株式会社伊豆急コミュニティーは、静岡県伊東市の伊豆高原エリアで、一棟貸し宿泊施設「CHILLYU」を2026年7月18日にグランドオープンします。温泉供給事業を手がける同社の強みを背景に、内湯、露天湯、テラス湯という3つの温泉かけ流しを備えた、1日1組限定・定員6名のプライベートヴィラです。
本件は、新しい高級宿泊施設の開業というだけでなく、空き地を再生し、温泉・自然・静けさ・食の時間を組み合わせて滞在価値をつくる取り組みとしても注目できます。宿泊事業者にとっては、地域資源を無理なく体験化する設計や、一棟貸しの運営における付加価値づくりを考えるうえで示唆のある事例です。
観光庁(国土交通省)『サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集』では、持続可能な観光を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。
本記事のポイント
- CHILLYU 伊豆高原は、温泉供給会社の事業基盤を生かし、3つの温泉かけ流しを備えた一棟貸しヴィラとして開業します。
- リビング棟とリラクゼーション棟を分けた構成により、団らんと休息の時間を切り替えやすい滞在設計がうかがえます。
- 遊休不動産の再活用を地域価値向上につなげようとする点は、持続可能な観光地域づくりの文脈でも参考になる取り組みです。
発表内容の整理

CHILLYUは、伊豆急行線・伊豆高原駅から車で約7分の静かな敷地に立つ一棟貸し宿泊施設です。所在地は静岡県伊東市八幡野1105-41、宿泊形態は1日1組限定のプライベートヴィラで、定員は6名、延床面積は115.76平方メートル、敷地面積は616.63平方メートルとされています。
施設名は、くつろぎを表す「CHILL」と日本の温浴文化を示す「湯」を重ねた造語です。テラスには水着で利用するテラス湯とバレルサウナを設け、リラクゼーション棟には内湯と露天湯を備えます。温泉は弱アルカリ性で、「POLA 美肌温泉認証」を取得した泉質であることも案内されています。
また、建物は家族や仲間との交流を楽しむリビング棟と、静かに過ごすためのリラクゼーション棟に分かれています。食事提供を定時制に固定せず、静岡県産牛、バゲット、ワイン、スパークリングジュース、ミネラルウォーターなどのウェルカムサービスを用意することで、宿泊者が自分たちのペースで滞在を組み立てられる点も特徴です。
出典:PR TIMES 【静岡・伊豆高原】温泉供給会社の強みを活かし”3つの温泉かけ流し”を備えた一棟貸しヴィラ「CHILLYU」、2026年7月18日(土)グランドオープン
温泉供給会社ならではの体験設計
CHILLYU 伊豆高原の核にあるのは、温泉を単なる付帯設備ではなく、滞在時間の中心に据えている点です。内湯、露天湯、テラス湯をそろえることで、宿泊者は天候、同行者、気分に応じて湯浴みの場面を選べます。温泉供給会社が手がける施設だからこそ、泉質や供給の安定性を含めた説得力が生まれやすい構成です。
宿泊事業の現場では、設備を増やすだけでは体験価値が伝わりにくい場面があります。CHILLYUでは「3つの温泉かけ流し」というわかりやすい体験軸に、バレルサウナ、テラス、食の時間を重ねています。温泉地の宿泊施設が自館の強みを言語化する際にも、設備名だけでなく「どのような過ごし方が生まれるか」まで整えることの大切さを感じさせます。
一棟貸しにおける自由度と運営設計
1日1組限定・定員6名という設定は、家族旅行、友人同士の小グループ、記念日利用など、滞在中のプライバシーを重視する需要に応えやすい形です。食事を決まった時間に提供するのではなく、ウェルカムサービスとして食材や飲み物を用意する設計は、少人数運営でも宿泊者の満足感を高めやすい工夫として映ります。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」は、2026年2月分の第1次速報値が公表されており、宿泊施設の動向を確認する公式統計ハブとして継続的に参照できます。需要の変化を読む際には、全国値だけでなく地域や施設タイプごとの動きを確認しながら、CHILLYUのような高付加価値・少人数型の受け皿をどう位置づけるかが実務上の論点になります。
遊休不動産を地域資源に戻す視点
今回の発表では、空き地・空き家などの遊休不動産を地域資源として再活用し、分譲地の魅力向上や地域価値の向上につなげる方針が示されています。宿泊施設単体の収益だけでなく、地域に眠る資産を観光の受け皿へ変えていく発想は、人口減少や高齢化が進む地域にとって現実的なテーマです。
