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おにぎりはなぜ海外で人気?欧州で“焼きおにぎり”が支持される理由を解説

おにぎりが海外、とくに欧州で人気を集める理由を歴史・構造・味覚・文化から解説。焼きおにぎりが欧州のオーブン文化と相性が良い背景や、コロナ後の食行動の変化まで詳しく紹介します。
CoCoRo編集部

なぜおにぎりは海外で人気なのか?

歴史・起源・コロナ後の食行動から読み解く“世界食化”の理由

日本ではおにぎりはあまりにも日常的な存在で、深く語られる機会は多くありません。しかし海外では近年、おにぎりが「軽くてヘルシーな日本食」として注目されるだけでなく、日本の生活文化を象徴する食のデザインとして価値づけられ始めています。専門店が欧米の都市に登場し、SNSでは“Japanese rice ball”が取り上げられ、家庭で手作りする人も増えました。こうした変化は単なるブームではなく、世界の食文化の変化、日本文化への理解の進展、そしてコロナ後の価値観の転換が重なった結果です。

おにぎりは米、塩、海苔という最小限の素材で成立しながらも、驚くほど多くの文化的意味を内包しています。歴史、携帯性、家庭の味、技術革新、訪日体験、そしてコロナ後の食行動の変化。これら複数の層が重なり、おにぎりは“世界が求める現代的な食構造”と一致しました。本記事では、おにぎりがどのように海外で受け入れられ、なぜ今これほど支持されているのかを丁寧に紐解いていきます。


この記事の目次
  1. おにぎりとは何か:歴史・起源・日本文化における位置づけ
  2. おにぎりが海外で人気になった理由:普及を後押しした三つの波
  3. コロナが変えた食行動:世界が“シンプルで軽い食事”を求め始めた理由
  4. おにぎりが世界で受け入れられた理由:構造と味の科学
  5. 焼きおにぎり人気の構造:欧州の食文化と自然に結びついた理由
  6. 海外のおにぎり人気を支える文化的・社会的要因
  7. FAQ:おにぎりの海外受容に関するよくある質問
  8. まとめ

おにぎりとは何か:歴史・起源・日本文化における位置づけ

弥生〜奈良時代の握飯(にぎりめし)

おにぎりの原型は非常に古く、弥生時代から奈良時代の遺跡に残された炭化米の塊や、手で圧縮した形跡から確認できます。これらは炊いた米を手で握り、携帯しやすいように固めた「握飯(にぎりめし)」とみられています。具材や海苔はなく、塩が使われるかどうかも明確ではありませんが、米を“握って形にする”という発想はすでに存在していました。これは、農作業や移動が多い時代に、効率的にエネルギーを補給するための合理的な工夫だったと考えられています。

武士の携帯食として発達したおにぎり

中世に入ると、おにぎりは武士や兵士の携帯食として広く使われるようになります。竹の皮に包み、片手で食べられ、素早く腹を満たせるおにぎりは、戦場における機能的な食べ物として重宝されました。記録にも、戦場へ向かう武士が腰に握飯を下げている様子が描かれており、保存性と携帯性が重視されていたことが伺えます。まだ海苔を巻く文化は一般化していませんでしたが、おにぎりの“合理性”はこの時点でほぼ確立していました。

江戸の弁当文化と家庭料理としての定着

江戸時代になると、おにぎりは戦場の食べ物から庶民の家庭料理へと役割を広げます。花見、旅、仕事場への弁当など、生活のさまざまな場面でおにぎりが作られ、家庭の味として親しまれました。梅干し、鮭、昆布などの具材は保存性が高いことから広まり、現在の「定番のおにぎり」の基礎がこの時代に形成されています。おにぎりは単なるエネルギー源ではなく、“家で作った温かさを持ち運べる食べ物”として文化的な意味を帯びていきました。

コンビニが現代型おにぎりを完成させた

おにぎりが全国レベルの軽食として決定的な存在になったのは、1970年代以降のコンビニエンスストアの普及によるものです。特に、海苔が時間とともに湿気ないよう工夫された包装技術は画期的で、日本人の間でも強い驚きをもって受け入れられました。家庭では難しい“パリッとした海苔のおにぎり”を誰でも手軽に楽しめるようになり、おにぎりは家庭料理から国民食へと進化します。この技術と多様な具材展開こそが、後に訪日観光客がコンビニで衝撃を受ける理由にもつながっていきます。


