エッセイ

従業員のモチベーションと感謝の関係|2種類の感謝が職場を変える

従業員のモチベーションに感謝が影響することはデータでも示されています。ただ、上司・組織からの感謝と顧客からの感謝は、動機の方向性が異なるように感じています。2種類の感謝の違いと、それぞれが職場に与える影響について、個人的な経験とデータをもとに考えます。
CoCoRo編集部

従業員のモチベーションを上げる方法として、給与改善や福利厚生の充実がよく語られます。

もちろん、それらは重要です。

ただ一方で、「感謝」がモチベーションに大きく影響するという研究や調査も、近年増えてきています。

感謝されると嬉しい。それは多くの人が感覚的に理解していることだと思います。

ただ、個人的に少し気になっていることがあります。

「感謝」という言葉でひとまとめにされていますが、上司や組織からの感謝と、顧客からの感謝は、本当に同じものなのでしょうか。

自分自身の経験を振り返ると、この2つは似ているようで、動機の方向性が少し違うように感じています。

感謝がモチベーションに影響するとはどういうことなのか。そして感謝の種類によって、何がどう変わるのか。データと個人的な経験を交えながら考えてみたいと思います。

感謝がモチベーションに影響するという事実

やりがいの1位は「お礼や感謝の言葉」だった

仕事においてやりがいを感じる瞬間は何か。

エン・ジャパンが2018年に9,000名を対象に実施した「仕事のやりがいと楽しみ方」調査によると、「仕事においてやりがいを感じることは何ですか」という質問に対し、1位となったのは「お礼や感謝の言葉をもらうこと」で、62%という結果でした。

2位の「仕事の成果を認められること」(56%)や、3位の「目標を達成すること」(50%)を上回り、感謝の言葉が最も多くの人にやりがいをもたらしているという結果です。

これは接客業に限った話ではありません。業種を問わず、「感謝される」という体験が仕事を続ける上で大きな意味を持っているようです。

接客業のやりがいについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

感謝は給与より強い動機になることがある

Achieversの2024年の調査によると、「72%の従業員が30%の昇給よりも感謝される職場を選ぶ」という結果が出ています。(参考:worldatwork.org)

もちろん、給与が生活の基盤であることは変わりません。給与が著しく低ければ、感謝だけで働き続けることは難しいでしょう。

ただ一方で、給与が一定水準を満たした上では、「感謝されているかどうか」が仕事への意欲に大きく影響することがあるようです。

金銭的な報酬と感情的な報酬は、どちらか一方だけで十分というわけではなく、両方が一定水準で揃ったときに、人は仕事に意欲的に向き合えるのかもしれません。

ただし「感謝」を一括りにして良いのか

ここまで「感謝がモチベーションに影響する」という話をしてきましたが、個人的に少し引っかかることがあります。

「感謝」という言葉でひとまとめにされていますが、上司や同僚からの感謝と、顧客からの感謝は、果たして同じものなのでしょうか。

自分自身の経験を振り返ると、この2つは似ているようで、動機の方向性が少し違うように感じています。

上司・組織からの感謝が生む動機

「続けよう」だけではなく「助けよう」という気持ちも生まれる

上司や同僚から感謝される経験は、「この職場で続けていこう」という方向性に働くことが多いように思います。

ただ、それだけではないとも感じています。

感謝によってポジティブな感情が生まれると、「この人たちのために助けよう」という利他的な気持ちも出てきやすくなる気がします。

例えば、飲食店でアルバイトをしていた頃、急なシフトの欠員が出たとき、職場の雰囲気が良い時期はそれほど抵抗なく「入れますよ」と言えたことがありました。もちろん、自分に予定がなく、給与が発生することが前提ではあります。ただ、それだけではなく、「この職場を支えたい」という感覚が少なからずあったように思います。

感謝が積み重なると、義務感ではなく自発的な協力につながることがあるのかもしれません。

貸し借りが循環する職場は一体感が生まれやすい

一方で、こうした自発的な協力が続くためには、「貸し借りがちゃんと返ってくる」という感覚も重要だと思っています。

シフトに入ってあげた、フォローしてあげた。それが一方通行で終わってしまうと、徐々に「損している」という感覚が積み重なっていきます。

逆に、上司や仲間がその貢献をちゃんと見ていて、何らかの形で返してくれると感じられると、職場への信頼感や一体感が生まれやすくなる気がします。

これは単純な損得の話ではなく、「この職場では自分の行動が見られている」という感覚が、働く意欲に影響しているのだと思います。

感謝が金銭的メリットと結びついたとき何が起きるか

感謝が言葉だけで終わらず、何らかの金銭的なメリットと結びついたとき、モチベーションはどう変わるのでしょうか。

給与の大幅な引き上げでなくても構いません。例えば、頑張りに応じたインセンティブ、少額のボーナス、あるいはまかないや福利厚生のような形でも、「感謝が形になった」と感じられる仕組みがあると、働き続ける動機が強くなることがあります。

感謝は言葉だけでも十分に嬉しいものですが、それが何らかの形で可視化されたとき、「自分の貢献が組織にちゃんと届いている」という実感につながりやすいのかもしれません。

顧客からの感謝が生む動機

「もっと良くしたい」という方向性に働く

顧客からの感謝は、上司や組織からの感謝とは少し異なる方向性を持っているように感じています。

上司からの感謝が「この職場に留まろう」という動機に働きやすいとすれば、顧客からの感謝は「もっと良いサービスをしたい」という方向性に働きやすい気がします。

お客様から「ありがとう」と言われたとき、単純に嬉しいだけではなく、「次はもっとこうしてみよう」「あの対応はもう少し改善できるかもしれない」という思考が自然と生まれることがあります。

