山梨県北都留郡小菅村で、旧旅館を再生した複合施設「kadoya(かどや)」が2026年7月18日にグランドオープンします。全7室のマイクロホテルにカフェ、コインランドリー、キッズスペース、ワークスペースを組み合わせ、宿泊者だけでなく地域で暮らす人にも開かれた「村のロビー」を目指す施設です。本記事では、歴史ある建物の継承、村内周遊の促進、日常機能を含む拠点設計という観点から、宿泊・観光事業者に役立つポイントを整理します。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。
本記事のポイント
- 旧旅館の記憶を受け継ぎながら、全7室・最大16名のマイクロホテルとして再生します。
- カフェやランドリー、キッズスペースを併設し、観光と地域の日常が交わる接点をつくります。
- 施設内で滞在を完結させず、温泉、飲食店、アクティビティなど村内への回遊を促す構想です。
発表内容の整理

株式会社EDGEは、山梨県小菅村の旧旅館「かどや」を再生した複合施設「kadoya(かどや)」を、2026年7月18日にグランドオープンします。2026年6月15日に先行開業したカフェに加え、グランドオープン後はマイクロホテルとして宿泊者の受け入れを始め、施設全体の運営を本格化します。
宿泊機能は全7室、最大16名に対応し、一人旅、友人同士、家族旅行などを想定しています。館内にはONIBUS COFFEE監修のコーヒーを提供するカフェ、ワークスペース、コインランドリー、キッズスペースを整備。寝具には富士吉田市の寝具メーカー「Sinso」の製品を採用し、飲食では「Satologue」や「源流パン工房」と連携するなど、山梨県内や村内の事業者とのつながりを滞在体験に取り入れています。
出典:PR TIMES 山梨県小菅村の旧旅館を再生した“村のロビー”「kadoya」、2026年7月18日(土)グランドオープン
旧旅館の再生が地域の記憶を次の滞在へつなぐ
kadoya(かどや)の特徴は、かつて地域の人々や旅人を迎えた旧旅館の役割を、現代の暮らしと観光に合わせて再編集している点です。建物を宿泊用途だけに戻すのではなく、地域住民が普段から立ち寄れる機能を加えることで、旅館時代の「人を迎える場所」という記憶を新しい形で継承しています。
観光庁(国土交通省)の「歴史的資源を活用した観光まちづくり事業」では、古民家などを生かした取り組みの展開地域として全国200地域を対象に、長期滞在や旅行消費の促進に向けた調査が行われています。歴史的な建物を地域との接点として使い直す動きが各地に広がるなか、旧旅館の由来を残しながら複数の機能を受け入れるkadoya(かどや)の構成には、建物の物語を地域滞在へつなぐ丁寧な設計がうかがえます。
小規模な宿を村内周遊の入口にする
全7室という規模は、館内サービスの多さだけで競うのではなく、村全体を滞在の舞台として案内する運営に向いています。発表では、カフェで朝を過ごした後に村を歩き、温泉や飲食店、地域のアクティビティへ足を延ばす過ごし方が示されています。来訪者の時間と消費を周辺へつなぐことで、宿泊施設と地域事業者が互いの魅力を補い合う滞在が生まれます。
株式会社EDGEが「NIPPONIA 小菅 源流の村」で培ってきた、村全体を一つの宿に見立てる考え方を、より気軽に利用できる拠点へ展開していることも注目されます。富士吉田の寝具、村内のパン工房、近隣施設のシェフなどとの連携は、地域のつくり手を宿泊者に紹介する導線になります。客室数が限られる宿にとっても、地域内の資源を無理なく結び、滞在価値を厚くする現場の参考になる取り組みです。
観光と暮らしを分けない日常機能の組み合わせ
カフェ、コインランドリー、キッズスペースを宿泊機能と同じ拠点に置く構成は、観光客向け施設と住民向け施設を明確に分けず、日常の利用から自然な交流を生み出す工夫です。宿泊需要に左右されにくい来館理由が複数あるため、地域との接点を継続しやすく、旅行者にとっても村の暮らしに触れる入口になります。
国土交通省の「『小さな拠点』づくりガイドブック」は、平成25年度から平成26年度に24地域を対象としたモニター調査を行い、生活サービスや地域活動の場をつなぐ拠点づくりの知見を整理しています。調査時期は古いものの、必要な機能を一か所に集めるだけでなく、人や活動を結び直すという考え方は、人口規模の小さな地域で複合施設を運営する際にも通じます。kadoya(かどや)が掲げる「村のロビー」は、旅行者の利便性と住民の日常利用を一つの運営に結び付ける点で、地域拠点の実践的な形として魅力的に映ります。
住民・来訪者・働く人を結ぶ運営が持続性を支える
複合施設を持続させるには、設備をそろえるだけでなく、誰がどの時間帯に使い、地域内のどの事業者へつなぐかを運営の中で調整することが重要です。カフェの先行開業によって日常利用を先に育て、その後に宿泊を始める段階的な進め方は、利用者の反応を確かめながら施設全体の動線を整える方法として参考になります。
観光庁(国土交通省)の「持続可能な観光地域づくりのための事例集」では、住む人、訪れる人、働く人の豊かさを地域観光の重要な視点として扱っています。この考え方に照らすと、地域住民も利用できるランドリーや親子で過ごせる空間は付帯設備にとどまらず、観光による便益を日常へ還元する運営基盤と捉えられます。利用時間帯や来館目的を継続的に把握し、宿泊者への村内案内や住民向け企画へ反映できれば、地域との関係をさらに育てられそうです。
また、2026年7月10日に閣議決定された観光庁(国土交通省)の「令和8年版観光白書(概要版)」は、今後の施策を「国内交流・アウトバウンド拡大」「観光地・観光産業の強靱化」「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保の両立」という3本柱で整理しています。kadoya(かどや)のように宿泊と住民利用を重ねる施設では、地域の生活環境に配慮しながら交流を増やす姿勢が、観光地としての持続性を支える重要な要素になります。
まとめ
kadoya(かどや)は、旧旅館の記憶を受け継ぐ全7室のマイクロホテルを中心に、カフェ、ワークスペース、コインランドリー、キッズスペースを組み合わせた地域拠点です。宿泊者を施設内に囲い込まず、村内の温泉、飲食、ものづくり、アクティビティへ案内する構想は、小規模な宿が地域全体の滞在価値を高める方法を示しています。
観光客と住民の双方に利用理由を用意し、カフェから宿泊へ段階的に機能を広げる進め方にも、地域との関係を大切にする姿勢が表れています。「村のロビー」が日々の交流を積み重ね、小菅村と継続的に関わる人を増やす入口となることが期待されます。
企業情報
- 株式会社EDGEは山梨県小菅村に本社を置き、「NIPPONIA 小菅 源流の村」などを通じて、村全体を一つの宿に見立てた地域づくりに取り組む企業です。kadoya(かどや)は同社にとって小菅村で3つ目の拠点となります。
参考資料
- 観光庁(国土交通省)『歴史的資源を活用した観光まちづくり事業(最新公表ページ)』: 歴史的資源を活用した観光まちづくり事業
- 国土交通省『「小さな拠点」づくりガイドブック(平成25年度~平成26年度)』: 「小さな拠点」づくりガイドブック
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(令和8年度)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁(国土交通省)『持続可能な観光地域づくりのための事例集(公表資料)』: 持続可能な観光地域づくりのための事例集