観光庁の「持続可能な観光地域づくりに向けた取組」では、地方公共団体やDMOが中心となり、多面的で客観的なデータ計測と中長期的な計画に基づく観光地マネジメントを行う重要性が示されています。CHILLYUのような個別施設の取り組みも、地域側の計画や周辺事業者との接続が進むほど、滞在者の回遊、消費、再訪につながる余地が広がります。
さらに、観光庁(国土交通省)の「サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集」は、地域、来訪者、事業者にとって好循環を生む観光コンテンツづくりを整理しています。CHILLYUの事例に引き寄せると、遊休地を宿泊施設へ転換するだけで終わらせず、温泉、食材、地域事業者、自然環境を滞在体験の中で結び直すことが、地域に利益を戻す設計につながります。
伊豆地域の受入環境と広域連携
伊豆高原は、温泉、海、山、別荘地としての静けさを併せ持つ地域です。一棟貸しヴィラの魅力は施設内で完結する快適さにありますが、周辺の自然散策、飲食、体験、交通案内と組み合わせることで、滞在の満足度はさらに高まりやすくなります。
観光庁の登録DMO一覧では、静岡県内の地域連携DMOとして、公益社団法人静岡県観光協会、公益財団法人するが企画観光局、公益財団法人浜松・浜名湖ツーリズムビューロー、一般社団法人美しい伊豆創造センターが掲載されています。施設単独の発信に加え、広域の観光地域づくりと情報面で接続していくことは、伊豆高原を初めて訪れる宿泊者にとっても安心材料になります。
CHILLYUが掲げる自由な滞在スタイルは、宿泊者に選択の余白を残す設計です。地域の飲食店、体験事業者、交通、観光案内がその余白を支えるほど、宿泊施設は単なる滞在場所ではなく、伊豆高原を深く味わう入口として機能しやすくなります。
小規模高付加価値施設の示唆
CHILLYU 伊豆高原の取り組みは、大規模な客室数を持たない施設でも、地域資源と運営思想を丁寧に組み合わせることで、明確な滞在価値を打ち出せることを示しています。温泉供給、分棟構成、テラス、サウナ、ウェルカムサービスはいずれも単体ではよくある要素ですが、1日1組の過ごし方に合わせて配置されている点に工夫がうかがえます。
ホテル・旅館の実務では、客室改装や新設備導入の前に、自館が地域のどの資源に最も自然につながっているかを見直すことが重要です。CHILLYUの場合は、温泉供給会社としての背景と伊豆高原の静かな環境が、施設コンセプトを支える土台になっています。地域らしさを過度に演出するのではなく、既にある資源を宿泊者の時間に翻訳する姿勢は、現場でも参考になる取り組みです。
まとめ
CHILLYU 伊豆高原は、温泉供給会社の強みを生かした3つの温泉かけ流し、1日1組限定のプライベート性、遊休不動産の再活用という複数のテーマを持つ一棟貸しヴィラです。開業日は2026年7月18日で、伊豆高原駅から車で約7分の立地に、自由度の高い滞在を提案します。
宿泊事業者にとっては、地域資源を設備やサービスにどう落とし込み、地域全体の魅力向上とどう結びつけるかを考えるうえで、丁寧に読み解きたい事例です。施設関係者の地域へのまなざしと、宿泊者の過ごし方を尊重する設計が、伊豆高原の新しい滞在選択肢として伝わってきます。
企業情報
- 株式会社伊豆急コミュニティーは、静岡県伊東市八幡野1151番地に本社を置く企業です。代表者は代表取締役の野本明弘氏です。CHILLYUの運営を担い、設計監理は有限会社 松鹿設計製作所、デザイン協力は株式会社float、施工は株式会社伊豆急ハウジングと発表されています。
- CHILLYUの公式サイトは CHILLYU 公式サイト 、公式Instagramは CHILLYU 公式Instagram で案内されています。
参考資料
- 観光庁『持続可能な観光地域づくりに向けた取組(最終更新日:2025年6月17日)』: 持続可能な観光地域づくりに向けた取組
- 観光庁『登録観光地域づくり法人「登録DMO」の形成・確立計画(最終更新日:2026年1月8日)』: 登録観光地域づくり法人「登録DMO」の形成・確立計画
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(2026年2月分)』: 宿泊旅行統計調査
- 観光庁(国土交通省)『サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集(公表資料)』: サステナブルな観光に資する好循環の仕組みづくりに向けた事例集
