山翠楼が告知した「65歳以上限定・選べるお土産付きプラン」は、売店収益と滞在満足の両方を伸ばしやすい設計が見えます。宿泊単価を上げる“値上げ”ではなく、体験の納得感を積み上げる発想として、旅館・ホテルの企画や現場運用に落とし込みやすい内容です。
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本記事のポイント
- 山翠楼の「選べるお土産」を、売店と宿泊をつなぐ設計として分解する
- 観光庁の統計から、宿泊旅行の単価と需要の動きを押さえ、シニア施策の背景を整理する
- 山翠楼型プランを導入する際の、フロント運用・在庫・従業員エンゲージメントの要点をまとめる
発表内容の整理


奥湯河原温泉の山翠楼は、65歳以上の利用者を対象に「選べるお土産付きプラン」を用意した。お土産は「北海道の味覚」「湯河原の銘品」「山翠楼オリジナル商品」の3カテゴリから選択でき、特典は1室につき1品としている。
利用条件として、チェックイン時に年齢確認を行い、年齢が分かる証明書の持参を求める。65歳以上が1名でも同室にいれば、同行者(大人)も同プランの対象に含める運用を示した。
冬の湯河原滞在の余韻を自宅でも楽しめる点を訴求し、旅の思い出を持ち帰る体験として位置づけている。
出典:PR TIMES『【奥湯河原温泉 山翠楼SANSUIROU】65歳以上の方限定 選べるお土産付きプラン販売』 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001813.000019483.html
宿泊業にとってのポイント
山翠楼の「お土産同梱」が売店収益に効く理由
山翠楼の狙いは、売店の“追加購入”に依存せず、宿泊商品に価値を束ねて納得感を作る点にあります。お土産を同梱すると、滞在中の購買導線が弱い日でも、売上が読める構造になりやすいです。
さらに「選べる」にすることで、贈り物・自家用の用途差を吸収できます。固定の土産より不満が生まれにくく、クレームの芽も減らしやすい運用です。
シニア向け体験設計とクチコミの作り方
65歳以上に絞ると、同行者が“お祝い旅行”や“親孝行旅行”を組み立てやすくなります。山翠楼のように「旅の思い出を持ち帰る」要素を明確にすると、滞在後の会話が生まれ、クチコミにも乗りやすい傾向が出ます。
シニア施策は、派手な特典よりも「説明が分かりやすい」「受け取りがスムーズ」などの基本品質が効きます。ここを丁寧に整えると評価が崩れにくい印象です。
山翠楼の運用で増える現場タスクと整え方
山翠楼の運用で増えるのは、年齢確認、土産選択の案内、在庫引当、受け渡し管理です。現場が忙しい日は、チェックインの渋滞や説明のばらつきが起きやすくなります。
対策として、選択肢を「3カテゴリ+各2〜3品」程度に絞り、説明の型を作っておくと回ります。売店スタッフとフロントの役割分担も先に決めておくと安心です。
旅館の従業員エンゲージメントを守る導線
特典運用は“仕事が増える施策”になりがちです。山翠楼型の施策でも、現場にとってのメリットを見える化しておくと、従業員エンゲージメントが落ちにくくなります。
例えば、土産の説明カードを整備して口頭説明を短縮する、繁忙日の受け渡しはチェックアウトに寄せるなど、負荷を平準化する工夫が効きます。小さな改善が積み上がる職場ほど、企画が継続します。
背景と理由の整理
観光庁データで見る宿泊旅行の単価上昇と余地
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2024年 年間値(確報)」では、日本人国内旅行の消費額が25兆1,536億円、うち宿泊旅行が20兆3,325億円と整理されています。加えて、宿泊旅行の1人1回当たり旅行支出(旅行単価)は69,362円/人と示されています。
宿泊旅行の単価が上がる局面では、値引きよりも“価値の束ね方”が効きやすくなります。山翠楼の「お土産同梱」は、単価の説明材料を増やす手段として読み替えられます。
宿泊旅行統計調査が示す国内需要の厚み
観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年10月・第2次速報、2025年11月・第1次速報)」では、2025年10月の延べ宿泊者数が5,861万人泊、うち日本人が4,213万人泊と整理されています。11月も日本人が4,251万人泊で、国内需要がボリュームゾーンである構図は変わりません。
この状況では、国内のリピーター層をどう作るかが効いてきます。山翠楼がシニアを明確に切るのは、狙う客層を絞って体験の質を上げる発想とも見られます。
総務省人口推計が示す65歳以上のボリューム
総務省統計局「人口推計 2025年(令和7年)11月報」では、2025年11月1日現在の65歳以上人口が3,620万4千人と示されています。総人口に占める割合も29.4%で、旅館が“年齢軸”で商品を作る意味が増しています。
市場が大きいほど、施策の成否を分けるのは細部の運用です。山翠楼の年齢確認や同行者の扱いまで明記した点は、運用設計を重視したサインとして参考になります。
内閣府白書が示す「65〜74」と「75以上」の違い
内閣府「令和7年版 高齢社会白書(概要版)」では、2024年10月1日現在の65歳以上人口が3,624万人、高齢化率が29.3%と整理されています。さらに、65〜74歳が1,547万人、75歳以上が2,078万人で、75歳以上が上回る点も示されました。
