ハイアットは、日本初導入となるラグジュアリーブランド「アリラ」を箱根・仙石原に展開し、「アリラ 仙石原 箱根」を2028年に開業する計画を発表しました。富士箱根伊豆国立公園の自然、温泉、スパ、地産地消の食、建築・インテリア・ランドスケープを一体で設計する計画で、国内外の上質な滞在需要を見据えた動きとして注目されます。
本記事では、発表内容を宿泊事業者向けに整理し、箱根という成熟観光地で新しいラグジュアリーリゾートがどのような示唆を持つのかを、持続可能な観光、地域資源の見せ方、ウェルネス体験の設計という観点から読み解きます。
観光庁(国土交通省)『サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集』では、持続可能な観光を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。
本記事のポイント
- 「アリラ 仙石原 箱根」は、ハイアットが日本で初めて導入を計画するアリラブランドのホテルで、2028年に箱根・仙石原で開業予定です。
- 全60室に天然温泉の浴室を設け、露天風呂、スチームバス、サーマルプール、スパトリートメントを組み合わせる構成が示されています。
- 自然環境、地域文化、持続可能性をブランド体験の中心に置く点は、成熟観光地における高付加価値化の実務にも参考になる取り組みです。
発表内容の整理

発表によると、「アリラ 仙石原 箱根」は、株式会社フジタとハイアットの関連会社が締結した契約に基づき、ハイアットが運営する計画です。アリラはハイアットのラグジュアリー・ポートフォリオに属し、自然環境との調和、文化への敬意、持続可能性を重視するブランドとして位置づけられています。
計画地は富士箱根伊豆国立公園内の仙石原です。コンセプトは「自然との融合・自然の恵みに感謝する」とされ、建築デザインに隈研吾建築都市設計事務所、インテリアデザインにSIMPLICITY、ランドスケープデザインにプレイスメディアが参画します。客室数はスイート11室を含む60室で、全客室に天然温泉の浴室を備える予定です。
また、ハイアットは日本国内で現在22ホテルを展開しており、アリラの導入により国内で10ブランド体制になるとしています。今後10年で宿泊施設数の倍増を計画している点からも、日本市場を長期的な成長領域として見ていることがうかがえます。
出典:PR TIMES ハイアット、日本初となるラグジュアリーブランド「アリラ」の導入を計画
仙石原の自然を滞在価値に変える設計
アリラ 仙石原 箱根の特徴は、単に自然に囲まれた立地を訴求するのではなく、仙石原のススキ、金時山の借景、四季の草花、温泉を滞在体験の骨格に据えている点にあります。客室、スパ、食、ランドスケープが同じ方向を向くことで、宿泊者は施設内で完結する快適さだけでなく、地域に身を置いている実感を得やすくなります。
観光庁の「持続可能な観光地域づくりに向けた取組」では、地域が持続可能な観光地マネジメントを進めるためのガイドラインとして、日本版持続可能な観光ガイドラインが示されています。今回の計画が掲げる自然環境との調和や地域文化への敬意は、国立公園内の宿泊施設に求められる配慮を、ブランド体験として来訪者に伝える方向性と重なります。
温泉とスパを組み合わせたウェルネス需要への対応
全客室に天然温泉の浴室を設ける構成は、箱根らしさを客室内の滞在時間にまで落とし込むものです。さらに露天風呂、アロマを用いたスチームバス、水着着用で利用するサーマルプール、スパトリートメントを組み合わせることで、国内の温泉文化と海外ゲストにも伝わりやすいウェルネス体験を橋渡しする設計が見えてきます。
観光庁(国土交通省)の「世界的潮流を踏まえた魅力的な観光」は、観光コンテンツの潮流としてウェルネスやネイチャーアクティビティを整理しています。アリラ 仙石原 箱根の計画は、温泉を単独の設備として見せるのではなく、自然、静けさ、身体の回復、食を連続した体験にすることで、滞在単価だけでなく滞在満足の深度を高める示唆を含んでいます。
地域と来訪者の好循環を意識した運営視点