顧客の反応は、サービス改善のフィードバックとして機能することがあるのかもしれません。

個人の気づきはチームに伝わって初めてスケールする

ただ、顧客からの感謝をきっかけにした気づきは、個人の中だけに留まってしまうと、そこで止まってしまいます。

飲食店でアルバイトをしていた頃、薬をテーブルに置いているお客様に気づいたとき、常温の水をそっとお持ちすると、とても喜んでいただけたことがありました。

その話をメンバーに共有したところ、同じ対応をしたスタッフも同様に喜ばれたと教えてくれました。

マニュアルに書いてあったわけではありません。顧客の反応から生まれた気づきが、共有されることでチーム全体の対応として広がっていったのだと思います。

個人が感謝をきっかけに得た気づきは、チームに伝わって初めてスケールします。逆に言えば、共有されなかった気づきは、その人が離職した瞬間に失われてしまうことがあります。

感謝が生まれた理由を再構築し、仕組みとして定着させられるか

では、こうした気づきをどうすれば組織として活かせるのでしょうか。

一つの方向性として、「感謝が生まれた場面を再構築し、ルールや文化として定着させる」ことがあるように思います。

例えば、顧客から良い反応があった対応を記録し、チームで共有する場を設ける。あるいは、そうした対応が評価される仕組みを作る。

個人の感性から生まれた気づきを、組織として受け取れる状態にできるかどうかが、サービスの品質を継続的に高めていく上で重要になってくるのかもしれません。

ただ、これは個人の努力だけでは難しい部分でもあります。共有しやすい雰囲気があるか、それを受け取って活かそうとする組織側の姿勢があるか。そうした環境が整っているかどうかが、大きく影響するように思います。

2種類の感謝が循環する職場とはどういう状態か

組織からの感謝と顧客からの感謝が重なるとき

上司・組織からの感謝と、顧客からの感謝。この2つが同時に存在する職場は、どういう状態なのでしょうか。

組織からの感謝は「続けよう」「助けよう」という動機を生みやすく、顧客からの感謝は「もっと良くしたい」という動機を生みやすい。

この2つが重なるとき、「この職場で、このお客様のために、より良いサービスをしたい」という状態が生まれやすくなるのかもしれません。

どちらか一方だけでは、方向性が偏ってしまうことがあります。組織からの感謝だけでは、現状維持の方向に留まりやすい。顧客からの感謝だけでは、個人の努力で完結してしまいやすい。

両方が循環している職場では、定着率とサービス品質が同時に高まる可能性があるように思います。

仕組み化されていない感謝は埋もれやすい

ただ現実的には、感謝が自然に循環する職場はそれほど多くないかもしれません。

顧客からの感謝は、その場限りで終わることが多いです。お客様が「ありがとう」と言ってくれても、それが組織として記録されたり、評価に繋がったりする仕組みがなければ、個人の記憶の中に留まるだけになります。

組織からの感謝も同様で、日々の忙しさの中で後回しになりやすい部分でもあります。

感謝は自然発生するものでもありますが、仕組みとして設計されていないと、埋もれやすいものでもあるのかもしれません。

感謝が設計された職場と、されていない職場の差

感謝が仕組みとして設計されている職場とそうでない職場では、長期的に見てどのような差が生まれるのでしょうか。

定着率、サービス品質、チームの一体感。これらは数字として見えにくい部分でもありますが、じわじわと差が広がっていく部分でもあるように思います。

感謝を「自然に任せる」のではなく、「設計する」という発想が、これからの職場づくりには必要になってくるのかもしれません。

もちろん、感謝を強制したり制度化しすぎると、形骸化するリスクもあります。大切なのは、感謝が生まれやすい環境を整え、それが届きやすい仕組みを作ることなのかもしれません。

まとめ

感謝はモチベーションに影響するが、種類によって方向性が違う

エン・ジャパンの2018年の調査では、仕事のやりがいの1位は「お礼や感謝の言葉をもらうこと」でした。感謝がモチベーションに影響することは、データとしても示されています。

ただ、感謝には種類があるように感じています。

上司・組織からの感謝は「続けよう」「助けよう」という方向性に働きやすく、顧客からの感謝は「もっと良くしたい」という方向性に働きやすい。

これはあくまで個人的な感覚ですが、感謝を一括りに捉えるよりも、その種類と方向性を意識することで、職場設計のヒントが見えてくるのではないかと思っています。

だからこそ両方を意識した設計が必要なのかもしれない

組織からの感謝が金銭的なメリットと結びつく仕組みがあること。顧客からの感謝が個人の中に留まらず、チームや組織として受け取れる仕組みがあること。

この2つが整ったとき、定着率とサービス品質が同時に高まる職場が生まれやすくなるのかもしれません。

感謝は、言葉だけでも十分に価値があります。ただ、それが設計された形で届く仕組みがあると、職場全体に与える影響はより大きくなるのではないでしょうか。

CoCoRo編集部
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サービス業支援メディア運営チーム
CoCoRo編集部は、「感謝の気持ちをカタチにする」ことをテーマに、サービス業界における新しい価値創造を目指す情報発信チームです。​デジタルギフティングや従業員エンゲージメントの向上に関する最新トレンド、導入事例、業界インタビューなど、現場で役立つ実践的なコンテンツをお届けしています。​おもてなしの心をデジタルでつなぐCoCoRoの世界観を、より多くの方々に知っていただくため、日々情報を発信しています。​
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