シニア施策は一枚岩ではありません。山翠楼のように「年齢確認を行う」運用を前提にするなら、歩行負担や受け渡しの手間を減らす設計がより重要になります。
ニュース内容の解説
山翠楼の65歳以上限定プランの骨子
山翠楼のプラン設計はシンプルです。「65歳以上が1名でもいれば対象」「1室につき土産1品」「チェックインで年齢確認」という3点で、運用の境界線が明確になっています。
境界線が明確だと、現場判断が減ります。結果として説明のぶれが小さくなり、体験品質が安定しやすい構造です。
山翠楼の「選べるお土産」3カテゴリの設計
山翠楼は、土産を地域・グループ・オリジナルの3カテゴリに分けています。カテゴリ設計には「選びやすさ」と「物語性」を両立させる効果があります。
旅館側は、仕入れ先の分散や在庫の偏り対策も取りやすくなります。季節による供給変動がある商品でも、カテゴリ内で差し替えが可能です。
| 項目 | 山翠楼の設計(整理) | 旅館運用での読み替え |
|---|---|---|
| 付与単位 | 1室につき1品 | 原価管理がしやすい |
| 選択肢 | 3カテゴリから選ぶ | 迷いを減らし満足を上げやすい |
| 価値訴求 | 思い出を持ち帰る | クチコミ要素を作りやすい |
年齢確認と同行者適用のオペレーション
山翠楼はチェックイン時の年齢確認を明記しています。年齢確認は、言い方一つで不快感が出るため、案内文言の統一が欠かせません。
また「65歳以上が1名でもいれば同行者(大人)も対象」という条件は、予約導線を広げます。家族旅行の意思決定者が若い場合でも、山翠楼の特典が選ばれる理由になり得ます。
山翠楼型プランを支える在庫と仕入れの考え方
山翠楼型のプランで詰まりやすいのは在庫です。選択式の特典は、欠品が発生すると満足度が落ちやすく、代替提案にも時間がかかります。
欠品を避けるには、土産の構成を「通年定番+季節限定」に分け、代替の基準を先に決めておくと回ります。受け渡しをチェックインに固定せず、チェックアウト時に寄せる運用も選択肢もあります。
自社への活かし方のヒント
山翠楼の発想を自社に置き換えるチェックリスト
山翠楼の考え方を自社に置くと、次の確認が役立ちます。
- シニア施策の対象年齢と、同伴者の扱いを文章で固定できるか
- 特典を「地域性」「オリジナル」「定番」のようにカテゴリ化できるか
- 受け渡しタイミング(イン/アウト)を混雑に合わせて調整できるか
売店・客室・フロントをつなぐシニア対応の段取り
山翠楼型の施策は部門連携が肝です。フロントが説明し、売店が在庫を持ち、客室が滞在価値を補強する流れになります。
段取りとしては、説明カードを売店と共通化し、想定問答を短く揃えると強いです。現場が迷うポイントが減り、従業員エンゲージメントの低下も防ぎやすくなります。
山翠楼のような特典運用で起きやすい落とし穴
落とし穴は「選べる」が原因で発生する行列です。チェックインが重なる時間帯に土産選択を行うと、説明が長引きやすくなります。
予約時に希望カテゴリを聞く、紙の選択票を渡して後で回収するなど、分散させる設計を入れておくと安心です。欠品時の代替ルールも、言い回しまで決めておくと現場が困りません。
KPIは客単価より「満足度の要因」を追う
山翠楼型の施策は、売上だけを見ると評価を誤りやすいです。特典を付けた分、売店単体の客単価は下がる場合もあります。
おすすめは「特典を理由に選ばれた予約比率」「チェックアウト後のコメント内容」「次回予約の動機」など、満足度の要因を追う設計です。数字が揃うと、企画が継続しやすくなります。
まとめ
- 山翠楼の「選べるお土産」は、売店と宿泊商品を束ねて納得感を作る設計として参考になる
- 観光庁の統計では宿泊旅行の単価が上がっており、付加価値の説明材料を増やす施策が効きやすい
- 年齢確認・欠品対応・受け渡し導線まで決めておくと安心です
- 受け渡しをチェックアウトに寄せる運用も、混雑対策として有効という選択肢もあります
企業情報
- 会社名:野口観光マネジメント株式会社
- 施設名:山翠楼 SANSUIROU(奥湯河原温泉)
- 所在地:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上673
- 支配人:石田圭司
- 公式サイト:https://sansuirou.co.jp/
参考資料
- 観光庁『旅行・観光消費動向調査 2024年 年間値(確報)』(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001864689.pdf)
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(2025年10月・第2次速報、2025年11月・第1次速報)』(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001974302.pdf)
- 総務省統計局『人口推計 2025年(令和7年)11月報』(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202511.pdf)
- 内閣府『令和7年版 高齢社会白書(概要版) 第1章 高齢化の状況』(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/gaiyou/pdf/1s1s2s.pdf)