アリラは、持続可能性と文化の尊重をブランドの核に置くと説明されています。1年以上運営しているアリラのホテルがアースチェック認証を取得している点も、環境配慮を理念にとどめず、運営上の基準として扱う姿勢を示すものです。
観光庁(国土交通省)の「サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集」は、地域、来訪者、事業者の三者にとって好循環を生む観光の仕組みを整理しています。箱根のように知名度が高く、来訪者層も幅広い地域では、施設が地域資源を丁寧に扱い、消費だけでなく理解や敬意につながる体験を設計することが、長期的な地域価値の維持にもつながります。
宿泊事業者の実務では、環境配慮を掲げるだけでなく、調達、ガイド、食材、景観保全、スタッフ教育までを一貫して運用に落とし込むことが重要になります。今回の計画は、ブランドの世界観と地域の自然資本を結び、宿泊体験として伝える設計のあり方を考える材料になります。
箱根市場でのブランド導入が持つ意味
観光庁の宿泊旅行統計調査では、2026年2月分の第1次速報値が公表されており、宿泊動向を継続的に把握する基礎資料として位置づけられています。箱根のような成熟した温泉観光地では、国内旅行、訪日旅行、記念日需要、長期休暇需要などが重なり、宿泊施設には多様な期待に応える設計力が求められます。
また、観光庁は2026年5月27日に登録DMO第21弾の募集開始を告知しており、地域単位で観光地経営を進める体制整備は引き続き政策上の重要テーマです。国際ブランドの進出は単独施設の話にとどまらず、地域の交通、体験商品、食、ガイド、周辺宿泊施設との関係にも波及します。新しい宿泊需要を地域全体で受け止める視点は、箱根に限らず多くの観光地で重要になります。
デザイン体制から見える体験づくりの丁寧さ
今回の計画では、建築、インテリア、ランドスケープにそれぞれ専門性の高い設計者が参画します。隈研吾建築都市設計事務所、SIMPLICITY、プレイスメディアという布陣からは、建物単体の印象だけでなく、到着、客室、庭、温泉、食事、眺望までを一つの滞在導線として組み立てようとする意図が読み取れます。
宿泊現場にとっても、空間デザインは開業時の話題化だけでなく、清掃、案内、撮影、季節演出、スタッフの説明力と密接に関わります。仙石原の自然を背景に、余白や静けさをどのように運営へ落とし込むかは、開業後の滞在品質を左右する重要な要素になりそうです。
まとめ
アリラ 仙石原 箱根は、日本初のアリラ導入計画として、箱根・仙石原の自然、温泉、建築、食、スパを重ね合わせたラグジュアリーリゾートを目指すものです。国際ブランドの知見と地域資源を結ぶ計画は、宿泊施設が地域の個性をどのように体験価値へ翻訳するかを考えるうえで、現場でも参考になる取り組みです。
特に、持続可能性をブランドの中心に据えながら、全客室の温泉浴室やスパエリアの設計に落とし込む点には、言葉だけで終わらせない丁寧な体験づくりがうかがえます。2028年の開業に向け、箱根エリアの高付加価値滞在や地域連携の動きにも注目が集まりそうです。
企業情報
- 発表企業:ハイアット チェイン サービス リミテッド
- 関連企業:ハイアット ホテルズ コーポレーション、株式会社フジタ
- 計画施設:アリラ 仙石原 箱根
- 開業予定:2028年
- 所在地:神奈川県箱根町仙石原エリア
- ハイアット発表資料
参考資料
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(2026年2月分)』: 宿泊旅行統計調査
- 観光庁『観光地域づくり法人(DMO)(2026年5月27日)』: 観光地域づくり法人(DMO)
- 観光庁『持続可能な観光地域づくりに向けた取組(2025年6月17日)』: 持続可能な観光地域づくりに向けた取組
- 観光庁(国土交通省)『サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集(公表資料)』: サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集