おにぎりが海外で人気になった理由:普及を後押しした三つの波

第一の波:寿司文化の世界的普及

1990年代以降、寿司は世界の主要都市で爆発的に広まりました。寿司の普及は、おにぎりへの心理的ハードルを大きく下げる働きをします。特に海苔は、かつて多くの文化圏で“黒い食べ物”への抵抗がありましたが、カリフォルニアロールを筆頭に、寿司がヘルシーでおしゃれな食品として受け入れられるようになると、海苔も同様に肯定的に捉えられるようになりました。寿司を通じて“米と海苔の組み合わせ”が理解され、おにぎりが受け入れられる素地が整っていったのです。

第二の波:訪日観光客の“コンビニおにぎり体験”

2000年代から2019年にかけて訪日観光客が増えると、多くの旅行者は日本のコンビニ文化に感銘を受けました。その象徴がコンビニおにぎりです。海苔が最後までパリッと保たれる包装構造、ツナマヨや明太子など外れがない具材、価格の安さ、品質の安定性。これらすべてが旅行者の期待を超え、多くのSNS投稿や動画によって世界に共有されました。「日本のコンビニは世界最高の軽食を提供する」という評価は、この時期に確立されました。

第三の波:コロナ後の食行動の変化

2020年以降、世界は大きな食文化の転換を迎えました。外食が減り家庭で食事を作る時間が増えたこと、免疫意識の高まり、加工食品への疲れ、グルテンフリー志向などが重なり、米への注目が再び高まりました。その中で、おにぎりは手軽で失敗しにくく、必要な材料も少ないことから“最も簡単な日本食”として高い支持を受けました。また、リモートワークが普及したことで、片手で食べられ、常温でも美味しいというおにぎりの特性は、現代の働き方とも一致しました。


コロナが変えた食行動:世界が“シンプルで軽い食事”を求め始めた理由

コロナ禍は、世界の食行動を大きく変えました。
欧米では外食が制限され、家庭料理が日常の中心となり、“食事を難しくしたくない”という価値観が生まれました。これは日本でも部分的には見られましたが、欧米ではより急激で広範囲に及びました。

特に欧米の人々はそれまで、

  • 外食文化
  • 大皿料理
  • パン・肉中心の重い食事
    に依存する傾向が強く、家庭で毎日調理する習慣は比較的弱いものでした。

しかしコロナ以降、次のような変化が生まれました。

  • 加工食品ではなく、素材を活かした簡単な料理を求める
  • 消化負担の少ない食事を好む
  • 手軽で、片付けが少ないメニューを選ぶ
  • 健康を意識した“軽い食事”が増える

この流れが、あらゆる国の食文化に影響を与え、日本食への関心を再び高める結果となりました。

家庭での料理回数が増えた欧米の人々が求めたのは、
「材料が少なく、複雑ではなく、それでいて満足感がある料理」
です。

そこで選ばれたのが、寿司でも味噌汁でもなく、
“材料が少なくて再現しやすい日本食=おにぎり”
でした。

米を炊くことさえできれば作れ、手間がかからず、アレンジがしやすい。
この「簡単に取り入れられる和食」である点が、コロナ後のおにぎり人気を押し上げた大きな理由です。


おにぎりが世界で受け入れられた理由:構造と味の科学

海外でおにぎりが受け入れられた理由には、偶然ではなく「構造的な普遍性」があります。
それは、味覚・調理性・携帯性など、世界の誰もが理解しやすい要素によって成立しています。

握ることで生まれる“空気の層”が軽さを作る

おにぎりの美味しさは、単に味だけではありません。
“握る”という行為によって、米粒の間に自然な空気層が生まれ、これが食感に軽さを与えます。

欧州のパン文化における

  • 気泡の多いパン=軽くて高品質
    という価値観と相性が良く、
    おにぎりの“ふわっとした食感”は意外なほど理解されやすいものです。

海苔の香りと塩の浸透が作る奥深い旨味

海苔はゆっくり湿り、香りを放ちながら米と一体化していきます。
塩が米の甘味を引き立てる構造は非常にシンプルですが、味のバランスが完成しているため、海外でも“旨味のある軽食”として評価されます。

海苔は欧米で近年“スーパーフード扱い”で、

  • ミネラル
  • タンパク質
  • 食物繊維
    が豊富であることから、健康食品としての認知も広がっています。

常温で美味しく、携帯できる主食は希少

世界の主食の多くは、時間経過に弱い性質があります。

  • パン → 乾燥
  • パスタ → 伸びる
  • 米料理 → パサつき

おにぎりはその中で、
“冷めても美味しい希少な主食”
として価値があります。

常温で美味しいという特徴は、
ランチ、軽食、アウトドア、学校、職場など、多様な場面で評価されるポイントです。


焼きおにぎり人気の構造:欧州の食文化と自然に結びついた理由

焼きおにぎりは、日本では「居酒屋の炭火焼き」または「冷凍食品」のイメージが強く、家庭料理としてはそこまで定着していません。しかし欧州においては、むしろ“家庭で作りやすい日本食”として人気があります。

