが何にもとづくのかを、法令と国の統計の両面から解説していきます。宿泊先を選ぶ基準がほしい方は、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかること
- ホテルの呼び分けに公的な定義があるのかどうか
- 国の統計が施設タイプをどう区分しているのか
- 業界団体が独自に持つ基準の内容
- 呼び名から設備を判断できるのかどうか
なぜホテルにはさまざまな呼び名があるのか
ホテルにさまざまな呼び名があるのは、立地や利用目的、想定する客層に合わせて、施設側が独自に打ち出す業態イメージが積み重なってきたためです。ホテルの種類とは、法律上の営業許可の区分ではなく、業界内で共有されてきた慣習的な呼び方の集まりを指します。
ホテルの種類とは、立地や設備、想定する客層をもとにした業界の慣習的な呼び分けです。営業許可の区分には含まれません。ただし観光庁の宿泊旅行統計調査は施設タイプ別に集計しており、2026年7月31日公表の第2次速報値によると、2026年5月の客室稼働率はビジネスホテルが74.5パーセント、シティホテルが73.0パーセント、リゾートホテルが58.4パーセント、旅館が41.5パーセントでした。呼び分けは法令上の定義ではありませんが、統計上は30ポイント以上の差がある実態のある区分です。
法律上の区分は旅館業法の3種類にとどまる
旅館業法第2条では、宿泊施設の営業を旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3種類に区分しています。旅館・ホテル営業は、施設を設けて宿泊料を受け人を宿泊させる営業のうち、簡易宿所営業と下宿営業に当たらないものと定義されています。高級ホテルやシティホテルという呼び名は、この3区分のどれか一つを指す言葉ではなく、旅館・ホテル営業に含まれる施設の中で、さらに業界慣習として枝分かれした呼称にあたります。
業態の呼び名は立地と客層の違いから生まれた
ビジネスホテルは出張などの短期滞在に向けたシンプルな客室構成を中心とする施設、シティホテルは都市部に立地しレストランや宴会場など複数の機能を備える施設、リゾートホテルは観光地に立地し滞在そのものを楽しむための設備を充実させた施設として、それぞれ使われる傾向があります。これらは業界コラムや旅行情報サイトで広く使われている整理であり、施設が自らどの呼称を名乗るかを法律で強制されているわけではありません。
高級かどうかはどうやって判断されているのか
高級ホテルという呼び方についても、世界共通の統一基準は存在しません。かわりに、複数の第三者機関がそれぞれ独自の基準でホテルを評価し、星やダイヤモンド、キーといった記号で格付けを示しています。
アメリカにはAAAのダイヤモンド評価がある
アメリカの自動車協会であるAAAは、ダイヤモンド評価と呼ばれる制度で、清潔さや快適さ、安全性など27項目の基本要件を満たした施設を対象に、1つから5つのダイヤモンドで格付けを行っています。評価は訓練を受けた調査員による予告のない年次調査にもとづいており、無料Wi-Fiやモバイルキーといった技術面の項目も評価基準に含まれるよう更新が続けられています。
ミシュランは2024年からホテルの格付けを始めた
フランスのミシュランは、レストランの星評価で知られていますが、2024年からミシュランキーと呼ばれる新しい格付け制度でホテルの評価を始めています。鍵の数が多いほど高い評価を意味し、1キーは特別な滞在、2キーは素晴らしい滞在、最上位の3キーは最高の滞在を表すとされています。日本のホテルも2024年7月4日にこの制度の対象として初めて評価が公表されており、匿名の調査員が実際に宿泊して評価する点は、AAAの調査方法と共通しています。
呼び名がホテルの格を保証するという通説を検証する
シティホテルやリゾートホテルと名乗っていれば一定の格が保証されているという理解は、正確ではありません。呼び名そのものには第三者による審査が伴わないため、同じ呼び名の中でも実際の設備やサービスの水準には幅があります。
業態の呼称と格付け機関の評価は別の情報源
- 業態の呼称(シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルなど)は施設が自称する慣習的な呼び名であり、審査を伴わない。
- 格付け機関の評価(AAAダイヤモンド、ミシュランキーなど)は第三者の調査員による審査を経て決まる。
- 旅館業法上の営業区分(旅館・ホテル営業など)は、公衆衛生や適正な営業を目的とした行政上の許可区分であり、格の高さを示すものではない。
この3つは、それぞれ目的も判定主体も異なる別の情報です。高級ホテルという名乗りだけを見て格を判断するのではなく、格付け機関の評価があるかどうかや、公式サイトの客室・設備情報を合わせて確認することで、実態に近い判断ができます。
目的に合ったホテルをどう探せばよいか
宿泊先を探すときは、業態の呼称を出発点にしつつ、目的に応じて客室の広さや館内設備、立地条件を絞り込んでいくのが現実的な進め方です。出張なら駅からの距離と客室の機能性、休暇なら館内施設の充実度というように、優先順位を先に決めておくと選びやすくなります。
格付け機関の評価を参考にする場合は、その評価がいつ実施され、どの基準にもとづくものかを確認しておくと、古い評価や国ごとに異なる基準を混同せずに済みます。
まとめ
- 高級ホテルやシティホテル、リゾートホテルという呼び名は法律上の区分ではなく、業界慣習にもとづく呼称です。
- 旅館業法上の宿泊施設の区分は、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3種類にとどまります。
- ホテルの格を客観的に示す仕組みとしては、AAAのダイヤモンド評価やミシュランキーなど第三者機関の格付けがあります。
- 業態の呼称、格付け機関の評価、旅館業法上の区分は目的が異なる別の情報であり、混同しないことが実態に近いホテル選びにつながります。
参考資料
- 厚生労働省『旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条』: 旅館業法
- AAA『AAA Diamond designations(2026年8月時点)』: AAA Diamond designations, Travel with Someone You Trust
- Michelin Guide『Michelin Guide Ceremony 京都・大阪 発表関連ページ(2024年12月19日)』: Michelin Guide Ceremony
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