これは偶然ではなく、欧州の文化と生活環境が焼きおにぎりに非常に適合しているためです。

欧州は家庭にオーブンが標準装備されている

欧米圏では、家庭の多くに大型オーブンが備わっており、毎日の料理でも頻繁に使用されます。

焼きおにぎりはオーブン調理と非常に相性が良く、

  • 形が崩れにくい
  • 均一に焼ける
  • 大量に作りやすい
    という利点があります。

日本のようにフライパンや網で焼く必要がなく、欧州の家庭環境では「簡単に作れる日本食」になっています。

欧州は“焼き目=美味しさ”という文化が強い

欧州料理の中心は、ロースト・ベイク・グリルです。

  • パンの焼き目
  • グリル野菜
  • ローストミート

焦げ目は“香り・旨味・焼きの深さ”を象徴する美味しさの証です。

醤油や味噌を塗って焼いた焼きおにぎりは、欧州の焼き文化にぴったり一致します。

味噌と醤油は発酵食品で、欧州の味覚と相性が良い

特にフランス・イタリア・ドイツなどは発酵食品文化が強く、

  • チーズ
  • ハム
  • パン
    との親和性により、味噌や醤油の香ばしい風味が理解されやすい背景があります。

焼きおにぎりは、日本では“素朴な家庭的な味”ですが、欧州では
「新しいベイク料理」
として受け取られています。

日本で焼きおにぎりが家庭に定着しなかった理由

日本はオーブン文化が弱く、家庭で焼きおにぎりを作るのは手間がかかります。

  • オーブン普及率が低い
  • 焼き面積が小さい
  • 焦げやすい
  • 冷凍食品が優秀すぎる

これらが、家庭で焼きおにぎりが広まらなかった理由です。

つまり、
焼きおにぎりは“欧州の家庭の方が作りやすい日本食”
という逆転現象が起きているのです。


海外のおにぎり人気を支える文化的・社会的要因

おにぎりが海外で受け入れられるのは、味・構造だけではありません。
その背景には、日本文化そのものへの評価や、生活者の変化も影響しています。

ミニマリズムとしての美しさ

おにぎりは「白・黒・三角」という非常に簡素な構成で、ミニマルデザインとして評価されます。
日本の簡潔さを象徴する食品として、SNSでも広がりやすい特徴を持ちます。

“日本体験”と結びつくコンビニおにぎり

訪日外国人が日本で最初に驚くものの一つがコンビニです。
特におにぎりは、

  • パリッとした海苔
  • 種類の豊富さ
  • 価格の安さ
  • 味の安定性

から“Japan Quality”の代表として非常に強い印象を残します。

帰国後におにぎりを探す人が増えるのは、この体験が大きい理由です。

SNS・視覚文化との相性

三角形の形、具材の断面、包装の工夫など、SNS映えしやすい特徴も人気につながっています。


FAQ:おにぎりの海外受容に関するよくある質問

Q1:本当に海外で人気なの?
都市部を中心に、おにぎり専門店が増えています。家庭料理として作られるケースも増加中です。

Q2:海外で一番人気の具材は?
ツナマヨ、鮭、照り焼きチキンなど、味が分かりやすいものが上位です。

Q3:海苔の黒さに抵抗はない?
寿司文化の普及により、海苔は“健康的な食材”という認識が広がり、抵抗は大きく減っています。

Q4:焼きおにぎりが欧州で人気なのはなぜ?
オーブン文化、焼き目の価値観、発酵食品との親和性が重なり、家庭で作りやすいためです。

Q5:コロナがなかったらおにぎりは世界で流行らなかった?
訪日体験が基盤にありましたが、コロナ後の“簡単で軽い食事ニーズ”が普及の追い風になったのは事実です。


まとめ

おにぎりは、弥生時代の握飯から始まり、家庭料理、弁当文化、コンビニ文化を経て進化した食べ物です。その歴史は長いですが、海外で評価されている理由は“日本的でありながら普遍的”という点にあります。

さらに焼きおにぎりは、欧州文化と驚くほど相性が良く、日本では定着しなかった理由すら欧州では利点に転じています。

おにぎりは今後も世界で定着していく可能性が高く、日本人が当たり前だと思ってきた食べ物が、世界の食卓で新しい価値を帯びていく時代が訪れつつあります。

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